海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 6 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.30
  • (88)
  • (70)
  • (30)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 653
感想 : 57
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181370

作品紹介・あらすじ

ヴェネツィア共和国はトルコ帝国との争いで、交易拠点を次々に失い始める。海外交易市場の主導権もイギリス、オランダに譲り、衰退の兆しは誰の目にも明らかだった。そしてフランス革命に端を発したヨーロッパ世界の動乱。ナポレオン率いるフランス軍の圧力を前にして、かつて「地中海の女王」とさえ呼ばれたヴェネツィア共和国の命運は尽きつつあった…。歴史大作の完結編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 遂に読み終えた。
    ナポレオンのヴェネツィア共和国に対する恫喝の仕方は、圧倒的な軍事的優位を確立した者ならではの嫌らしさ。千年続いたものが終わる時というのはこんなものなか。ドラマティックといえばそうなのかもしれない。

    日本はイタリア化(世界一からじわじわ後退、いつのまにか1.5流国になっているが、安定的ではある状態)を目指すべきだ、という声も聞かれるが、このヴェネツィアの長い歴史を考えると悪くない気がしてきた。

  • ヴェネツィアの最期
    ・前巻から指摘されている貧富の差の固定が、制度劣化、精神堕落などではなく、産業構造の変化等に起因するところに、盛者必衰の不可避性がある。
    ・政治、経済が衰退し、文化のみが栄える頃に得られる賞賛

  • 一千年の栄華を誇った美しい都の静かな終焉。
    西欧諸国、オスマントルコ、教皇の間でバランスを取り続けて共和制を貫いたヴェネツィアもナポレオンの前にあっけなく平伏す姿に『盛者必衰』の言葉しか思い浮かべられませんでした。
    国力の衰退は人の心も消極的にさせる。
    的確な判断と行動力で国を導いてきた元首も十人委員会も今や受動的な中立路線を繰り返し確認するばかり。
    トップがこれでは元老院も言わずもがな。
    諜報能力にかけては追随を許さなかった彼の国が18世紀には他国並みになってしまったのは国力の衰えと密接に関係しているように思えてなりません。
    国力の衰退、人々の考え方の変化、共和国フランスでの情報収集の失態(パリ総裁政府でのバラースへの収賄の失敗は以前のヴェネツィアなら有り得ないと思うのですが…)、ナポレオンと言う強い圧力の前に内部から崩壊していったとしか思えませんでした。

  • 「ローマ人の物語」の原型ともいえる作品。
    ヴェネチアは国を代表するような英雄はいないので、人物に焦点を当てるのではなくて、国家システムに焦点を当てた形になっている。
    全6巻と長いので、通して読むと少ししんどいかも。

  • 世界史について知識が根本的に不足している身からは
    ヴェネツィアの特異性すなわち中世都市国家というもの自体が
    なんとなくでも想像つかないのだが
    それに対するる入門読み物として
    面白くはあったもののあまり適当ではなかった
    本国最大十数万人の数で千年に渡りいられたというのは
    その位置と周囲の状況がそれを許したからでないと思うが
    もちろんそれを作り出した力というものもあっただろう
    その歴史を代表する英雄をもたずして
    それを成し遂げたことこそが
    ヴェネチィア文化の特異性であるかもしれない

  • ヴェネツィアの歴史ここに完結。

    ナポレオンによって共和制が廃された瞬間にヴェネツィアの歴史は閉じたのだった。

    1000年以上もの間、小さな国土でアドリア海を支配し続けたヴェネツィア。
    台頭する列強には勝てなかったようだ。
    建国当時から蛮族の脅威にさらされ、次はオスマン帝国、そして最後は同じキリスト教側のフランスに滅ぼされたという哀愁漂う終わり方。


    本土に資源がなかったからこそ、知恵を使い弱者ゆえの戦い方の見本を見た気がします。
    どこかの国も見習いたいものです。

  • トルコは何かっていうと難癖つけてヴェネツィアに喧嘩を売ってきます。
    クレタ攻防戦で降伏したフランチェスコ・モロシーニがその後元首としてトルコを破り、ヴェネツィアではありえなかったヒーローとして扱われたのは興味深いです。

    トルコとはそんな関係ですが、ドイツイギリスフランスあたりのエリート観光客にはヴェネツィアの良さがよくわかります。
    聖地巡礼旅行の時とは違って、彼らはヴェネツィアに訪れます。
    ヴェネツィアには5月~9月に行ってブルキエッロに乗りたいです。

    そして最後にナポレオンに滅ぼされます。「ナポレオンの恋人たち」を読んだときマリーヴァレフスカの気持ちになってナポレオンが好きになってしまったけど、これ読んですごく嫌な奴と思いました。
    でもここの部分はドラマを見ているみたいで臨場感たっぷりで面白かったです。

  • ヴェネツィア共和国の最後、政治家の課題先送りや時間稼ぎ、…いまの日本と重なった。

  • 中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかったから、か。

  • 非武装中立国がヤバい奴に目をつけられた時のグダグダ感が見どころ。あとローマ人と違い個人が目立たない体制。組織としての一つの理想の完成形だと感じる。

    結論、対イスラムだったら、コンスタンティノープルの陥落から続く三部作のほうが面白い。政治や体制だったらローマ人のほうが面白い。

全57件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×