ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181806

感想・レビュー・書評

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  • 皇帝マルクス・アウレリウスとその息子コモドゥスの巻。久しぶりの真の親子の後継である。
    統治に無関心のコモドゥスが皇帝になったことからローマ帝国は終わりを始める。
    コモドゥス治世の12年は穏やかな時代だったが、この時期に優秀でヤル気のある皇帝であれば大鉈を振るいローマ帝国の寿命は伸びたのかもしれない。

  • 映画「グラディエーター」についての話もあって、私も観た映画だったので、大変興味深く読ませていただきました。また、立派な皇帝とその息子で、次の皇帝についての話だったので、家族についても考えさせられました。

  • この本を読んで、改めてグラディエーターを見てみたくなった。

  • [評価]
    ★★★☆☆ 星3つ

    [感想]
    マルクス、コモドゥスの2時代となっている。
    マルクスの時代は初期の失敗を踏まえ、戦争の必要性を認識し、皇帝自らが前線に張り付いていることは好印象だが、ローマにいる元老院からすると蔑ろにされているという印象を与えてしまっていることがローマ帝国の難しさだと感じた。
    コモドゥスの時代は戦争を終わらせ、平和な時代担ったと思ったら暗殺事件が起こり、内側が騒がしくなるとなんだかなと感じた。

  • マルクス・アウレリウスの治世後半とコモドゥス。
    やっぱり若い皇帝は難しい。

  • 「自省録」に象徴される哲学者の賢帝マルクス・アウレリウスは統治後半、侵入する蛮族との戦いに終始する。家族と現地に身を置き、軍隊に尊敬される最高司令官として、防衛線を破る蛮族に対する戦闘に忙殺される。その戦術次元の戦いにはカエサルやハドリアヌスのようなローマ帝国全体の戦略構想が決定的に欠落していた。彼のキャリア上やむおえないか。
    異民族との関係の悪化、そのような状況下、マルクスは実子コモドオウスに帝位を譲るという決定的な誤りを犯す。コモドオウスは皇帝ネロ・皇帝ドミテアヌスについで、暗殺された後元老院から3人目の「記録抹殺刑」に処される。「この2人の先輩と比べても公共建築も建てなければその修理もしなかったので、消さねばならない碑文さえもないのだった」
    パックスロマーナ・五賢帝の時代の終焉が急速に進行する。

  • 親ができる人だからって、子どもができるとは限らない。
    親が内省的だからと言って、子どもがそうだとは限らない。
    だから世襲というのは恐ろしい。
    だけどゴリゴリの実力主義は、政治の混乱を招くかもしれない。

    マルクス・アウレリウスは賢い人であり、善い人であったけれど、ローマ帝国の軍隊を率いる皇帝としてはあまりに戦いということを、軍隊というものを知らなかったのだろう
    カエサルほどの戦上手ではなくても勝てそうな相手に、負けはしないがずるずると戦を長続きさせてしまったのは、それだけで罪といえる。

    ”事態の解決を長びかせることは、それ自体ですでに「悪」なのである。はじめのうちならば小規模な対策で解決できたかもしれない問題も、長びけば長びくほど、解決に要する血も軍費も増大せざるを得ない。
     しかし、これらのことよりも深刻で後を引く弊害は、当事者であろうと非当事者であろうと関係なく生じてくる、自信の喪失であった。余裕がもてなくなると人は、その回復に努力するよりも、別の誰かを犠牲にすることで気を晴らそうとする。”

    今でいうと、自粛警察とか飲食店いじめのようなことか。

    だからマルクス亡きあと、後を継いだコモドゥスが戦争を終了させたというのは、あながち間違いとは言えないと著者は言う。
    ただ、これが40~50歳の、経験を積んだ人の政策なら受け入れられたのかもしれないけれど、まだ20歳かそこらの若造が言葉足らずに決定したことなので、長いこと宣戦で戦ってきた人たちには受け入れられなかったのだろう。
    だが、遠目に見ていたからこそ、わかることもある。
    長びかせることの愚を避けたのだ、という見方はできる。

