ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181585

感想・レビュー・書評

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  • 作者は、ガリア戦記のところで考えを述べているが、私に何を伝えようとしているのか、カエサルについては、このシリーズの一つの中心となるものなので、よく考えてみたい。

    〇近現代のローマ字の研究者の中では評価の高い、ジェローム・カルコピーノ著の「カエサル伝」を選んで貨した。
    〇人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。
    〇ガイウス・ユリウス・カエサル
    〇幼時に母の愛情に恵まれて育てば、人が自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚も会得する。そして、過去に捕らわれずに未来に眼を向ける積極性も、知らず知らずのうちに身につけてくる。
    〇立派な男までが羨望感ずるのは、カエサルが、女たちの誰一人からも恨まれなかった、という一事ではないか。第一に、愛する女を豪華な贈り物攻めにしたのはカエサルの方である。第二に、カエサルは愛人の存在を誰にも隠さなかった。彼の愛人は公然の秘密だった。第三は、史実によるかぎり、どうやらカエサルは、次々とモノにした女達の誰一人とも、決定的には切らなかった。

  •  さて第4巻、文庫版の8冊目にしていよいよユリウス・カエサルの登場だ。ジュリアス・シーザーといったほうがなじみ深いが、ここは紀元前のローマ、やはりカエサルでなくてはならない。そのカエサルの物語は2巻にわたり文庫版でも6冊もある。その前半部はルビコン川を渡るまでのガリア戦役を描く。いやあ強い。ローマの物語でありながらその舞台はフランスを中心とした西ヨーロッパ主要部で、ゲルマンとの戦いではライン川の東までも及び、取って返してイギリス上陸すらしているのだから、すごい行動範囲。まさにヨーロッパの歴史がここから始まったといっても過言ではない。ヨーロッパの父だな。そしてあまりに強く民衆の人気も高いがゆえに、元老院からは憎まれて失脚を計られるというのも、どこかできいた話だ。ところで、大半を占める戦争描写も胸がすくものだが、前半部の最後におかれた腹心のラビエヌスが離脱してポンペイウス側に奔るシーンがとても印象的だ。古代ローマでも義理と人情では義理が重いんだ。

  • ついにユリウス・カエサルの話が始まると思ったら、前半ほとんど前巻の内容とかぶる。
    カエサルを幼年期から追うため仕方ないが、逆に言うとカエサルを知りたければこの間から始めても充分な始まりではあると思いました。

  • 遂にカエサルの登場。
    前半はこれまでの復習。後半にカエサルが出てくるが、華々しい活躍というわけではない。地味に、だけど着実に名誉と権力を手にしていく。だが、所々に一筋縄ではいかない、大物っぷりが垣間見られるエピソードが出てくる。
    カエサル、次は大活躍、大躍進なのかな。楽しみだ。

  • ようやく、ローマ史上の最重要人物の一人であるカエサル登場。この巻では幼年期から30歳ぐらいまでの生い立ちが描かれる。

    全巻の中盤、スッラ体制における反スッラ派の粛清が既に述べられており、カエサルは身を守るためにローマから逃げていたことも書かれていた。この巻では、そのあたりのことがもう少し詳しく触れられている。スッラが死ぬまでローマに帰れず、母親や妻、子どもにも会えなかったという、なかなか壮絶な20代だったらしい。

    この巻ではまだ目立った働きがなく、借金だけバカみたいに膨らませているのが、ちょっと笑える。無鉄砲な人ではないようだが、目的を達するための負債は必要経費と考えていたのだろうか。それにしても「11万人以上の兵士を一年間、雇えるぐらいの金額だった」らしいので、金額の莫大さは常軌を逸している気もする。

    終盤、罪人に対する弁論の演説が紹介されているが、現代にも通ずるところがいくつもあるので、ちょっと抜粋。カエサルの論理の組み立て方や、主張をどう表現して訴えるかという知性が垣間見える。どこかの元首相にも聞かせたいぐらいである。

    「理性に重きを置けば、頭脳が主人になる。感情が支配すると決定を下すのは感性であり、理性は無くなる」
    「普通の人にとっての怒りっぽさは、権力者にとっては傲慢になり、残虐になる」
    「民衆というのは常に、誰かに、機会に、時代に、運命に翻弄されるものである」

  • ついにカエサルを主とするストーリーがスタート。名前は知っているけれど、詳しくはよく知らないので、これから楽しみ。

  • ユリウス・カエサル=ジュリアス・シーザーの、まだ歴史に名を残す前の前半生の一冊。
    遅咲きのカエサルは、女たらしの借金王として、当時のローマではそこそこ有名ではあったものの、歴史に名を残すほどの出世はしていない。
    けれども彼の人たらしたる魅力が、突出した才能はなくても、着実に自分の立ち位置を上に上に押し上げていったのだ。

    当時の圧倒的な権力者スッラに刃向かい(離婚して、自分の認める娘と結婚しろというのを断った)、命の危険を感じてローマを脱出する羽目になっても、カエサルは小さい男にはならなかった。
    常に人妻と浮名を流し、天文学的な借金を恥じることもなかった。

    それは、浮気を隠さないから。
    秘密にしないから弱点にはならない。
    借金も大きすぎれば、踏み倒されないように債権者がかばってくれる。

    カエサルは、公共事業を行うために、借金してまで自費で行い(官費を待っていると時間がかかるから)、高額な宝石などを惜しげもなく愛人にプレゼントしながらも、自分の生活のためには無駄なお金を使わず質素な生活をつづけていた。
    そのあたりが人たらしのたり得るところなのだろう。

    そして、感情で政治を行わず、論理で行おうとしていた。
    ”どんなに悪い事例とされていることでも、それがはじめられたそもそもの動機は、善意によったものであった。だが、権力が、未熟で公正心に欠く人の手中に帰した場合には、善き動機も悪い結果につながるようになる。”

    このままで行けば共和政を進めることになるはずなんだけど、いつ、どこで、独裁に舵を切ったのか。
    魅力的な人物であるだけに、残念な気がする。

  • ユリウス・カエサルの誕生から39歳までの物語。カエサルって出世が遅い大器晩成タイプだったのか。本格的に活躍するのは次巻からのようだ。
    カティリーナの事件で、元老院に理性的な判断を求めるカエサルの演説は良かった。若いころにマリウスの復讐劇や、スッラの民衆派抹殺などを経験しているので、血生臭い政争や親類縁者まで罰するような厳しいやり方に反感を持っていたのかな、と思う。コルネリアと離縁しなかったのもそういう理由があるのかも。カエサルもコルネリアもまだ若く、民衆派の血縁というだけで何も悪いことはしていなかったのだから、自分やコルネリアが巻き込まれることに納得いかなかったのかもしれない。
    女性にモテてしかも恨まれなかったとか、借金のカタに何も取られずに借金をし続けたという逸話もすごい。やっぱり魅力的な人だったのかな~とは思う。

  •  名前だけは誰でも知ってるけど、具体的に何をやったかはよく分からないカエサル( ´ ▽ ` )ノ
     ここから6冊?ずっと彼の話が続くのか(・o・)
     まあ、勉強させてもらおう( ´ ▽ ` )ノ

    2018/04/09

  • カエサル(シーザー)の青年時代までを描く。

    39歳になるまで、まださしたる業績を挙げていない。

    大借金王であり、非常に女性にモテたので有名だった、ということは初めて知りました。

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