ローマ人の物語 (24) 賢帝の世紀(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181745

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  • 五賢帝の2番目、初の属州出身皇帝トライアヌスの巻。現在のルーマニアあたりにあったダキア王国との戦役、公共事業や属州統治などが主なトピック。最後は後継者としてハドリアヌスを指名して亡くなるが、パルティア戦役がまだ中途で、次巻でハドリアヌスがどう状況を打開するのか気になる。

  • 五賢帝のトライアヌスの巻。
    ダキア戦役の成功、内政、属州管轄の見事な手際、パルティア戦役の限界。
    ローマの帝政時代を駆け抜けた歴代皇帝でも1.2位を争う有能なトライアヌスは何を思って生きたのか?

  • トライアヌス帝の話。初めての属州出身の皇帝。とても真面目。みんなから好かれ、妻も出しゃばらず、姉も出しゃばらず、控えめ。欲に溺れることもなく、皇帝として生きた20年間という治世。なんというか、こういう人いるよなぁという感想。真似したくてもできないストイックさで仕事をする。あまりにできすぎる人だとかえって、印象に残らないという感じ。
    五賢帝時代に入り、ローマがどうなっていくのか次も楽しみ。

  • トライアヌスの一生

  • 26巻に記載

  • 五賢帝時代最初のトライアヌス。
    皇帝っぽさがとてもいいです。
    13、インペラトール・カエサル・ディウィ・ネルウァエ・フィリウス・ネルウァ・トラヤヌス・オプティムス・アウグストゥス・ゲルマニクス・ダキクス・パルティニクス

  • ローマ帝国時代最盛期と呼ばれる五賢帝時代。
    領土を最大にしたトラヤヌス、その養子のハドリアヌスの巻を読む。
    ハドリアヌスは、映画テルマエロマエでは市村正親が演じていた。主人公の阿部寛、ライバルの北村一輝にしても日本人としてのソース顔を生かして、イタリア人に混じっても全く違和感がなかった。

    本書でローマが五賢帝の時代100年に渉って平和と安定を享受出来た理由が理解出来た。
    五賢帝の賢帝たる所以、ローマ帝国への絶大なる貢献は、リメス(防衛線)の維持、の一言に尽きる。

    ハドリアヌスの生涯は、長大なるリメスの視察とその強化に捧げられた。
    皇帝となってからも、辺縁の過酷な防衛基地を回り続け、首都ローマで寛ぐ時間は殆ど無かったのだ。
    各地のテルマエで温泉に浸かることだけが、唯一の息抜きだっだのだろう。
    何と大変な職務なのか。

    また、この皇帝はギリシア文化への造詣が深く、当然ギリシア伝統の(日本においてはジャニー喜多川が継承した)美少年趣味を持っていた。
    ハドリアヌスが愛したギリシア彫刻のように美しい美少年が、エジプトのナイル川で溺死した時の悲痛な思いを、小説家マグリット•ユルスナールは<ハドリアヌス帝の回想>において、ハドリアヌスに成り代わって、後継者マルクス•アウレリウスに語っている。

    <ローマ人の物語>を読み進めてくると、一神教であるユダヤ教の異様さ、それを引き継いだキリスト教の異常さを思い知る。
    ユダヤ教を同じ母体として生まれたキリスト教とイスラム教。
    ローマ帝国を変貌させてそれを支配したキリスト教と、イスラム大帝国を作り出したイスラム教は、何が同じでなにが違うのか?
    こうしてみると、マックス•ウェーバーの宗教社会学の凄さを思い知る。
    宗教社会学は社会学の一分野などではないのだ。
    実は社会学そのものが宗教社会学なのだ。
    マルクスも、フロイトも、デュルケムも、見田宗介も、橋爪大三郎も、大澤真幸も、宗教社会学者なのだ。

