ローマ亡き後の地中海世界1: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2014年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181943

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ローマ亡き後の地中海世界1: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • イタリア中世史。さすがに記述は明確でテンポが良く読みやすい。歴史的叙述はさらりと流しながら、その時代にそこで生きた人たちの思いを描こうとしている。第一巻は西ローマ帝国が滅亡してから、シラクサがイスラム側に落ちてシチリア島がイスラム支配下に入る(878年)までを描く。北アフリカまで拡がったイスラム教は、アラビア半島から来た原イスラム教徒と、北アフリカの現地で改修した新イスラム教徒の内部対立を含みながらも、北アフリカから地中海を超えてイタリアを目指す。

    こうしたイスラム勢力(サラセン)は海賊という形を取った。しかも海賊を生業とした。ローマ時代の北アフリカは豊かな土地だった。農業生産は地中海の豊かな土地であるシチリアに並ぶものがあった。だがローマ衰退後、その陰は見るも無くなる。海賊を生業としたのも無理からぬことだ(p.225f)。かくしてサラセンは海賊として、シチリア島や南イタリアに襲いかかり、物資、金銭、そして奴隷として人を奪い取っていく。海賊行為によって生活を成り立たせているのだから、繰り返し行われる。一つの街が海賊行為によって荒廃すれば、別の街が襲われる。イタリアの人々は、いつ来るとも知らぬサラセンの海賊に怯える。海賊に襲われ、奴隷化されるイタリア半島とシチリア島の住民にとっては、この時代は暗黒の中世以外の何ものでもない(p.64f)。

    イスラムの急激な広がりは、ビザンチン帝国の複雑で重い税金と汚職による不満と関係している(p.28f)。とはいえ、イタリア側も手を拱いているわけにはいかない。著者は、800年の神聖ローマ帝国の成立をこのサラセンの海賊への対抗策から見ている。本来、シチリア島および南イタリアはコンスタンティノープルのローマ帝国(東ローマ帝国)の領有である。ところが、荒らしまわるサラセンの海賊に対して、コンスタンティノープルからはまったく軍事的援助がない。イタリア側の自衛手段としての神聖ローマ帝国の成立は、ローマ教皇庁がコンスタンティノープルから離反することを意味する(p.67-72)。ところが、神聖ローマ帝国を成立させた立役者のシャルル・マーニュとレオ3世が亡くなると、ヨーロッパが結集してイスラム勢力に立ち向かう気勢は一気に薄れる。

    「平和とは、求め祈っていただけでは実現しない。人間性にとってはまことに残念なことだが、誰かがはっきりと、乱そうなものならタダでは置かない、と言明し、言っただけでなく実行して初めて現実化するのである。ゆえに平和の確立は、軍事ではなく、政治意志なのであった。」(p.79)

    結局、イタリア各地がサラセンの海賊に襲われても、対抗する軍事力がイタリアにはない。830年、イスラム勢力はついにローマに迫るが、それでもキリスト教側の救援軍は来ない(p.110)。この時は城壁外の聖パオロ大聖堂や聖ピエトロ大聖堂は略奪にあうが、城壁内は守り切った。ローマのすぐ近郊のチヴィタヴェッキアを占領し基地を築いたサラセンは、846年、再びローマに迫る。この時ばかりは義勇兵が各地から集まってくる(p.148-153)。しかしこの違いは何なのか、あまり記載はない。

    かくして9世紀後半のイタリア半島はいつイスラム化してもおかしくない状況だった(p.186)。特に北アフリカに最も近い、シチリア島は常にサラセンの脅威にさらされ、877-878年のシラクサ攻防戦で陥落、全土がイスラム勢力に落ちる。ちなみにこの時も、西方のキリスト教者はシラクサの苦境をみな知っていたが、誰も助けなかった(p.202)。シチリア島は1072年にノルマン人が支配するまで、イスラム勢力下に置かれる。このイスラム勢力下のシチリア島が、「イスラムの寛容」のもと、それなりに平和を保ったことも事実である。それが証拠に、シラクサが籠城戦を続けていても、シチリア島各地のキリスト教徒たちは蜂起も参集もしなかった。

    キリスト教側が一矢報いたのが916年。教皇ヨハネス10世は自ら軍の先頭に立ち、イスラム勢力からガリリアーノを奪回。ついでチヴィタヴェッキアも取り返し、ティレニア海からサラセンの海賊を追い出した。しかしこれはイスラム勢力側において、原イスラム教徒と新イスラム教徒の対立が深くなったことが助けとなっているもので、海賊の勢力が一気に弱まったわけではなかった(p.216-220)。この後もイタリアはサラセンの海賊に脅かされる。その海賊への備えが海洋国家を作っていくのだ(p.248f)。

  • 8/20

  • 476年、西ローマ帝国が滅亡し、地中海は群雄割拠の時代へと入った。台頭したのは「右手に剣、左手にコーラン」を掲げ、拉致と略奪を繰り返すサラセン人の海賊たち。
    その蛮行にキリスト教国は震え上がる。イタリア半島の都市国家はどのように対応したのか。地中海に浮かぶ最大の島シチリアは?
    (本著裏表紙あらすじより)

