- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181684
感想・レビュー・書評
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悲しい読後感。ティベリウスにしてもカリグラにしても、人生の終わり方が悲しいなぁ。
ティベリウスは皇帝になってからずっと悲しい。本人も自分の役割を理解しての様々な行動だったし、それはそれでローマに必要なことだったのに、当時の人には理解されていないのが物悲しい。
そして、カリグラ。若さゆえ。おぼっちゃまゆえ。ティベリウスの背中をみての動きが裏目に出てる。
皇帝という立場の難しさ、なんだろうな。
カエサルとアウグストゥスが凄すぎたってことでもあるんだよね、きっと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ティベリウスとカリグラ。悪名高き両皇帝の事績と塩野女史による評価の巻。
映画の中でよく見る、ローマによって張り付けにされたイエスや悪逆非道のカリグラが史実では違うのではないかと認識した一冊だった。 -
テイベリウスの晩年とその後を引き継いだ三代めの皇帝カリグラ(ガイウス・カエサル)の最期までを描いています。
晩年をカプリ島で隠遁しながら(第一線を退いたわけではないので、作者は家出したと表現していますが)統治したティベリウスは、それでも帝国の統治は可能だと考え実行していきます。
公務を果たすための「手足」をセイアヌスという近衛軍団の長官に託したのでした。庶民には不評だったと言うテイベリウスの統治スタイルは、この頃亡くなった実の母親の葬儀にさえ参列しなかったという事実が物語ります。この人間の心情を理解しなかったという欠点につながっているのでした。手足だったセイアヌスがティベリウスの本心を見抜けず、頭をもたげようとして、出し抜けに国家反逆罪に問われ処刑されます。セイアヌスを破滅に追いやったティベリウスはこの時72歳、テリブル(恐るべき)という形容詞がついています。
その後も隠遁したまま、公式の場に一切顔を出さなかったために、後世の歴史家に様々なゴシップを書かれたという理由にもなったようです。
こうして、ローマ社会を万全の体制にして77歳で世を去ったティベリウスの後に、「幸福は扉の外に待っている。…やらねばならないことは、扉を開けて中に入れることだ。」という文言どおりに帝国を引き継いだ人物は、25歳にも満たないカリグラでした。
会社でも創業者が成した事業を、苦労知らずの二代目が駄目にする経緯はよくありますが、この時代、広大なローマ帝国を引き継いだカリグラにも、当てはまりました。庶民の人気取りの政策に終始して、快楽に走り、国家財政を破綻に導いたのです。在任してわずか3年にも満たずの期間でした。そして、金策のために外交に目を向けたものの、ユダヤ人の宗教観の理解不足のためにこれも失敗、熱狂的に受け入れられた就任当時の熱は一気に冷え込んでいました。
結果として、護られていた筈の近衛軍団兵士たちによる皇帝殺害が起こります。あまりに未熟な皇帝の言動に、耐えられなかった身内からの反乱だったと書かれています。
このわずかな期間の国家のドラマテックな展開に唖然とするばかり! -
ローマ帝国は「カエサルが企画し、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にした」(p90)
その後に登場したのがカリグラ。
それまで、歴史上でも希な政治のプロが続き、ローマ帝国を完成させるが、それを継いだのが24歳のまったくの素人。
当然統治はうまくいかない。
「カリグラは、幸か不幸かモンスターではなかった。頭も悪くなかった。彼にとっての不幸は、政治とは何かがまったくわかっていない若者が、政治をせざるをえない立場に就いてしまったことにある。(p203)
カリグラは剣闘士試合や戦車競争といった市民が熱狂する競技を次々に開催し(いまでいうとサッカーやF1みたいなものらしい)、デビュー当時は大人気を博す。しかし国家財政が悪化し、やがて自分を神と考えるようになって愚行を重ね、身辺警護の近衛軍団に殺されて、在位4年であえなく幕。
「政治の実践とは、ニュースがなければうまくいっている証拠と言われるくらいに地味で、それでいて一貫性を求められる責務なのである。」(p203) -
アウグストゥスの血を引くカリグラ。前代ティベリウスの跡を継いだ彼は、その血筋と禁欲的な政策を解放したために大衆から歓迎された。だが目に見える権力を欲したこと、浪費がたたり国家財政が破綻したことで民の心は離れていき、最後は側近に殺害される。いかにもわかりやすい歴史。
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3代ティベリウス帝の後期と、これに次ぐカリグラ帝の短い治世を扱う18巻です。地味ながら堅実、賢明な治世を敷いたティベリウスが、晩年にかけ、徐々に変質していくさまが面白いです。
またカリグラ帝の章では、この時期までのローマとユダヤの関係について紙幅が割かれています。しばらくキリスト教の勉強をしていて、ユダヤの側からの歴史ばかり読んでいたので、視点が広がりました。
ただ著者は本書においては全般的に、中立というよりはローマの側に立って物事を断じるように思われ、そのまま受け取るというよりは少し距離をおいて読む必要を感じます。 -
ティベリウスの死とカリグラのお話し。
若くして皇帝になるのは大変。
カリグラの短命な統治。
3、ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス -
20巻に記載
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2代皇帝ティベリウスがローマを離れカプリ島から統治を始めるようになってから、3代皇帝カリグラが暗殺される紀元41年までを扱う。
カエサル、アウグストゥス、ティベリウスが築いた盤石の帝国を受け継いだカリグラだが、人気取りの減税や派手な催しなどで財政を傾けた末に、最も信用できるはずの近衛兵団の手によって暗殺されてしまう。 -
地味で堅実な2代皇帝ティベリウスが77歳で亡くなり、24歳のカリグラが皇帝に
先代が緊縮で不人気だったため、一転お祭り騒ぎに!
