ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181707

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!
    正直ネロとセネカのエピソード目当てで読み始めたけど(このシリーズを完備しているうちの図書室は神だ)(というか司書さんの職権濫用かな?)純粋に歴史上の人物としてのネロが好きになった。
    キリスト教あたりの対応で暴君扱いされがちだけど、皇帝として彼なりに頑張っていたりもした若者だったのかなと思った。いや、皇帝だし、頑張ってたら良いってわけでもないけど。
    なんか、本当〜〜にちょっとやんちゃな男の子だったんだなって。
    泳いじゃいけない湖で泳ぐ、喧嘩のあとが残った顔で元老院に出る、たいしてうまくもない歌を披露する……。
    バカエピソードは豊富だけど、なんか憎めないんだよな。ただ皇帝には向いてなかった。
    けど一人の人間としての彼は可愛くて普通の若者だったし、少しくらい同情してもいいよな。
    なんか……太ってたのも愚かでかわいかったな。
    醜い……可愛い……。
    あれで支持されなくなって慌てちゃうのとかかわいそかわいいな。

    塩野さんの本、チェーザレの方は積読してるけどこれはスッと読めた。面白かった。

  • 皇帝ネロの巻。
    読み進めていくと、ネロが可愛そうに感じてくる。
    たしかに、若くして母アグリーピィーナの策略で皇帝に祭り上げられ、その母を殺し、さらには妻オクタビアをも殺し、有能な多くの部下を殺したネロの行いは言語道断だが、歌に夢中になる姿はいつも孤独の中にいたのではないかという悲哀を感じた。寂しいユリウス・クラウディウス朝の最後の皇帝だった。

  • ネロ。
    残念過ぎたなぁ。以前、テレビの番組で黄金宮殿のことを放送したのを見て、言われてるほどの暴君ではないとのぼんやりとした記憶はあったけど。暴君ではないかもしれないけれど、後世に悪く言われるだけの事実はあるのだなぁ。
    若い皇帝あるある、ではないけれど、無邪気な人だったのだろうけど、皇帝の器ではなかったなぁ。
    こうやって読み進めていくと、いかにカエサルとアウグストゥスが素晴らしかったのかがよくわかる。

  • またこのタイプの皇帝かと。。
    若い皇帝ネロのお話し。
    5、ネロ・クラウディウス・カエサル・ドルスス・ゲルマニクス

  • 第5代皇帝ネロの巻。暴君として有名だが、キリスト教徒を迫害したために、キリスト教の時代になってから暴君として有名になったようだ。

    本作を読んだ印象では、暴君というより、竪琴や歌が好きな、ナイーブで短絡的な若者という感じだ。承認欲求が強いのか本質的に憶病なのか、保身の方法が極端なんだよなあ。理性的な人ではなかった。人心が離れるのも分かる気がする。そして妻のオクタヴィアが不憫すぎる。

    他に登場するのは、ネロの補佐役セネカと、アルメニア・パルティア問題に尽力したコルブロなど。ユリウス=クラウディウス朝の帝政が終わり、次巻はどうなるのか。

  • 悪名高き第5代ローマ皇帝、ネロの治世。

    母親の活躍?で10代の身で皇帝即位を果たしたネロ。
    哲学者セネカや近衛兵団団長ブルスの力を借りながら、4,5年の間は比較的善政を行う。

    パルティアのアルメニア侵攻に対して、有能な将軍であるコルブロを(紆余曲折はあれど)起用して対応し、皇帝属州・元老院属州で分かれていた国庫の一本化・間接税撤廃の提案(最終的には小麦の輸入のみに限定)・通貨改定(平価切下げ)などの経済政策を行った。

    アルメニア戦線が指揮系統の分裂により泥沼化する中、ネロは強権的な母親への反抗を繰り返し行い、ついには暗殺してしまう。そして、精神が不安定になった?彼はギリシャ文化に没頭、「ローマン・オリンピック」を行いギリシャ文化をローマに根付かせようと試みる。

    ブリタニアの反乱を鎮圧したネロだったが、これまで彼を支えてきたブルスとセネカを失う(前者は死亡・後者は引退)。ローマで様々な問題が起こる中、名将コルブロはパルティアと外交戦を展開し、アルメニア問題を解決させる。

    ギリシャ文化への憧憬から、歌手としてナポリで歌を披露したネロだったが、ローマが大火に見舞われる。半分以上が焼き尽くされたローマを(自分好みの都市として)再建するため、一応有用な再建策も行ったのだが、ギリシャの理想郷「アルカディア」をモデルにしようとする。黄金宮殿(ドムス・アウレア)や人口湖の建設を行うが失言もあり、人々の間にはネロが放火の主犯ではないかという疑いが強まる。そして、民衆の敵意を逸らすために、キリスト教徒の迫害を行ってしまう。

    ローマでも歌を披露したネロは、いよいよローマ皇帝としての資格を疑われ、有志により暗殺計画が練られる。このピソの陰謀には、かつての恩師セネカも加担していた。解放奴隷の密告により陰謀は失敗したが、今度は青年将校達が、アルメニア問題を解決した将軍、コルブロを皇帝に就任させようと画策する。このベネヴェントの陰謀を処理した後、ネロはギリシャを巡り、数々の都市の大会で歌を披露した。そして、コルブロを含む有能な将軍3人を粛清してしまう。

