ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181585

感想・レビュー・書評

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  • 作者は、ガリア戦記のところで考えを述べているが、私に何を伝えようとしているのか、カエサルについては、このシリーズの一つの中心となるものなので、よく考えてみたい。

    〇近現代のローマ字の研究者の中では評価の高い、ジェローム・カルコピーノ著の「カエサル伝」を選んで貨した。
    〇人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。
    〇ガイウス・ユリウス・カエサル
    〇幼時に母の愛情に恵まれて育てば、人が自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚も会得する。そして、過去に捕らわれずに未来に眼を向ける積極性も、知らず知らずのうちに身につけてくる。
    〇立派な男までが羨望感ずるのは、カエサルが、女たちの誰一人からも恨まれなかった、という一事ではないか。第一に、愛する女を豪華な贈り物攻めにしたのはカエサルの方である。第二に、カエサルは愛人の存在を誰にも隠さなかった。彼の愛人は公然の秘密だった。第三は、史実によるかぎり、どうやらカエサルは、次々とモノにした女達の誰一人とも、決定的には切らなかった。

  • 前半はカエサルを知るにあたって今までの復習なので、「読んでみたいけど40冊はちょっと…」というかたはここから読んでもいいかもしれません。

    カエサルについては生まれた環境、子供時代から39歳までが書かれています。
    「カティリーナの陰謀」があったことを記録しておきます。

    今までたくさんの英雄を見てきて、特に彼に惹かれることはありませんでした。しいてあげれば、スッラに「キンナの娘と離婚せよ」と言われて拒否したところぐらいでしょうか。

    特別目だった活躍したこともなく、よく生き残ったなと感心するなどのエピソードは多いですが、女たらしで借金まみれ。

    塩野女史が当時生きていたら彼の愛人になるんだろうなと思いました。私はなりません。高価なプレゼントに興味ないし、ヤキモチ焼きだから無理。

    でもこれから読み進めていくうちに、どんどん惚れてしまうのでしょうか?

  • これまでの巻でカエサルは登場していたものの、彼を中心として書いたものではないので、この巻では時計の螺子を巻き戻すように、スッラの活躍した時代の事などの歴史的事実が再度書かれています。著者も重複していることは承知ですが、それはカエサルが37歳にしてようやく起ちはじめたからです。それ以前の彼の出自や青年時代の期間の方が、年月にすると長いからなのです。同時代には若き凱旋将軍として大衆に人気があったポンペイウス、小カトーやキケロなど名だたるこの時代の権威者たちを巧みに退け、頂点に近づいていきます。首が回らないほどの借金があり、やたら女にもてたが恨まれることがなかった、というカエサルの人柄。カティリーナの陰謀を弁論する場面の演説は、著者が長いがと理りながらも何故引用したのかがわかります。

  • カエサルが「起ち始める」までが書かれた第8巻。前巻と年代的に重なる部分があるが楽しく読めた。この男を中心に世界が回っていくんだという期待に胸を踊らされるばかり。何人もの人妻を寝とり、借金を重ねても苦にしないとはなるほど大した男である。そのハッキリとした態度、ブレない軸を持った才能あふれるカエサルに魅了される人が多いのも本書を読んで納得した。その一方でキケロにも魅力を感じた。カエサルが主人公であるため、キケロに対する印象は悪いかもしれないが、戦争とは違う実力で地位を勝ち取ったこの男にも僕は賞賛を与えたい。

  • ハンニバルやスキピオが去り、ユリウス・カエサルが登場してきた。

  • ■評価
    ★★★☆☆

    ■感想
    ◯カエサルについて知りたいと思って手に取った本。コテンラジオで深井さんが面白くしまとめてくれたが、原文を見たいと思って手に取ることに。

    ◯この巻では、カエサルはまだ何者にもなっていない借金王でハゲでおしゃれに気を使った人でしかない。それでも人間的魅力と無鉄砲さで、いつ死ぬかわからなくてヒヤヒヤするけど魅力に溢れている。

