- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101186320
感想・レビュー・書評
-
表題作は、まるでコマ割りのない漫画を読んでいるような文章だった。舞城さんの文章は思考と理屈と情景が感覚的なのが魅力だけど、特にこの作品はその境界線が限りなく曖昧である。
けれども、読んでいて理屈は理屈とわかる。
個人的には、「みんな元気。」は非常に身につまされる話だった。選択しなかったということも、選択に含まれること。
人生は一度きりで、やり直しはできない。<私>以外の人生を<私>が生きることだって、不可能だ。
私たちは生きている限り選び続けなくてはならないし、たとえ選ばなかったとしても、否応なしに人生は続く。失敗しても、間違っても……家族が家族でなくなってしまっても。
平行世界が文字通り同時進行で描かれる場面は圧巻である。それは存在しえたはずの世界であり現実なのだが、<私>の体は一人なのだ。いつだって現実は、経験と感情に振り回される。
「Dead for Good」もとてもよかった。現実に振り回されながらも、何が自分にとってリアルなのか、何を自分は選択していくのかに向き合っている作品なのではないかと思った。
でも、「矢を止める五羽の梔鳥」は全然わからなかった(笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんだかぐちゃぐちゃ。破天荒といえば聞こえはいいがよくわからんというのが本音。表題作は途中まではクソかと思ってたけどラストが良かった。みんな元気。
-
【みんな元気。/Dead for Good/矢を止める五羽の梔鳥】家族もの。超展開ばかりだけど表題作は比較的綺麗にまとまっていた感じ。愛に溢れている!
-
『目を覚ますと、隣で姉の体がベッドからだいたい十五センチくらい浮いている。』
『また弱さと欠点を人間味ってことにしてる。違うよ。新田君の良さは、顔とポーズだよ』
『あんたの親の方がそんなの絶対におかしいんだから』
『んなことは分かってんの!でもそこでやってくしかねーじゃん!』
『透明魔人、やっつけるー。だー』
『感謝されるようなことでもないよ。そういうことじゃない。俺を諦めさせようとするなら、もっと本当の理由を持ってこなきゃいけないってこと』
『さ、選べよ』
『枇杷の選択なんだよ』『ちゃんと考えて選べばいいだろ』
『なんで』
『人生は一つだからだよ』
『みんな選んでんだよ。こういう選択いくつもいくつもやってって人生生きてんだから。首はいくつも切り落とされてんだよ。このちょっと錆びた植木バサミでちょきんちょきんとさ』
『家から出ることが裏切りだとは私は思わない』
『愛されている。』
『これからいろいろあるだろうし、あるけれど、愛されて起こるいろいろだから、きっと大丈夫。でもそんなふうに言えば、実は全てがそうなのだ。みんな大丈夫。みんな元気。』
『そうして増やした選択肢の中から私はもっとよく考えて選べるはずだ。もっとよく考えて選んでいかなくてはならないのだ。植木バサミを振るって人の首をちょきんちょきんと切るような重い決断をしていかなくてはならないのだ。』
『みんなそうやって生きているんだ。』
『まっすぐ落ちる私の目の前にまずは三つの選択肢。』『迷うことなく私は手を伸ばす。』
『言わなくちゃ。』 -
とにかく書くのが好きなんだろうな。言葉だけで生まれる世界。
-
数年前に読んだので記憶が曖昧だが、面白いという記憶よりも、よくわからないという記憶の方が強い。面白くないわけではないが、舞城ワールド全開というイメージ。
-
2013.2.24読了。
予想以上におもしろい。ぐっとくる。 -
パラレルワールドの考え方の一つに、
「本当は、今まで起こったかもしれないすべての可能性が同時に存在していて、私たちは、たまたまその中の一つを認識しているにすぎない。」
というのがあって、このお話の終盤では、その「可能性」が全部認識されたとき、いったいどう映るのかを、ものすごく感覚的に描写していると思った。
量子力学やパラレルワールドの理論の説明を、文系が表したらこういう風になりそう。 -
ぶっ飛び系。
時々溺れそうになりながら、
なんとかギリギリ対岸まで辿り着けたパターン。