    ローマに戻り、凱旋式を挙行したネロだったが、ついにガリアで反乱が起こり、イベリア半島で軍団が決起する。元老院に国家の敵と認定されたネロは、30歳の生涯を終えた。14年間の治世だった。

  • 私が持っていたネロのイメージは、残虐な暴君。
    母を殺し、妻を殺し、家庭教師から側近になったセネカを追い出し、キリスト教徒を虐殺し(コロシアムでライオンと闘わせたり)というもの。
    後に、その初期は善政をしいたとも聞きましたが、何しろ最初のイメージが悪すぎる。
    めちゃくちゃ構えて読みはじめました。

    元々は、ネロの母が野心家で、皇帝の妻では飽き足らず、皇帝を裏で操る存在になりたいということから、夫の皇帝を殺害し、子どものネロを帝位につけたのが始まり。
    16歳の少年皇帝を使って政治を想うままにしようと思ったアグリッピーナの誤算は、息子も母に似て自尊心が強くて他人に操られるのを良しとしないこと。

    思春期の、母親を疎ましく思う気持ちが、アグリッピーナのアクの強さで増幅されてついに母を殺害に至る。
    これはよろしくないよね。絶対に。人として。
    でも、一応本人も罪の意識にさいなまれたらしいよ。

    帝位についたばかりの時はそれなりに元老院をたてながらも独自の経済政策や属州などの統治を行っていて、若くて陽気で人気者の皇帝だった。
    ただ、彼のよろしくないところは、自分に甘いこと。
    で、というか、だから、というか、自分を客観的に見られない。
    そしてお坊ちゃんで打たれ慣れていないから、ちょっと庶民からブーイングを受けるとビビり、絶賛されると天狗になる。
    きちんとそれを正してくれる人が側にいて、ネロがきく耳をもっていればなんてことのない欠点ですが、哀しいかなネロの周りにそう言う人はいなかった。
    なので自死に追い込まれるまでになっちゃった。

    確かに外交とか軍隊の動かしかたとかまずいことはあったけど、そこまで悪帝か?
    母殺し、妻殺しは悪い。
    でも皇帝としてそんなにだめか?
    キリスト教迫害も、自分の不人気を挽回するための手段であって、それは側近の入れ知恵だったらしい。

    要は皇帝としての自分が、周囲にどう見られているかの認識がなく、皇帝だから何をしてもいいと勘違いしたのが敗因。
    というか、決定打は音痴だったこと?
    ギリシア文化かぶれのネロは、楽器を奏でながら自作の詩を歌うことに猛烈な熱を入れていて、それは庶民に親しみを感じさせるものではあったけれども皇帝としての敬意を失った、と。
    せめて歌が上手ければね…。
    残念。

  • 悪名高きと形容された皇帝たちの最後の巻に登場するのは、あの人、ネロ。その母アッピリーナが彼を文字どおり生んだといえるというのがこの巻を読み終えた感想。あくの強い野望に燃えた女性だったから、このような歴史上有名なエピソードを残したのでしょう。息子のネロは、母親の野望の犠牲者ともいえるのかもしれません。
    ネロをたった16歳で皇帝に即位させた母は、「ママのおかげで…」とばかりに、そのことを当然のように息子に恩に着せ、思春期の息子は母親に反抗するという、古今東西何処にでも当てはまるパターン化された構図を展開します。母子関係はネロの不倫により最悪の結末を迎えます。どうにもならなくなったネロは母殺しを図ったものの失敗、息子に殺されかけたと知った母に刺客が襲います。母殺しの後、心に傷を負った彼は夜ごとの亡霊に悩まされます。
    利発な少年だっただろうとされるネロには、家庭教師的な存在時代から、皇帝になってからの補佐官としての役割を担った知識人セネカと軍事面の補佐を担ったブルスがいました。しかし、ネロは彼らの影響から離れ始めていたのでした。
    ネロはその後、セネカと決別し、自己制御能力を益々失っていきます。ローマの大火というキリスト教の迫害につながった出来事は、その後の暴君という歴史的な評価につながったのでした。ナイーブな性格の持ち主だったらしいネロは、市民の悪評に過激に反応し、皇帝としての評判を落とすような逆の行動に走り、最後は近衛軍団、元老院ともに見放されます。結局、ネロも30歳で自死に追い込まれたのでした。
    過激なファッションに身を包んだり、歌手としてのパフォーマンスを披露したりと、若気の至りといえるような愛すべきキャラクターだったネロは、皇帝になったばっかりに…と思うのでした。

  • 初代皇帝 アウグストゥス
    2代目 ティベリウス
    3代目 カリグラ
    4代目 クラウディウス

    5代目皇帝ネロ登場。
    若いスターの出現に、ローマ市民は最初、歓呼をもって迎えたという。
    カリグラの時と同様だ。

    16歳で皇帝につき、30歳で「国家の敵」として処刑されるまで、13年あまりの治世をクールに追う。母アグリッピーナ殺害や、妻オクタヴィアの処刑、師であるセネカの処刑など、暴君らしいひどい事件が相次ぐが、おどろおどろしく取りあげることはせず、淡々と、政治的な業績とその評価の面からこの滑稽な皇帝の生涯を描く。

    時代は西暦50-60年代。この頃、ようやくブリタニアがローマ帝国の領土に組み込まれた。

  • ネロが暴君と言われるのは、残酷なキリスト教迫害について後世のキリスト教世界で取り沙汰されたことが大きいのかなと思いました。とはいえ、善政にもほど遠かったようです。

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