ローマ人の物語〈37〉最後の努力〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2009年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181875

ローマ人の物語〈37〉最後の努力〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 帝国の絶対専制君主となり、キリスト教振興を図るコンスタンティヌス帝の治世を描く。
    輝かしいローマ文明は、キリスト教と蛮族来襲のために、暗黒の中世に向かって転落していく。
    作者も熱が入らなかったようで、物語は淡々と進む。

    それでもなにげなく、

    「中年の女の恋は、若い女のように夢からではなく、絶望から生まれるものなのである」(p55)

    こんな渋いことを語るので油断ならない。

  • 四頭政治後のConstantinus 帝の政策、おもにキリスト教に焦点をあてている。
    Constantinus は大帝と敬称がつくとおりキリスト教徒側から見てみると歴史上、もっとも重要な人物の一人である。

    彼はキリスト教を公認(ただし、国教とまではせず弾圧されていたキリスト教についにてローマ帝国民に宗教の自由を与えた)し、その後にニケーア公会議にてアタナシウス派とアリウス派のどちらを正当とするかの論争に決着を付けた。この会議により、イエス・キリストの神と同一視できるという三位一体説が現在に至るまで正統とされている。

    Constantinus がなぜ当時のキリスト教弾圧の政策を180度転換し、一転して容認するようになったのかは本書でも十分には語られていないし、今もあまりよくわかっていないそうだ。

    彼はローマ帝国を再統一し、専制君主制の礎を作ったとされるが、正しくはローマ帝国を作り変えてしまったといっても正しいだろう。
    彼以前は、主権はローマ帝国民にあったし皇帝といえど元老院の承認によって立法することができたが、彼の治世になっていよいよ立法は皇帝化の勅命という形になった。
    後の王権神授説をも考慮すると、どうやら専制君主制というのはキリスト教と親和性が良いらしい。

    これから150年後にローマ帝国は滅びることになる。
    そろそもこのローマ人の物語も終わりに近づいてきている。

  • 国の最後というのは、市民の公共性も失われて行くんだな。そして、格差が開いていく、治安も悪くなる。

  • コンスタンティヌスが中世を作ったことが良く分かった。キリスト教におけるコンスタンティヌスの重要性も。

  • (2016.10.22読了)(2016.10.12借入)
    324年に唯一人の皇帝になったコンスタンティヌスは首都をローマからビザンティウムに移すことにした。完成を祝う式典は、330年の5月11に行われた。
    コンスタンティヌスの作った都なので、コンスタンティノポリスと呼ばれます。現在のイスタンブールです。
    「ローマにあってコンスタンティノポリスにはなかった建物となれば、まず第一に神殿、第二はコロッセウム式の円形闘技場や長方形の競技場。ついでは半円形の劇場となるだろう。」(21頁)
    通貨については、銀貨に対する信頼が低下する一方だったので、銀本位制を金本位制に変えています。これによって富の格差が生じたとのことです。給料を金貨でもらえる軍人行政官僚および税金の物納を認められていた生産業者は富み、そうでない人は、通常通貨の銀貨を税金を払う時には、両替商で金貨に変えて払う必要があったので不利だったとのことです。
    312年6月に、キリスト教の信仰を認める「ミラノ勅令」が公布されます。コンスタンティヌスとリキニウスの連名で出されています。
    311年4月に既にガレリウスによって信仰の自由が認められる勅令が出ているので「ミラノ勅令」が特に画期的だったわけではありません。
    大きな違いは、コンスタンティヌスによって出された「ディオクレティアヌスによる弾圧時に没収されていた教会資産の返還を命じ」「没収後に競売に付され、それを買い取って所有している者には、返還に際しては正当な値での補償が、国家によって成される」と書かれていることです。

    【目次】
    カバーの金貨について
    第二部 コンスタンティヌスの時代(承前)(紀元三〇六年‐三三七年)
    唯一人の最高権力者
    新都建設
    指導層の変貌
    軍の変貌
    富の格差
    家庭内悲劇
    第三部 コンスタンティヌスとキリスト教
    雌伏の時期
    表舞台に
    「ミラノ勅令」
    キリスト教振興策
    ニケーア公会議
    「インストゥルメントゥムム・レーニ」(Instrumentum regni)つまりは「支配の道具」
    年表
    参考文献
    図版出典一覧

