阿修羅ガール (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101186313

感想・レビュー・書評

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  • 疾走感とハチャメチャ感が満載! パンクでキュートな少女の思考を味わえる作品 #阿修羅ガール

    またもや変態世界に引き込まれてしまった…

    相変わらずのグルーヴ満載の文章で、もはや文字の麻薬。少女のパンクな脳みその中を、山盛りで堪能させていただきました。

    本作はなんといっても主人公の少女が最高!

    彼女はなにもかも楽しいことが最優先で、自分の気持ちに鬼正直。純粋で幼稚で馬鹿な魅力がたっぷり伝わってきました。しかしこれは真理だと思いますよ。

    仕事、政治、人間関係、経済、社会、戦争、宗教などなど、生きていると考えないといけないことがいっぱいあるけれど、楽しんで生きなきゃ自分に嘘をつくことになる。所詮、生命が尽きるまでの暇つぶし。死ぬのも含めて楽しめば最高ですわな。

    でも「愛」に関しては、乙女な部分を持ってる。めっちゃキュートで愛くるしいの。完全に爆裂少女に翻弄されまくった作品でした。

    例によって完全に人を選ぶ舞上先生の純文学でしたが、私は大好きです。

    ■推しポイント
    我が国 日本には死刑制度というのがあります。
    賛否ありますが、現存している以上、現代にも必要なんでしょう。
    ただ本書を読むと、主人公の少女から伝わってくる想いがひとつあります。

    どんな奴でも良いところがひとつくらいあるでしょ。前向きに楽しく生きようよ。

    これが人としての素直な願い、人を思いやる気持ちだと思いますね。
    まぁもちろん、悪いことなんてやらないで欲しいけどさ。なかなか難しいですね。

  • まいじょーーーーーさーーーーーん!! 今まで読んでいなくてごめなさーーーい!! 好きです!!

    って感じだった。
    疾走する文体、ぐいぐい引き込む躍動感、混沌と俗、でもって「愛」。
    女子高生のアイコが頭の中で考えたことがそのまま文章になっているかのような文体は、リアルタイムなスピードを持っているかのようで圧倒される。彼女が思うちょっとしたことがみょーに生っぽくて、日常というものが持つ均衡と、それゆえの不自然さをよく表現している。

    思考はつまづきもするし、二段跳びに駆け上がりもする。好きな男の子のことを考えていると照れるし、それと同じレベルで暴動とか命とかのことを考えたりする。もちろん、その問題の程度の差とか範囲の差とかは彼女もなんとなくわかっているんだけど、それと並行して感情は見て、聞いて、話している。刺激がいっぱいなのがわかる。彼女のアンテナがびんびんなのがわかる。彼女の中に言葉があふれているのがわかる。

    森はこれ映像で観たらトラウマレベルだよ、と思うくらい怖かった。いきなりはじまってびっくりした。グルグル魔人のところも怖かった……視界が狭いというか、限られた視界しかない世界を見ているみたいな感覚になって、森の場面とは違う不安さを抱いた。
    正直に言うと、阿修羅云々のところは、ちょっと性善説すぎやしないかな、アイコ? と思ったけれど、まぁ彼女は彼女なりに思うところがあるのだろう、と思っておく。

    舞城さんに出会いましたので、これからじっくり読んでいきたいと思います。ほくほく。

  • 面白かった!
    不思議でおどろおどろしくて、気持ち悪くて、キュートな作品だと思いました。

  • 大変面白かったです。
    自分にとってはホラーでした。
    一般的なホラーではなく。
    自分のいちばん黒いところを、えぐられるような作品でした。
    こんな良作には、滅多に出会えないです。

  • 舞城作品は、一人称小説の中でも特に「我の強い」部類で、精緻な外界の描写とかはほとんどなくて、内心の印象や思考が大部分を占めてます。それも、若者風のルーズな地の文がだーっと続くので、のれる人は刺激的で楽しいけど、苦手な人はうんざりするかも。
    『阿修羅ガール』は女子高生アイコがバラバラ殺人とか暴動とか起きてるカオスな現代社会で、恋したり臨死体験したりする話。ストーリーがほぼ主人公の頭の中で進むので、あくの強い一人称世界を存分に満喫できます。
    中盤に突入する悪夢的な世界が印象的。あと、カオスなようで、モチーフとかなにげに一貫性があるので、そういうの好きな人も楽しめるかも。シモかったりグロかったりするのでご了承ください。

  • 現代版悪魔の書って感じ。読みながら、なんか知らんが落ち込む。
    アイコ文体にのっけから笑った。舞城くんはすげーテンポいい馬鹿っぽい文章得意だけど、なんでかインテリジェンスを感じるのよね。どういうわけか。それに擬音がわかりやすいけど身体感覚に根ざした言葉を選んでいるという感じがするのだ。

    女子高生のいかにも感をデフォルメしたような独善的な言動とか心変わりの早さとか、あらためて面白いなと思った。

    そしてやっぱり、「森」がすごいな。怖い。あれがとてつもなく怖い。

    これ読み終わって深く沈むのってなんなんだろ。
    なんかネットとか見ててたまに思うような、死ねとか殺すとかあとセックスのことだとか、そういった事柄を語るときに今ぼくらが使う現代語はかえって生き生きするんじゃないか…とか。そういう事実に直面してのがっかり? わからないけど。

