萩原朔太郎詩集 (新潮文庫)

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著者 : 萩原朔太郎
制作 : 河上 徹太郎 
  • 新潮社 (1950年12月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101197012

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萩原朔太郎詩集 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「月に吠える」の「序」にやられた!
    『詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。』

    以下お気に入り。
    竹 二編
    さびしい人格
    群衆の中を求めて歩く
    青猫
    旅上
    など。

    しかしなんといっても最高なのは、

    死なない蛸

    である。

  • 私が初めて意識し、感銘を受けた詩は吉野弘の「I was born」だが、詩を読むという行為は朔太郎から始まった。
    「死なない蛸」 である。



    今でも忘れない。
    この詩を初めて読んだその時の衝撃を、
    恐ろしいほどの欠乏。
    『死なない』
    つまりその終わりのない欠乏を抱えてうごめいている姿を想像して
    孤独というよりかはそのものすごい痛みに、
    それも胸をえぐられるかのような鈍い痛みに満たされたものだった。


    始めてこの詩を読み解いたのは授業でのひとこまだった。
    教師はしきりにこの詩の意味と解説を行っていた。
    憶えていない。
    ただ、とてもつまらなかった。
    しかし今思えば詩の観念を選択することなく平等に子供に伝えようとしていた、あえてこの詩を授業で取り組もうとした彼女の心意気は賞賛に値する。
    その行為は私のように心傾く子供を生むことが出来るのだ。
    そうして先人達の偉大な言葉、芸術、美は松明の火のように次にと伝えられていくのだろう。
    なんてね、


    実際、彼の詩全般はあまり好きではない。
    でも、
    朔太郎はどうあろうと自分の中で別物の存在だ。


    『私どもは時々、不具な子供のやうないぢらしい心で、部屋の暗い片隅にすすり泣きをする。
    さういふ時、ぴつたりと肩により添ひながら、ふるへる自分の心臓の上に、やさしい手をおいてくれる乙女がある。
    その看護婦の乙女が詩である。
    私は詩を思ふと、烈しい人間のなやみとそのよろこびとをかんずる。
    詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。
    詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。
    詩を思ふとき、私は人情のいぢらしさに自然と涙ぐましくなる。 』
             (「月に吠える」序文より)



    詩を読むことは理解ではないと私は思う。
    詩は線と線が交わる一瞬の快楽だと私は思う。
    その一瞬の快楽を初めて私に教えてくれたのは朔太郎だ。


    初心忘れるべからずと読み返してみてよかった。
    自分は動いている。
    とまた自覚させてくれた一冊。
    しかし戻ったな、と

  • 死なない蛸、春の実体、山に登る。安曇野行きたい。

  • ●以下引用

    私の心の「かなしみ」「よろこび」「さびしみ」「おそれ」その他言葉や文章では言ひ現はしがたい複雑した特種の感情を、私は自分の詩のリズムによって表現する、併しリズムは説明ではない。

    「どういふわけで水が恐ろしい?」「どういう工合に水が恐ろしい?」これらの心理は、我々にとつては只々不可思議千万のものといふの外はない。けれどもあの患者にとつては、それが何よりも真実な事実なのである。そして此の場合に若しその患者自身が…何等かの必要に迫られて…この苦しい実感を傍人に向つて説明しようと試みるならば(それはずゐぶん有りさうに思はれることだ。(中略)けれども、若し彼に詩人としての才能があったら、もちろん彼は詩を作るにちがいない。詩は人間の言葉で説明することの出来ないものまでも説明する。詩は言葉以上の言葉である

    原始以来、神は幾億万人といふ人間を造つた。けれども、実際は一人一人みんな同一のところをもつて居るのである。この共通を人間同士の間に発見するとき、人類間の「道徳」と「愛」が生まれる

    ●地面の底の病気の顔

    地面の底に顔があらはれ、
    さみしい病人の顔があらはれ。

    地面の底のくらやみに、
    うらうら草の茎が萌えそめ、
    鼠の巣が萌えそめ、
    巣にこんがらかつてゐる、
    かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、
    冬至のころの、
    さびしい病気の地面から、
    ほそい青竹の根が生えそめ、
    生えそめ、
    それがじつにあはれふかくみえ
    けぶるごときに視え、
    じつに、じつに、あはれふかげに視え。

    地面の底のくらやみに、
    さみしい病人の顔があらはれ


    ●竹

    ますぐなるもの地面に生え、
    するどき青きもの地面に生え、
    凍える冬をつらぬきて、
    そのみどり葉光る朝の空路に、
    なみだたれ、
    なみだをたれ、
    いまはや懺悔をはれる肩の上より、
    けぶれる竹の根はひろごり、
    するどき青きもの地面に生え


    ●竹

    光る地面に竹が生え、
    青竹が生え、
    地下には竹の根が生え、
    根がしだいにほそらみ、
    根の先より繊毛が生え、
    かすかにけぶる繊毛が生え、
    かすかにふるえ

    かたき地面に竹が生え、
    地上にするどく竹が生え、
    まつしぐらに竹が生え、
    凍える節節りんりんと、
    青空のもとに竹が生え、
    竹、竹、竹が生え


    ●亀

    林あり、
    沼あり、
    蒼天あり、
    ひとの手にはおもみを感じ
    しづかに純金の亀ねむる、
    この光る、
    寂しき自然のいたみにたへ、
    ひとの心霊にまさぐりしづむ、
    亀は蒼天のふかみにしづむ

