- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101192284
作品紹介・あらすじ
房総半島の海辺にある小さな街で生きる居場所を探し立ちつくす男と女。元海女、異国の女、新築に独り暮らす主婦、孤独なジャズピアニスト。離婚後に癌を発症した女は自分で自分を取り戻す覚悟を決め、ヌードモデルのアルバイトを始めた郵便局の女は、夜の街を疾走する……。しがらみ、未練、思うようにならない人生。それでも人には、一瞬の輝きが訪れる。珠玉としか言いようのない13篇。
感想・レビュー・書評
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巻末の解説で小手毬るいさんが書かれていましたが、小説はどんなストーリーか、どんな結末か、ということよりも、どんな表現で人物や世界ををするかが本当に大切なのだと身に染みて感じた。
乙川さんが直木賞を受賞した際、真っ当なことを全うに書くことは容易にできることではないと選評した選考委員がいたのを思い出した。
本当にその通りだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
房総半島が舞台なので、千葉出身の私としては親近感を覚える設定でした。20代半ばまで夏になるとよく御宿や館山に行っていたなぁ。
各物語の主人公はどれも私がかつてそうだったようなキャピキャピ(死語?)した海水浴客では無く、もっと大人の男女。地元で生まれ育った元海女だったり、夏の間そこのホテルで働くピアニスト、身勝手な夫が出て行ったあと大好きな本と酒に囲まれて過ごす女など。
なかなか魅力的な人物たちが出てきます。特に個人的に好きなのは「サヤンテラス」に出てくる哲生。インドネシアでイギリス人旅行者の女性と出会い、日本で結婚し房総に移り住んだ哲生は話し方が魅力的。ユーモアのセンスがある人っていいですね。 -
短編集。13篇、収められている・「ウォーカーズ」や「フォトグラフ」はしっとりしてよかったが、登場人物が横文字の作品は総じて好みではなかったなあ。
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房総が舞台の短編集14話です。R.S.ヴィラセニョールに引き続きというか…と、併せて乙川先生の文体に完全に惚れました。どの話もハッピーエンドとは言えないものの、女性の強さや弱さカッコ良さなどを感じられる素敵な話ばかりです。恋愛と人生の物語ですね
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外房、太平洋に面した漁師町・リゾートを舞台に、人生や家族、恋人の黄昏時を扱った13の短篇。
「イン・ザ・ムーンライト」「サヤンテラス」「ウォーカーズ」「オ・グランジ・アモール」「フォトグラフ」「ミラー」「トワイライト・シャッフル」「ムーンライター」「サンダルズ・アンド・ビーズ」「ビア・ジン・コーク」
「366日目」「私のために生まれた街」「月を取ってきてなんて言わない」
哀愁に満ちた調べの数々。ただ、何れの作品にもスッキリしないモヤモヤ感が残る。 -
ベストは「私のために生まれた街」で、次点は「イン・ザ・ムーンライト」。他の作品は似たり寄ったりの色恋沙汰、夫婦沙汰で辟易してしまった。
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13編の短編小説。房総半島の小さな町で何かを見つけ、あるいは別れを告げる男と女たち。ありえたかもしれない自分を想う。人生後半を差し掛かろうとしてる主人公が多いことから大人の小説のように思う。
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すっかり現代作家に変身した乙川さん。
外房の街に暮らす人々を描いた短編集です。
解説で小手鞠るいさんは「何が書かれているか」では無く「どう書かれているか」に興味があると書かれていますが、たしかに乙川さんの作品はそんな感じがします。
練って練って、時に練りすぎて難解に陥る傾向もある様で、終盤でちょっと息切れ。でも最後の作品はスッキリとした良い話でした。