神の代理人 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2012年10月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (582ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181424

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神の代理人 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 中世ヨーロッパで「神の代理人」としてキリスト教世界に君臨したローマ法王をめぐる、政治的陰謀の数々を描いた本。おおむね史実通りに記述されている。バチカンの法王や枢機卿は政争に明け暮れており、地方の王侯貴族の方がよっぽど信心深いのが何とも…。在バチカンのヴェネツィア大使が「イタリア人は法王を人間だと思っているから平気で失脚させるけど、フランス人は法王のことを神の代理人とみなす深層心理が働き、とことん失脚させるところまで行動できない」と喝破した文章を残しているのが印象的。本書はいくつか前提知識がないと読みにくいところがあり、同じ著者の「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」と「海の都の物語」を先に読んでいると、理解が深まると思う。

  • 四人のローマ法王について語った塩野七生の中編集。
    最後の十字軍を遂行しようとしながら、世の諸侯には最後まで賛同を得られず、挫折と失意の中で生涯を閉じたピオ二世を描く第一章。

    ピオ二世の時代には若手の枢機卿として使えていたロドリゴが、悪名高い法王と言われたアレッサンドロ六世となり、メディチ家が栄えていたフィレンツェの覇権を得たサヴォナローラと対決する第二章。
    実際に交わされた書簡や日誌を基に構成されたこの章は、あのチェーザレボルジアの父でもあったアレッサンドロ六世の冷静、理知的な面を捉えており、ここからは悪名高きという評判はとても感じることは出来ない。
    塩野氏によれば彼は政教分離を考えていたらしく、自身は法王庁領を持つ法王庁国家を解体して、世俗国家を統一するために息子のチェーザレボルジアを支援してイタリアの統一を軍事と政治によって成し遂げさせようとしていたと考えられる。
    チェーザレボルジアの本を読んだ時に日本における織田信長とかぶる感じがしたのだが、その向こう側にはこんな構想をもった父、法王が居たのかと思うとスケールの大きさにうなってしまう。

    第三章の主人公ジュリオ二世は、法王らしく無くイタリアを戦乱の中に引きずり込んだ人物として描かれている。
    周りを囲んだ強大国スペイン、フランス、トルコと伍していくために策を次々と打っていくのだが、それが支離滅裂でもあり利用しようとする国が次々と変転するので、一貫した成果を生み出すことが出来ない。
    結局は歴史家より「致命的な同盟、致命的な武器」と称される治世となるだけだった。
    現代の法王を視る限り、発言力はあるものの政治的には無力に近いのだから、こういった姿を見せられると、宗教も結局は政治・権力を操るための道具であるだけではないか、と情けない気持ちにならざるを得ない。

    最後の章で描かれるレオーネ十世はフィレンツェのメディチ家出身だったが、彼の死とともにルネッサンスは終わり、ルネッサンス最後の地でもあったローマはスペインから大略奪を受けて破壊される。
    結局著者は、メディチ家で始まりメディチ家で終わったルネッサンスの別の面を描きたかったようにも思える。

    歴代法王を取り上げるという独特の視点で描かれた作品で内容的には興味深かったが、書簡による会話が延々と続く箇所や、複雑なやり取りだらけの同盟・戦争などは描写がこまかく、多少読みにくい部分もあったが、塩野氏に取っても初期の作品なので仕方なしというところか。

  • まえがきにもあるように、作者が若いころに書いた作品なので、いろいろと実験的な試みがある連作になってます。
    歴史を紹介する本でも、なかなか「神の代理人」であるローマ法王を主役にして語られる本はあんまりないような気がしますが、この本では4人の教皇を取り上げてます。
    日本でいったら室町時代?ぐらいの話なので、あちらヨーロッパでも、坊さんの権力はとても大きく、坊さん自ら政治や戦争に積極的に関わっています。
    中でも「アレッサンドロ六世とサヴォナローラ」は手記や手紙を使った形式で、かなり読みにくかったのですが、権力とは、人間の生き方とはなにか、みたいな今でも通用する深みがあって好きでした。
    アレッサンドロ六世は何かと悪役として書かれることが多い(と思う)のですが、こーいう視点もあるのだなあと思いました。

  • 最後の十字軍を組織しようとしたピオ2世。
    フィレンチェの修道士と対峙したアレッサンドロ6世。
    教会領再興のため自ら軍を指揮したジュリオ2世。
    法王庁の資産を食い潰したメディチ家出身のレオーネ10世。


    ルネサンス期に生きた4人のローマ法王たちの権謀術数。信仰と権力のバランス感覚はイタリア人の資質なのかしらん。。。
    著者もいうように確かにルネサンスはイタリア人のもので、宗教改革はドイツ人のものだと、読み通すと見えてくる。世俗のなかで生きる醒めた目の現実主義。信仰と理想に燃える理想主義。双方の絶妙なバランス感覚。これがイタリア半島に生きる人たちのしたたかな性質なのだろうか。そんなことを思う。

