ローマ人の物語 (42) ローマ世界の終焉(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181929

感想・レビュー・書評

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  • アッティラ、ゲンセリック、オドアケルと5世紀蛮族の有名人が勢揃い。華やかで魅力あふれるローマ帝国の衰退ぶりに悲哀を感じ、本当にローマは終わるんだとまじまじと思った。フン族のアッティラの破壊ぶりは、後年のモンゴルによるオアシス都市バーミヤンの徹底破壊を思い出さされた。

  • 壮大なローマ帝国の歴史がいよいよ幕を閉じる時。

    読んでいる間中何度も、これまでのローマ帝国の栄華や華麗な登場人物を思い返した。
    スキピオ、カエサル、アウグストゥス、トライアヌス…彼らが繋いできたバトンが途絶え、ローマがローマでなくなる時。
    これまで長く読んできたからこそ、それを目の当たりにするのは辛かった。

    現実を直視せず利己的な為政者、政治に無関心な有権者が国の退廃をもたらすのだと感じる。
    それは、古代ローマに限った話でなく、現代にも通ずる。

    皮肉なことに、国の繁栄が国民に安寧をもたらし、それが国民に自国の安泰を過信させる。その結果、政治の退廃、国力の低下へと繋がっていく。

  • ついにローマ帝国が終焉を迎える。といっても、劇的なエンディングがあるわけではなく、川面に浮かぶ泡が溶けてなくなるように。あと1冊、きっちり看取ろう。歴史を通読することで、現代に活きる『何か』を掴めるかもしれない。

  • 遂に西ローマ帝国が滅亡の時を迎えます。
    自身が先頭に立って国を治めるどころか、才能ある人材すら使いこなすことができないまま、蛮族におびえ、自分の安寧だけを切に願った皇帝ホノリウス。
    息子もなく、後継者を決めることなく死んだ彼は、最後まで無責任。
    またまた短期政権の乱立時代が始まる。

    東ローマ帝国は、蛮族との緩衝材としての西ローマ帝国の存在を必要としていたので、ついに手を差し伸べる。
    西ローマ帝国の皇帝を派遣し、ともに蛮族に立ち向かおう。と。
    しかし蛮族の方が一枚上手で、蛮族に帝位を廃された後、さらなる皇帝を立てることもできず、そっと滅亡していった。
    諸行無常。

    ”帝国は、傘下に置いた諸民族を支配するだけの軍事力を持つから帝国になるのではない。傘下にある人々を防衛する責務を果すからこそ、人々は帝国の支配を受け入れるのである。兵士もカネもなくなったから、もはやお前たちを守る役目は果せなくなった、ゆえにこれからは、自分で自分を守れ、と突き放したのでは、もはや帝国ではない。”

    何事も自己責任。
    自助と共助で乗り切れというのなら、国に税金を払う意味がない。
    人々が帝国を見限るのも当たり前。

    ホノリウスの後を継いだのは、彼の異母妹の息子ヴァレンティニアヌス三世、6歳。
    当然母親のガッラ・プラチディアが後見するのだが、帝王学を学んだわけでもなく、有能な(そして公正な)部下がいるわけでもない。
    行き当たりばったりの、感情的な言動も多かったようだ。

    ”自身で経験したことにしか考えが及ばないようでは、官僚はやれても政治家はやれない。自身で経験していないことでも知識と想像力を駆使することによって、ローマ人が好んだ言葉で言えば「comprehendere」つまり「把握し理解する」必要があり、それには情報が欠かせなかった。”

    見たいものしか見ず、聞きたい言葉しか聞かないようでは、どうしたって情報戦に負けてしまうのだ。
    そして情報を把握し、理解したのちに、方針を決め、それを行動に移せないのであれば、そんなトップは不要といえよう。

    あまりにも目先のことしか考えられない人たちが続くのは、帝国の終焉が近づいているから?
    だとしたら、今の日本も同じような状況ってこと?

