レパントの海戦 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (1991年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181059

レパントの海戦 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 塩野七生さんの海戦三シリーズで、これは最終回。歴史小説は苦手だったけど、その意識をすっかり覆してくれた。
    時代は1570〜71年、最後の大海戦がレパントで起こった。その戦争が起こるまでの動きや人物像は戦争がいざ始まる前の高揚感を高める。とにかく描写が素晴らしくて、映画のようなスペクタクルな場面を想像した。戦闘が始まる瞬間や各重要人物の動きなど、小説の最高潮に達する。

  • 塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」三部作の最後の一つ。
    強大なトルコがキプロスを攻略して我が物とし、その後クレタ島を攻略してクレタ島は陥落寸前であった。トルコは東地中海の覇権を確保しつつあり、ベネチアは支配地域だったキプロスを失い、その上クレタまで失い、海洋通商国家としてトルコと通商関係を破棄ししてでも対決せざるを得ない状況にあった。
    しかし、東の超大国トルコに対してヨーロッパの結束は心許ない状況であり、ローマ法王の権威は低くヨーロッパ各国が領土争いをしていたため、ローマ法王が対トルコの十字軍をなかなか結成できない状態だった。そういった中で、ベネチアが対イスラムの十字軍としてヨーロッパ各国をまとめ、トルコと対決するのは並大抵の努力ではなかった。
    そのベネチア外交によるヨーロッパ各国の政治的駆け引き、そして決戦となるレパントの海戦がベネチアの男たちの活躍を通じて描かれている。
    手こぎのガレー船が主体であった時代に、ベネチアの最新兵器である浮かぶ砲台とも言える重装備船からの砲撃はベネチアの海軍力の技術力と強さを見せつける。
    結果的にガレー船による最後の大海戦となったレパントの海戦は、ヨーロッパ・キリスト教国連合艦隊の勝利に終わり、超大国トルコが負けるという歴史的転換点になる。特に負けることがなかった超大国トルコが負けたと言うことの精神的な側面は大きかったようである。
    戦闘もさることながら、外交交渉も興味深い。ベネチアの外交官がトルコからの帰国報告で、「相手にどう思われているかよく考え、相手が強大だからといっても怯むことなく相手の弱点を突き、毅然とした態度を取ること。そして、こちらの強みを生かして、なめられないように交渉するということが重要である。しかしながら対トルコ外交は穏便に済まそうとして外交交渉が不十分であったために、トルコに野心を抱かせ領土拡張を許してしまった。」と述べている。
    何とも現代の日本が二重写しとなり、時と場所は違えども何も変わりがないように思える。

  • バルバリーゴー!

  •  『海の都の物語』シリーズの続きであり、ヴェネツィア共和国の衰退の一歩を描く海戦シリーズの最終巻。どのシリーズでもそうであったがヴェネツィア共和国の人たちの祖国愛の深さに感嘆されるばかりであった。イタリア本国や島々で活躍する人、コンスタンティノープルに残りトルコ相手に交渉する人、教皇を説得する人と様々な人々の模様を描きながら海戦本番に載せていく構成は流石であり、とても面白かった。

     一度は失敗していても、次には成功させる。そのような粘り強い外交がヴェネツィア共和国繁栄の一因であったのであろう。そんな共和国がこの戦の後に衰退の一途をたどっていったというのは信じられないが、歴史であり国家というのはそういうものなのであろう。

  • 面白い。が、ローマ人の物語、十字軍に比べて数段劣る。地名がかなり頻出するが地図も巻末にしかなく、海戦も図を使えばより面白みが高まるのにもったいない。

  • 神聖同盟連合艦隊はトルコを打ち破った。これを期に地中海から西欧大国へと歴史が転換していく。ヴェネツィアは海戦の勝利後にトルコとの講和。引き換えに、70年余りの平和を手にする。コンスタンティノープル駐在大使の帰国報告にある「他国に対する毅然とした態度」が海戦後欠けてしまった。平和は戦と戦の隙間にあるものと、どこかで読んだ事があるが、ヴェネツィア国家のその後の衰退をみると、歴史はその繰り返しなのか。フローラは作中での海戦がもたらした平和の象徴として余韻が。『ドン・キホーテ』著者セルバンテスも参戦していた。

  • 「男たち、かく戦えりー歴史の表舞台としての地中海世界の終焉 」

    十字軍を冠したキリスト教世界とオスマントルコの戴くイスラム教世界の激突であり、「ガレー船同士で闘われた最大で最後の海戦」でもあった「レパントの海戦」。1571年10月7日決戦当日に至るまでの息詰まる顛末を、連合艦隊の主軸として闘ったヴェネチアの視点からドラマチックに描く。