  • ローマ法王をテーマにした一冊。「ローマ人の物語」以来、新作の文庫本が出ると必ず手に取ってしまうことが続いている。それくらい、クセになる塩野氏の小説。

    この時代は、昨日のヒーローが一転して今日の悪魔になってしまうようだ。民衆に教養がないので、感情で動いてしまう。それを操るのがローマ法王だったりするのだ。法王が本当に『神の代理人』かどうかは疑わしいが、世間を動かすと言った意味で『神の代理人』であったことは間違いない。

    これは1972年に出された作品という。関係者の日記だけで構成された章もあり、初期作品の試行錯誤っぷりを垣間見ることができて面白かった。

  • 【ピオ2世】知識が多くあるせいで、教会の権威復活を思い、過去の栄光であった十字軍を提唱してしまう。そこに、教皇になってしまったことへの悲しさが表れていた。また、十字軍も最初の方しか成功していなかったから、この年数がたってからの十字軍の提唱は受け入れがたいものだったのだろうと思った。

    【アレッサンドロ6世】サヴォナローラとの手紙での対決は面白く読めた。私としては、アレッサンドロ6世の方に正義があるように読めた。というのも、サヴォナローラは、最初の方は民衆のためにやっていたのであろうが、その民衆の熱狂的な支援を得続けるために、過激で、熱狂的な改革を提唱せざるを得なかったのであろう。その点では、アレッサンドロ6世は、冷静な判断をし続けていった、と思えた。

    【ジュリオ2世】教皇としては、どうか、と思わざるを得ない人だと読んでいて思った。好戦的すぎる人物だったと思う。ただ、この人の考え方は教皇としてはどうかと思ったが、どこかの皇帝なら、歴代随一の皇帝になっていただろう。その場その場しのぎの外交方針は、宗教的権威としての教皇にはあっていないものと思った。

    【レオーネ10世】教皇として、あるまじきと言える散在の数々に暗殺されかけるというスキャンダル。若くして法王となってしまった人だからであろうか、先を読む力が少なかったからこのような行動に出てしまったのではないだろうか。また、出身が、メディチ家というのも災いになってしまったのであろう。

    全体として、中世の俗人的な教皇が描かれており、とっても、教皇が身近に思えるような作品だった。

  • 初めての塩野七生。前書きでご本人も認めているように、若いときの作品で「若書き」であると。
    文章が固いのは年齢ではなく作家の特徴かも知れないが、所々、ものすごく読むのに疲れた。
    題材は興味深く、その点はでは面白いのだが、まるで教科書を読んでいるか、講義を聴いているときのような退屈感との戦いだった。学生ではない身からすると、もう少しこなれた文章で読みたいものだ。
    そんな中、ジュリオ二世かヴェネチア大使ピサーノと釣りをしながら、ヴェネチアの考え方を探るシーンがある。お互い背中合わせで釣糸をたれながらの会話で、振り向きながら相手に声をかける。法王の問いに対し、ピサーノが、振り向いて『冷ややかに』答える。『二人はまた背中合わせになって、釣りを続けた』この部分には、読んでいて余韻を感じた。

  • ルネッサンス時代の4人のローマ法王を描く。神の代理人とあるが、それぞれ一癖も二癖もある人物ばかりだ。聖職者どころか、世俗の垢に塗れ、欲の皮の突っ張った人たちである。時代とその時代に生きる人物がよく描かれており、若書きの未熟さは感じられず、むしろ生き生きとした文体である。

  • 基調講演をされるそうです。
    国際交流基金設立40周年記念シンポジウム
    変わる世界 つながる人々 - 国際文化交流の新潮流 -
    http://www.jpf.go.jp/j/intel/40th/index.html

    開催日時 2012年11月9日(金)13:00-18:00
    会場 有楽町朝日ホール
    東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F
    入場 無料
    言語 日本語/英語(同時通訳)
    主催 国際交流基金
    申込方法 参加ご希望の方は、お名前/ご所属・役職/電話番号/Eメールアドレスを記載の上、EmailかFaxにて11月5日(月)までに以下の宛先までお申込ください。※サイトを参照ください。

  • 読んで、一番面白かった章は、やはり、アレッサンドロ六世の章。法王としては現実主義すぎるかもしれないが、統治者としては安心できる。アレッサンドロの突然の病没がなければ、ローマの歴史は、全く異なっていたのではと思う。

  • 読書日:2017年4月14日-4月18日.
    十字軍を推し進めたPius II(da Repubblica di Siena)から物語が始まります。
    次いで彼に枢機卿の一人として従っていたAlexander VI(da Regne de Valencia)、
    Julius II(da Repubblica di Genova)、
    Leone X(da Repubblica fiorentina)のQuatro Pāpaの物語です。
    Pāpa達に共通していた事は、"FranceやSpain等の外国からItaliaから追い払う事"に尽きます。
    教皇の出身国や家柄により、その防衛対策は異なります。

