ローマ人の物語 (39) キリストの勝利(中) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.90
  • (58)
  • (104)
  • (62)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 835
感想 : 69
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181899

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • キリスト教の反撃が始まった。それは奇しくも背教者ユリアヌスの登場がきっかけだったようだ。他者に強要を強いる一神教の弊害に気付いたユリアヌスが新たなる法律で対抗する。しかし皇帝にさえ反旗を翻す信者の行動は、より強固な偏った信仰へと突き進む。さらにアタナシウス派(カトリック)とアリウス派というキリスト教内の争いも勃発し、ニケーア公会議も棚上げにされてしまう。暴走のキリスト教のその後は下巻へ。

  • 幼少期にコンスタンティウスによって人生を一変させられたユリアヌス。幽閉されたかと思えば、急に副帝に任命されてしまった彼がついに主役となった巻。
    人が、自分ができる = みんなもできる、と思い込んでしまうのはずっと変わることない特徴なんですね。自分もついつい思ってしまいますが、見える世界は一人一人違うものなんだと改めて気づかされた巻でした。

  • ユリアヌス若く亡くなってしまった。残念です。
    もう少し頑張ってほしかったが、難しい時代だったのだろう。

  • 1回目:2023/01/03

  • ユリアヌス帝は頭の良い方だったのですね。もっと昔に登場すれば、賢帝と呼ばれたかもしれないのではないかしら?

  • せっかくただ一人の皇帝になったというのに、ユリアヌスの在位はほんのわずかなものだった。
    副帝として前線に立ち、コンスタンティウスの疑いのまなざしを躱しながら善政を行っていたのに、皇帝となって権力を持った時に、使える人材があまりに少なかった気がする。

    そして、哲学者であったユリアヌスは、普通の庶民がどれだけ既得権にしがみつくのかを考えなさ過ぎた。
    ユリアヌスの行ったことは、長い目で見たらローマ帝国のためになるものだったけれど、それは庶民の理解を得られるものではなかった。
    ユリアヌスの治世が1年9カ月ではなく、19年だったらローマ帝国はもう少し生きながらえただろうか…。

    政治って難しい。
    そして行政はひとりの英雄のやる気だけではどうにもならないのだ。
    清濁併せ呑む度量と、根回しが必要だった。
    そしてそれをユリアヌスに教えられる側近も。
    返す返す惜しい人材だった。

  • コンスタンティウス帝は、宦官の側近の意見を入れがちで、有能な部下を次々と粛清していく。それは、副帝であるユリアヌスにも及ぶ可能性は高い状況だった。一方、そのユリアヌスは帝国の西方、ガリアの再興に成功、ローマによる統治を回復する。
    帝国の東方で、ペルシャとの戦闘を控えるコンスタンティウスは、ユリアヌス配下の軍を東方に配置換えしようとするが、軍団の反対にあい、逆にユリアヌスを正帝として担ぎ始める。
    ここにきて、ユリアヌスはコンスタンティウスとの対決を決意。しかし、開戦する前にコンスタンティウスは病に倒れ、ユリアヌスの時代となる。
    ユリアヌスは、コンスタンティウスが推進したキリスト教の保護を否定し、全ての既得権益を廃止する。ここにキリスト教信者との対立を生む。
    ユリアヌスは、ペルシャとの対決をコンスタンティウスに代わって実行するが、結果的にはキリスト教を信じる部下との確執が絡まり、上手く戦果を上げられない。そんな中、ユリアヌスもペルシャとの戦闘中に傷を受けて死去。
    次なる皇帝にユリアヌスの護衛隊長であったキリスト教を信じるヨヴィアヌスが、軍団内で選ばれる。ヨヴィアヌスは、ペルシャと講和し、反キリストの政令を廃止しながら、コンスタンティノープルに帰る。しかし、その途中に謎の死を遂げる。
    作者はユリアヌスがキリスト教に対抗したのをローマの最後の足掻きとして、評価するスタンス。キリスト教の浸透がローマ的なるものを次々と奪っていく中、そのような見方もかなり納得できる。

  • この巻では、一般的に「背教者」というフレーズで名を知られているユリアヌスの皇帝としての歩みを辿っています。若く気概に燃えていたユリアヌスは、この頃のキリスト教優遇の政策を元に戻し、帝国民におけるあらゆる信仰の存在を公認しました。つまり、「異教徒」というような排斥の想いがあってはならないというものでした。ユリアヌスには前皇帝のコンスタンティウスが布いた司教たちを味方につけた恐怖政治への疑問がありました。また彼には30歳という年齢ながら再婚もせず子も持たない潔さがあり、キリスト教国化という時代の流れに逆らう意思を形作るものになったようです。
    しかし、彼の試みは、キリスト教勢力と「異教徒」たちによる反撃やキリスト教内部の教理論争の騒乱を招き、ローマ帝国にとっ大事な「オリエント」の脅威からの防衛を危うくさせるものになります。
    紀元363年3月、ユリアヌスは、誰一人心からこの戦役に頼れる人がない状態で懸案のペルシャ戦役に旅立ちます。そして、3か月後、作戦の失敗による撤退中に戦死します。皇帝になって僅か1年9ヶ月後のことでした。
    次期の皇帝はユリアヌスの布いた政策をすべて廃棄し、短期間で代わったその次の皇帝は、反ユリアヌス派のゲルマン民族出身の者がなります。
    筆者は、古代ではユリアヌスが唯一人、一神教のもたらす弊害に気づいた人ではないかと述べています。ユリアヌスが長く治世していれば…神を信じれば現世の利益をもたらすという世界観が支配する世界にはなっていないのでは…という筆者の指摘に鮮烈に生きたユリアヌスに想いを馳せました。

  • 「背教者」ユリアヌス、とても興味深い!短い生涯をドラマチックに生きたと思う。辻邦生氏の「背教者ユリアヌス」もぜひ読んでみたい。

  • 前巻からの流れでユリアヌスが活躍することを期待して読んだのだが、そうはならなかった。

    ガリアで将兵の人気を博したユリアヌスも、キリスト教の色濃い東方のアンティオキアでは住民の心をつかむことができず、悪い流れのままペルシア遠征へ。

    ペルシアに勝つチャンスがありながら、不運な死を遂げてしまう。

    読んでいてユリアヌスに好感を抱いてしまうのは、暗黒の中世へ向かうことに抵抗した人だからだろうか。

    辻邦生著『背教者ユリアヌス』は読みたい本の一覧に入ることになった。

全69件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×