消費税も廃止して人気は頂点を極めるが、当然財政は悪化
神になろうとしユダヤ人とも揉め、任期4年目に部下から殺害される -
第2代皇帝ティベリウスのカプリ島隠遁後と、第3代皇帝カリグラの治世。
ティベリウスはほんと私生活には恵まれなかった人だな、という印象。セイアヌスの前妻からの手紙の内容が真実だったかは分からないが、ショックだったろうなあ。
そしてカリグラの治世はわずか4年足らずという短さ。最後がなんとも切ない。
後半のローマとユダヤの関係についても興味深い。この頃からすでに、この地域には複雑な事情があったのか。 -
カリグラは悪名高き有名な皇帝だけど、若かったから、無理だったんだなあ。と思いました。
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ティペリウスに続いてのカリグラ。大人気で就任しても、この有り様。
人気取りのためにバラまくのは愚策だとよくわかりました。 -
後半のユダヤ人とのからみは興味深かった。こんなところからも現代史に続くような問題は始まっていたのかと。欧米人の国民性や今の外交問題を理解する上でも、必要な教養だと感じた。
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結局古今東西三代100年程度が限度ということなんですかね、シンプルかつ明確な答えとして。それはそれで面白いなぁと思います。
それにしてもこのお方、どこまでも三代の間のひずみに目を向けませんな。このポイントを深く抉っていくのが歴史家ですが、まぁ、歴史家じゃないですもんね。お門違いでした。 -
この二巻では、ティベリウスとカリグラの二人の皇帝の話です。
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ティベリウスの晩年から3代目皇帝のカリグラの治世。
ティベリウスは、カプリ島に隠棲するが、そこからも統治の手は緩めない。
不人気の皇帝の死後、継いだのがガイウスことカリグラ。カリグラは大衆の人気取りとも言える政策を相次いで実施し、国家財政を破綻させる。
当初こそ大衆の人気を勝ち得ていたが、最期は大衆からも見放され、近衛兵に殺害される。
カリグラの政策をポピュリズムと言えるなら、その恐さをすでにローマ人は現代に先んじて感じていたように思う。 -
新潮学芸賞
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第二代皇帝ティベリウスの晩年と、第三代皇帝カリグラの時代が描かれている。
ローマ帝国建設の仕上げを行ったティベリウスは、晩年に向かうにつれて彼自身の抑制的で虚飾を嫌い、冷徹に現実にのみ向き合うといった姿勢をますます強めている。
もはやローマにとどまらず、カプリ島に隠遁することで、統治能力も建設的な意見交換をする機能も失った元老院とは、完全に袂を分かつ形で帝国の統治を進めていく。
しかし、皮肉なことに、彼の最晩年の統治の大きな部分は、反ティベリウスの勢力を構築しようとしたアグリッピーナ派の一掃や、それを実行したセイアヌスの排除といった政争の側面が強かったように思う。帝国の建設が完成に近づき、政策の面では革新より継続が中心を占めるようになったことの裏返しではあるのだろう。
そして、その後を継いだカリグラは、そういったティベリウスの抑制的な統治に対する市民の欲求不満を解き放つように、饗宴と浪費からスタートする。
放漫財政とそれを繕うための金策に終始したカリグラの治世は、僅か3年強で終止符を迎えるが、その短い期間の間に、当初熱狂的であった市民からの支持は、全くの無関心へとまたたく間に推移した。
結局のところ、カエサルの時代に始まったローマ皇帝への熱烈な支持がローマを共和制から帝政へと移行させた大きな要因であるが、その熱狂がローマ帝国の建設の完了と時を同じくして冷めていったということだろう。帝国の建設という事業はローマにおいては市民と皇帝の共同作業であったのだと、改めて感じた。
このような市民社会の統治機構の繋がりは、東方の王政とローマの帝政の大きな違いであり、グローバル国家や永続性のある統治機構を作り出すときに必要な要素なのではないかと思う。ローマが、やはり共和制の長い積み上げの上に成立した国家であることを改めて感じさせられた。 -
引きこもったティベリウスと若くして皇帝となったカリグラの内容であるが、書き方としてはティベリウスの治世が良く、カリグラの治世は悪く書かれていると思う。
