ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)

  • 581人登録
  • 4.17評価
    • (81)
    • (60)
    • (42)
    • (2)
    • (1)
  • 73レビュー
著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2011年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181936

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 塩野七生の人間考察への飽くなき探究心と冷静な観察眼ここに極まれりとでもいうべき大作の完結です。

    都市国家として誕生し、数々の波乱の中で、王政、共和制、帝政とその体制を変えながらも、敗者同化を精神の根底基盤として近隣民族たちを自国民として吸収しながら、ヨーロッパのみならず北アフリカや中東まで支配する巨大多民族国家として一千年もの時を享受したローマ人の壮大なローマ帝国。

    「(ユリウス・カエサルをはじめ、歴史上)気に入った男たちはみんな愛人にしてしまった」

    そんな風に大胆に豪語しつつ、彼女特有の、登場人物たちの会話も心理描写もない、骨太で男性的ともいえる冷静だけど熱い文体で、時代を彩った幾多のローマ人たちの人生における局面や選択、政治、軍事、時代の変遷を丁寧かつ端的に描き重ねることで、ローマの一千年の歴史そのものを人に例えながら描ききっています。

    カルタゴのハンニバルに勝利して未曾有の国難を救ったスキピオ・アフリカヌスや内戦を経ながらも帝政への道筋を描きローマのその後を決定づけた「唯一の創造的天才」ユリウス・カエサル、冷徹かつ生真面目に帝政を確立したアウグストゥスなどの一時代を築いた英雄たち、グラックス兄弟や背教者ユリアヌス、半蛮族スティリコなどの時代の波に抗いながらも敗北し消えていった人々など、自身の「スタイル」を十人十色どころか百人百色に貫いた人々の魅力的な描写には心躍ります。

    華々しい興隆期に比べると、ローマ帝国の最期は、決定的な瞬間のないあっけなくも曖昧なもので、読み物としては物足りない気がする反面、これも一つの「人生」として不思議な寂寥感と納得感があります。

    1巻から数えて単純な刊行年数だけでも15年に渡る大作を書き終えた塩野さんに心から敬意を払います。ご自身が述べる、千年の通史を描き終えることができた理由が、この方らしい諧謔と、それに反するようで実は表裏一体の、滲み出る強力な自負に満ちていて、おもわず笑ってしまいます。

  • 「ローマ人の物語」シリーズ、半年ほどかけて1巻から最終巻まで読了。
    高校では日本史選択でこれを読むまでローマ帝国についての知識はほぼゼロだったが、とても面白く読み進めることができた。
    やはり戦記のところは興奮し一気に読んでしまう。イラストで陣形や戦術の説明がしてあってわかりやすい。
    全巻を通して著者の見解が何度も何度も繰り返されるし、同じ文章の引用も度々あるので記憶力の悪い私でも(著者の考える)ローマ史の重要な点を嫌でも覚えられる。
    とりあえず月並みだが、カエサルに惚れた。
    「カエサルを書いた作家は皆カエサルが好きだということがわかる」(※うろ覚え)ということが書かれていたが、著者自身がまさにそうだということがひしひしと伝わってきて「微苦笑を禁じ得ない」。
    この本でローマにはまった。

  • 諸行無常、盛者必衰は世の理と、冷めた心地で歴史を眺めてしまいがちですが、興隆を成し、衰亡に堕ちるのも自分と同じ人間。そしてその人間自身、一人の人もまた生気溢れた青春を過ぎれば、やがては衰えゆくのは免れないと思うと、大帝国ですら抗えぬ運命を、自分も立ち向かわなければならないという絶望感に苛まれます。

    隆盛を誇った分だけ衰退も壮絶なのかと思ってしまうほど、ローマ帝国の最期は悲惨なものでした。敗者を迎え入れ、住む人の安全に腐心し、公に資することを誇りとしたローマとその精神が、跡形もないと言ってもいいほどになくなってしまう。人間の美徳を尽くした国家が、暴力と腐敗によって蹂躙され破壊されてしまう様は読んでいて辛いものがありました。
    ローマ帝国の興亡は、人間の限りない才能と可能性に希望を感じさせるとともに、逃れることのできないその愚かさと業の深さに絶望感を感じてしまいます。

    圧倒的な筆力、冷徹な分析と考察。それに加えたユーモアと柔らかさ。『ローマ人の物語』は歴史叙述においての名著であるだけでなく、大帝国の一通史を通じて、人の本質に迫ることにも成功していると思います。
    14か月をかけて読みましたが、もう一度読み返したいと思います。

