ローマ人の物語 (17) 悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181677

感想・レビュー・書評

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  • ティベリウスの孤独。アウグストゥスも孤独だったなぁと思うが、ティベリウスもまた、孤独だったと思う。皇帝という誰にも担えない役職に伴うものが孤独なのかな。
    そして、ただでさえ孤独なのに、家族の問題。アグリッピーナの激しさと思い込みの強さにはちょっと引いてしまうほど。気持ちは分からぬわけではないが、そこまで?と思ってしまう。
    同時代の人には全く理解されない言動にも同情してしまう。
    アウグストゥスといいティベリウスといい、読んでいるとしんどくなる程の周囲からの理解のなさ。特に家族からの理解が得られぬことに心底胸が痛む。

  • 正常な良き皇帝時代のティベリウスのはなし。
    表題の悪名高き皇帝には、まだ当てはまらない。
    次作から狂っていくのだろう。

  • 「悪名高き…」というタイトルの中身を作者は最初に解説しています。後世の歴史家の悪評に、ホントにそうなのか?という懐疑的な見方を述べているとあります。
    ローマ帝国の事実上のアウグストゥスの後を引き継いだティベリウスは、イメージとして孤愁を滲ませる姿があると作者は書いています。ティベリウスは、晩年を風光明媚なナポリ湾にある小島、カプリ島に居て帝国を統治したようです。別邸の図面も載っていてこれを読むと一度は訪れて見たいという思いに駆られます。しかし、この風景とは裏腹の孤独な生き方をティベリウスは、統治姿勢にも貫きます。
    彼はアウグストゥスの築いた帝国の基礎を更に盤石にする為に、様々な政策を実行していきます。庶民の人気取りとは離れた、地味で苦労のある政策でした。公衆安全、緊縮財政、隣合ったゲルマニアの防衛ラインの撤退など平和な暮らしには欠かせないものでした。名門の血筋でありながら、アウグストゥスの血筋を引き継いでいないというハンディキャップのあったティベリウスでしたが、更に不幸に見舞われます。次期皇帝として公認されていた息子に64歳にして死なれます。それでも悲哀に負けることなく、適材適所の人事を当て任務を着実に遂行していきます。
    この一連の出来事を読むと、2000年後の現代にあって、一国のリーダーの資質は劣化しているのではないかと思うしかありません。歴史に学ぶ姿を持って欲しいと切に願います。

  • 2代皇帝ティベリウスの物語。アウグストゥスから受け継いだ帝国経営は、皇帝の絶対的な支配権によるものではなく、元老院の承認のもとに支配を委託された矛盾に満ちた形態であった。しかも皇帝ティベリウスはこの元老院階級の名門出身のせいもあってか元老院制下の皇帝というい責務を果たそうと真摯に果たしたが、その結果、元老院が責務に及び腰になる。カエサルが描き、アウグストゥスが建てたローマ帝国は、ティベリウスによって仕上げられたのであった。

  • タキトゥスはティベリウスのことを嫌いという話だが、「そんなタキトゥスでもこう書かざるを得なかった。『○○(ティベリウスを賞賛する言葉)」という引用が多く、タキトゥスにツンデレ感が漂っていた。

  • ・アウグストゥスの血をひかない皇帝ティベリウス
    ・ゲルマニクス人気とゲルマニクスの死
    ・帝国の維持 → 緊縮財政、防衛

  •  第7巻は事実上の帝政期にはいって初代アウグストゥスに続く4人の皇帝、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロのお話。悪名高き皇帝たちという表題で、暴君ネロが含まれるので、悪いやつらが続いたのだなと思わされるが、実態はちょっといや大いに違う。著者の筆によれば、ティベリウスとクラウディウスは全然悪くないし、カリグラとネロにしても、軽はずみな若者がはめを外したというだけだ。そうか悪名は高いが実際は...という意味なのか。親を殺したり、宗教弾圧したりというなら日本の戦国時代だって珍しくないし、だいたいあの母親も悪い。惜しいとすれば周囲に人を得なかったということだろう。あのアウグストゥスだってアグリッパ、マエケナスという腹心がいたからこその治世だったのだから。若者には荷が重くて当たり前だ。しかし、本巻に限らず著者の目は温かい。彼らは皇帝である以前に人間であり、人間は弱いものだから。とはいえ、皇帝という立場を考えるならそれでは困るのも事実。もちろん大統領、首相もしかり。現代でもだ。