民衆からの人気だけでいえば、初期はカリグラの方が優れていたのだろうけど、最終的にはティベリウスの治世を懐かしむ民もいたのではないだろうか。
後、面白いのが当時のローマとユダヤ教の関係でユダヤが特別措置を受け、それによりデメリットも受け入れていたと言う事がそれまでのユダヤ教が大変であったことが伺える。 -
ローマ人の物語〈18〉悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)
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二代皇帝ティベリウスがカプリ島に引きこもってから亡くなるまで、そして三代皇帝カリブラ。
この前の巻でティベリウスが好みと書いて、「ちょ、ちょっと待って…」と思ったこともあったけど、最後まで読むとやっぱりティベリウスは大事な皇帝だったかなと。
前巻でさらっと過ぎたティベリウスの息子ドゥルーススの死について驚くべき事実が明らかにされます。
そしてティベリウスかなり怒る。独裁者っぽい行動にでます。
さてカリブラは大変良い環境で皇帝になるのですが、同じ若くてもアウグストゥスのようにはいきません。
反面教師を見るのもいいけど、基礎が大事だし、若いうちに周りがちやほやしちゃいけないんだと思いました。
カシウスケレアによる殺害。私も塩野女史と同じく「不肖の息子を殺す思い」だったと思います。
好きですカシウスケレア。
この巻でもうひとつとても面白かったのはユダヤ民族について詳しく解説してくださったこと。ポンツィオピラトの名も日曜学校で教えられて知ってはいたけど、ここで初めて役割を知りました。彼のしたことがこの後のローマに影響してくるのですね。 -
レビューは1巻(シリーズの17巻)で。
http://booklog.jp/users/pilvoj/archives/1/4101181675 -
カリグラの即位と失政、そして暗殺。
「ユダヤ人の不満の原因が、ローマ側にあるとばかりはかぎらなかったのである。常に弱者の立場にありつづけた民族は、被害者意識から自由になることがむずかしい。そのタイプの人々は、拠って立つ唯一のものが被害者意識であるがゆえに、強者に対しては過敏に反応しがちなのである。」(181頁) -
ティベリウスの晩年から次の皇帝のカリグラの死まで。実績がないのに、最初から周りにチヤホヤされるリーダーはろくなのがいない。つまりカリグラのことだけれども。仮にポピュリズムで迎えられたとしても、人によってはそれを上手くつかって、本質的なことに取り組めるのだろうけど、そうではない人間は結局ポピュリズムに迎合するしかない。なぜなら寄って立つところがそこしかないから。
あとはティベリウスのカプリでのリモートワークは思わず自分ごととして考えさせられてしまった。ある意味でリーダーが自分の働きやすい環境で働けることは、組織にとってもメリットがあるのだけど、それは上手くいっている時だけ有効で非常に脆弱。つまり組織の人間の心の中には澱のようにリーダーに対しての不満や不信が積もっていく
そう見ると、本巻はわりとサラリーマンやリーダー向けにはいいビジネス書かもしれない。なぜなら大多数の人間はカエサルやアウグストゥスにはなれないから
P18
カプリ隠遁を決行したティベリウスは、こう考えたのではあるまいか。帝国の統治の成果さえあげられるならば、どこにいても、どのような方法でやっても、同じことではないか、と。だがこれは、政治をする人間の思考ではなく、官僚の思考である
P52
つまり、登用した人材は自分の「手足」として活用するために登用したのであって、その人のことを親身に考えたからではない。言い換えれば、自分の考えを実現するために抜擢し登用したのであって、それがその人のためになったとしても結果論にすぎない
P132
小心者は、他者の中に味方を開拓するよりも、味方とはっきりしている者で自分の周囲を固めたがる。そしてこのような性格の人にとっての味方は、血縁者であることが特徴だ -
カリグラは今まで出た中で文句なしに最低の皇帝。最後は親の代わりにシメられて終了。低身分のアグリッパに高身分な嫁というアンバランスからの女系が災いの元か?
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二代目皇帝とTiberius Julius Caesarから三代目皇帝カリグラが主役。