    ●冬

    つみとがのしるし天にあらはれ、
    ふりつむ雪のうへにあらはれ、
    木木の梢にかがやきいで、
    ま冬をこえて光るがに、
    おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。

    みよや眠れる、
    くらき土壌にいきものは、
    懺悔の家をぞ建てそめし。


    ●卵

    いと高き梢にありて、
    ちいさなる卵ら光り、
    あふげば小鳥の巣は光り、
    いまはや罪びとの祈るときなる


    ●死

    みつめる土地の底から、
    奇妙きてれつの手がでる、
    足がでる、
    くびがでしやばる、
    諸君、
    こいつはいつたい
    なんといふ鵞鳥だい。
    みつめる土地の底から、
    馬鹿づらをして、
    手がでる、
    足がでる
    くびがでしやばる


    ●春夜

    浅蜊のやうなもの、
    蛤のやうなもの、
    みぢんこのやうなもの、
    それら生物の身体は砂にうもれ、
    どこからともなく、
    絹いとのやうな手が無数に生え、
    手のほそい毛が浪のまにまにうごいてゐる。
    あはれこの生あたたかい春の夜に、
    そよそよと潮みづながれ、
    生物の上にみづながれ、
    貝るゐの舌も、ちらちらと... 続きを読む

  • 言葉にするのは難しいけれど、響くものがあります。救われるような気がします。泣きたいような気もします。複雑です。でもどうしても読みたくなってしまいます。
    この人の詩を読むととても落ち着くので、大学受験の会場に持って行ったほどでした。

  • 私が所持しているのはこの本の改訂前の本です。
    (表紙も微妙に違います)

    何という美しく、ガラスの様に壊れてしまいそうな
    言葉たち。
    ところどころにちりばめられたレトロチックな言葉が
    よりいっそう、詩の世界へと引き込んでくれます。
    なんて罪作りな詩集なのでしょう。

    退廃的な前半部、そしてのびのびとした後半の詩。
    その違いも面白いです。
    ある種の嫌悪はきっと変化を著者が好んだからなのでしょうか。

  • 「月に吠える」目当て

  • 綺麗。月に吠えるの「序」で、もうすごいと思った。月に吠える犬の心。何度も同じ文を読んで、震える。

  • のおわある とおわある やわわー
    かなしいさびしい
    きれいな言葉である

  • 浦野所有
    →11/02/27 田中さんレンタル
    →11/07/20 返却(竹谷預り)
    →11/08/20 返却
    →11/08/21 高橋(葉)さんレンタル
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    浦野レビュー - - - - - - - - - - - - - - -
    暗く、重々しい朔太郎の世界。そのルーツはふるさと前橋にあるのでしょうか。朔太郎が語る前橋はつねに曇天で、赤城おろしが吹きすさんでいます。

    独特の感性が描き出すのは、華やかさとは無縁の鬱屈した世界。不気味ではあるけれども、なぜか、決して後味は悪くはありません。そんな白昼夢の世界を、ぜひどうぞ。

    「田舎を恐る」より
    わたしは田舎をおそれる、
    田舎の人気のない水田の中にふるへて、
    ほそながくのびる苗の列をおそれる。
    くらい家屋の中に住むまづしい人間のむれをおそれる。
    (略)
    田舎の空気は陰鬱で重くるしい、
    田舎の手触りはざらざらして気もちがわるい、
    わたしはときどき田舎を思ふと、
    きめのあらい動物の皮膚のにほひに悩まされる。

  • 言葉選びが秀逸。タイトルにもそれは十分に滲みでていると思います。「薄暮の部屋」「その手は砂糖菓子である」など。一編一編、口に出して読みたくなる静けさと余韻です。すき。

  • 月光と海月が好き

  • 酒と云うには饐えている。けれども、言葉の端々に満ちた酒精が抜けきっていない。下手をすると、酔う。

  • いや、たしか一時期ハマってた気がするんですが忘れました。なんか鮮やかだった気がする。

  • 「死なない蛸」が大好き。

  • 耽美に浸って書いているのではない 、官能の世界でもない、仄かな腐臭の中に生を見いださせる言葉たち。健全に生き抜くことは難しい。だからこそ「幻の寝台」を求めるのだろうと、思った。

  • 心に浸透する美しい詩集です。

  • どうしてこんなにおどろおどろしく、それでいて清潔に美しいのか。

  • 「…犬のこころは恐れに青ざめ
    夜陰の道路に長く吠える。
    のをあある とをあある のをあある やわああ
    「犬は病んでゐるの? お母あさん。」
    「いいえ子供
    犬は飢ゑてゐるのですよ。」」

  • 「人は一人一人では、いつも永久に、永久に恐ろしい孤獨である。原始以來、神は幾億萬人といふ人間を造つた。けれども全く同じ顔の人間を、決して一人とは造りはしなかつた。人はだれでも單位で生れて、永久に單位で死ななければならない」

  • 朔太郎といえば「月」と「青」でしょうか?『月に吠える』が有名だがそれ以外にも光る言葉がたくさん。声に出して読みたい。

  • なんとな〜く気になっていたので購入。以降、卒論研究テーマにまでなってしまいました(笑)

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