  • ティベリウスのお話し。
    結構好き
    2、ティベリウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス

  • 20巻に記載

  • 帝政ローマの2代皇帝ティベリウスが、紀元14年に皇位を継いでからカプリ島に隠遁する紀元27年までを扱う。
    カエサルが始め、アウグストゥスが整えた帝政というシステムを、ティベリウスは盤石なものに固めていく。庶民や後世の歴史家からは人気のないティベリウスだが、実務的な継承者としての能力は高かったという評価。

  • 二代皇帝ティベリウスの治世。

    皇帝就任、パンノニア軍団とゲルマニア軍団の蜂起・緊縮財政・ゲルマニア撤退・ライン川防衛体制・オリエント問題とゲルマニクスの派遣・ゲルマニクスとシリア属州総督ピソとのいざこざ・ドナウ川防衛体制・ゲルマニクスの死・ピソの裁判・ゲルマニクスの妻、アグリッピーナのティベリウスに対する反感・砂漠の民問題・ガリア民族宗教の祭司階級、ドゥルイデスによる、学生を中心とした反乱・ティベリウスの宗教観についての筆者のイメージ・災害対策・息子、ドゥルーススの死・安全保障(軍団配置と欠員補充など)・家庭内不和・元老院との関係

    仕事をする皇帝というイメージ。筆者の思い入れが強いのか、比較的肯定的に書いてある気がする。
    有能ではあったのだろうが、ある意味で理想主義だったのではないか。

  • 「悪名高き皇帝たち」という副題だけど、まえがきによると「ホントに悪帝だったの?」というスタンスで書かれるようで、次巻からも楽しみだ。
    この巻は第2代皇帝ティベリウスの治世。アウグストゥス時代から実績のある方だけに、やっぱり優秀だったんだな、という感想。ただ厳格で、人好きするタイプではなかったんだろうなあ。
    歴史家タキトゥスのティベリウス評はあまり良くないようで、著者が異論を唱えている。

  • 「悪名高き」とあるけど、想像してたほどではなかった。
    皇帝ともなると色々大変だなーと感じました。

  • 血の繋がりはなく、アウグストゥスから次の血筋への”繋ぎ”となったティペリウス。まずまず治めたと思うけどな。

  • 頑なに血筋にこだわったアウグストゥスから、しょうがなしのワンポイントリリーフとして2代目皇帝の座を譲られたティベリウスが今作の主役。
    堅実で愛想のない(あくまで個人の感想です)ティベリウスの政策は、庶民にとってはつまらんものだったかもしれませんが、何故後世の史家からの評判が悪いのか、この本を読んだか限りではよくわかりませんでした。

    カエサルに比べたら愛想なしだったと思われるアウグストゥスは、それでも皇帝の財力によって,庶民受けのする政策を行うこともありました。
    が、ティベリウスはそういう無駄を一切しない。
    ワンポイントであることを重々承知したうえで、ローマにとって必要なことをきっちりしてのける。
    名前のある、顔の見える政策ではなく、顔も名前もいらないシステムの構築。

    多分すべてのことに目を通さないと気がすまなかったであろうアウグストゥス。
    適材適所で人を任命したら、極力口を出さずに任せてみるティベリウス。
    性格もあるでしょうし、立場もあったでしょう。
    私にはティベリウスの方が好ましく思えるのですが。

    読んでいて上杉鷹山を思い出しました。
    やはり望まれて国を継いだわけではありませんでしたが、財政の立て直しのためにはどんな反対があっても成し遂げるという覚悟。
    自らが率先して贅沢を排除した生活を送る。
    「なせばなる なさねばならぬ なにごとも ならぬは人の なさぬなりけり」
    上杉鷹山の言葉ですが、ティベリウスが言ってもいいような気がします。

    愛する妻と無理やり別れさせられたり、息子に先立たれたりと家族運には恵まれなかったティベリウスですが、皇帝として、人として、実にフェアな人だったように思います。
    なんでそんなに評判悪いの?
    それとも私が塩野マジックに罹っただけなのかしら。

