海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 6 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181370

感想・レビュー・書評

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  • 最終巻。ナポレオン率いるフランス軍とその他の国との板挟みにあい身動きの取れないままあっけなく滅びてゆくヴェネツィアの様が描かれている。争いからの中立を謳って平和を求めても他国には通じるはずがない、というのが非情に興味深かった。国の平和を得るためには他国に脅かされない力が必要なのだ。 他の国も自分達の国益を守るので精一杯の様だったし、三流国に落ちたヴェネツィアを救ってくれる国はもはや無かったのだな。 ナポレオンやフランス革命辺りの歴史も知りたくなってきたので今度何か読んでみよう。

  • 地中海の覇権を目指すトルコによるクレタ島攻略に対抗した戦争は25年に渡り、そして敗れる。
    疲弊しきったヴェネツィアを今度はフランス革命の落し子・ナポレオンが襲い掛かり、滅亡への道を転がり落ちていく。
    最盛期には程遠い国力、ナポレオンの台頭を脅威と感じた人材の言葉を受け止められない政界、農業主体となってしまった産業。
    様々な要因が重なり合ってヴェネツィアは最期の時を迎える・・・。

    「ローマ人の物語」のときもそうでしたが、最終巻は寂しさを感じてしまって読むスピードが遅くなってしまいます(^^ゞ
    ヴェネツィア共和国の最期は、国政の中核を担う人々の判断が裏目裏目に出てしまい、さらに世の中の動きがそれを上回って早くなってしまい、対応できないまま最期を向えた、と言った感じでした。
    少ないけれども人材は存在し、フランス革命やナポレオンの台頭を危険視して本国に報告をしているんだけど、政府としての動きが時代についていけていなかった、と言うところは残念ですね。
    古代ローマの衰退期に生まれたヴェネツィアが、ナポレオンによって終止符を打たれる。歴史の壮大さを感じさせられました。
    著者の作品で読んでいない作品にも興味が沸いてきたので手を出してみようか、と考えてます。
    (もっとも何冊かの積み本を片付けてからになるでしょうけどね(^_^;))

  • 「ヴェネツィア展」を観に行く前にぜひとも読んでおくべきだった。
    ヴェネツィアの華やかさの裏にある歴史が切ないほどわかります。
    東京での開催は終ってしまったけれど、
    今後巡回予定の街の方々には、これを読んでからヴェネツィア展に行かれることをぜひお勧めします。

  • 国家の伝記。余計な印象論や感傷的な描写がなくて、でもロマンはきちんと描かれていて、面白かった。ヴェネツィア、行ってみたい!!

  • ヴェネツィアの歴史、性質がよくわかる本。陸軍国家と海軍国家の戦略上の違いが見事に解説されている。

  • 緩やかに衰退していくヴェネツィアの様子は、筆者の洞察力と手腕があってこそ描けたもの。時代の波に取り残されていくその姿は、どこか親しみを感じさせる。

  • 最終巻は地中海最後の砦の攻防戦、崩壊前夜に花開いた文化、そして建国一千年のヴェネツィアの死。内政的には貧富の格差の固定化による政治腐敗、出生率低下。外政的には非武装中立を貫くゆえのどっちつかずの混乱、悲観的楽観論による外交上の無策。そして崩壊。

    シリーズを通してヴェネツィアの建国から、地中海の覇者となり栄華を享受し、崩壊に至るまでを追ってきた。ヴェネツィアは他の国の崩壊とは違い、決して傲ることはなかった。その崩壊にはヴェネツィア人としての魂の変容があったとの筆者の指摘がある。

    ヴェネツィア崩壊から三十年後のドイツの思想家ヘーゲルの言葉に「経験や歴史の教えることは、国家や政府は歴史から何も学ばなかった、あるいは、歴史から引き出しうる何らかの教訓に基づいて行動してこなかった、ということだ」とある。そして、歴史は繰り返す。

  • 地中海最後の砦
    17世紀
    法王庁、海賊との戦い、対トルコとの四半世紀に及ぶクレタ攻防戦の降伏。
    衰退に向うヴェネツィア。
    海運の衰え、工業、農業への経済の多角化、それによって、貧富の差の固定。
    権利の集中を嫌っていたヴェネツィアなのにフランチェスコモロシーニが元首と海軍総司令官を兼務することになる。能力ある人材の不足。英雄待望論。

    ヴィヴァルディの世紀
    ヴェネツィアにヨーロッパ各国から観光客が来るようになり、エリート階級の人にとっては、ヴェネツィア旅行は教養やステータスになっていた。絵画、音楽、演劇、オペラ、カジノ、カーニバル等の文化や催しが観光客を惹きつけ、復興した。
    快楽の都という印象を感じさせたヴェネツィアは優雅に衰えてく。

    ヴェネツィアの死
    ナポレオン率いるフランスとオーストリアの間で、中立宣言をしながらも、本土が戦いの場になり、駆け引きもうまくいかず、フランスに屈し、共和国の滅亡。
    2010/11/21読了

  • 17世紀に入ると、トルコとの長い戦いでヴェネツィアは疲弊し始める。交易拠点を次々にトルコに奪われ、地中海での力が弱まっていく。ヨーロッパの各国も、互いの争いでヴェネツィアを助ける国も出てこない。おりしも、フランスにはナポレオンが現れ、さしものヴェネツィアも、その軍門に下ってしまうのである。1千年にわたって、独立を保ち他国の軍隊をその領土に入れる事がなかったヴェネツィア。都市国家としての限界を乗り越えることができなかった。日本も、韓国・中国台頭のなか新しい道を見つけられるのか考えさせられました。

  • ヴェネツィア共和国の1千年がいよいよ最終章を迎えてしまいました。

    建国当時の地中海をとりまく状況の変化、周辺国の大国化、はたまた平和が継続したことにも起因する共和制の制度疲労。

    一番の原因は、共和制の中枢機能の劣化だったのだろう。

    如何なる制度も司るのは人間。

    先人が培ってきたノブレスオブリッジを機能・継続させるのは至難の技なんだろうとつくづく思いました。

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