ローマ人の物語 (15) パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181653

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  • 前巻に続いて、アウグストゥスによるローマ国家の統治機構改革の内容に触れられている。

    今回取り上げられている事柄は、社会改革、経済改革と言っていいような分野での改革である。ローマ国家を拡大し防緯線の確立するための戦いと、権力闘争に伴う内乱によって、長期間、いわば戦時体制にあったローマは、アウグストゥスが権力を握ることにより、久しぶりに平時に戻る。アウグストゥスの改革は、ローマがグローバルな帝国になったことと、千時から平時に移ったことを受けた改革であった。

    軍制改革においては、外征から防衛線の維持へと目的が変わったことを受けた改革が行われる。適切な規模への軍縮とともに軍団の常備軍化が実行された。アウグストゥスの改革が本質的であったのは、常備軍化に伴い、兵士をローマ市民により構成される「軍団兵」の他に、ガリア人やゲルマン人で編成される「補助兵」(もとは属州や同盟国から臨時に参戦した軍団)も常備軍に加えたこと、兵士の退役年や給与を明確にし兵士の地位とライフプランを安定的にしたこと、ローマ帝国の防衛線に沿って、常設の駐屯地を定めたことなどが挙げられる。

    また、税制の面では、関税の改革や相続税の創設による国家財政の安定が図られている。関税の適用に当たっては高い税率を嗜好品に限ったことや、相続制の導入も段階的に進めるなど、アウグストゥスの現実的かつ戦略的な進め方はここでも発揮されている。ローマの税制がこの時期に整えられたことの効果は大きかったのではないかと思う。

    一方で、アウグストゥスのこれらの改革を支え、彼の右腕と左腕であったアグリッパとマエケナスが、それぞれ世を去る。

    この2人は、名門の出ではなく、権力の座に付くことに対する執着も見せずにアウグストゥスを支え続ける。

    アグリッパは、当初は軍事の才能を生かしてアントニウスとの権力闘争を勝ち抜く上で書くことのできない役割を果たしたが、その後の軍制改革を現場で指揮し、さらにはローマ市街の改造やインフラ整備まで、幅広い面で実務の能力を発揮している。

    一方のマエケナスはさらに極端であり、一切の公職にはつかず、アントニウスとの戦いにおいては秘密交渉役として敵側との妥結点を探るという難しい役割りをこなし続ける。その後も公職にはつかないまま、エジプトで買い上げた土地の経営などを通じて得た富を活用し、詩人や芸術家のパトロンとしてローマの文化を育て、広める役割を務め、またアウグストゥスの私的な相談役の役割を務める。

    歴史は偉大なリーダーによってのみつくられるのではなく、その背景にこういった腹心がいることが重要である。万能に近い才能を発揮したカエサルの後に続いたアウグストゥスの時代は、このような登場人物との存在が歴史を彩っているということが、非常に興味深かった。

  • 上巻に続いて、アウグストゥスが実施した改革の内容について
    この巻でわかる事はアウグストゥスは慎重に慎重を重ねて、
    改革を進めて行ったと言う事である。
    改革以外でわかった事は私生活においては、血筋を重視している事
    そのせいで最後になんか揉め事が起こりそうな感じがしてきた。
    と言うか、系図をみるとアグリッパの息子達から
    皇帝が出ていないはこれが原因なのか?

  • ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)

  • 内容 :
    「帝政」の名を口にせず、しかし着実に帝政をローマに浸透させていくアウグストゥス。
    彼の頭にあったのは、広大な版図に平和をもたらすためのリーダーシップの確立だった。
    市民や元老院からの支持を背景に、アウグストゥスは綱紀粛正や軍事力の再編成などに次次と取り組む。
    アグリッパ、マエケナスという腹心にも恵まれ、以後約200年もの間続く「パクス・ロマーナ」の枠組みが形作られていくのであった。

    著者 :
    1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
    「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
    著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。

  • アウグストゥスの本格的な帝政確立の話。様々な改革を実施し、帝政を確固たるものにする。
    友人とも言える協力者を亡くし、こうけいしゃもんだいあも抱え始める。

  • 前巻から引き続き、アウグストゥスによる帝国の「行政改革」が描かれる。
    少子化対策、軍事縮小策、税制改革、行政組織の改編・創設等々。
    地味だけどなかなか興味深い。

  • アウグストゥスの統治下でのパクス・ロマーナ。著者も書いていたが、実績としてはものすごいが、読み物としてはちょっと退屈かな

    P32
    ローマ人は法の創始者でありながら、次のような格言さえ遺しているのである。「公正を期してつくられるのが法律だが、そのあまりにも厳格な施行は不公正につながる」

  • アウグストゥスの改革
    ゲルマニア制圧
    アグリッパ、マエケナス、ドゥルーススの死

    平和の祭壇は見てみたい。

  • 広大なローマ帝国に平和で安定した状態をもたらそうとしたアウグストゥス。実行したことはローマ市民権所有者全体の強化。1.少子化対策。子を沢山持つ親への税制上の優遇。2.軍事再編成。侵略から防衛への転換。退職金制度の整備など兵士の労働条件の向上と確立。3.税制改革。財源確保のため当時としては全く新しい概念だった相続税の導入。驚くべきは表立った反対もなく、これらが施行されていったこと。カエサルと比べて保守的と評されるアウグストゥスだが、リーダーは強かだ。

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