ローマ人の物語 (29) 終わりの始まり(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.76
  • (60)
  • (109)
  • (118)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 977
感想 : 68
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181790

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ローマ帝国最後の輝きを放った、五賢帝マルクス・アウレリウスの巻。有能な皇帝で平和な時代だと思っていたが、案に違い厳しい時代だった。パルティア戦役からゲルマン人侵入、ペストもあり、ローマ帝国崩壊の最大の原因になるキリスト教の影も大きくなり始める。
    そしてリメスがとうとう崩壊した。
    マルクスの最大の失敗はルキウスを皇帝として並立させたことではないか。指示系統が、特に戦時に上手くいかなかったように思う。
    とにかく本当に最高に面白いシリーズだ。塩野さん、ありがとう!

  • 自省録のマルクス・アウレリウスの治世。賢帝と呼ばれるが、何かを見落としていたから彼の治世後ローマは終焉に向かうのではないか。そんな視点が随所に入っている。後世から見ればそうなのだろうけど、平和ボケではないが、平和だからこそ気付けないことがあるのだろうと思う。だから、今の日本、私たちも何か大切なことを軽く見ていたり、気にも止めていない、ということがあるのかもしれないと、ちょっと怖い気持ちになる。だけど、やはり賢帝アウレリウス。ちゃんと抑える所は抑え、とても誠実に皇帝として活動している。これを読んだ後自省録を読むと、深さが違うのだろうな。

  • 塩野七生はローマ帝国の『終わりの始まり』を、五賢帝の最後の一人、マルクス・アウレリウスから書き始めた。
    なので、彼の治世が終わったことが終わりの始まりなのではなく、彼の治世の中にすでに終わりの萌芽があったのでは、ということなのだな、と思って読み始めたのだが。

    実はハドリアヌスとその次の皇帝アントニヌス・ピウスとの間の、政策の断絶にあったようなのである。
    ハドリアヌスはその治世のほとんどの期間を、帝国の辺境を視察し、地域の、組織の、インフラの問題を徹底的に洗い出し、解決しまくった。

    ”一般の人よりは強大な権力を与えられている指導者の存在理由は、いつかは訪れる雨の日のために、人々の使える傘を用意しておくことにある。ハドリアヌスが偉大であったのは、帝国の再構築が不可欠とは誰もが考えていない時期に、それを実行したことであった。”

    ところがアントニヌス・ピウスは、事前に手を打つという必要性を理解しない人だった。
    そして、次の皇帝にするはずのマルクス・アウレリウスを手元に置いて帝王学を学ばせはしたが、辺境に行ったり軍隊を指揮したりの経験をさせなかった。

    アントニヌス・ピウスの時代、帝国は平和で、何の問題も起こらなかった。
    ハドリアヌスの構築したシステムの中で、全ては処理できたのだから。
    けれど、マルクス・アウレリウスの時代になって、平和慣れしたローマに蛮族が襲いかかる。
    どうも戦い慣れしていない様子のローマに、あちらもこちらも刃向かってくるように。
    しかしマルクス・アウレリウスはそのような時にどうしたら良いのかわからない。
    経験がないし、適任者もわからない。

    マルクス・アウレリウスは素直で賢くて努力家なので(子どもか?)、最終的には何とかなった。
    だから賢帝と呼ばれたのだろう。
    だけど、ラッキーは続かない。
    そこからローマ帝国の終わりがはじまったのだろう。

  • [評価]
    ★★★☆☆ 星3つ

    [感想]
    平和というものが扱いが難しいということを改めて感じる内容だった。地球上がネットワークで繋がり、お互いのことを知ることは難しくない現代でも争いは絶えない。
    平和において、戦争に備えることは大変なんだと思ったよ。

  • マルクス・アウレリウスのお話し。
    神経質な感じがするけど結構好き。
    16、インペラトール・カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥス

  • ハドリアヌス帝に見出されたマルクス・アウレリウスはアントニウス・ピウスの養子となり、その統治を身近で学び、161年ローマ皇帝になる。弟のルキウスと共同で皇帝となる。繁栄したローマ五賢帝時代最後の皇帝である。
    「自省録」という日々の内省と思索に満ちた倫理書を書いた。「人間は公正で善良でありうるかなどと、果てしない議論を続けることは許されない。公正に善良に行動すること、のみがもとめられているときが来ている」
    当時のローマは、他民族・多文化・多宗教が共生し誰にでも通じる法律の整備がなされ、広大な領域での民主的な統治体制が確立した、まさに繁栄の大帝国が実現されていた。
    しかし170年、帝国にとって最も重要なドナウ河防衛線が異民族に破られ、「リメス破らる」の「最悪の年」になってくるのである。
    満れば欠くる、ローマ帝国衰亡への始まりである。

  • 五賢帝時代なのに、終わりの始まりってどういうこと?って思いながら読みました。なるほどねーって思いました。

  • ちょっと飽きてきてます、読むのが少々キツイ。。。
    キリスト教をどのように扱い、調理するのか、作家的センスが足りないので、ワクワク感があんまりないんですよね、このお方の文章は。まぁそんなこと考えとらんわ、と叱られそうですけど。

  • 「終わりの始まり」まだそこまで不穏な空気は見られず。

  • 主に五賢帝の最後、マルクス・アウレリウスの治世を扱っている。
    まず、最初にアントニウス・ピウスの治世の成果が概論される。著者によると平和な時代により、危機時の対応策が甘くなり、また、時代の変化にも鈍感になり始めた、というもの。一般的な評価よりも低い評価を与えている。
    その後、マルクス・アウレリウスの治世にバトンタッチがなされるが、皇帝就任後、災害、東方の攻撃、ペスト、蛮族の侵入と様々な課題が一気に噴出。
    哲人皇帝と後世に評される、五賢帝最後の皇帝の治世は前途多難な治世となる。

全68件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×