ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.65
  • (102)
  • (194)
  • (287)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 1793
感想 : 125
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181578

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読了。
    スッラ体制の崩壊と、ポンペイウスの一時代。しかしそれは続くカエサルへの準備であった。

  • ポンペイウスが登場して、ここからが一番知られているローマ帝国。

  • まさに混迷の時代だった。面白いと思ったのは、どの登場人物もその時の最善と思われる、あがらえない行動を取っているのにもかかわらず、混迷となっている点。現代から振り返れば、あの時にこうしていれば、と考えるのは簡単だが、そうはいかなかった何かがあるに違いない。それは時代の流れ、その人の癖や考え方、ローマの人々の想い、様々なんだろうと思う。
    混迷の時だから、カエサルの出てくる前哨戦的なものだと勝手に思ってしまっていたが、やはり歴史である以上さらっと流せるところはないのだなぁと思う。なぜカエサルか、カエサルが出て来られた理由が次から明らかになるのだろうか。
    楽しみだ。

  • #2905ー200

  • 全巻から引き続き、まだまだ混乱の極みにあるローマにおいて、混乱を収めるために「ローマ人によるローマの武力制圧」を初めて行なったのが、この巻の主役の一人であるスッラ。

    結果的に対抗勢力の多くを虐殺することになり、元老院主導による共和制ローマの体制を目指すことになるのだが、その思惑は皮肉にも親スッラ派によって徐々に破綻し、崩壊していく。この巻だけでも、スッラが理想として目指した体制がどんどん壊れていくのが分かる。

    元老院体制というシステムそのものが、当時の歴史と、ローマに求められる機能とに合致していなかったと言えばそこまでだが、多くの同胞を犠牲にしてまで成し遂げようとした体制が、こうも脆くも崩れていくのかと思うと、2000年以上前の出来事とはいえ儚さを感じざるを得ない。
    しかし、この時点で反スッラ派であったユリウス・カエサルがもし殺されていたら、歴史はどうなっていたか。ローマはこれほどまでに長く、魅力的な国家として世界史上の立場を得ることはなかったのではないだろうか。

    この巻で、この先も活躍する人材の一人であるポンペイウスが初登場。生粋の武人という感じで、戦いによって成立し、自らを拡張していった時代には必ず登場することになるタイプの一人。この先、どのように活躍するのかが楽しみ。

  • 他のローマ関係の本で、スッラとマリウスの関係についてはサラッとしか書かれてなかったので
    ここを知れたのは嬉しかった。
    特にここは色んな人物が出てきて混乱するのだけど、まとめつつこの次の世代を大きく影響するものだから理解しといて損はなし。
    世界史で、ローマといえばカエサル、ポンペイウス、クラッススの三頭政治。
    ポンペイウスに関しては世界史でやった程度じゃ知れなかったこともじっくり扱ってて面白い。
    そして最後の一文、
    次回への繋げ方が素晴らしい。

  • ハンニバル・スキピオ・グラックス兄弟のように私の乙女心をくすぐる人物はあらわれませんでしたが、それなりに味のあるキャラクター続出です。

    人格者で人気のあったマリウス。もう隠居かなと思いきや、怨念のかたまりと化した70歳の老将は殺戮行為、復讐の血祭りをなしとげます。

    マリウスの自然死の後キンナの独裁。しかし正規軍としてスッラに向かうも、軍団総司令官の経験ない彼は暴動一歩手前の兵士を統率しようとして事故死。

    スッラはローマ正規軍を破り、反対派を残酷に一掃。このまま彼の独裁かと思ったらあっさり隠居。58歳で23歳の女性と再婚、クーマの別荘で釣りや散策などで余生を楽しみます。

    ローマの公人として初めてカスピ海に達したルクルス。兵士達との心の交流がうまくいかなかった。でも政界から離れた彼は芸術や豪華な美食を楽しむ人となります。

    ポンペイウス。セントリウス戦役、海賊一掃、オリエント制圧完成。

    スパルタクスの乱のスパルタクスはこの巻の中で一番かっこいい人みたいな気がします。

    狡猾な王としてたびたび登場するミトリダテス六世。最後に彼側のローマに対する言い分も面白いです。彼なりに正義感があったのでしょう。

    このようにたくさんの魅力的な人物が登場しますが、塩野女史は「いえいえ。こんなもので感心していてはいけませんよ。」と仰っているような感じです。

    次から6冊。わくわくします。

  • 前巻から続く、ローマの混迷の様子。
    元老院体制を強化、堅持するために独裁的権力を振るったスッラ。スッラが小アジアに出征中にローマではマリウス、キンナが反旗を翻し、内乱が勃発。
    その内乱に勝利したスッラは、元老院の権限を強化した後、自身も権力を手放す。
    しかし、スッラの死後、ポンペイウスによって、元老院体制はさらに存続が危ぶまれる状態に。
    海賊を倒し、小アジアを完全に平定したポンペイウスは、その戦争の終結に必要な権力の独占を求めたため、共和制の枠を壊してしまう。

  • 護民官グラックス兄弟の改革とスッラ体制。カエサル登場前のローマ内政の混乱を描く2巻。

  • タイトルにあるように、大国となったローマの政治体制、元老院指導の共和制にほころびが出始めます。それを懸命に修復しようと努めたのがスッラでした。彼の生きている間は何とか体制を維持できたものの、彼の死後崩れ出します。地中海沿岸地方の様々な同盟国の思惑が入り乱れる中、ポントス王国のミトリダテス6世との戦役や国内における奴隷の反乱、海賊の襲撃などの諸問題に活躍したのが、絶対指揮権を持ったポンペイウスでした。
    ローマに執拗に抵抗し最後に自死したミトリダテスの手紙には、ローマ人が非道な行為で帝国を築き上げたと非難しています。キケロの言葉にはローマが果てしない戦争や内紛からこの地方に恒久的な平和をもたらしたので、犠牲は必要経費だとあります。歴史を見る視点の違いなのでしょうが、これらのことは、絶えず繰り返され現代に続いている事柄だということに気づきます。
    そして「危機にあっては、既成のものと新しい物とが交ざり合って一つになり、偉大な個人の内において頂点に達する。これら偉人たちの存在は、世界史の謎である。」という文章による偉大な人物が次の巻で登場することになるので楽しみです。

全125件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×