  • 今回の巻には悪名高い皇帝はいたかな?普通よりちゃんと仕事ができて、でもカエサルとかほどスペシャルじゃない人ってだけでは?やっぱりユーモアって大事だと再認識。

  • 暑くてあんまり内容が頭に入ってこないんですが、、、
    とは言うもののまぁまぁイラっとさせられる巻だったかも。まぁ歴史家の著述ではなく、思い込みの激しい作家の描写なんだから仕方ないんですが、でもだったらもうちょいうまい文章で読ませてほしいんですよね。。。

  • この巻では、後の歴史家たちに悪名皇帝にされた人たちの話の一巻目。
    今回は、ティベリウスを扱っています。

  • アウグストゥスの後任である、ティベリウスの話。
    ローマ史に詳しくないので知らなかったが、後世の人には人気のない人らしい。しかし、筆者は買っている部分が多い口ぶり。
    ローマの防衛戦をライン河と決め、アウグストゥスの残した事業を完成させた。
    しかし、家庭とも元老院とも折り合いが悪く、ついにカプリ島に隠棲する。

  • 新潮学芸賞

  • ローマ帝国第二代皇帝ティベリウスは、アウグストゥスにもましてストイックな姿で描かれている。

    カエサルが構想しアウグストゥスが建設したローマ帝国という巨大な建造物を、細部に至るまで最後の仕上げを行い、長期にわたり持続させるための運営体制とメンテナンスを行った皇帝という印象である。

    財政面では緊縮財政を敷き、それまでは雇用対策や人気取りのためにも行われていた公共事業を、必要なインフラ整備とメンテナンスに限定し、社会保障政策である「小麦法」の対象も、累進性を強めることで困窮層への支給は充実させながらも支給総額は抑えるといった施策を進めている。

    ゲルマニアにおける防衛線をエルベ川からライン川へと戻したというのも、これまで撤退することはなかったローマの歴史の中では画期的と言えるだろう。

    歴史の中で彼が求められた役割がローマ帝国の創業でもなく建設でもなく、維持であったとするならば、このような比較的地味な施策の数々は間違いなく彼の前任者の構築したものを継承するものであったし、その役割を見事に果たしたと言えるだろう。

    ただ、アウグストゥス以上に厳格で、自らを律するとともに周囲にも同様に高い規範意識を求めたティベリウスは、人気という面では彼の前任者とは大きく異なる結果となったようである。

    「悪名高き皇帝たち」というタイトルは筆者の皮肉が込められているが、国家の運営を担う役割を黙々とこなし続けたがゆえに、後世からは必ずしも人気を獲得することはできなかった皇帝の姿も、このように個々の仕事を丁寧に追うことでその実像が見えてくるという点で、非常に考えさせられた。

  • ティベリウスの治世であるが、これまでのカエサル、アウグストゥスと比較すると業績が地味に見えてしまう事は古今東西、2代目の宿命なのかもしれない。
    だが、しかし、ティベリウスの行っている事は地味ではあるが、アウグストゥスが作り上げた帝政というシステムをローマに根付かせる為に必要不可欠な事ばかりで、こういう人は後年になってようやく評価される人がほとんどなんだよな。

  • ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)

  • 孤愁の人ティベリウスがカプリ島にひっこんでしまうまで。

    この前の巻では彼が復帰したときに兵士達が涙を流して喜んでいたと書かれていたので、まさかこんな風になってしまうとは思いませんでした。

    でも彼は誠実に実直に仕事をこなしていきます。
    新しいことをするというより、メンテナンスが中心。

    ティベリウス嫌いの歴史家タキトゥスでも次のように言うしかありませんでした
    「いかなる皇帝でも彼ほどに巧妙な人事を成しえた皇帝はいなかった」

    人気者だったゲルマニクス、息子ドゥルーススともに若くして死。でもティベリウスは冷静に事をすすめていきます。
    ゲルマニクスの妻、感情的に生きる大アグリッピーナは塩野女史の好みではないみたい。

    ボヘミアは前の巻でマルコマンニ族のマロボドゥヌスとの良い関係が書かれて、ここでもですが、この巻の終わりのほうでドナウ川流域ウィーンブダペスト等がはっきり登場してきます。

