- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101186320
感想・レビュー・書評
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久しぶりに読んだ舞城王太郎作品。
ぶっとんだ話なのだが、登場人物のだらだらとした会話のセンスとか、ぶっきらぼうに言葉を置いているのに、どこか主人公が悲しがったりする時本当に悲しそうに思えるところとかわりと印象に残るし、ページをめくらせるのはいったいなんなんだろう。スプラッタな表現もある「Dead for Good」とか、わざとそんな表現にしているとわかっていても「うっ」となってしまう。
前に『阿修羅ガール』を読んだ時も思ったけど、舞城さんの長いやつは、中盤になってくると攻めが弱くなってきてまとまってくる印象があって、それは今回も感じた。読んでいるうちに慣れてくるからかな?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
飛ぶ家族
入門に読んじゃったミス -
前に読んだときはイマイチ感じるものがなかったので
しばらく温めておいて3年ぶりに読んでも・・・・やはり
感じるものがなかった・・・・う~む・・ -
「目を覚ますと、隣で姉の体がだいたい十五センチくらい浮いている。」という、冒頭から前触れもなくいきなり舞城節炸裂でうごごごごごごごごごごおおおおおー!ってアドレナリン勝手に燃焼。全体のスピード感も相変わらずはやいはやいはやいはやい。個人的に『阿修羅ガール』やら『ビッチマグネット』やらに似た女性一人称スタイルをキープしていて、テーマはやはり「家族愛」に落ち着くんだろう。もちろん読めばわかるけど、そんじょそこらの家族愛の枠にははまらないだろう強烈な家族愛だけど。「にゃ~だ~。はわ~ん枇杷ちゃんにゃだ~、にゃだよ~。もう~にゃ~だ~~」とせがむ朝ちゃんの猫語がめっちゃ可愛い!「Dead for Good」、「矢を止める五羽の梔鳥」の両辺共に異色でGood。総体して鑑みるに至るに「みんな元気。」ってやっぱ、良い言葉。
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テーマは家族愛、選択。残酷表現も多いし、展開が速いけど、最後はほっこりする。
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「家族愛って何?」
家族がさらわれてあなたはどうする?
どうもしないことも愛なのですか?
家族がみんな元気なら遠くに住んでてもいいですか? -
『目を覚ますと、隣で姉の体がベットからだいたい十五センチくらい浮いている。』
『あのさ、これ、ゆりちゃんに内緒な ー だってやっぱ可哀想だろ、夜中に浮いてたなんて。恥ずかしいじゃん』
『昔の恋愛なんて、全部架空の話みたいなもんだからさ ー お互いが好きだったらこうなるっていう、条件結果の話だろ?恋愛のことって。好きっていう前提がなくなったら、起こったことだけが残って、起こった理由とか根拠とかなくなってるから、凄い宙ぶらりんな感じなんだよな。やっぱりいくら事実でも、それが起こるための前提とかなかったら、小説読んだのと感覚変わんないよ』
『南田の大学時代の彼女は秋元則子って名前で、それを聞いただけで私はのりこって名前の女がいきなり全員嫌いになる。のりこなんてろくな女いないと思う。』
『弱くないよ全然強いよ。怖いって別に弱くないんだよ秀之ぃ。歯が痛いのと一緒でさ、痛いのわかんなかったら身体の悪いところわかんないだろ? そういうのと一緒で怖いってのは大事なんだ』
『どうせあんた、ホントはどっちでもような感じなんじゃないの?実際さ、中途半端な無気力君の脱力人生、気張って見せたって底が知れてるよ。やめとけば?みっともないから』
『嫌なら言い返してきなよ。このままじゃまずいと思うんだったら何とかしなよ。いじいじしてたってどうしようもないでしょ?』
『いつまでが子供なの? ー ちょっとさ、ねえ、子供っていつまでよ』
