ローマ人の物語 (11) ユリウス・カエサル ルビコン以後(上) (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101181615

感想・レビュー・書評

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  • カエサルとポンペイウスの雌雄を決する11巻、「ユリウスカエサル ルビコン以後」

    とくにファルサルスの会戦は、アレキサンダーのイッソスの会戦、ハンニバルのカンネの会戦、スキピオのザマの会戦を引き合いに両者の戦術を説明してあって、最高に面白かった!
    次巻を即、読み始めよう。

  • ガリア戦を終え、元老院との対決から、ポンペイウスとの戦いとその勝利。
    クレオパトラ登場。

    「ルビコン川を渡る」「賽は投げられた」というのが、イタリアから外に出るのではなく、その逆だというのは初めて知った。カエサルについては知らないことばかりだな。

    もうひとりの主要人物キケロについては、名前だけは聞いたことがあったけど、カエサルと同時代の人物で、その言動はこうだったとは知らなかった。

    いや勉強になりますね。
    しかも面白い。

  • 法の下での軍の解散と帰国を命ずる元老院の最終勧告を無視して、ルビコン川を渡ったカエサル軍。現体制打倒を目論むカエサルと元老院側のポンペイウスの対決が始まります。カエサルの動向を知りポンペイウス派は首都ローマから逃げ出します。
    内線状態になってもカエサルは「自らの考えに忠実に生きる」ことを他の人にも等しく課すことを願い、会戦の回避や捕虜の釈放を実行します。作者もこのことについては、人権宣言にも等しい、と特筆していますが、確かに潔くその人間性に魅了されます。さらにカエサルは対決の最中にも政治的な課題に着手、数々の政策を実行し自らの立場も法律に則った執政官に就任。正統な地位で武力を行使します。
    舞台はイタリア半島からアドリア海、ギリシアへ、兵力や物資でも優勢なポンペイウス軍との闘いは激闘を繰り返し、時には敗北も喫しながらファルサルスの決戦へ。紀元前48年8月8日でした。この時も巧みな戦術と人心の掌握にかけては誰にもひけをとらないカエサルは部下の士気を高め、ポンペイウス軍を敗走に追いやったのでした。エジプトを頼って逃げたポンペイウスは、カエサルの追撃を待つまでもなくアレクサンドリアの港で殺害されます。エジプト王の側近たちの裏切りにあったのでした。ポンペイウスの最後は哀れの一言です。
    こうしてカエサルはエジプト王朝の内紛の仲裁役になり、かのクレオパトラが登場します。かのクレオパトラの鼻が低かったら…の下りの作者なりの解釈もあり、2人の関係性にも触れていてなるほど!と興味深く読みました。様々な会戦場面の戦術は図入りですからこの辺り興味のある方にはお勧めの巻。

  • ユリウス・カエサルがルビンコン川を超え、ローマに迫ったとき、政治を牛耳っていたポンペイウスは体制を整えるためにギリシアに下がる。 でも、それは敗北であった。

  •  2巻6冊におよんだカエサルの物語も終わってしまった。あらためて彼の偉大さには脱帽だ。いかに何も知らなかったに驚く。これ世界史で習ったのだろうか。シェークスピアはまともに読んでないし。まさにスーパースター。その末路のあっけなさも含めてだ。しかし、あまりにも本人が偉大なので、暗殺者たちはもちろんまわりでいろいろ画策する対立者の卑小さが目立ちすぎる。キケロなんてこのていどだったのか。アントニウスはもちろんのことクレオパトラすら形無しだ。ただ、そういうときでも人間性というのは偽れないもので、13冊目にあるマティウスのキケロへの返書には感銘を受けた。小人物もいれば大人物もいる。これはいつの時代でもどこの世界でも同じなのだ。というわけで、女たらしでありながら女性に愛されたことも含めてカエサル賛歌に終始したこの2巻、まあ著者の主観もかなりはいっている気もするが、すこぶるおもしろく読めるということは保証する。