  • ローマ滅亡時のアッティラ侵攻をきっかけに、人々が逃げ込んだ干潟が後のヴェネツィアへ繋がっていくっていう流れ、好きです。

  •  1回目の「ローマ劫掠」から紀元476年の西ローマ帝国滅亡までの物語です。坂を転がり落ちていたローマも,フン族のアッティラなどの度重なる侵入を受け,「消え失せる」ときを迎えます。侵入という外的な要因だけではなく,坂を転がっている5世紀に入っても,内乱などの内的要因で,転がり落ちるスピードを増している様子を読んでいると,混乱の衰亡の時期とは,指揮系統や戦略がはっきりせず,外的要因と内的要員の双方から「消え失せる」ところまで,坂を下っていったというようにも思います。ローマという国家に限らずとも,多くの場面で見られることなのかもしれません。

     塩野さんが15年をかけて出版され,執筆はそれよりも長い時間をかけられた「ローマ人の物語」ですが,その中でも,西ローマ帝国の滅亡という重要な場面の描写は,冷静な叙述になっていて,とても塩野さんらしい場面だと思います。

  • ローマ帝国が遂に滅んでしまった。誰一人気づかないうちに…
    それにしても、ローマの危機というのに、それなりにローマを守ってきたアエティウスが無能な皇帝にキレられて、殺されてしまうというのはどういうことだろう…そもそもその前に、有能な武将の二人を争わせて一方を殺させるなんて、自滅ではないか。
    東ローマ帝国と西ローマ帝国の違いは、対処する人が腰を落ち着かせて対処 できたこと、というのも、なんだかタッチの差というか、運命というか。
    また、どちらも、分かれ道となる重要な時期を女が支配していたというのも興味深い。
    東ローマ帝国の実力者だった、皇帝の姉のプルケリアが、それなりに上手く対処し、しかも、弟の皇帝が死んだあとは、自分の権力の障害にならない無能な男を選んだのではなく、それなりの男を選んで、自分の夫として、神意による正統性を裏付けて皇帝にしたのだからなかなかだ。
    唯一の条件が、自分は神に貞潔の誓いをした身だから寝床を共にすることはできない、というのは、ちょっと笑った。
    しかし、全般的キリスト教の雰囲気がして、その派閥の争いも絡んでいたりして、なんだかやはり、もはやローマという感じがしないなぁ…

  • 蛮族による「ローマの劫掠」が行われ、国境はおろか、首都ローマさえもその略奪の対象となった紀元4世紀中ごろ。西ローマ帝国に限れば、ここから476年の滅亡までにひっきりなしに皇帝が変わり、でも今までのような皇帝の役割を果たすものは誰一人といなく、混乱に混乱を重ねた状態になる。
    明確なローマ帝国滅亡の年は定まってはいないが、それは蛮族に侵略されて陥落したものではなく、属州の反乱で国が瓦解したものでもない。自然と、誰も意識することなく、ローマという1200年以上の覇権国家はその姿を消した。
    カルタゴを滅亡させたローマ総司令官スキピオ・エミリアヌスの言葉が象徴的。

  • ロムルス・アウグストゥスが退位させられたあと、誰も皇帝即位しなかったことで、あまりにもあっさりと西ローマ帝国は滅びてしまった。今日はたまたま台北までのフライト中にテルマエ・ロマエを見たのだけれど、帝国全盛のハドリアヌスの時代の話なのですね。ローマ人の最後と落差大きすぎです。

  • 筆者のいう、「情けない時代のローマ人」の物語、というのがそのものずばり当てはまる。
    死なない人間はいないし、それは国家も同じということか。

    かつてローマ人が「蛮族」と呼んでいた人々に、世界の都ローマは劫掠され、西ローマ帝国最後の皇帝も退位に追い込まれる。
    その最後の皇帝がローマの建国者ロムルスと、帝国の建国者アウグストゥスの名を持つ「ロムルス・アウグストゥス」なのは歴史の皮肉か。

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