  • 皇室の血を継ぐわけでもなければ、高貴な家の出身でもない。
    たたき上げの皇帝がここまで帝国運営を全うできるとは!
    時代をさかのぼってアウグストゥスに言ってやりたい。
    「大事なのは血じゃないぞ」

    元老院と対立しないよう気を遣いながら、最短距離でことを進める手腕というのは、見事というほかない。
    基本的にローマの富裕層は、私財を公共のために使うことを名誉と思い、また義務とも思っていたので、国費を使わずに公共事業などが行われることも多かったのだが、それでも本当に必要なものを見極め、優先順位をつけ、ことに当たるのが皇帝の仕事なのだ。

    ローマ皇帝の三大責務とは以下の通り
    1.安全保障
    2.国内政治
    3.インフラ整備

    そのうえでトライアヌスは善政を敷くため精力的に政務をこなす。
    ちなみに善政というのは”正直者がバカを見ないですむ社会にすることにつきる”。
    おお、日本の政治家も頼むよ。
    トライアヌスは地元に利益を誘導するどころか、辺境にある地元に帰らずに帝国全体のための皇帝たらんとしたのだ。

    それでも、治世が20年も過ぎれば、やはり自己を過信したり、または苦言を呈する者がなかなかいなかったりして、判断を誤ることもあるのだなあというのが彼の晩年。

    そして、世界史は全然わからないけれど、これほどまでに法治主義で現実主義のローマ人が帝国を崩壊させていったのは、キリスト教のせいなんだなあということが、なんとなくわかってきた。

    キリスト教徒について小プリニウスがトライアヌスへ送った書簡には
    ”キリスト教への帰依が何を意味するかには関係なく、頑迷ということだけでも罪に値する”
    と書いてある。
    多神教からすると一神教の頑迷さはそれだけで罪、というのは確かにあるだろう。
    柔軟性を失ったら、国でも人でも発展していくのは難しいからね。

  • まじめな人だなあ、トライアヌス。

  • ようやくと言いますか、本題とも言えるキリスト教への評価が明らかな形で表出してきました。
    どういう整理をつけようとしてるんですかね?この作家は。
    ローマと今のイタリアは結び付かないという結論は変わりないようですが、今のイタリアが魅力ないのか?とは必ずしも言っている訳でもなさそうで、どういう考えなのか、これはこれで楽しみです。というかそうでないと、ここまで読み進められないほどの長さです、はい。

  • 属州出身の皇帝。堅実ですごいなぁと思う反面、少し退屈した。

  • 特になし。
    時代的にやや退屈。

  • 4-10-118174-8 290p 2006.9.1 ?

  • 五賢帝の一人、トライアヌスの治世。
    ネルヴァに指名され、属州出身では初の皇帝となるトライアヌス。
    ダキアを攻め、ドミティアヌスが定めたローマ防衛戦をさらに広げ、盤石なものとする。
    防衛が固まった後、公共工事とその他の内政を着実に成し遂げ、帝国を確固たるものとする。
    晩年はローマが常に抱え続けてきたパルティアとの問題を軍事解決しようとするも失敗。東方で病に倒れる。

  • この上巻では、愚帝とされていた時代の後の「賢帝」とされていた時代の話。
    その初期の「トライアヌス」帝の話です。

  • いわゆる「五賢帝」の2人目にして、初の属州出身の皇帝であったトライアヌスの治世を取り上げている。

    ローマ帝国最大の版図を達成することとなるダキア遠征といった外征、ローマを中心とするイタリアへの投資を誘導する経済政策、数々のインフラ整備、さらには元老院や裁判への出席をはじめとする日常の統治と、およそローマ皇帝のやるべき仕事を、全ての項目にわたって真摯にこなし、そしてその成果を挙げた皇帝という印象を受けた。