  • 紀元前753年から西ローマ帝国滅亡(AC 476/480年)までのおよそ1200年の長い長い歴史が終わりを告げる。

    ロームルスに始まる伝説上の七人の王が治めていた王政から始まり、共和制に移行し、そして帝政に変遷する中で現在の世界の礎を築いたといっても過言ではない。

    このローマ人の物語は、そのタイトルの通りローマ史をローマ人の視点で描いた大傑作である。
    筆者が日本人であるがゆえに、宗教観にも大きくとらわれずただひたすらに歴史を記述していく。

    ローマの誕生から滅亡における教訓は、おそらく今日にも十分生かすことができるのだと確信する。
    国家とはどうゆうものなのか、政とはどうするべきなのか、リーダーの資質とは何か。


    とある歴史家が言ったそうだ。
    ローマを観るには二つの目が必要である。すなわち実際の目とそして心の目だ、と。

    本書を読んでローマに行こう。
    きっと普通の観光客よりも100倍楽しめるだろう。


    文句なしに☆5つである。

  • 476年に西ローマ帝国を廃した西ゴート族のオドアケル、東ゴート族テオドリックといった世界史で習ったことがある人物が登場。
    ボロボロになった世界の首都ローマは、ゴート戦役でさらにボロボロに。
    巻末のコインの変遷は、あきらかに文明と技術の後退を示しており、末期の図柄はこどもの落書きに近い。

    長かった物語もこれで終わり。
    最後の方の没落を描く諸巻は、読むのがあまり楽しくなかっが、なんとか通読し終えたというのが率直な感想である。

  • ついにローマ人の物語も終わってしまった。歴史は常に進歩に向かっているとは限らない、衰退している時期もある。大きな波、小さい波となり進んでいく。でも、確実に進歩していると思う。

  • いや~長かった。中学生の頃に読破を断念した後、この歳になってやっと読了。最初は上下巻くらいのペースで記録しておこうと思ったが、途中で挫折。よって、最終巻でまとめ。

    中国の歴史も長いし、日本もそれなりだが、ローマも一千年史。かつ政体としては、ほぼ継続性のある国家としての歴史。
    日本人である自分には分からないが、ヨーロッパの国々の歴史の教科書には、自分の国の始まりにローマ帝国が出てくるのはないだろうか。それは今のEUに根底でつながりがあるのだろうか。

    法体系、インフラ、取り込んだ外敵の統治など、現代でもこれが出来ればというものが、この古代に出来ていた。しかし、結局は崩壊。歴史は進むものだと思っていたが、大きく後退することもあるのだなと思った。
    結局、崩壊の大きな原因は市民権のルールなき拡大とキリスト教かな。キリスト教と言っても、イエスの頃ではなく、ミラノ司教アンブロシウス。
    元々無宗教だが、ローマ帝国を悪とするキリスト教史観ってねじ曲げてるな~。勝者が歴史を作りますな。

    人物では小スキピオ、カエサル、アウグストゥス、ハドリアヌス。敵方でハンニバルが印象に残った。色々、誤解していた皇帝もいた。
    でも、本は一人の意見は危険。気に入った時代、国、人物で他の著者のローマ帝国を読んでみようと思う。

  • 14年かけて読破。栄枯盛衰、いつの時代も人間の本質は変わらない。反面、奴隷制が支えていた面もある。

  • ついに完結。「ローマ世界は、地中海が「内海」ではなくなったときに消滅したのである。地中海が、人々をつなぐ道ではなく、人々をへだてる境界に変わったときに、消え失せてしまったのだ。」

  • 西ローマ帝国の皇帝位を廃したオドアケルののち、テオドリック、テオダトゥスと、ゴート族の有力者がイタリア王を名乗り、統治を開始した。これに対して、東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌスはヴァンダル族の支配する北アフリカ、続いてイタリアへと侵攻した。しかし、この17年にも及ぶ東西の攻防のいずこにも、ローマ人の姿はない。ローマ人はもはや地中海世界の主役ではなかったのである。空前絶後の世界帝国は、消え果ててしまったのだ。

全73件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)に関連するまとめ

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ローマ人の物語〈43〉ローマ世界の終焉〈下〉 (新潮文庫)の作品紹介

西ローマ帝国の皇帝位を廃したオドアケルののち、テオドリック、テオダトゥスと、ゴート族の有力者がイタリア王を名乗り、統治を開始した。これに対して、東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌスはヴァンダル族の支配する北アフリカ、続いてイタリアへと侵攻した。しかし、この17年にも及ぶ東西の攻防のいずこにも、ローマ人の姿はない。ローマ人はもはや地中海世界の主役ではなかったのである。空前絶後の世界帝国は、消え果ててしまったのだ。

ツイートする