阿修羅ガール (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101186313

感想・レビュー・書評

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  • 『減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。』

    『アイコ、好きじゃない人の人肌は寂しさ深くするだけなのよ。偽物の暖かさなんてアイコをさらに冷たく冷やすだけなんだし、偽物の交わりなんてアイコと世界の距離をさらに広げるだけなのよ。』

    『うん、なんだか今私、世界から遠い。』

    『アイコ、でも世界からの距離感なんてこと、あんまり考えない方がいいわよ。「道のり」はわりとはっきりしているものだけど、「距離」なんて、不確かで曖昧で、儚いものなんだから。《「道のり」は長く、「距離」は儚い》ね。』

    『うっせーな!放っておいてくれ! ー 何だよ!』
    『愛だよ』

    『私の名前は「愛子」なのに私には「愛」らしい愛が欠けてて到底地球なんか救えない。今のままでは。』

    『愛が足りねーんだよ、愛が』

    『気づくのおせーんだよ。そうなの。遅いの。人間誰しもそうなんだろうけど、実際に自分の身に起こってみないと酷いこととか嫌なこと判んないの。』

    『「好き」は「好き」だけ。理由はないの。側面もないの。「ここが好き」「こういうところが好き」とかは言えるけど「ここがあるから好き」「こういうところがあるから好き」というふうには言えないの。』

    『何それ。意味判んない。上手く言えないだけよ。意味は判るでしょ。うん、判る。』

    『人が人を好きになるときには、相手のこことかそことかこういうところとかああいうところとかそんな感じとかそういうふうなとことかが好きになるんじゃなくて、相手の中の真ん中の芯の、何かその人の持ってる核みたいなところを無条件で好きになるんだろうと思う。』

    『どんなふうに言っても、状況変わんないよ。状況変えようと思ったら、やり方変えなきゃ。』

    『友達かどうかは関係ねーの。手が届きそうなところで誰か困ってたら、普通手、貸すだろ』

    『あの時からずっと、陽治しか見てなかった。でもこの恋かなわなくてホント残念。この世に、陽治しか、欲しいものなんてなかったのに。バイバイ。』

    『人間、楽しむということが最優先だし、そう心がけなくても、最優先してる。苦しんでる人は、その苦しみを楽しんでるんだし、頑張ってる人は、その頑張りを楽しんでる。人が今やってることが、その人の選んだ、自分にとって一番楽しいことなのだ。』

    『私が次にエッチなことするのは、大好きな人。私を大事にしてくれて、私を一番にしてくれて、私を必ず守ってくれて、私のために戦ってくれる人。私が大事に思って、私が私の一番にして、私が守ってあげたくて、私がその人のために戦ってあげたいと思うような人。その人のことを思うだけで心臓が止まっちゃうような人。そして何よりも、私の止まった心臓を、何て言うか、ジャンプスタートさせてくれる人。そんな人がいたら、私はきっと、好きかどうかを考えなくても、すでにその人のことを好きだと判るはずだ。疑問の余地なく好きだって。ここが、こういうところが、こんなふうな感じが、とかじゃなくて、その人の真ん中の芯とか核が好きなんだって。』

  • 舞城王太郎さんの書く世界に魅了されてしまったきっかけ作品。最初から最後までハイテンションでぶっとんでるけど、だがそれがいい。冒頭からわけがわかりませんが、女子高生ってこんな感じです。薦めたら「読んだけど電車(外)で読むの恥ずかしい」と言われました。すみません。

  • この人はもうほんと頭おかしいんじゃないかと思うくらい、勢いと破綻とともに物語が進んで行きます。

    それでも最後まで読まされてしまう不思議な引力。
    読み終わってもスカッとはしないけど読み応えはあり。

  • 何回読んでも最初と最後がめっちゃいい。

    けど何回読んでも疲れる、途中のムチャクチャっぷりが。

    冒頭がエロすぎて人に貸せないのが残念。

    エンターテイメントとしてはかなり完成度高いんだけど。

    舞城すきすぎるよー。

  • 中盤から思いがけない展開になり
    後半の落ち付け方には拍子抜けした感はあったけど
    やっぱりこの人の文章は面白い
    ほとんどが下らないけど
    たまに核心をつくような言葉がどさっと落ちてくる
    そしてそんな言葉の雪崩がやってくる
    いつのまにか飲み込まれてただ茫然と流されている