    「ローマ人の物語」のその後の世界を描いている作品です。
    よく暗黒時代と聞きますが、実はその時代こそ「古代ローマ帝国」が滅亡した後の地中海を中心としてヨーロッパ世界のことを指していたんですね。
    何となく判ったつもりになっていたけど、実はよく知らなかったこと、ってあります。
    今回、ヨーロッパの中世が暗黒時代で、文化的には古代よりも退化していたんだ、ということを知りました。
    それだけでも読んだ価値があったと思います。
    文化的に退化した、と書きましたが、本著の中では「人と人の結びつきが遠くなった」と評していました。
    逆に古代ローマの時代がどれだけ凄かったか、ということを改めて感じました。

    どうしても現代の中東を荒らしまわっている「IS」と比較してしまいます。
    イスラムが悪いとは思わないけど、原理主義というものの危険性というのは感じました。
    「右手に剣、左手にコーラン」なんて大昔の歴史の教科書で見たものだったけど、よくよく考えると今の「IS」はこれを実践してしまっているんですね。
    偶像破壊がその最たるものでしょう。

    それでも本著の最後にイスラムに占領されたシチリアだったけど、実はキリスト教と併存し、奇蹟的に栄えたという記述には驚きました。
    拉致・略奪をするのも歩み寄るのも人の為すこと、ってことですかねぇ・・・。

  • 読了。

    ローマ亡き後の地中海世界 1 / 塩野七生
    海賊、そして海軍。

    西のローマ帝国が崩壊した後の中世から、イスラムが勃興し北アフリカがイスラム化してからが元ローマ帝国の新たな受難の始まり、いわゆる暗黒時代ですねぇ。

    北アフリカのイスラムが海賊業を生業としはじめる。
    まっさきに狙われた先がシチリア。
    シチリアはビザンチン領だったが、周りと戦い中のザンチン帝国は救援せず。

    シチリアが危ない!

    ってな感じです。

    パレルモ陥落!
    でもって、シラクサ陥落でシチリアがイスラム化しますが、惨劇きわまりなかったがイスラムとキリストの融合でその後の統治がいがいとうまくいって、文化に花が咲いていくことになる。

    ノルマン人が来襲するまで200年続いた統治だそうです。

    ってことらしいです。

    シチリアに特化した1巻目です。

    あーシチリア行きたいねーと思いました。

    イタリア語の海賊はピラータ(私的な海賊)とコルサロ(公的な海賊)
    ピラータ、名前はかわいい。

  • 仕事で水戸に行ったとき、
    本を持ってくるのを忘れ、
    駅構内でこの本を買った。

    4冊読むのに時間がかかったが、
    まことに興味深い本だった。

    キリストとイスラムの因縁を感じる。

    塩野七生は、「イスラムにルネッサンスはあるのか」と書いていた。
    ルネッサンスというのは、実感としてよくわからないが、
    これでいいのか、と我を見直すことだ、というような意味のことが書かれていた。

    イスラムにルネッサンスがくることを祈りたい。

  •  西ローマ帝国が滅亡し,地中海が境界の中に含まれて,人的にそして物的に流通を促進する役割を果たしていた時代から,境界そのものになった中世に変わった時代の話です。地中海の位置付けが,「道」から「壁」に変わった時代の物語でもあります。キーワードはサブタイトルの「海賊,そして海軍」です。
     第1巻では,北アフリカを含む地中海の南側がイスラム化され,イタリアとの間にあるシチリア島がイスラム化されるまでの時代を取り扱っています。地中海を間に挟んでの文明や価値観の違い,そしてその違いがもたらした衝突は何であったのか? また,その衝突に海が果たした役割は何であったのかを読む進めることでいろいろと考えました。
     海は「壁」というよりも「道」ととらえる考え方が有効な場面も多いのかなと思います。

  • 面白い!

  • 暗黒の中世という言葉の具体的な意味がひしひしと伝わってくる内容。なぜ、文明はかくも後退したのか。

  • 高校の世界史の教科書では数ページしか記載されていない、ローマ帝国滅亡後の地中海がテーマ。
    世界史でいう、いわゆる「暗黒時代」である。
    この時代はイスラムがシチリア島含めイタリアまで勢力を拡大していく時代である。
    キリスト側からみると正に暗黒時代ではあるが、イスラム側からみるとジハードの名のもとにキリスト世界を駆逐していく史上最も勢いがあった時代だったのではないかと思う。

    冒頭にも書いた通り、通常の世界史の教科書ではこの部分は暗黒時代で整理され、深くは学ばない。
    非常に簡潔にまとめられ、対象はヨーロッパ特に地中海であるのでわかりやすい。

    が、この手の本を読むと、歴史からどんな教訓が得られるのか、が重要になるが、本書は教訓というよりも教養として知っておくべき事項を簡潔にわかりやすく記載されている本という方が近いと思われる。

  • キリスト教とイスラム教の対立の発端が良くわかった。

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ローマ亡き後の地中海世界1: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)の作品紹介

476年、西ローマ帝国が滅亡し、地中海は群雄割拠の時代へと入った。台頭したのは「右手に剣、左手にコーラン」を掲げ、拉致と略奪を繰り返すサラセン人の海賊たち。その蛮行にキリスト教国は震え上がる。イタリア半島の都市国家はどのように対応したのか、地中海に浮かぶ最大の島シチリアは? 『ローマ人の物語』の続編というべき歴史巨編の傑作、全四巻。豪華カラー口絵つき。

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