     西暦1600年わが国で「天下分け目の合戦」として名高い「関ヶ原の合戦」は、わすが半日で勝敗がついたことで知られますが、それに先んじること29年、地球の裏側の地中海でさらに短い5時間あまりで 勝敗を決したのがこのレパントの海戦でした。これまで海戦三部作としてあたかもその戦いに参加してきたかのような臨場感あふれる著者の描写に息をのんできました。その書き振りは完結編たる本編でもなお健在です。

     白みはじめた東の空を背景に、まるで影絵のように、帆をあげた船が近づいてくる。だが、なぜか、はじめに視界にはいってきたのは一隻の船だけだった。しかし、それはすぐに、その一隻が二隻に分れ、さらに四隻に分れるような感じで視界いっぱいに広がっていった。

     まさにその戦いの日、まだ明けやらぬ東の海上にトルコの艦隊を認めた連合艦隊の緊張感が伝わってくるようです。ここに激戦の幕が上がります。しかし、この決戦の日を迎えるにあたるまでの連合艦隊の編成は、地中海世界の覇権をめぐりトルコを宿敵としてきたヴェネチア、新興の王国としてヨーロッパの主導権を握りたいフェリペ2世のスペイン、更にはローマ教皇の思惑も絡んで一筋縄ではいきません。

     そこにはまた、己が信仰の威信をかけた、というよりは、国の存亡を賭けた男たちの攻防がありました。ヴェネチア海軍総司令官ヴェニエル、参謀長で本編で唯一自らの副官の未亡人とのロマンスが語られているバルバリーゴ、ヴェネチア全権大使として敵陣コンスタンチノープルで孤独に闘い抜いたバルバロ。さらにはイタリア出身のもとキリスト教徒でありながら、イスラム教への義を貫いたトルコの海将ウルグ・アリに至るまで。それらが場所と時系列を追って描かれていくことにより、このクライマックスとしての海戦当日の描写が活きてくるのです。

     このレパントの海戦を最後として、以後十字軍は出されることは無くなり、ヨーロッパの目は西の海へと向かうことになるのだと著者は言います。大航海時代への転換ですね。ここにローマを中枢に置く地中海世界の歴史的舞台としての終焉があり、その一つの大きな歴史の転換を描いた本書は海戦三部作の完結を飾るにふさわしい一大叙事詩となっています。

  • 大帝国トルコと海洋国家ヴェネツィアを軸にした、地中海世界中心の世の中が終わり始める大海戦:レパントの海戦。これをきっかけというように、地中海を中心にした経済・政治が衰退し始め、と同時にトルコ・ヴェネツィアも力にかげりを見せ始める。
    世の中が移り変わる様を、多くの登場人物の目線で描き出す三部作の締めくくりです。
    おもしろい!読み出したら止まりません。。。歴史は物語。いい作品でした。

  • 海戦の部分は物足りないが、それまでの盛り上げ方というか前振りはうまい。塩野さんはこれぐらいの長さの方が面白いのではないでしょうか。

  • 読了。

    【購入本】
    レパントの海戦 / 塩野七生

    コンスタンティノーブルの陥落
    ロードス島攻防記
    ときて
    レパントの海戦
    で三部作でございます。

    ロードス島攻防記のスレイマンの次のスルタンの時代となります。
    ヴェネツィア+ローマ法王+スペイン帝国 VS イスラムトルコ の系図。

    主人公はおそらく塩野女史が一押しなのでしょう、アゴスティーノ・バルバリーゴ氏となっております。

    地中海世界の勢力争いの歴史でございまして、
    この三部作を読むにあたり、必ず、海の都の物語を先に読まなければならない。
    他の専制国家とは違う、都市国家ヴェネツィアの政治形態がとても重要になります。

    現在完結したローマ人の物語の続編的なお話。
    「ローマ亡き後の地中海世界」の文庫化待ちとなっております。
    たぶん上中下でくるんじゃないかなと思います。

    その前にチェザーレボルジアの物語のほうに行くのもありかな。

    ちなみに、
    ローマの安宿にいたとき、次どこ行くのと一緒のドミトリーに泊まってたポーランド人に聞かれたときに、フィレンツェ ネクスト ヴェネツィアって言ったらヴェネツィアで?マークが出てたのでヴェニスと言ったらおーヴェニス!とか言ってたのはいい思い出。
    フィレンツェはフローレンスじゃなくていいのか?と思ったのもいい思い出。

