ロードス島攻防記 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (1991年5月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181042

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ロードス島攻防記 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 割と短い物語だけれど、壮大で臨場感溢れる筆致で繰り広げられる歴史物語が面白かったです。
    1522年、聖ヨハネ騎士団が根拠地とするロードス島に対し、オスマン・トルコのスルタン・スレイマンが大軍により親征を行ったという史実を記録文学風に描いているのですが、背景と経緯が本書の大半を占めるため、最初は数本の論文の書き写しで創作ノートレベルなのかなと思いましたが(笑)、主人公たちの生々しい活躍が絶妙に織り交ぜられ、次第に引き込まれていきました。特に後半は淡々と描かれているようで、ド迫力の場面をイメージできるような書きっぷりが物語を面白くさせていました。
    当時のキリスト圏とイスラム圏の世界情勢をコンパクトに切りとったかのような背景説明も勉強になりました。
    ミーハーな感慨ですが、現代にも残る聖ヨハネ騎士団に体験入団できないものかな。(笑)

  • 歴史に興味があるわけではなく、聞いたこともない島での戦いを綴ったこの小説は、家に読むものがなくて渋々読み始めた。
    やっぱり読み始めは、外国の慣れない単語、宗教、歴史、地理などと興味が湧かず頭に入っていかないのだが、途中からだんだんとパズルが繋がっていき、面白くなってどんどん読み進めた。
    1500〜1530年のどこの国というわけではない、ロードス島という特殊な背景にある島で起こったひとコマの物語。あらすじを読んだだけでは絶対に読みたいと思えない小説が、ドラマチックに描かれ、エンターテイメントであるのと同時に観光、地理、歴史書の類いでもあると言っていい。
    何より、著者の状況説明や背景の描写が素晴らしく、読者だけ置いてけぼりにならない。歴史をよく理解していないとできない所業だろう。

    とにかくお勧めしたい本。ロードス島へ行ってみたくなるだけではなく、ヨーロッパの歴史や宗教を面白く理解するのに適した一冊。

  • 地中海におけるキリスト教世界とイスラム世界の覇権争いを描く第二作。聖ヨハネ騎士団の孤軍奮闘と、ヴェネチアの二重外交(当時、生き残りに必死) の様子が淡々と。スレイマンが大国の余裕を見せるところが、コンスタンティノープル戦時とは違う。マルタ島に移ってから今日に至るまで、創設当時の精神を失わないのは見事。イスラム世界の知識が乏しいせいか、(著者がイタリア贔屓なせいか) キリスト教世界に寄って読んでしまう。トルコ側から見た顛末も読んでみたい。地中海という狭い中での覇権争い。かなり激烈だったろう。

  • 「16世紀地中海世界をたゆたう船―歴史的記述と小説の幸福な融合体 」

     コンスタンティノープルの陥落から一世紀を経た1552年夏。東地中海のトルコ領内でキリスト教徒の最後の砦、ロードス島を守るべく聖ヨハネ騎士団は、若きスルタン、スレイマン率いるトルコの大軍と激しい戦闘の刃を交える。砲弾の響く城壁内には、青春の日々をここに騎士として送った高貴な血を持つ若者たちがいた。

     「キリストの蛇たちの巣」と呼ばれオスマントルコにとって喉元にひっかかった骨のような存在であったロードス島の「聖ヨハネ騎士団」は、9世紀中頃の十字軍時代アマルフィの商人によって設立された宗教団体がその始まりでした。その目的は、イスラム教徒をはじめとする異教徒排除と異教徒に繋がれたキリスト教徒の解放と救援が主なものであったそうです。今でいうなら、キリスト教徒のための警察隊と救急隊の合体組織のようなものですね。

     メンバーにはイタリアやフランス、イギリスといった西欧のいわゆる「青い血」を持つとされた貴族の子弟が選ばれ、その運営には彼らの出身である家の豊富な財力からの寄付や不動産の寄進などが当てられていました。彼らには「キリストへの帰依」という大義のもとに「清貧・服従・貞潔」であることが強いられ、騎士団長を頂点とする一大組織としてロードス島に存在していたのです。

     古代から様々な歴史の波に洗われながらも、温暖で緑豊かな島には色とりどりの花が地中海の微風に揺らめく…。バカンスで出かけたならさぞや素晴らしい時間が約束されるかに思えるこの小さなロードス島を舞台に、苛酷で熾烈なオスマントルコを擁するイスラム教世界VS聖ヨハネ騎士団の背景たるキリスト教世界の激突が、著者独特の凛々しい文体で繰り広げられていきます。

     塩野さんの作品は例えば、男性作家で言うなら司馬遼太郎の描くような、歴史的記述と小説の幸福な融合体とでも言ったらよいでしょうか。両軍の陣容や城塞、城壁のつくりなど、あたかもこの攻防戦に参加してきたかと思わせるリアルに再現される世界と、そこに宝石のようにはめ込まれた聖ヨハネ騎士団の若き騎士たちの淡くも甘い物語が光を放っています。

