ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181561

感想・レビュー・書評

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  • 内容 :
    紀元前2世紀半ば、強大国であったカルタゴを滅亡させ、ローマは地中海世界の覇者と呼ばれるようになっていた。
    しかしそのローマも次第に内部から病み始める。
    名将スキピオ・アフリカヌスの孫であり、若き護民官となったティベリウス・グラックスは、改革を断行すべく、強大な権力を握る元老院に挑戦するが、あえなく惨殺される。
    遺志を継ぎ護民官となった弟ガイウスの前にも「内なる敵」は立ちはだかる。

    著者 :
    1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
    「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
    著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。

  • グラックス兄弟、ガイウス、スッラの時代を
    覇権国になったローマが格差拡大、無産階級の増加に悩み始めるも、改革法案提出者が3度も殺されて、果ては国を二分する内乱に至る。

  •  うっかり拡大しすぎたローマ国家に、だんだん破綻が出てくる時代( ´ ▽ ` )ノ
     でも、ここぞというときにこれぞという人物が必ず登場するんだから、歴史って不思議なもんだね( ´ ▽ ` )ノ
     学生時代に習って記憶の底におぼろに残ってた名前、グラックス兄弟とかスッラとか、「ああ、こんなことやった人なんだ」と初めて得心( ´ ▽ ` )ノ
     まあ、どうせすぐ忘れちゃうけど( ´ ▽ ` )ノ


     しかし、紀元前の歴史がこんな密となると、イタリアの子どもは大変だな(´ェ`)ン-…
     日本なら「縄文・弥生時代」で済むところなのにね( ´ ▽ ` )ノ
     室町・戦国時代の前にさらに戦国時代があるようなもんだ( ´ ▽ ` )ノ
     イタリアの自国史学習時間・教科書は日本の何倍量あるんだろう?( ´ ▽ ` )ノ

     2018/02/12

  • ポエニ戦役に勝利を収めたローマの戦後が描かれる。
    戦役の終了に伴い、奴隷=安価な労働力が供給され、ローマ人が失業し始める。それが社会不安に。
    一方、貴族階級は土地を運用し、奴隷名義で商業に参画。資本力を増していく。
    ここに格差が拡大。
    この流れは、現代の日本やその他の国が直面している課題と非常に似通っていると感じた。

    福祉は人を助けない、というのは非常に示唆に富んだ提言だと思う。

  • 護民官グラックス兄弟の改革とスッラ体制。カエサル登場前のローマ内政の混乱を描く2巻。

  • グラックス兄弟のエピソードがせつない。

  • 前巻でハンニバルを下し、各国を滅ぼして地中海世界を制覇したローマ。
    そしてこの不吉なサブタイトル「勝者の混迷」。

    手を広げまくって収拾つかなくなったり、既得権にしがみつく連中のせいで停滞したりでローマもボロボロになったのかなと思って読み進めたが、ちょっと違った。
    あながち間違ってはいなかったけど、大人物はいつの世にもいるのか、それともローマは傑物を輩出するシステムがよくできているのか。
    前巻「ハンニバル戦記」が人気だし、次巻からはユリウス・カエサルが出て来るという谷間の巻でもあるのであまり期待していなかったが、中々読み応えありだった。

  • 「勝者の混迷」いつの時代にも繰り返す。日本の日露戦争後が頭に浮かんだ。

  • 読書録「ローマ人の物語6文庫版」3

    著者 塩野七生
    出版 新潮社

    p48より引用
    “多くの普通人は、自らの尊厳を仕事をする
    ことで維持していく。ゆえに、人間が人間ら
    しく生きていくために必要な自分自身に対し
    ての誇りは、福祉では絶対に回復できな
    い。”

    目次から抜粋引用
    “グラックス兄弟兄弟の時代
     マリウスとスッラの時代”

     歴史作家である著者による、歴史に大きな
    足跡を残した古代ローマについて記した一冊。
     スキピオの孫の活躍から大きな内輪もめに
    ついてまで、史実と著者の主観をまじえて書
    かれています。

     上記の引用は、ローマに生まれた富の格差
    について書かれた項での一節。
    食べ物やお金が満たされているだけでは、人
    は人ではいられないということでしょうか。
    人はパンのみにて生きるにあらずとは、こう
    いう事も含んでいるのでしょう。
     大きな戦いを終えて、周辺を支配下に置い
    たら置いたで、内側からまた違った悩みが湧
    き出してくる。
    現在のニュースを見ていると、今も昔も人や
    その集まりが持つ悩みは、全然変わらないの
    かもしれないなと思います。
     前巻までの展開と違って、なんともグダグ
    ダとした揉め事が書かれていて、より好みの
    別れるないようなのではないかと思います。
    ドロドロとしたドラマが好きなならば、より
    面白く読める巻ではないでしょうか。

    ーーーーー

  •  ローマ人というゲス野郎どもは、2000年後の我々にとって最も優秀な反面教師である。
     祖国の父と讃えられ増長し、裏から国家を操り私腹を肥やす元老院。例え国家が衰退しようとも自分たちの利益になる政策であれば、それを打ち出した為政者には喝采を。しかし全体の利益となるような法でも自分たちに傷みを強いる賢人には罵声を持って応じるローマ市民。これらの癌はローマを瞬く間に最低の蛆虫国家から底なしの愚劣国家へと変貌させた。
     耳を疑うことに、このドブ川でドブを洗い流し、にも関わらず最後まで残ったしつこいドブのようなローマ人は、天候の不安定により援助を求めて移動してきたガリアの難民たちを蛮族と呼び捨て30万人近くの大虐殺をやってのけたというのだ。このような野蛮極まる民族が、我々が暮らす愛の惑星・地球に存在してもよいのか? 現代の我々が考えるように、古代人も同じように考えたに違いない。
     高慢、傲慢、尊大、不遜。ローマ人を表す言葉としてはどれも適切ではあるものの、あまりに温すぎる。
     武力によって屈してから200年。イタリア半島の都市国家群は一度たりともローマを裏切ったことはなかった。ハンニバルが侵入したときも、ローマが帝国主義に進み対外戦争に明け暮れたときも、イタリアの都市国家群は黙ってそれを支援した。それが約束だったから。ローマ人と同等の権利と義務を有すローマ連合の諸国は固い絆で結ばれた仲間であったのだ。
     それなのに……。今やローマ市民権は特権階級の証となり、同じだけの軍隊を、出血を、義務を求めるにも関わらず権利は同等ではなくなっていた。
     ガリア人の虐殺、他国への内政干渉、自国民の暗殺、そしてローマ人による既得権益の死守。この蛮行に最も心を痛めたのは、他でもない。200年間もの間ローマと肩を並べ共に戦ってきたイタリアの都市国家群であった。彼らはついにローマ連合解体へ向けて梶を切った。いい加減にしろよローマ人、どこまで堕ちれば満足なんだ。我々のいないローマ連合など、味の薄いワイン程度の価値しかない! 思い知るがいい、傲慢なる者どもよ!
     後に同盟市戦争と呼ばれる、イタリア半島で繰り広げられた実質上の内乱はこうして始まった。
     この戦争が長引けば長引くほどローマの覇権は不安定となり、近隣諸国は独立国へと返り咲くことができるだろう。この機に乗じて暴君ローマの鎖から解き放たれるのだ! 自由と正義と平等は何よりも貴い! 俺たちにつづけ地中海諸国! 勝って乾杯ワインといこうじゃないか! 
     次回『ユリウス法、成立』――私もあなたもローマ人

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