    最後になりましたが、ただひとりヴィプサーニアだけを愛したティベリウス…今までで一番好みかもしれません。

  • 二代皇帝ティベリウス。カエサル、アウグストゥスとは異なる地味で勤勉な仕事師。大国を創成期から安定期に移行させるには、カリスマではなく人事に長けた有能な指揮者が必要ということか。
    「ローマ帝国は、カエサルが企画し、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にしたと言う事実では間違いない。ティベリウスは何一つ新しい政治をやらなかったとして批判する研究者はいるが、新しい政治をやらなかったことが重要なのである。アウグストゥスが見事なまでに構築した帝政も、後を継いだ者のやり方次第では、一時期の改革で終わったに違いないからだ。アウグストゥスの後を継いだティベリウスが、それを堅固にすることのみに専念したからこそ、帝政ローマは、次に誰が継ごうと盤石たりえたのである。」

  • 初代皇帝アウグストゥスの後を継いだティベリウス帝の苦闘を描く。

    著者は明らかに、ローマ帝国の維持発展という重荷をただ一人で担ったこの冷徹峻厳で孤独な政治家ティベリウスに肩入れしていて、気楽な議論ばかり続けている元老院(富裕なローマ市民600人からなる終身制の最高統治機関)には批判的。読者は自然、現在の日本の国会議員たちの言動に思いを至たすことになる。

    カエサル、アウグストゥス、アントニウスやクレオパトラが登場し、ローマ本国や周辺諸国を巻き込んで派手な軍事闘争を行った前の時代に較べて、動きはぐっと地味になるが、中身は充実。著者のパワーは衰えるどころか、逆にアップしたように感じられる。

  • 第二皇帝ティベリウス、第三カリグラ、第四クラウディウス、第五ネロの「悪名高い皇帝たち」の時代のお話。
    彼らを「悪」で括るのが正しいのかは置いておいて、彼らは「血統」で皇帝になった世代として括ることができる。

    初代が作り二代目で傾き三代目が潰すとかそういうフレーズがある。
    初代は思想と行動が、持っている実力のレベルで完全に均衡が取れている。というか持てる全てで理想に近づけることでそうなる。
    潰れるのが三代目かどうかは不定だと思うが、少しずつ思想がずれ、持てる行動力も上下することで、結果は元の理想から外れていく。そういうことだ。
    コピーはオリジナルから劣化するが、人間の引き継ぎの場合、劣化ではなく変化があるのだ。個性の違いと言ってもいい。

    丁度アウグストゥスが志したローマ帝国を潰すのに必要だったのが、五代目時点だったということだろう。
    決して彼ら個人個人が「悪」であったのではないと、私は考える。
    尤も、「悪」で無かったとは言えないことも多々あるようではあるが。

    人間は絶対に死ぬ。
    個性は絶対にある。
    ならば体制は絶対に続かないのか。
    当初の理想そのままでは、そうなのだろう。

  • アウグストゥス亡き後の、ティベリウス・カリグラ・クラディウス・ネロの四人の悪名高い皇帝の話。本巻はその第一章であるティベリウスの話。と言ってもティベリウスは堅実であり賢帝である印象を受ける。むしろアウグストゥスに途中あれだけ冷遇されたのに、こじらせずよくやっているな、と。私欲が垣間見えない分、アウグストゥスよりも清廉潔白な印象

    P200
    アウグストゥスが遺したシステムであっても、残すべきところは残しつつ、改めるべきところは改めるというやり方は、アウグストゥスの政治を継承することとは少しも矛盾しない。なぜなら、必要に応じての手直しをほどこしてこそ、構築した当の人の意図の永続に通ずるからである

    P212
    誇り高い人とは、何よりもまず自分自身に厳しい人である。自らを厳しく律する人間は、一人息子の死であろうと、悲哀に負けることだけは絶対に許さない。悲嘆にくれ、仕事を放り出すようなことは普通の人のやることであり、普通の人とは思っていない人間には、死んでもやれないことなのである。

  • ティベリウス即位とその統治

  • ティベリウスちゃんとやってるやん、というのが素直な感想。

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