ローマ人の物語〈24〉賢帝の世紀〈上〉 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2006年8月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181745

ローマ人の物語〈24〉賢帝の世紀〈上〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 13代目 トライアヌス
    在位19年7ヶ月。
    ローマ帝国最盛期の皇帝。
    このとき版図は最大に達する。

    それにしても皇帝というのは大変な仕事である。このトライアヌス帝のように、才能も意欲もずば抜けており、時代にも恵まれていても、きちんと役目を果たそうと思えば、毎日毎日相当な激務をこなさなければならないらしい。たんなる職業意識だけではできない仕事である。自分を神とでも思わなければやっていけないだろう。

    皇帝の権限は絶大なので、われわれがもし、こういう地位についたとしたら、真面目にそういう業務だけに専念するかというと、それはどうも疑問のように思える。金や権力を別の方面に使う可能性の方が高いような気がする。少なくともトライアヌス帝のように、仕事しか眼中にないというふうにはならないと思う。気晴らしや息抜きにちょっとぐらいその権限を使ってもいいだろうと考えるのではないか。なんといっても帝国の第一人者なのである。気が食わなければどの人間だろうと殺そうと思えば殺すことができるのである。絶大な権力を与えられた人間の「ほんのちょっと」が端から見てどの程度になるか、これはけっこう怪しいものだ。誰も止めてくれる人間はいないのである。そう思うと、政務よりも遊興の方に走ってしまったネロやカリグラをそう簡単に責められない。

    遊んでばかりいては彼らのように殺されてしまい、後代からさんざんな悪評を浴びせられることになるので、仕事もしなければならないが、しかし、やろうとしてもトライアヌス帝のように全身全霊を傾けてということはなかなかできないだろう。彼のような皇帝の方が希なのである。しかも晩年のパルティア遠征を除いて、ことごとく成果を上げている。それはほとんど奇跡的な出来事である。

    このような皇帝が一人いれば民主政は不要かもしれない。しかし残念なことに、歴史上このような人物はきわめて数が限られている。その他の無数の皇帝や王や専制君主は、われわれがその地位についたときにそうなるであろうような怠惰で無責任で不公正な統治者だったから、やはり帝政とか王制とかは弊害が多い。効率の点では有能な皇帝が支配する帝政が勝るとはいえ(それはしかしごく希にしか現れないもので、比較の対象としては除外すべきだろう)、総体的に見れば民主制の方がすぐれた統治システムなのだろうと思う。

    ところで、塩野七生氏の著作の魅力といえば、驚異的な言語力と該博な知識を縦横に駆使して、イタリア地方を中心とする西欧・南欧の複雑な歴史を読者にわかりやすく解説しながら興味深い物語を語ってくれるところにあると思う。
    中世以前のヨーロッパの歴史物語に関しては彼女はわが国の第一人者である。というよりもこのジャンルそのものが「ルネサンスの女たち」以来、彼女が独力で切り開いてきたジャンルである。歴史物語の作者はこれまで男性がほとんどだったし、また、西欧中世の時代は興味はそそられるものの、地域の関係が非常に複雑で、そうとう勉強しないとよく分からないと思われていた中で、彼女の物語の出現は非常な驚きだった。

    これまでの作品に較べて、この「ローマ人の物語」では、作者自身のコメント、それも女性の立場からのコメントが多いように思われる。そしてそれがなかなか楽しい。
    過去の作品でもそういう部分はもちろんあったのだが、このシリーズではそれを抑えず、むしろ意図して使っているようである。ローマ帝国のお話は制度や場所の説明で、ちょっと油断すると無味乾燥になってしまうので、読者にサービスのために積極的に行っているのかなと思う。

    トライアヌス帝の妻プロティナについて。

    「教養が高く賢明な女だったが、美人でもなければ派手でもなかったので、羨望や嫉妬の対象になる心配はなかった。皇后ともなれば元老議員の夫人たちの上位になるが、女とは、同性の美貌や富には羨望や嫉妬を感じても、教養や頭の良さには、羨望もしなければ嫉妬もしないものなのだ。」(p61)