『あんたね、子供のまんまでいたら大人になんないよ』
『こういう泣き方をしている私は母に泣けば済むと思ってるでしょとよく言われてしまう。泣けば済むんだったらいいけど、泣いても済まなくて、それがまた悲しくてくやしくて泣いてしまう。』
『父はハンドルに両手を置き、目をつぶっているが泣いてはいない。でも涙が流れていないだけで、本当は泣いている。』
『欲しい物があるから欲しがるんだけど、本当に欲しいのは、同じ種類の中の、ただ一つなんだよね。種類が同じだったら何でもいいって訳じゃないんだよなあ』
『タイミングはいつだって悪いもんだよ。』
『もっと頑張るべきだったんだ。もっと愛するべきだったんだ。もっと考えるべきだったんだ…。』
『恋愛に怯え、セックスに怯え、怯えることにも怯えてもうぐるぐる訳が分かんない。』
『大体枇杷にはセックス無理なんだよ、そもそも。自分のこと傷つけるか甘やかすか、どっちかのための道具にしかなってないもん。そういうのってちょっと幼すぎるだろ』
『みんな選んでんだよ。こういう選択いくつもいくつもやってって人生生きてんだから。首はいくつも切り落とされてんだよ。このちょっと錆びた植木バサミでちょきんちょきんとさ』
『この世の全ては偶然と必然が同時に作用してるって知ってた?』
『愛されている。これからいろいろあるだろうし、あるけれど、愛されて起こるいろいろだから、きっと大丈夫。でもそんなふうに言えば、実は全てがそうなのだ。みんな大丈夫。みんな元気。』
『まだいろいろもっとたくさん選択肢はあるに違いない。いや、選択肢はもっと作ることができるんだ。まだ選択肢になってないところからもっと選べるんだ。そうして増やしたい選択肢の中から私はもっとよく考えて選べるはずだ。もっとよく考えて選んでいかなくてはならないのだ。植木バサミを振るって人の首をちょきんちょきん切るような重い決断をしていかなくてはならないのだ。でも人が人生を生きるというのはそもそもそういうことで、みんなそうやって生きているんだ。平気で、元気に、気づかずに。』
『私は目を開ける。まっすぐ落ちる私の目の前にまず三つの選択肢。迷うことなく私は唯士に向かって手を伸ばす。言わなくちゃ。』
【Dead for Good】
『人間という命の長い、知性を持つ生き物は、それゆえひたすら退屈を厭い、楽しみためなら何でもする。苦しみ、悲しみ、それに耐え、悪意にとらわれ、人を騙し、殺し、それを悔やみ、惜しみ、泣き、涙が枯れた後には死のうと思い、死ななくてはいけないと思い、死ねない自分は駄目だと思うが、それらはすべてそういう気分を楽しんでるだけなので、死なない。』
『人は自分を変えようとするよりは状況を変えようとする。』
『死んだら永遠に死に続けて長いんだし、生きてる時間なんかせいぜい百年のもんだから、俺はひたすら生きまくるよ』
『誰かを殺すと自分も一部死ぬ。誰かを傷つけると自分も一部傷つく。俺は長い長い自傷行為を楽しんでいる。ゆっくりと時間をかけた自殺。でも俺は俺を殺すことで、またさらに深く強く俺を殺しており、その連鎖は俺を死に対して鍛えている。俺はもう死なないんじゃないかと思う。死ぬにはもうすでに死にすぎている』
『前にさ、すんごい何にもやることなくてさ、調布の駅のそばの八百屋の柱に貼ってあった、猫の飼い主探していますってポスター見て、一日で五匹全員、クラスの子とかから飼い主見つけてあげたじゃん?あれってゲームだったけど、あのときすんごい楽しかったし、あれで私、なんて言うか、胸があったまったんだよね。そのときだけじゃなくて、ずっと。なんかこれからもずっと安心して生きていけるって感じ』 -
夜中に目ざめると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた――。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)。
単行本『みんな元気。』から「みんな元気。」「Dead for Good 」「矢を止める五羽の梔鳥」の3篇をセレクト。 -
「みんな元気。」っていい言葉。