     「ロードス島攻防記」はいうなれば16世紀地中海世界をたゆたう船です。読者をのせて歴史の一大スペクタクルに立ち合わせ、現実のバカンスに劣らぬ、その世界に浸る幸せを間違いなく約束してくれます。

  • 塩野氏の本はこれまでもいくつか読んでますが、ごく簡単に言ってしまうと「詳しい割に読みやすくて面白い」という評に尽きると思います。
    史実やディテールを詳しく描写することで、ともすると難しい話になって拒否反応を起こす可能性もある中、塩野氏はちょうどいいバランスで「説明のための」記述を終え、次の舞台へと進めてくれます。各所に散りばめられた知識を拾い集めて読み進めていくうちに、いつの間にか全体的な知識と世界観が読み手の頭の中に作られている文章の運び方はまさに職人芸、といったところ。

    作品の舞台は16世紀初頭、地中海に浮かぶロードス島。イスラム教勢力がキリスト教勢力を脅かし、西欧世界に侵略の手を伸ばそうとしていた時代、イスラム勢力にとっては「キリストの蛇」、キリスト勢力にとっては「最前線の砦」としてロードス島に立ちはだかっていた「聖ヨハネ病院騎士団」を主軸に置いた物語です。とは言っても、対立軸であるイスラム側のオスマン・トルコ帝国を単純に「悪」とすることはなく、冷静かつ中立的な視点から、むしろ帝国の専制君主であるスルタン・スレイマン一世を威風堂々とした尊敬すべき人物として描いていることに好感が持てます。

    具体的なストーリーについて語れるほどの筆力がないので粗筋については触れませんが、恐らく世界史の教科書にさえ黙殺されかねない「騎士団」とはどんな構成員から成る集団であり、どのように生計を立て、どのような存在意義のもとで生きていったのかについて、小説を楽しみながらも知ることができます。
    娯楽と教養を無理なく両立できる良書です。

  • 塩野作品―特にこういう物語性の強いものを読んでいると、司馬遼太郎と同じものを感じることがある。歴史的な部分の資料を揃え、きっちりと検証してあるがために、どこまでが史実(というか資料に基づいたもの)であり、どこが作者の創作であるのかがわからなくなるところだ。

    世界史をみっちりと学んだつもりでいたけれど、十字軍や騎士団というものの存在にはどうしてもピンとこないものがある。わからないながらも、騎士道というものには漠然としたイメージがあり、それがまさに本作品に描かれた、騎士団長リラダンとトルコのスルタン、スレイマンのあり方にぴたりとはまった。

    日本史的な視点でみれば、篭城戦というのは(確実な援軍が期待できない限り)ほぼ負け戦という印象だが、ロードスの騎士たちは驚くほどよく戦ったと思う。ロードスが島であるせいもあるだろうが、季節と疫病と補給という要素が加わると、篭城もあながち悪い手ではないのかもしれない。

    ロードス島の攻防戦もさることながら、その後のエピソードが秀逸。ロードス島、マルタ島に行ってみたくなる。しかし、一番驚いたのは、聖ヨハネ騎士団が未だ存在しているということ。国土を持たずに主権を有するというのがどういうことなのかはよくわからない。騎士団員はどういう人たちで構成されているのだろう。

  • 三部作の中で一番好きな本。

    男性女性問わず、彼女の描く男たちの背中を思い浮かべては「男」というものの理想像を自分の中で作り上げている人は多いのではないでしょうか。

    今回のこの作品で描かれている男たちは、
    高貴であり、高潔かつ矜持をもったGentlemanが描かれていると思います。

    特に、敗戦後の彼らの態度や姿勢は、敗戦を経験した国である日本の男たちもおおいに見習うべき「男らしさ」を感じました。

  • 聖ヨハネ騎士団がロードス島防衛に敗北し、若きイスラムの長スレイマンに開城する、歴史的分岐点の物語です。
    イスラム世界は異教徒に対して寛容であり、征服者として優れていたと思われます。
    ロードス島征服においても、騎士や住民に対して蛮行は少なく、紳士的な交渉によって解決へ向かいます。
    極めて洗練された外交(戦争も含む)は無駄がなく、更には双方に人間的な余裕を与え、望ましい結果へ導きます。
    当事者だけでなく、後世の我々も心地よく感じることのできる一冊。

  • 20170526

  • 今回も再読、初読みは「ボルジア」と同じ20年くらい前です。

    イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン一世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した・・・。
    (本著裏表紙あらすじより)

    本書も2回目の読了です。
    なかなか読む機会がなく、だらだらと長期間になってしまいましたが、けっして面白くない訳ではありません。
    「コンスタンティノープルの陥落」と同じように小説風な箇所が多く、「ローマ人の物語」よりは読みやすいと思います。個人的には「ローマ人の物語」の方が好きですけど。
    すっかり忘れていて読み直して気が付いた事は、主人公が登場人物の一人と同性愛の関係になっていた、という点です。あ、こういう部分もあったっけ、といった感じでちょっと面くらいました(笑)

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イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン1世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した-。島を守る聖ヨハネ騎士団との5ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第2弾。

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