    登場人物が勝手に妄想たくましくしてありもしない犯罪を考えたり神について自問自答したり―まあ、そのようにして繰り出される思想にちっとも共感できないしちと退屈だし、ていうかちょっと適当っぽいけど、それもまあリアリティかなぁと思ったりね。

  • 面白いか面白くないかって云うと、面白い。
    でも、意味わかってんのかって云うと、多分わかってない。
    いや、意味わかんないっていうか、それ通り越して頭おかしくなりそう。
    そして私はこの「頭おかしくなりそうな感じ」を求めて舞城王太郎を読んでいると思う。久し振りに再読。

    初読は図書室で借りた単行本で、読み終わって最初に思ったことは「ズルい!!」だった。小説の既成概念を粉微塵にされた感じ。

    こんなに歯に衣着せぬ物言いでいいの?
    そんなに読者置き去りにして勝手に突っ走っていいの?
    あんなにフォントとか変えていいの?

    いいんだろうなー別に。

    知らず知らず「○○は斯く在るべし」みたいな明文化されない決まり?ルール?掟?を作って平穏に暮らしている所に、突如乱入してくるこの手の作品。
    自分が何となくこの辺にあるんじゃないかなー、と思い込んでいた限界を「は?なにそれ?」かなんか言って易々と飛び越えていくその背中を見ると、あーここが限界じゃなかったんだー、まだ向こう側があるんだー、なんて思えるから不思議です。

    口にするのが憚られるような女子の暗黒面が暴露されててちょっと恥ずかしい。

  • 『減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。』

    『アイコ、好きじゃない人の人肌は寂しさ深くするだけなのよ。偽物の暖かさなんてアイコをさらに冷たく冷やすだけなんだし、偽物の交わりなんてアイコと世界の距離をさらに広げるだけなのよ。』

    『うん、なんだか今私、世界から遠い。』

    『アイコ、でも世界からの距離感なんてこと、あんまり考えない方がいいわよ。「道のり」はわりとはっきりしているものだけど、「距離」なんて、不確かで曖昧で、儚いものなんだから。《「道のり」は長く、「距離」は儚い》ね。』

    『うっせーな!放っておいてくれ! ー 何だよ!』
    『愛だよ』

    『私の名前は「愛子」なのに私には「愛」らしい愛が欠けてて到底地球なんか救えない。今のままでは。』

    『愛が足りねーんだよ、愛が』

    『気づくのおせーんだよ。そうなの。遅いの。人間誰しもそうなんだろうけど、実際に自分の身に起こってみないと酷いこととか嫌なこと判んないの。』

    『「好き」は「好き」だけ。理由はないの。側面もないの。「ここが好き」「こういうところが好き」とかは言えるけど「ここがあるから好き」「こういうところがあるから好き」というふうには言えないの。』

    『何それ。意味判んない。上手く言えないだけよ。意味は判るでしょ。うん、判る。』

    『人が人を好きになるときには、相手のこことかそことかこういうところとかああいうところとかそんな感じとかそういうふうなとことかが好きになるんじゃなくて、相手の中の真ん中の芯の、何かその人の持ってる核みたいなところを無条件で好きになるんだろうと思う。』

    『どんなふうに言っても、状況変わんないよ。状況変えようと思ったら、やり方変えなきゃ。』

    『友達かどうかは関係ねーの。手が届きそうなところで誰か困ってたら、普通手、貸すだろ』

    『あの時からずっと、陽治しか見てなかった。でもこの恋かなわなくてホント残念。この世に、陽治しか、欲しいものなんてなかったのに。バイバイ。』

    『人間、楽しむということが最優先だし、そう心がけなくても、最優先してる。苦しんでる人は、その苦しみを楽しんでるんだし、頑張ってる人は、その頑張りを楽しんでる。人が今やってることが、その人の選んだ、自分にとって一番楽しいことなのだ。』

    『私が次にエッチなことするのは、大好きな人。私を大事にしてくれて、私を一番にしてくれて、私を必ず守ってくれて、私のために戦ってくれる人。私が大事に思って、私が私の一番にして、私が守ってあげたくて、私がその人のために戦ってあげたいと思うような人。その人のことを思うだけで心臓が止まっちゃうような人。そして何よりも、私の止まった心臓を、何て言うか、ジャンプスタートさせてくれる人。そんな人がいたら、私はきっと、好きかどうかを考えなくても、すでにその人のことを好きだと判るはずだ。疑問の余地なく好きだって。ここが、こういうところが、こんなふうな感じが、とかじゃなくて、その人の真ん中の芯とか核が好きなんだって。』

  • 何回読んでも最初と最後がめっちゃいい。

    けど何回読んでも疲れる、途中のムチャクチャっぷりが。

    冒頭がエロすぎて人に貸せないのが残念。

    エンターテイメントとしてはかなり完成度高いんだけど。

    舞城すきすぎるよー。

  • 中盤から思いがけない展開になり
    後半の落ち付け方には拍子抜けした感はあったけど
    やっぱりこの人の文章は面白い
    ほとんどが下らないけど
    たまに核心をつくような言葉がどさっと落ちてくる
    そしてそんな言葉の雪崩がやってくる
    いつのまにか飲み込まれてただ茫然と流されている

    三島由紀夫賞ってのは
    文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授賞すると
    はてなキーワードさんに書かれていたけど
    なるほどこういう選考基準なら確かに
    賞を賜るはずだ

著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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