ローマ人の物語 (21) 危機と克服(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181714

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  • 23巻に記載

  • ローマ帝国1000年の歴史の流れを、大きく分けると3つ。

    王政➡︎共和制➡︎帝政

    共和制から帝政に移る改革の時期には、
    改革には付きものの血を血で洗う戦い。

    カエサルが暗殺され、
    それでもカエサルの後継者である初代皇帝アウグストゥスが安定した地盤を築いた。

    そこから帝政始まって以来の危機に陥ったのが、この危機と克服の上21巻・中22巻・下23巻だ。


    ここでも、著者七生ちゃんの人間洞察が鋭く炸裂する。


    「平凡な資質の持ち主は、本能的に、自分よりも優れた資質の持ち主を避ける。自分にない才能や資質を迎え入れることで、自分自身の立場を強化するなどという思考は、平凡な出来の人には無縁なのだ。」

    だから、弱者はいつも群れてメェメェとゴシップばかりして、自分の承認欲求を満たすのだろう。

    平凡な人にとっては、才能ある人物は存在するだけで罪なのだ。


    「予定どおりに進行する事態への対処ならば、特に優れた能力は必要としない。真の才能が問われるのは、予期しなかった事態への対処である。」

    ほとんどの人間は、見たいものだけを見て、物事をありのままに見ようとはしない。
    カエサルの言葉として10回はこのローマ人の物語には出てきたように思うが、
    予期せぬ事態が起きた時にこそ、
    冷徹に現実を見て、冷静に判断対応できなければならないだろう。



  • 一年で皇帝が四代入れ替わる紀元69年。驚くべきはこの混乱の中、皇帝の肖像が彫られた銀貨が四代全員分鋳造され、流通した結果、今世にも残っているという事だ。

    歴史書に残るのは政権の闘争のみだが、それでもローマが存続できていたのは、例え首都が戦場となろうとも、民衆が生活を維持できるシステムが構築済みであったからということが伺い知れる。

    そんな偉大な先帝たちのシステム構築に、寄与するどころか関与することもできなかったのが、ネロに続く皇帝ガルバ、オトー、ヴィテリウスの三人だ。
    先帝の失策に乗じて皇帝を名乗った後、人心掌握に失敗して殺されるだけの繰り返し。

    ローマのシステムとは、如何に愚鈍な皇帝であっても数十年は耐えられる堅牢なものであったが、先帝ネロの暴政は14年続いた後の崩壊であった。
    今この時に必要とされるのは、先帝の遺産を食い潰すしか能のない愚帝ではなく、時勢に合わせてシステムを改修できる改革者であった。

    人材が豊富なローマにおいて、そんな人物は当然存在した。だが、有能であるがゆえ、2000年前から鉄火場であったイスラエル、シリア、エジプトにいた。

    失策続きであった前皇帝達と比べてみると、ヴェスパシアヌス、ムキアヌス、アレクサンドロスの三人は、簡単にやるべきことをやっただけのようにすら見える。

    ないがしろに扱われた兵達と関係を密にし、近しい地位にあるものどうしで役割を決め、国境の防衛と首都への侵攻を両立可能な体制を整える。

    愚帝は愚帝であるがほど、長期間の権勢を維持できる能力もないので、混乱だけ引き起こしてあっさりと敗北する。

    この渦中のさなか、元老院といえばもはや名乗りを上げた皇帝を承認する以外は人材プールとしての役割程度しか残されていなかった。

    いよいよ現代が思い描く『皇帝』のイメージと近づいた権力を手に入れつつあるローマ帝国のシステムは、如何に改築されるのか。次巻に続く。

  • どこかで見たような展開が続く。しかし丁寧な描写は読んでいて楽しい。

  • 身の処し方を考えるのに読むといいと思う。

  • アウグストゥスから始まった血がネロでついに途絶えた 新たな混沌が始まろうとしている
    ダメな皇帝が三代続くもローマは崩壊しない クラウディウスまでの貯金があったからであろう

  • 2008/10/25

  • ネロが国家の敵とみなされ、自死に追い込まれた後に
    帝位についたガルバ。
    しかし彼は属州総督から兵士に押し上げられ皇帝になっただけで
    帝国の統治を全うしようとしなかった。
    すると間髪居れずにオトーが立ち、ガルバは非業の死を遂げる。
    そのオトーにも不満な兵士はヴィテリウスを擁立し、
    オトーを死に追い込む。
    そのヴィテリウスも敗者の処遇で過ちを犯し、
    混乱を極める中で、東方でついに健全な精神を持つ1人の男が立ち上がる。

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