海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 4 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181356

作品紹介・あらすじ

1453年、トルコ帝国がコンスタンティノープルを攻め落とし、ビザンチン帝国が滅亡。東地中海の勢力図は一変した。東方での貿易を最大の糧とするヴェネツィアはこの状況にどう対応したのか。強大な軍事力を誇り、さらに西へと勢力を広げようとするトルコ帝国との息を呑む攻防、そしてある官吏の記録をもとに、ヴェネツィアの新興ビジネスである観光事業、聖地巡礼旅行を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 『コンスタンティノープルの陥落』の前後のお話。
    自国の天然資源といえば魚と塩しかない一海洋都市国家が、オスマン大帝国と必死に渡り合う巻。
    かくも不安定な状況下で同じ政体が1000年続いた、というのは改めてすごい。

    マホメット2世が、「降参しても首は刎ねない」、と約束したあと、投降者の首ではなく胴体を真っ二つにした、という話は怖過ぎ。

  • 対トルコに苦戦しながらも、持ち前の賢さとスピードで巧みに生き延びていくヴェネツィア。聖地巡礼ツアーの抜け目なさには、呆然とするばかり。しかも悪どさは一切ない。現代人もある意味で見習うべきかもしれない。

  • 四巻目は宿敵トルコの台頭と、ヴェネツィア航路を使った聖地巡礼パックツアーについて。
    合理主義者は根本的な間違いを犯すことがある。合理的に考えて相手がそんなことをするはずがないと思ったことでも相手はすることがあるのである。その事は当時のヴェネツィア外交官が「良識とは受け身に立たされた側の云々することなのだ。行動の主導権をにぎった側は、常に非良識的に行動するものである」と嘆いている。このことはいつの世になっても、外交問題の普遍性を示している。日本の近くのかの国をみればそれがわかる。
    また、ヴェネツィアはその航路と後悔技術で聖地イェルサレムまでの巡礼ツアーを組んでいた。儲けられるところは儲けるのがヴェネツィアのやりかたである。

  • <宿敵、トルコ>
    海洋国家でもなく、キリスト教でもない、規模の違うトルコとの対立。自分たちとはまったく違う相手との問題に、立ち向かうヴェネチアが書かれている。
    P41マキアヴェッリ
    現実主義者が誤りを犯すのは、自分達が合理主義者でリアリストなものだから、非合理的に行動する相手を理解できないからなのだ。

    <聖地巡礼パック旅行>
    読んでいてとても楽しかった。
    旅行の安全性や移動の大変さは現代と違うけど、旅行のワクワク感や観光の感想とかは今も昔もそれ程変わらないんだなと思えた。

    「コンスタンティのープルの陥落」「レパントの海戦」

    2010/11/11読了

  • オスマントルコ、マホメッド2世との戦い。コンスタンティノープルを陥落させた強力な敵。戦と交渉で凌ぐ。
    旅行記は当時の様を同時代にいるかのように読めて楽しい。ヴェネチアの歴史のうねりの中で小休止した気分。

  • 中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかったから、か。

  • 国土も資源も貧弱にもかかわらず巧みな外交と海軍力で繁栄を続けてきたヴェネツィアに国力ではるかに勝るトルコが立ちはだかるようになる。賢い若きスルタンはヴェネツィアの予想を覆して勢力を広げてきた。様々な戦の記述の詳細は忘れてしまったが、電話もテレックスもない時代に敗戦を知ってショックを受けるのが1か月とか2か月後という中で、スパイを放って情報を集めていたというのが興味深い。考えてみれば日本の忍者も同じころ同じようなことをしていたわけだ。
    この巻は後半のエルサレムへの聖地巡礼パック旅行の様子が圧倒的におもしろい。カメラのない時代に金持は画家や版画家を連れて巡礼に出かけたそうだ。お蔭で読者はそのときの訪問地の様子を見ることができる。ヴェネツィアは国を挙げて巡礼ビジネスをやっていて、客としては至れり尽くせりなので、少し遠回りでもヴェネツィアから出かける巡礼者が多かったとのこと。たしかに初めていく長旅なのだから、自国の言葉で持ち物その他のアドバイスを得られるのは大助かりだったに違いない。航海中に命を落とす巡礼者もいた中、無事に数か月の旅を通じてきちんと記録をつけてくれた官僚の旅行記をもとにしたとのこと。やはり記録は大事だ。この官僚は後に神聖ローマ帝国への大使になったそうだ。

  • 3.5かな。最後の「聖地巡礼パック旅行」にある巡礼者のミーハーぶりと、それをヴェネツィア人が観光業として成立させる記述が面白い。2巻目もそうだが、歴史というより、地域振興のヒントがもらえそう。自治体の人、読んだらどうかな?