    う~む。そうなのですか。勉強になる。
    ここには、羨望も嫉妬も感じてもらえない作者の怒りがこもっている気配がするけど、気のせいにちがいない。

  • トライアヌスの治世と死

  • 本筋の話ではないけれど、「女とは、同性の美貌や富には羨望や嫉妬を感じても、教養や頭の良さには、羨望もしなければ嫉妬もかんじないものなのだ」その通り。

  • 初の属州出身皇帝となったトライアヌスを描く。賢帝と言われている皇帝の一人。アラビアとダキアの制圧に成功する。併合した後の処遇の方法は過去のローマ人とは異なる。従来はローマ人と被征服者の同化がローマの主流であったのだが、トライアヌスは被征服者を遠くに配置転換するなど非同化策をとる。著者はこの理由は被征服者の外側にさらなる脅威(カエサルの時代にはガリアの外側にゲルマン人がいたが、ダキアの外には脅威がなかった)がなかったからではなかろうかと説明する。結果的にはトライアヌスの策は成功する。
    属州統治の要諦は1.税率を挙げないこと 2.インフラを整備すること 3.地方分権の徹底 を挙げる。かいつまんでいえば被征服者が不利益を被らないことが成功要因のようだ。
    昨今の企業買収や子会社経営にも当てはまるのではなかろうか。

  • 五賢帝の中でも帝政ローマの絶頂期を築いたトライアヌス。
    欠点が少ないとキャラクターとしては魅力に欠けてしまうのだが、ダキア平定など、それを補って余りある業績を残した。

  • 賢帝の話。戦争のシーンは面白かったけど公共事業の話は退屈だった。安定している時の資料がほとんど残されていないのは興味深かった。

  • 紀元2世紀、同時代人さえ「黄金の世紀」と呼んだ全盛期をローマにもたらしたのは、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝だった。初の属州出身皇帝となったトライアヌスは、防衛線の再編、社会基盤の整備、福祉の拡充等、次々と大事業を成し遂げ、さらにはアラビアとダキアを併合。治世中に帝国の版図は最大となる。三皇帝の業績を丹念に追い、その指導力を検証する一作。

  • トライアヌス頑張りすぎ

  •  初の属州出身の皇帝で,五賢帝の二人目であるトライアヌス帝の物語です。ダキア戦役やパルティア遠征,国内での大規模な公共事業など,五賢帝の一人として「至高の皇帝(Optimus Princeps)」と呼ばれるにふさわしい20年の治世であったと思います。
     次のハドリアヌス帝もそうですが,最盛期を担うためには,前任者が遺した功績と,それを引き継いだ者の能力や実績の両方が必須という思いを持ちながら読み進めていました。

  • 24巻はトライヤヌス帝の帝位在任の様子がつづられます。

    帝位在位初期には、ドミティアヌス帝以来の「貸し」を返済すべくダキア族を掃討することになるのですが、掃討後の対処が先代から続いた伝統と違います。

    戦後のダキア人の扱いについては、ローマ伝統の部族融和策を用いず、ほぼ総入れ替えのようなことを行い脅威を取り除くことにより、ローマの安定をもたらしています。これはカルタゴに対して行って以来長く封印されていた方法です。

    勿論、勝者、敗者の考えでは普通とも思えますが、ローマ人の物語を読み続けていると周辺が気になります。このような強引な方法は周辺地域と軋轢を生みますし、このことに端を発した元老院との政治的綱引き的にはどうなのか、他の属州民はどう思うのかなどいろいろ考えてしまいました・・・・。成し遂げるのはやはり大したものだと思います。

    このこと一つとっても、「いかに巨大な帝国の運営とは臨機応変と説得力をもって為されていたのか」と感じます。

    このあたりをきちっと実行できるところが、ローマ人の時代よりすばらしき皇帝(賢帝)とよばれたトライアヌス帝なのかも知れません。また、小プリニウスとの書簡による帝国運営の断片は、生き生きとその時代の政治を伝えています。

    思慮深い、いい政治の時代だったように思えます。

    どうも、ローマ以降、人類は進歩していないように思うのですが・・・

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