    最期が哀れと感じたのはPāpaはPius IIです。
    Franceからのニ信徒に扇動され、Imperium Romanumへ十字軍の遠征を欧州各国に呼び掛けるも呼応する事が無かったからです。
    歴史に仮定は存在しませんが、もしこの二信徒が存在しなければPius IIはどの様な政策を執っていたのかと思います。

    書簡の遣り取りが面白いのはAlexander VIです。
    実家であるBorgia家の興隆と共に彼の地位は高まりますが、それ以上にGirolamo Savonarolaとの往復書簡が面白かったです。
    恐らく彼が初めて宗教と政治を完全分離を考案したのではないでしょうか。
    思案だけで実現はなりませんでしたが。
    もし実現していればこの後のStatus Civitatis Vaticanaeは、Carlos IのSacco di Roma(Roma略奪)も起らなかったでしょう…。

    絵画、陶器、音楽等芸術に関心を持っているものであればこの国に住みたいと思わせたのはLeone Xです。
    流石da de Mediciの人間らしく催事等を芸術で昇華し、
    昇華し過ぎて死亡時には厖大な借金があったとの事です。彼がPāpaとなった故に出身地であるFirenzeでRenaissanceが盛り上がったのだと感じました。
    しかしまさか彼の死後でRenaissanceが終わるとは思ってはおりませんでしたが…。

    所々に「主イエスよ…」の文面を目にする度に、
    保育園時代に祈った以下の文言が思い出され、敬虔な気持ちにさせられました。

    大好きなイエズス様、私達を御守り下さいませ。父と子と精霊の御名に於いて、amen.

  • ローマ方法3代の物語。世の中を動かす法王になったこと以外、似通ったところのないピオ2世・アレッサンドロ6世・レオーネ10世。その人の人生はどのような道を歩んだかでわかるというけれど、この3人を見比べて改めて自分の人生どうするのかと考えさせられる本でした。
    宗教のことだけ考えて動くのは難しいものですね。

  • 面白い。読みやすく、面白い。歴史読み物。
    初期作品でここまで、調べてあるのがすごい。

  • アレッサンドロ六世とレオーネ十世は面白かった。

    「地中海世界ほど、人間に対して寛容な世界はない…」。レオーネ十世の最後の台詞。

    ルネサンスはイタリア人のもの。塩野さんが最初に書かれていた言葉がストンと自分の中へ落ちた気持ちになった。

  • 当時としては多分に実験的な書き方をされているが、ウザくならず、どんどん読み進めたくなるのは著者のチカラなのだろう。

  • 勉強のためにと思って手に取ったが、この人の書くものはやはり好きになれない。

  • 身体はコタツの中にいても、脳が時代と場所をすっ飛んで旅行してくれる本。

  • 大学の大先輩だけど、実は初めての塩野七生。語られてるのはルネサンス期の4人だけで、ちょっと物足りない。でもアレッサンドロⅥ世の語り口は上手いなあ、と。

  • 四人の法王の話。
    チェーザレ・ボルジアが好きなので父親のアレッサンドロ六世とサヴォナローラの話が一番面白かった。
    年代記や日記の記述のみで進められるがローマ側から見たフィレンツェ、フィレンツェ側から見たローマと幾つかの視点で書かれているので偏りが無く全体が見えたのが良かった。

    純粋に神を奉じて無茶をする法王もいれば現実を見据えて権謀術数を駆使する方法もいて、神の代理人も様々でした。

  •  法王を中心とした物語であるが、その内容はローマ人の物語、十字軍の物語と同じような構成である。史実に基づきその人物の性格を推測しつつ、いつどのようなときにどのような決断をしてきたかが書かれており、アレッサンドロ6世、レオーネ10世の章が特に面白い。

  • 塩野初期三部作の一つ。

    ローマ法王が主人公。
    これを読むと、カトリックの中での法王の絶対性に驚く。
    イタリアの中にバチカン市国を作るのもカトリックという宗教に配慮したんだろうなぁと思った。

  • いま「カンブレー同盟」の成立過程を読んでるところです。
    いいですね。当時の法王や君主さらに民衆の置かれた状況や考えていることが見えるようです。 
    もう、メモを取りながら1ページ1ページ、超ゆっくり読んでいます。 
    でも、気付いたら、ああもう300ページまで来てしまったか、って感じです。

    読み終わった。
    「アレッサンドロ六世とサヴォナローラ」が読み応えがあった。
    サヴォナローラに麻原彰晃が重なった。

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神の代理人 (新潮文庫)の作品紹介

教会の権威復活のために十字軍結成に心血を注いだ知識人法王ピオ二世。過激な改革を説き、民衆の熱狂的な支持を集めるサヴォナローラと対峙したアレッサンドロ六世。教会領再復のため、自ら軍隊を組織し陣頭に立ったジュリオ二世。芸術と豪奢を愛し、法王庁の資産を食いつぶしたメディチ家出身のレオーネ十世…。権力の中枢を生きたローマ法王の実像を描き出す、塩野文学初期の傑作。

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