    ◯カエサルが何故モテたのか、それだけでなく、何故女に恨まれなかったのかの考察がめちゃくちゃ面白い。きざったらしい立ち振舞もかっこよかったのかなと感じた。

  •  さて第4巻、文庫版の8冊目にしていよいよユリウス・カエサルの登場だ。ジュリアス・シーザーといったほうがなじみ深いが、ここは紀元前のローマ、やはりカエサルでなくてはならない。そのカエサルの物語は2巻にわたり文庫版でも6冊もある。その前半部はルビコン川を渡るまでのガリア戦役を描く。いやあ強い。ローマの物語でありながらその舞台はフランスを中心とした西ヨーロッパ主要部で、ゲルマンとの戦いではライン川の東までも及び、取って返してイギリス上陸すらしているのだから、すごい行動範囲。まさにヨーロッパの歴史がここから始まったといっても過言ではない。ヨーロッパの父だな。そしてあまりに強く民衆の人気も高いがゆえに、元老院からは憎まれて失脚を計られるというのも、どこかできいた話だ。ところで、大半を占める戦争描写も胸がすくものだが、前半部の最後におかれた腹心のラビエヌスが離脱してポンペイウス側に奔るシーンがとても印象的だ。古代ローマでも義理と人情では義理が重いんだ。

  • ついにユリウス・カエサルの話が始まると思ったら、前半ほとんど前巻の内容とかぶる。
    カエサルを幼年期から追うため仕方ないが、逆に言うとカエサルを知りたければこの間から始めても充分な始まりではあると思いました。

  • 遂にカエサルの登場。
    前半はこれまでの復習。後半にカエサルが出てくるが、華々しい活躍というわけではない。地味に、だけど着実に名誉と権力を手にしていく。だが、所々に一筋縄ではいかない、大物っぷりが垣間見られるエピソードが出てくる。
    カエサル、次は大活躍、大躍進なのかな。楽しみだ。

  • 10巻に記載

  • やっと文庫版でカエサルが主人公となりました。著者の本を読んで毎回思うことは、歴史の教科書もこれくらい面白ければなあ・・ということですね。歴史の教科書がこれくらい面白かったら、他の授業中に歴史の教科書を盗み読んでいたことでしょう。
    本書では前巻のスッラとマリウスに関わる物語も、カエサルから観た視点としておさらいされているので親切である。またカエサル像についても、著者はカエサル自身の発言、他の歴史学者等の解釈を紹介した上で、自分の解釈を述べているので良心的でもある。本巻はカエサルが頭角を現す前の部分がメインになっているため、これまで聞いたことのない大借金や女たらしなどの逸話が満載されていて面白い。本書を通して「キケロ」というととっつきにくいイメージが生まれるのに対して、「カエサル」に対しては親近感が湧いてくる本である。

  • これまでは時系列でローマ史が紹介されてきたが、この巻からしばらくはユリウス・カエサルという個人にスポットを当てて、カエサルの視点から見たローマの物語が語られるようだ。本書では彼の幼年期、少年期、青年期といった章立てで構成されており、紀元前61年に39歳でスペイン南部で属州総督を務めるところまでが書かれている。

  • GSRアウトプット宿題

    1回目
    時間:15分
    目的:カエサルはどんな人か
    概要:カエサル、ユリウス、父は法務官、母、アトリエの語源、アトリウム、アウトリア、カティリーヌ、女という女にもてた、公的にはストイックだが私的にはエピキュリアン、愛人の存在を隠さなかった、完全には切らなかった、クラッススに操られていたという人も、ポンペイウス、ギリシャ、元老院、紀元前100年、借金まみれ、逃避行、22歳の青年が拒否した、スッラ、父母もわからない生まれ、厳しい、アレキサンドリア、激怒した、キケロ、非難、39歳になっていた、マリウス、30歳の存在を知らないはずはない、おしゃれ、楕円形をずらして半分に折る、全体にヘリが出るように、きちんと折っておかないとだらしなくなる、美男でも金持ちでもない、小さい借金は借金だが、ノート、絶対執政官(?)、家庭教師、シリア人、ギリシャ語も話す、数学、論理学、アフリカ、小カトー
    学び:カエサルはとても魅力的な人だったらしい

  • カエサルの生い立ちと人となりが中心で、淡々と書かれている。

    カエサルの活動については次巻以降に詳しく書かれているのだろう。本巻でも名前だけちょっと出てくるが、クレオパトラとのエピソードも次巻以降に出てくると思われる。

  • 読了。
    30代後半までのカエサル記。
    当時のポンペイウスがあまりに派手だということもあるが、大きな成果をあげずに30代後半まできたカエサル。歴史はこれから彼の存在が大きくなることを示唆しているが、借金富豪であること、女たらしであることはよくわかったが、彼のローマ観がどのようなところにあるのかはまだ見えない。うっすらと、ポピュリストであるような気配が当時からしてはいるが。

    カエサルは大器晩成というが、要所要所で仕掛けていることもよくわかる。芯もある。
    キケロとの論争もよかった。カエサルは負けてばかりだが、彼の一貫性はそこにあるようだ。

    続きも楽しみです!