  • コンスタンティノープル陥落前後のトルコとの戦いと1480年の聖地巡礼記
    特に後者が歴史の中の日常的冒険として面白かった
    聖遺物崇拝や完全免罪にはそうでない方からは愉快でしかないけれども

  • 海の都の物語〈4〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

  • 14から15世紀のVeneziaについて

  • 第八話 宿敵トルコ
    宿敵っていうか、ヨーロッパは猛獣相手に大変な目にあっている感じです。
    マホメッド二世。残酷で大嫌いですが、結構面白かったです。

    トルコは嫌だけど、カトリックに頭下げるくらいならそっちがまだマシといういギリシア正教徒たち。
    善戦するハンガリー、アルバニア、べネツィア。
    意外とマホメッドと気が合うフィレンツェ。
    マホメッド二世暗殺計画。
    トルコとの講和後、ヴェネツィアから文化使節として送られた画家ジェンティーレ・ベッリーニ。マホメッド二世は彼を大変気に入り、トルコ帝国の騎士の称号と黄金の鎖を与え、その功を謝したそうですが、ベッリーニの帰国の理由とは……。


    と、トルコの怖ろしい状況を知った後で第九話の聖地巡礼パック旅行にはいるので、ほのぼの楽しい内容ではあります(イルカが出てきたり、一緒に旅している気分になります)が、いつトルコに会うかわからない状態。アラブ人もそれに近いものがあります。
    聖地巡礼パック旅行で亡くなったかたもいるし、ドイツに着いたら「トルコに殺されたことになっていた」巡礼者もいました。無事帰国おめでとうございます。

  • 20170822

  • ヴェネチアの敵が変わった。
    陸軍中心のオスマン・トルコに変わるのだから。
    でも、ヴェネチアは巧みに乗り越えてしまい、通商圏を半世紀かけて元に戻したのだから。
    少しずつ都市国家を中心に発展してきた世の中から植民地主義へと向かってゆく。
    ヴェネチアはどう立ち向かうか。
    高校の授業の知識だけでは正確な説明ができないことに気がつく。

  • オスマントルコの登場と、ヴェネチア共和国。

  • トルコが進行してきて、外交やら何やらで対抗する巻。
    でもヨーロッパ内は仲が悪くて複雑。宗教問題も複雑。
    あとは聖地巡礼の話。意外と気配りが行き届いている。

  • カバーの写真が村上春樹に似てるような気がするよ

    1480年といえば、
    花の都と呼ばれるフィレンツェを中心に、ルネサンスの華麗な花をいっぱいに咲かせていた時代。
    一方でヴェネツィアはトルコと戦争中。
    こんな中で聖地巡礼に東地中海を船旅するとは・・・・・・
    同じイタリア半島でも、こう照らし合わせるとまた面白い。
    やっぱり人の歴史は面白いと再認識

  • ヴェネツィアの物語、第4巻。地中海を取り巻く環境は、トルコ帝国が進出してきたことにより一変。今まで安全に航海できた海が利用できなくなる中、いかにもヴェネツィアらしい方策で切り抜けていく。
    聖地巡礼を観光業にまで昇華させる商売根性、脱帽です。ほかの国々とは違う、国のあり方・政治のあり方・商売のあり方。時代時代に合わせた巧みな舵捌きは、どんな事例でも感じることが出来ますね。

  • 【本の内容】
    <1>
    ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、一千年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国。

    外交と貿易、そして軍事力を巧みに駆使し、徹底して共同体の利益を追求した稀有なるリアリスト集団はいかにして誕生したのか。

    ヴェネツィア共和国の壮大な興亡史が今、幕を開ける。

    「ルネサンス著作集」中の大作、待望の文庫化、全六冊。

    <2>
    ヴェネツィア共和国は十字軍の熱狂に乗じて東地中海に定期航路を確立し、貿易国としての地歩固めに成功。

    異教徒との通商を禁じるローマ法王を出し抜き、独自の経済技術や情報網を駆使して、東方との交易市場に強烈な存在感を示した。

    宗教の排除と政治のプロの育成に重点をおき、強力な統治能力を発揮した内政にも裏打ちされた「ヴェネツィア株式会社」の真髄を描き出す。

    <3>
    東方との通商に乗り出し、地中海の制海権を握ろうとしたのは、ヴェネツィアだけではなかった。

    アマルフィやピサといった海洋都市国家が次々と現れ、なかでも最強のライヴァル、ジェノヴァとの争いは苛烈を極めた。

    ヴェネツィア共和国は、個人主義的で天才型のジェノヴァの船乗りたちといかにして戦ったのか。

    群雄割拠の時代を生き抜くヴェネツィア人の苦闘の物語。

    <4>
    1453年、トルコ帝国がコンスタンティノープルを攻め落とし、ビザンチン帝国が滅亡。

    東地中海の勢力図は一変した。

    東方での貿易を最大の糧とするヴェネツィアはこの状況にどう対応したのか。

    強大な軍事力を誇り、さらに西へと勢力を広げようとするトルコ帝国との息を呑む攻防、そしてある官吏の記録をもとに、ヴェネツィアの新興ビジネスである観光事業、聖地巡礼旅行を活写する。

