海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 4 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181356

感想・レビュー・書評

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  • <宿敵、トルコ>
    海洋国家でもなく、キリスト教でもない、規模の違うトルコとの対立。自分たちとはまったく違う相手との問題に、立ち向かうヴェネチアが書かれている。
    P41マキアヴェッリ
    現実主義者が誤りを犯すのは、自分達が合理主義者でリアリストなものだから、非合理的に行動する相手を理解できないからなのだ。

    <聖地巡礼パック旅行>
    読んでいてとても楽しかった。
    旅行の安全性や移動の大変さは現代と違うけど、旅行のワクワク感や観光の感想とかは今も昔もそれ程変わらないんだなと思えた。

    「コンスタンティのープルの陥落」「レパントの海戦」

    2010/11/11読了

  • ヴェネチアの敵が変わった。
    陸軍中心のオスマン・トルコに変わるのだから。
    でも、ヴェネチアは巧みに乗り越えてしまい、通商圏を半世紀かけて元に戻したのだから。
    少しずつ都市国家を中心に発展してきた世の中から植民地主義へと向かってゆく。
    ヴェネチアはどう立ち向かうか。
    高校の授業の知識だけでは正確な説明ができないことに気がつく。

  • オスマントルコの登場と、ヴェネチア共和国。

  • どの話も面白いけど、この巻収録の第九話、「聖地巡礼パック旅行」が一番面白い。ある聖地巡礼者のヴェネツィアからイェルサレムまでの船旅が書かれていて、それを追体験できる。地中海の地図を片手に読むとさらに面白いと思う。

  •  「はじめに、商売ありき」の合理的な考え方をもっている、ヴェネツィア共和国の1000年に及ぶ歴史について描かれた本。初めに描かれていた第4次十字軍の話はとっても面白かった。自分たちの利益を最大限になるように考えつつ、大国の力をうまく利用していくところがとても面白かった。

     海洋都市であった4国家の比較も面白かった。これにより、ヴェネツィアの異質性がよくわかった。また、ジェノヴァとの戦いは熱いものをかんじた。ヴェネツィアの政治制度であるドージェや十人委員会および国会による権力分立制度はとっても素晴らしいものであり、日本も見習うべきだとは思ったが、この制度が維持できたのはヴェネツィア人の性格があってこそだろう。なぜならば、今の日本の政治家では、このヴェネツィアの方々のように国を想う気持ちはほとんどないだろうから。

     さらに、ヴェネツィアの商魂には驚かされた。トルコとの戦いでの大損を取り返そうと和平条約を締結した際にすぐ大使をコンスタンティノープルに派遣し、そのつなぎに捕虜となっていたヴェネツィア人を使うところもさすがだと感じた。このようにチャンスを逃さない姿勢が1000年繁栄できた要因なんだろう。

     この後、経済的発展に伴って、政治的・文化的に成熟していき、衰退していく。という人の一生だったら充実してやまないような一生だろう。奢れるものというより、平和でありすぎた故の外交感覚のマヒ。今の日本を見ているような気もした。

  • 前半のオスマントルコとの戦いは壮絶できつかったですが、後半の巡礼はガラッと雰囲気が変わって気持ちよく読めました。

  • 宿敵トルコ!は、ヴェネツィアの衰退の面影を見る事ができる点で、少しヴェネツィア好きとしては辛い…。
    今まで好調期のヴェネツィアの姿ばかりだったから、少し寂しい気持ちになる。
    聖地巡礼は、とっても面白。商人ベネツィアが、経済利益のためにとことんやった感じがわかる。

  • 国家の伝記。感想は6で。

  • ジェノヴァとの海洋国家頂上決戦を制したヴェネツィア。さぁ、
    これで地中海の女王の座は手に入れた。しかし、安心する暇もなく
    次なる敵が現れる。新興の大国トルコである。

    19歳でスルタンとなったモハメッド2世は、コンスタンティノープル
    を陥落し徐々にその勢力を地中海に伸ばそうとする。

    誰の助言にも耳を貸さず、側近さえも気に入らなければ躊躇せず首を
    はねる。ビザンツィン帝国を滅ぼしたトルコのスルタンに対し、表と
    裏でヴェネツィアは働きかける。

    スルタン暗殺計画の見積書が残されているなんて、経済大国ヴェネツィア
    らしい。

    さて、ヴェネツィアも戦争ばかりしていた訳ではない。中世の西欧の
    キリスト教者にとって、憧れの旅といえば聖地巡礼である。現代でも
    個人旅行は手間がかかる。

    では、ヴェネツィアが面倒を見ましよう。イェルサレムへ出航する船の
    手配は勿論、ヴェネツィア滞在中の観光や宿泊の手配。果ては巡礼に
    必要な買い物の手伝い、まで。国を挙げて巡礼旅行をお手伝いする
    「ヴェネツィア旅行会社」である。

    「ご旅行の御用命は、至れり尽くせりのヴェネツィア観光へ」。
    なんてね。笑。

  • 前半はトルコ帝国との関わり、後半は聖地巡礼について書かれた巻です。
    今まで相手にしてきた西欧のキリスト教徒とは根本的に違うトルコ帝国のマホメッド二世との緊張したやり取りに引き込まれました。
    海洋型国家と大陸型国家、西欧と亜細亜、共和制と君主制、キリスト教とイスラム教、どれをとってもヴェネツィアとは違う。初めて相対するタイプの相手に戸惑う姿、全てが異なる隣人と共存することの難しさが描かれています。

    前半の緊迫した内容とは打って変わって後半は一人の巡礼者が辿る旅の記録。聖地巡礼を掲げるヴェネツィアの商売の上手さが明るい文章で書かれています。読んでいるこちらが何だか楽しくなりました。

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