  • ようやく、ローマ史上の最重要人物の一人であるカエサル登場。この巻では幼年期から30歳ぐらいまでの生い立ちが描かれる。

    全巻の中盤、スッラ体制における反スッラ派の粛清が既に述べられており、カエサルは身を守るためにローマから逃げていたことも書かれていた。この巻では、そのあたりのことがもう少し詳しく触れられている。スッラが死ぬまでローマに帰れず、母親や妻、子どもにも会えなかったという、なかなか壮絶な20代だったらしい。

    この巻ではまだ目立った働きがなく、借金だけバカみたいに膨らませているのが、ちょっと笑える。無鉄砲な人ではないようだが、目的を達するための負債は必要経費と考えていたのだろうか。それにしても「11万人以上の兵士を一年間、雇えるぐらいの金額だった」らしいので、金額の莫大さは常軌を逸している気もする。

    終盤、罪人に対する弁論の演説が紹介されているが、現代にも通ずるところがいくつもあるので、ちょっと抜粋。カエサルの論理の組み立て方や、主張をどう表現して訴えるかという知性が垣間見える。どこかの元首相にも聞かせたいぐらいである。

    「理性に重きを置けば、頭脳が主人になる。感情が支配すると決定を下すのは感性であり、理性は無くなる」
    「普通の人にとっての怒りっぽさは、権力者にとっては傲慢になり、残虐になる」
    「民衆というのは常に、誰かに、機会に、時代に、運命に翻弄されるものである」

  • 大器晩成型のカエサルの活躍はまだ書かれてなく、
    この巻では少年期〜青年期のカエサルが登場する。
    ポンペイウスの輝かしい功績が並ぶ中、
    スッラ派の怒りをかって逃げ回るカエサルや
    女性にモテたカエサルを知れて面白い。
    ただ、前巻の内容が出てくるので
    復習のような感じ

  • 私は歴史が、とても好きなわけではないけど、この巻は飽きずに読めました。また、続きも読んでみたいと思いました。

  • ついにカエサルを主とするストーリーがスタート。名前は知っているけれど、詳しくはよく知らないので、これから楽しみ。

  • ユリウス・カエサル=ジュリアス・シーザーの、まだ歴史に名を残す前の前半生の一冊。
    遅咲きのカエサルは、女たらしの借金王として、当時のローマではそこそこ有名ではあったものの、歴史に名を残すほどの出世はしていない。
    けれども彼の人たらしたる魅力が、突出した才能はなくても、着実に自分の立ち位置を上に上に押し上げていったのだ。

    当時の圧倒的な権力者スッラに刃向かい(離婚して、自分の認める娘と結婚しろというのを断った)、命の危険を感じてローマを脱出する羽目になっても、カエサルは小さい男にはならなかった。
    常に人妻と浮名を流し、天文学的な借金を恥じることもなかった。

    それは、浮気を隠さないから。
    秘密にしないから弱点にはならない。
    借金も大きすぎれば、踏み倒されないように債権者がかばってくれる。

    カエサルは、公共事業を行うために、借金してまで自費で行い(官費を待っていると時間がかかるから)、高額な宝石などを惜しげもなく愛人にプレゼントしながらも、自分の生活のためには無駄なお金を使わず質素な生活をつづけていた。
    そのあたりが人たらしのたり得るところなのだろう。

    そして、感情で政治を行わず、論理で行おうとしていた。
    ”どんなに悪い事例とされていることでも、それがはじめられたそもそもの動機は、善意によったものであった。だが、権力が、未熟で公正心に欠く人の手中に帰した場合には、善き動機も悪い結果につながるようになる。”

    このままで行けば共和政を進めることになるはずなんだけど、いつ、どこで、独裁に舵を切ったのか。
    魅力的な人物であるだけに、残念な気がする。

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