    <5>
    十五世紀末、ポルトガルがインドへの新航路を発見という、中世の一大ニュースがヨーロッパ中を駆け巡る。

    トルコ帝国との攻防も続く中、スペインに代表される君主制国家も台頭。

    ヴェネツィアは統治能力の向上による対抗を図るも、「持たぬ者の悲哀」を味わうことになる。
    地中海から大西洋へ。

    海洋都市国家から領土型封建国家へ。

    新時代の幕開けはすぐそこまで迫っていた。

    <6>
    ヴェネツィア共和国はトルコ帝国との争いで、交易拠点を次々に失い始める。

    海外交易市場の主導権もイギリス、オランダに譲り、衰退の兆しは誰の目にも明らかだった。

    そしてフランス革命に端を発したヨーロッパ世界の動乱。

    ナポレオン率いるフランス軍の圧力を前にして、かつて「地中海の女王」とさえ呼ばれたヴェネツィア共和国の命運は尽きつつあった…。

    歴史大作の完結編。

    [ 目次 ]
    <1>
    第1話 ヴェネツィア誕生(蛮族から逃れて;迎え撃つ;聖マルコ;海の上の都;運河;地盤づくり;広場;井戸;国づくり)
    第2話 海へ!(海賊退治;海の高速道路;海との結婚式;交易商品;ヴェネツィアの船;帆船;ガレー船;東方への進出)
    第3話 第四次十字軍(エンリコ・ダンドロ;契約;ヴェネツィアへ;コンスタンティノープル;コンスタンティノープル攻城戦;落城;ラテン帝国;ヴェネツィアが得た“リターン”)

    <2>
    第4話 ヴェニスの商人(交易商人(その一)
    資金の集め方
    交易市場
    マルコ・ポーロだけではない
    定期航路の確立
    海上法
    羅針盤と航海図
    船の変化
    中世の“シティ”
    交易商人(そのニ))
    第5話 政治の技術(共和政維持の苦労;政教分離;政治改革;クィリーニ・ティエポロの乱;「十人委員会」;元首ファリエルの乱;政治と行政)

    <3>
    第6話 ライヴァル、ジェノヴァ(海の共和国;アマルフィ;ピサ;ジェノヴァ;ジェノヴァの商人;ジェノヴァ対ヴェネツィア;ヴェネツィアの二人の男;キオッジアの戦い)
    第7話 ヴェネツィアの女

    <4>
    第8話 宿敵トルコ(トルコ帝国;「本土」;マホメッド二世;コンスタンティノープルへ;ビザンチン滅亡 ほか)
    第9話 聖地巡礼パック旅行(まず、ヴェネツィアへ;ヴェネツィア滞在;旅立ち;イェルサレム;聖地巡礼 ほか)

    <5>
    第10話 大航海時代の挑戦(胡椒ショック;航海者たち;危機;巻き返し;通商と産業と ほか)
    第11話 二大帝国の谷間で(都市国家から領土国家へ;統治能力の向上を期して;ヴェネツィアの光と影;元首グリッティ;その息子 ほか)

    <6>
    第12話 地中海最後の砦(法王庁に抗して;クレタ攻防戦)
    第13話 ヴィヴァルディの世紀
    第14話 ヴェネツィアの死

    [ POP ]
    帯に〈『ローマ人の物語』に並ぶ代表作〉とある。

    著者が30年近く前に発表した、「地中海の女王」ヴェネツィア共和国の興亡史が、新潮文庫から全6巻で刊行された。

    1981年度のサントリー学芸賞受賞作だ。

    ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、ヴェネツィア共和国は1000年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けた。

    それはいかに可能だったのか。

    彼らの信条は、「はじめに、商売ありき」。

    経済的に成り立つことを第一目的に、外交と軍事力を巧みに駆使して、強力な共同体を作り上げた。

    「ヴェネツィア株式会社」ともいわれる経済大国の栄枯盛衰を、著者は膨大な資料を読み込み、時にはモーターボートを借り切って沼沢地帯の潟を体感した上で、生き生きと描き出した。

    3巻には、渡辺靖氏、6巻には、池内恵氏が解説を寄せた。

    気鋭の研究者による塩野史観評も、読み応えがある。

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