ローマ人の物語 (16) パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181660

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズはどの巻も本当に面白い。

    アウグストゥスの晩年の話だが、次期皇帝のティベリウスのゲルマンに対する孤軍奮闘に感動した。

    また間を置いて「悪名高き皇帝たち」を読みたい。

  • 執着すると苦悩が深くなる。執着というか、執念、いや妄執とまで塩野さんは書いていたけれど、アウグストゥスの血縁へのこだわりに切なくなる16巻だった。
    未来から過去の出来事や選択に批判するのは簡単だけれど、それも含めて今があるわけだし、アウグストゥスの人生は17歳で背負った、カエサルの後継者という重圧に見事に答えたものだったことは間違いない。60年近く、カエサルの後継者として役割を全うし、カエサルのなしえなかった帝政を築いた人生。家族だけは思い通りにならなかったのだと思うと、本当に切なくなる。

  • 初代皇帝アウグストゥスの晩年、58歳から77歳まで。
    紀元0世紀時代、ローマによる平和の礎を築くために、彼は実質の後継者に孫のガイウスとルキウスを当てるよう仕組みを作っていきます。凡庸だったというこの孫たちでしたが、それぞれに外交で活躍する機会を与えます。しかし、この兄弟は任務を遂行中、相次いで傷病で亡くなります。そして実の娘ユリウスも行状の悪さから、幽閉しなければならない事態になります。
    血縁者に恵まれないアウグストゥスは、遂に公から退いていたテイベリウスを養子に迎えます。拡大した領土の防衛などその手腕が待ち望まれていたテイベリウスでした。テイベリウスはその後、アウグストゥスの死に際にも立ち会い、パクス・ロマーナを目標にした帝政への移行を確実に引き継ぎでいくのでした。
    個性の強いカエサル違い、歴史家からはあまりよく評価されていないようなアウグストゥスですが、創業者と比較される二代目というのは地味でいいのかもしれません。確実に政策を実行し、広大領土を平和に導き、安全な生活を国民にもたらした偉大な政治家と言えると思いました。
    政治とは「ある職業でもある技術でもなく、高度な緊張を要する生活」であるとする小林秀雄の引用文は、今の政治家さんたちの緩みっぱなしの態度に喝を入れたくなる気持ちになりました。

  • ゲルマニア制覇作戦の失敗はあったものの、帝国繁栄のための盤石の基盤を築いたアウグストゥスは77歳でこの世を去る。

    アウグストゥスは道徳や倫理にやかましかったようで、それを法律にして国民に強いようとしたのははた迷惑な話であるが、娘がまずそれを破って島流しになるとはなかなか皮肉な話である。

    彼を激怒させたという詩人オヴィディウスの「アルス・アマトリア」という作品が紹介されているが、これはおもしろそうだな。

    「第一巻と第二巻は、男たちに対して、いかに振る舞えば女をモノにできるかを教え、第三巻では、今度は女たちに向かって、どうやれば男をモノにできるかを説いた作品である。全巻とも、実に具体的に例証を示しながら書かれている。」(p79)

    2000年前にもハウツー本はあったわけか。

    そんな昔のものなんて役に立つ筈がないと思うけれども(ローマ帝国のはしっこではナザレの少年イエスがリアルで生きていた頃ですよ!)、「ハウトゥ物の古典は常に、人間性への深く鋭い洞察故のシニカルな機知とユーモアに満ちているものだが、オヴィディウスの『アルス・アマトリア』もこの種の作品の傑作だ」(p79)と作者は絶賛している。

    こういう本まできちんと読んでいるというのが、あいかわらず塩野七生先生のスゴイところだ。

    ひょっとして現代でも通用するのかも。
    と思ったら、なんと「恋愛指南」というタイトルで岩波文庫から出ていた!(驚)
    やるなあ岩波文庫。

  • アウグストス治世の晩年。完璧なる皇帝を演じるきったアウグストスも自身の子供孫には恵まれなかった。子や孫たちはあまりすぐれたアウグストスと比較するには一般的だったし、男女関係のスキャンダルでは大いに体面を傷つけられたことだろう。こうした側面があったからこそ人間らしいとも思う得るのだが。血縁には悩まされたもののティベリウスという後継者を得て穏やかにこの世を去る。共和制だか帝政だかわかならないままローマ帝国の礎を築き、パックスロマーナを成し遂げた功績はあまりに大きい。しかし再読して初めてカエサルとアウグストスの評価について人間的魅力の差は歴然である。ローマ史の大家エドゥコック教授の「しかしあの時期の世界は彼のような人物を必要としていた」というコメントに大いに賛同するところである。

  •  確固たる責任感と強烈で持続する意志により確実に創り上げた帝政を定着にもっていったアウグストゥス帝の統治後期の物語です。確実に高度成長期から安定成長期へ移行したローマをティベリウス帝にバトンタッチしたアウグストゥス帝の実績に対する塩野さんの評価は,この一文にまとめられていると思います。
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     カエサルが考え,その後を継いだアウグストゥスが巧妙に,嘘さえをもつきながら確立に努めた帝政とは,効率よく機能する世界国家の実現であったと,私ならば考える。
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  • カエサルからの後継指名を受けたオクタヴィアヌス。まずはライバルであるポンペイウスのこれ以上にない形で仕留め、地位を確立する。元老院からアウグストゥスの尊称を授与され、以降はこれを名乗るわけだが、ローマ伝統の元老院政治を復活させるような見せ方をして周囲の賛同を得ながら、実は(のちに言われる)帝政へと確実に移行していく。スッラやカエサルのように力があるわけでも、貴族の出でもないアウグストゥスの真骨頂である慎重さと細心の謀りごとを進める頭脳が発揮される。「軍事の天才」や今でいう「ブランディング=広報」の天才を参謀として得たのは幸運。その後、ガリア平定の完成や、オリエントの安定にも尽力、国父の尊称を得るまでになる。こんな英雄でも、自分の血縁者に跡を継がせたいと思うところが玉に瑕。後々の内乱の元となったり、妻や親戚を島流にする羽目となる。いわゆるパックス・ロマーナを完成させて亡くなるわけだが、この平和はいつまで、どのように続くのか。この後がますます楽しみ。

  • アウグストゥスの死去まで。
    家族問題で苦労した人のようだ。

  • 面白かった!
    ・娘や孫娘の不倫、孫の暴虐など家庭内では苦労の耐えなかったアウグストゥス

    ・養子ティベリウスと徐々に関係が改善していくのもエモい

    ・防衛線をライン川からエルベ川に変えようとゲルマン侵攻したものの、反乱が起こって撤退。戦後処理の難しさ。官僚あがりの人に任せたのがだめだったか

    76歳で亡くなったアウグストゥス
    最後のエピソード、船上で休憩している皇帝を見つけた庶民が感謝の大合唱を述べる

  • 初代皇帝アウグストゥスの統治後期(紀元前5年~紀元後14年)を扱う。
    家族の不祥事に悩んだり、ゲルマニアの制覇に失敗しながらも、カエサル以来の悲願だった帝政への移行を実現したアウグストゥスは、ティベリウスを後継者に選び紀元後14年にこの世を去る。

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