    三島由紀夫賞ってのは
    文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授賞すると
    はてなキーワードさんに書かれていたけど
    なるほどこういう選考基準なら確かに
    賞を賜るはずだ

  • この本を読んだのはだいぶ前なのでいまいちハッキリと覚えてはいないけれどぼくの中での舞城ナンバー1作品これ

    スピード、スピード、スピード
    とにかく活字が襲ってくるような錯覚とその内容のインパクトにただひたすらについて行くのに必死だった
    目に追えない手に負えないそんな作品
    とにかく下衆く美しい意味不明なのにスッキリする不思議な作品だった、と記憶してる

    よく人を選ぶ作品なんて言うけどこれは人が読むべき作品じゃない
    でもだからこそ読むべきなのかもしれない

  • 星4か5で迷ったのだが結局5

    4にしようとした理由はこの本の本質(ちょっと面白い?)が理解できたかどうか、つまり自分が話についてこれたかというとそこは微妙だから
    逆に5にしようとした理由はそれでもこの話がとても面白かったから

    面白かったというには語弊がある気がする
    面白かったというよりは、貴重な体験をさせて貰ったという感じ
    間違って繁華街の怪しい一角に迷いこんでしまったかのような危険で不安でだけど少しワクワクして...
    怖かったけど、途中で読むのをやめることが出来なかった

    ライトノベルのように稚拙な文の連なりが多く存在したが、それでも読む気がしたのは、それが稚拙な状態のままでも完成されているからだと思う

  • 正直言ってずっと舞城王太郎の文章は苦手だったのだが、苦手意識克服!と読み始めた。
    三島由紀夫賞なるほど、慣れない言葉選びなものの、面白くて引き込まれる。
    第二部からの「魔界?」の流れなんて、びっくりした。舞城さんの頭の中、どうなってるんだろう。

    最終的に、あれ?って感じだったけど、
    阿修羅に投影した自分、グルグル魔人と交わった自分、
    破壊衝動と輪廻転生、

    最後に入ってた蛇の話は正直あまり好きではないけど、仏教思想にふれていてちょっと興味そそられるな、って感じでした。

    もうちょっと他の作品も読んでみようかな。慣れたら、読みやすそうだし。テンポよし。

  • ★あらすじ★
     アイコは片思い中、でも他の男の子とやっちゃった、最低最低返して私の自尊心!その間街ではバラバラ殺人は起きるは同級生は誘拐されるは子ども達はアルマゲドンをやりはじめる始末。東京と魔界を彷徨い、妄想と現実を彷徨い、アイコが見つけるものとはーーー?

    感想
     若者の話し言葉がそのまま綴られたかの如き文体は、一見ただのライトノベルのよう。しかしこれはただのラノベではない。独特でスピーディーな文体は、読む側に問うてくる。カラダと意識が分離したら、手足と脳みそが分離したら、いったい自分は誰で、どれが自分なんだろうということを。
     淡々として跳ぶような文体と自己の定義という重厚な主題のミスマッチが目に新しい。また、ラノベによく見受けられる、「文字の大きさを変える」という技を効果的に使用している点も素敵(バリバリ純文学ではありえないんじゃないか?)。文字という羅列が持つ視覚的効果も十分に利用している点は前例がない(ような気がする)。
     形態はラノベでありながら中身は純文学、という、枠にはまることのない素晴らしい一品だと思う。

  • 一人称口語体で綴られていく舞城王太郎の文体に、最初は読み易さを感じ、引き込まれたようにぐいぐいと読みすすめてゆけますが、途中から読むのに苦しむ描写や、想像もつかないような場面の連続…。一見ぐちゃぐちゃでごちゃごちゃとしていますが、確かな構成力を以って最後まで飽きずに読ませるのがスゴイ。

    想像を超えた事件に巻き込まれてゆく、恋に悩む女子高生アイコ。ミステリと分類されるのだろうが、青春小説か恋愛小説だと勝手に思っています。

    短篇「川を泳いで渡る蛇」も併録。「阿修羅ガール」とはテーマは繋がっているが、文体も(これは主人公が違うから)一転変わって、端正。表題作とのギャップに、惚れ惚れとしてしまいます。

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著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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