    本書の中で筆者も何度か述べているが、良き皇帝であろうとして、その努力を怠らなかった皇帝であり、その意味で「賢帝」という評価はもっともである。

    あまりに明確な欠点がなかったがゆえに、歴史家が食指を動かさず、伝記が残っていないというのは非常に皮肉な話である。

    そうであるからこそ、乏しい史料の中からトライアヌスの業績を丁寧に描き上げた筆者の仕事は、非常に有意義なものなのではないかと感じた。

    同じ筆者でもカエサルの描き方とは対照的であるが、歴史家とは異なる作家という立場から描いたローマ史の魅力は、このようなところでも発揮されている。

    そして、国家を統治するということが、本質的には英雄の仕事ではなく、地道、かつ誠実な仕事の積み重ねであるということを、この巻全体を通じて静かに訴えているように思った。

  • カバーの金貨について
    皇帝トライアヌス(皇帝への道;気概を胸に;ひとまずの帰都;古代ローマの“君主論”;空洞化対策;育英資金;ダキア問題;第一次ダキア戦役;建築家アポロドロス;「トライアヌス橋」;黒海から紅海へ;第二次ダキア戦没;凱旋;戦後処理;公共事業;属州統治;プリニウス;私人としてのトライアヌス;パルティア問題;遠征;死)

    著者:塩野七生(1937-、北区、小説家)

  • 自分は五賢帝の存在すら知らなかったので、トライアヌス帝の功績などは全く知らなかったのだが、これを読むとかなりよい皇帝だったのではないかと思える。
    それにしてもローマ皇帝の最重要な役割が「安全保障」と「公共事業」であるという事はこれまでにも書かれていたが、ドナウ河に掛けた橋の設計図を見た時には紀元2世紀の段階でこんな建造物が作れたのかと感心してしまう。
    [more]
    トライアヌス帝が就任直後に低地ゲルマニアに留まり、首都ローマに中々帰還しなかったと読んだ時は、反逆者とかが首都にででこなかったのかと思ってしまうが、そう言った記録は全くないのだろうか?

  • ローマ帝国の最盛期の時代、賢帝の世紀と名付けられた5人の皇帝の初めの皇帝がトライアヌスです。
    さぞかし、華やかな展開が繰り広げられるのかと思いきや、この時代を書くに当たって作者の困り果てた事情が曝け出されます。それは、トライアヌスの治世についての信頼を置くに値する文献が絶無だったからです。いつも良きにつけ悪しきにつけ参考にしていた歴史家タキトウスもこの時代については「まれなる幸福な時代」という一行を書いただけでした。そのような、冒頭の「告白」があってのこの巻の内容ですから、血踊るというような場面の記述はなく、ダキア族相手の戦争にしても戦記物が残っていないため、「トライアヌス円柱」にある場面ごとの浮彫りの解説になっています。
    ローマ帝国皇帝の三大責務として、1.安全保障、2.国内政治、3.社会資本の充実があるとのことですが、トライアヌスは、この3つの責務を一つ一つと着実に進めていきます。さらに、物語として読むのに楽しみな私生活にしても、トライアヌスには邪悪や堕落の一かけらも見出せない…と言わしめる存在ですから確かに伝記を書く方は困ってしまい、読む方も面白くもないのでした。そうは言っても、目いっぱい頑張って、任務途中で病に倒れた彼に作者は、属州出身者として初めてローマ帝国を治めたことをねぎらっています。

  • ローマの版図最大とするトライアヌス治世の時代。
    あまり資料が残っていなくて、小プリニウスのメッセージやトライアヌス円柱が貴重な資料となっています。

    彼の大事業のひとつトライアヌス橋はその後解体補強破壊研究などがありましたがドナウ川を大型船の航行に活用したいオーストリアハンガリー帝国により姿を消したそうです。

    ダキア戦役での大成功そしてパルティア遠征
    唯一の欠点が酒飲みということか。

    最後に塩野女史
    「あなたはなぜ、あゝもがんばったのですか」
    トライアヌスの肖像に問いかけます。
    彼女の憶測にほろっときます。

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