    ●キリスト教振興策(85頁)
    コンスタンティヌスによる、皇帝の私有財産のキリスト教会への寄贈
    ●『コンスタンティヌスの寄進状』(87頁)
    これには、皇帝コンスタンティヌスがヨーロッパ全土をローマ法王に寄贈したことが記されてあった
    それが、西暦1440年になって、全くの偽作、ということが実証された(88頁)
    ●聖職者階級の独立(89頁)
    キリスト教の神に一生を捧げると決めた人の全員に、国家の公職から地方自治体の役職、それに軍務に至るまでの、あらゆる公務につかない権利を認めるとした
    ●生活の困窮(94頁)
    食べていくためにキリスト教に改宗する人々は多かった
    ●聖職者の独身(95頁)
    キリスト教会の聖職者に独身が義務づけられるようになるのは中世に入ってからである。イエス・キリストに従った十二使徒のうちの多くが妻帯者であり、初期キリスト教会の司教の多くも妻帯者であった。
    ●新都の振興策(97頁)
    エジプトで産する小麦のすべてを、新都向けに振り替えた
    ●世界支配(108頁)
    ローマ人は三度、世界を支配した。初めは軍団によって。次いでは法律によって。そして最後はキリスト教によって。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
    「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
    「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
    「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」塩野七生著、新潮社、2000.09.30
    「ローマ人の物語(27) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
    「ローマ人の物語(28) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
    「ローマ人の物語Ⅺ 終わりの始まり」塩野七生著、新潮社、2002.12.10
    「ローマ人の物語Ⅻ 迷走する帝国」塩野七生著、新潮社、2003.12.15
    「ローマ人の物語(35) 最後の努力」塩野七生著、新潮文庫、2009.09.01
    「ローマ人の物語(36) 最後の努力」塩野七生著、新潮文庫、2009.09.01
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (「BOOK」データベースより)amazon
    紀元324年、ライヴァルのリキニウスを敗走させ、ただ一人の最高権力者として内戦を勝ち残ったコンスタンティヌス。帝国全体の一新を企て、自らの名を冠した新都コンスタンティノポリスを建設。帝国の絶対専制君主として君臨したコンスタンティヌス帝は、旧来の安全保障の概念を放棄し、キリスト教を特権的に振興。ローマをまったく別の姿に変えてしまう。それは中世のはじまりの姿だった―。

  • 「これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのであろうか」

  • 18世紀の啓蒙思想が
    3世紀で実現されているとは、おそるべしコンスタンティヌス蒂

  • 紀元324年、ライヴァルのリキニウスを敗走させ、ただ一人の最高権力者として内戦を勝ち残ったコンステンティヌス。帝国全体の一新を企て、自らの名を冠した新都コンステンティノポリスを建設。帝国の絶対専制君主として君臨したコンステンティヌス帝は、旧来の安全保障の概念を放棄し、キリスト教を特権的に振興。ローマをまったく別の姿に変えてしまう。それは中世のはじまりの姿だったー。

  •  唯一の最高権力者となったコンスタンティヌス大帝が,ローマを建て直すため,どのような新しき首都,新しき政体,新しき宗教による,新制ローマ帝国を構築したのか,そして,「大帝」とまで後世に呼ばれることになるキリスト教振興を何故実施し,それの影響がどうだったのかという物語です。次のXIV巻の冒頭にも書いている「時代の転換点」を,コンスタンティヌス帝がどのように作っていったのかという詳細な物語になっています。
     ローマ史に関する話も,コンスタンティヌス帝まで来ると,ローマの建国からという過去の話だけではなく,中世という次の時代を頭に入れながら読み進めると,いろいろと考える材料になると思って読んでいました。ローマという国家は残っていても,政治の仕組みや,人々の生活,考え方などは,少しずつ,中世にシフトしていったというのがこの時代なんだと思います。

     そうまでしてローマを起たせた,これまでのローマのあり方とは異なる,ディオクレティアヌス帝の絶対君主制や,それに宗教という要素を付加したコンスタンティヌス帝の改革についての塩野さんの評価は,XIII巻のタイトルの「最後の努力」という言葉に集約されていると思います。そして,この「最後の努力」に対する塩野さんの評価は,このXIII巻の最後の一節に集約されていると思います。

  • 「支配の道具(Instrumentum regni)」のつもりが、支配されてしまった感のあるローマ。

    首都もローマから、コンスタンティノポリス(イスタンブール)へ。キリスト教が比較的多かった帝国東方で、ローマ帝国とはもはやいえない、ローマ帝国がかろうじて延命される様を、当のローマの人々はどう見ていたのか。

    「ミラノ勅令」
    宗教を旗印にしては争いをやめない人々に、読ませてみたいと著者。ほんとそう思う。

    そして、三位一体説。。。これがいまのキリスト教がキリスト教になった所以とはいえ、なぜに人と神が同位なのか。そう思いたい気持ちが想像できないわけではないが、まったくもってやっかいな盲信と思うのは罰当たりか。まあいまのキリスト教信者がこれを信じているのかどうかはよくわからないところ。誰か研究してないかしら。

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