    けれど、実の姉に暗殺されそうになった後からコモドゥスは変わる。
    皇帝としての義務を果たすことなく、己の興味のあることにしか目を向けなくなってしまった。

    いつ殺されるのかわからないなら、好きなことだけをして過ごしたい、と思うのは、まあわかる。
    だけど、皇帝の責任を果たすことができないのなら、誰かに譲ることは…できないのか。
    終身制だからね。(日本の天皇と一緒だ)

    暗殺されたとき、コモドゥスは言われたのかな。
    「生まれの不幸を呪うがいい」

  • 今更ながらなのですが、ローマを語りつつ、政治を語りたいこの作家からして、何故キリスト教がローマ世界に広がっていったのか?については基本、興味外なんでしょう。
    そういった説明を本作に求める方がお門違いなので、粛々と読み進めるだけです、ここまで来たら。

  • 哲人皇帝マルクス・アウレリウスは、その通称とはかけ離れて、治世の大半を辺境での蛮族との闘争に費やすことになる。戦役の合間に、謀反の動きがあり、一時的に戦役の中断を挟むものの、戦闘の前線にあり続ける。
    そんな最中、マルクス・アウレリウスは病に倒れ、前線で死に至る。
    皇帝位を受け継ぐのは、その息子コモドゥス。コモドゥスは、マルクス・アウレリウス帝の遺志である、蛮族との戦闘の継続を破り、講和を結び、ローマに帰還する。
    その後、実の姉ルチッラによる暗殺計画を機に独裁的な性格を強める。政治上の右腕であったペレンニスも猜疑により殺害を図った後は、側近の横暴のままになり、コモドゥスの評判は最悪に。最後は愛人による暗殺によってその治世も終わりを告げる。
    暗殺の理由は現代に至るも不明であり、哲人皇帝と呼ばれた人物の息子は、対照的に剣闘士皇帝と呼ばれ、ローマの衰退のきっかけを作ったと今もなお言われることとなる。

  • すべての崩壊はわずかな綻びから始まるが、わずかな綻びのすべてが崩壊をもたらすわけではない。
    綻びが重なり連なったとき、即ち皇帝の引き継ぎ失敗の連鎖こそがローマ崩壊の原因だとすれば、これはその始まりだろう。

    100年の平和の後の外的襲来に、戦争に不慣れな皇帝があたったとしても挽回可能であった。
    しかし、先帝が有能であればあるほど、その跡継ぎに対する忠誠は盲従となる。
    今までは、幸か不幸か皇帝は実子に恵まれず、有能な後継者を養子にすることで体制を保ってきたが、
    今回に限ってはそうでなく、能力でなく血筋で選ばれ、しかもそれは失敗した。

    コモドゥスは暴君に生まれついたわけではないが、不運な家庭環境がそうしてしまった。
    人間は、欲しい物が与えられなくとも自暴自棄にはなれないが、持っていたものを奪われるときはそうではない。
    "怒り"よりも"恐れ"こそが、多くのものを破壊する暴力の源泉となる。
    まずこの病にかかったのは、皇后の地位を奪われんとした姉であり、その姉による暗殺計画により、コモドゥスは猜疑心の塊となってしまった。

    家族だけでなく、有能な部下や元老院議員までもが次々と処刑され、残るのは実利のみを求める追従者のみ。
    能力がない追従者は権力を持っても金と権限をばらまくことしかできず、腐敗は加速する一方となる。
    皇帝権力のチェック機関であったはずの元老院は、明確な"敵"や反対意見、思想の違いにはこれまで対抗できてきたが、
    敵でも味方でもない、何の思想も持たない皇帝の側近が独断で行っていた買収により形骸化されてしまっていた。

    確たる原因も明らかにされないままなんとなく皇帝は暗殺され、残されたものは混乱以外何もなかった。
    ローマが過去の危機を何度も乗り越えられたのは"中興の祖"たる実力者があってのことであったが、
    今のローマにそれを可能とする体制は残されていただろうか。次巻に続く。

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