    面白かったです。

  • ヴェネツィア衰退期の3部作の最後。世紀の大戦に勝ったのに、国の勢いの下り坂は止められないのか。かなしいなあ。

  • トルコが西欧に負けたという程度の知識しかなかったレパントの海戦。戦争の発端がキプロスを巡るトルコとヴェネチアの争いであったが、ヴェネチアがローマ法王とスペイン王フェリペ2世を味方にした事で、戦いの姿はキリスト教VSイスラム教という宗教戦争の様相を呈してくる。
    この作品は主にヴェネチアの視点で描かれている。バルバリーゴ、ヴェニエル、ソランツォ、ベルバロといった人物を中心に話が展開する。 スペインとヴェネチア、法王の間で「誰が総裁となるか」で意見がまとまらなかったが、最終的に総裁に決まった、若きドン・ホアンという人物の事もとても気になるところだ。

  • 再読。前作の『ロードス島攻防記』は、登場するのが男たちばかりだったせいか、やや殺伐とした印象が残った。ところが、今度のこの『レパントの海戦』では、作者に余裕があるのか、バルバリーゴを軸に、フローラとその息子を登場させるなど、小説としてのふくらみを持たせたものになっている。そして、このことはまた老いたる猛将ヴェニエルをきわだたせる効果を生み、他の登場人物も含め、造形がより立体的なものになった。 しかし、レパントの勝利は、ヴェネツィアの、そして地中海の黄昏を告げるものだった。

  • 1571年、スペイン王フェリペ2世率いる西欧連合艦隊は、無敵のオスマン帝国を破り、地中海世界制覇への野望を阻止した。無敵のトルコ神話を打ち破ったことで、西側諸国の精神的重要性は圧倒的であった。逆にトルコは地中海支配の喪失と陸の支配に動揺をもたらした。この戦いを契機に文明の交代期が起こり始め、海洋国家ヴェネツィアにも、歴史の主要舞台だった地中海にも、落日の陽が差し始める。本書は、文明の後退期に生きた男たちを壮大に描いた3部作の完結編である。

  • 読み終えました。

  •  オスマントルコとキリスト教世界の攻防を描いた3作目。昔の海戦は人間どうしの白兵戦だったみたいです。この戦いののち、歴史の舞台は地中海から大西洋へ。歴史物はスケールが大きいね。

  • 塩野七生さんの代表作を久しぶりに読みました。もう20年前の著作。地中海のキプロス島を巡る領土問題ですが、いつの世の中も領土問題の解決は難しいんだなあと、妙に切実な気分になりました。

  • さて、世界史では、レパントの海戦についてはどう習っただろう?

    読了後、真っ先に思ったのがそれでした。キリスト教社会がトルコに勝った最初の戦争・・・だったっけ?

    と思って、ウィキペディアを引いてみたら、冒頭の説明文には「ヴェネツィア」という名はどこにも出てこない。たぶん、教科書にも出てこなかった。更に言えば、勝ったはずのキリスト教世界、負けたはずのトルコ、何を得て何を失ったのかを考えると、戦争の勝ち負けと、戦闘の勝ち負けはイコールではないことに、淋しさのような空虚感が漂う。

    世界史の舞台が地中海から去り、国家のあり方も都市国家から領土型の国家へと移行する。ヴェネツィアという、隆盛を誇り、長く続いた国家の歴史を、しっかりとした史実の調査に裏打ちされた半フィクションの物語を追うことで、世界の動きが、確かな質感と当時の人々の息遣いを伴って迫ってくる。

    恋愛エピソードは余分に感じたが、読了後は、エンディングのためには必要だったのだろうと頷ける。失ったものが多くとも、この海戦で、ヴェネツィアは確かに次の世代の平和をつかんだのだから。

  • 3部作のラストだけど、コンスタンティノープル陥落、ロードス島攻防の前2作に比べ地味。

  • キリスト教世界vs.オスマン帝国の3部作の第3弾。前の2作と違って本作はヴェネツィアからの視点が強調されている。戦闘が始まるまでのキリスト教陣営の迷走っぷりと決戦の海戦シーンが見所。

  • ローマ人の物語の作者でもある、塩野七生によるレパント海戦を描いた歴史物。小説タッチに近い。レパントの海戦に至る経緯と登場人物の動きと併せて描いている。キリスト教国(スペイン・ヴェネツィア・教皇)が一枚岩でなくいがみあっていたのが面白かった。確かに、スペイン的には北アフリカを攻略したいし、ヴェネツィア的には東地中海を攻略したいってのがあったからそらそうだわなぁwwと感じた。レパントの海戦を復習・整理するにはいい本だった。ただの事実の羅列になってしまいがちだけど、この作者にはなんか躍動感や物語チックな描写が出るので読みやすい。

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