  • ポンペイウス!
    最後が怒涛の展開。ポンペイウスの死、クレオパトラの登場。
    それにしてもカエサルはよく働く。エジプトに滞在した2ヶ月もただクレオパトラと遊んでいたわけでなく、内乱記を書き上げている。カエサル52〜53歳。古代ローマでも働き盛り?いや、違うな。でも、止まったら死んじゃうみたいな働き方をする人はいつの時代にもいて、そういう人が歴史を作っていくのだろうな。

  • ユリウス・カエサル壮年期。ローマの内乱、カエサルとポンペイウスの戦いがこの巻で終わる。

    かつてはカエサルとほぼ同じ立場、同じ権力でローマを統治したにも関わらず、反カエサル派に祭り上げられてカエサルに刃を向け、その後は敗走を続けて最後は逃げ込んだアレキサンドリアで暗殺されたポンペイウス。この巻を読んでいると、彼の不運と哀れさとが際立つ。有能な武将であったポンペイウスも、カエサルという眩しすぎる太陽の前では影になり、消えていくしかなかった、ということか。

    ローマに「軍」を持ち込み、戦場としてしまったカエサルが、ポンペイウス討伐以降にどう振舞っていくのか。次の巻は統治の話になっていくのだろう。

  • カエサル、ポンペイウス、クレオパトラと私でも聞いたことのある方々が出てくるので、どんどん読み進めることが出来ました。

  • カエサルとポンペイウス、担がれてしまったいきがかり上、気が乗らないまま戦ったのが伝わってきた。クレオパトラはいつ出てくるのかと思ったら、ようやく巻末で登場。出会いはカエサル、かなり晩年だったのね。今までのフラットなカエサルを見ていると、クレオパトラの美貌に騙されてっていうのは盛られた話だなと思う。次巻が楽しみ。

  • ついにカエサルはルビコン川を渡る。
    ルビコン川、つまり国境を、軍を率いて越えるということは、ローマに対する反逆行為であり、ガリアでの凱旋将軍として迎えられるはずが、反逆者として鎮圧の対象になるということ。
    それでもカエサルがルビコン川を渡ったのは、「俺を正当に評価しろ」ということではなく、元老院政治は今の世の中にはもうそぐわないので、政治機構の改革をしなければだめだという思いから。

    その報を聞いて元老院の人びとは我が身可愛さからローマを脱出、カエサルを迎え撃つ準備のためポンペイウスも領地に向かいローマを後にする。
    なので、ふたを開ければがら空きのローマにカエサルは帰ってきたことになる。
    この辺りの危機管理がもうすでに「元老院、ダメだな」と思わさる。
    カエサルは何度もポンペイウスに「会って話をしよう。二人で政治を立て直そう」と手紙を書くが、それは叶わない。
    ローマの領土でローマ人同士が戦うということは、どちらが勝ってもいいことがないとカエサルは考えるが、これはなかなかすごいこと。
    勝海舟の必死の説得にもかかわらず、薩長は幕府を挑発し続け、結局戊辰戦争という内戦が起きてしまった日本の、2000年前の出来事なのだから。

    人たらしカエサルは、部下の人心掌握にも長けていたから、圧倒的に少ない人数、連戦続きの疲労、軍資金の枯渇をすらバネにして戦い、勝利をおさめるのだけど、捕虜ひとりひとりの意向を確認し、カエサルにつきたいという者は軍に組み入れ、ポンペイウスの元に帰りたいという者は武器を取り上げたうえで解放する!
    これもすごい。

    自分は自分の信念に基づいて行動しているのだから、他者が他者の信念に基づいて行動することを尊重する。
    これって民主主義の根幹じゃないですか。
    っていうか、民主主義って概念ができたのは、これから何百年あとなのか?
    結果、ポンペイウスの元に返した人たちに暗殺されるのですが、それはまだ先の話。

    政治改革のためにこれほどの行動をすることも、驚異。
    だって中国は、何回国が変わっても、何度支配者(民族)が変わっても、政治機構、行政システムは変わらなかったもんね、共産党ができるまで。

    私が今まで思っていた、独裁者シーザーってのとは全然違ったカエサルの思想。
    独裁者になりたかったのではなく、一緒にやってくれる人がいなかったんだ。
    ひとりだけ見てる世界が違ったんだろうなあ、きっと。

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