アフリカポレポレ (新潮文庫 い 38-1)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101198118

感想・レビュー・書評

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  • 家族愛・自然・動物

    アフリカ・タンザニアに旅行に行ってる最中に読みました。
    実際に本に出てくるサファリにも行き、こんな大自然で暮らしたのかと感動しました。
    ガイドブックよりも中身が濃くとても勉強になりました。

    母の強さ、自然の広大さを感じられる1冊。

  • かしこまらない、生の、妻として母として感じたそのままが書かれていて、アフリカの乾いた空気や砂埃がすぐそこに感じられるようだった。もう少し、長く読んでいたかったなぁ。

  • アフリカの平原には明度の高いモーツァルトが似合う。
    すさんでいこうとする心をなぐさめるのはモーツァルトというところに共感する。モーツァルトの音楽にはドラマチックなところはない。でも天から降ってきたような音楽である。すべてを昇華して,どこまでも明るくどこまでも透明だ。
    「(アフリカの平原は)わたしはチャイコフスキーだと思う。シンセサイザーもね。だってドラマチックですもの。」
    4歳の女の子がこんな会話を交わすことができるなんて・・・。その子のつぶやきはきらり輝いている。
    「(サファリに行くのは)おひるねするためと,動物たちの賢いおことばを聞きに行くのよ。」
    「シマウマの子どもは死んでいます。死ぬと・・・,骨になります。そして土になります。それが・・・,自然のきまりです。」
    アフリカで自然の摂理を体感した彼女。子どもはほんとに神様に近い。
    NHKのドラマはかなり脚色してあった。ドラマには描かれていなかった素の生活の部分を知ることができてよかった。アリやダニとの闘い,アフリカに順応するためのすさまじいはずの闘いが淡々と描かれているのがいい。大地に根ざす女性の強さ。この本を読んでますます実感した。

  • 小学館の「BE-PAL」で知った動物カメラマンの岩合光昭氏。

    アフリカのタンザニアにあるセレンゲティ国立公園への取材へ同行した妻の目から見た4才の娘の薫ちゃんとアフリカでの生活。
    薫ちゃんは今、どんな大人になってるんだろう?
    4才のときのアフリカ生活をどんな風に覚えてるんだろう?

  • 読んでほっとしたのは、この本が「大自然礼讃」「野生動物万歳」ではなかったことだ。

    例えば、日本に住む私たちは、春になるとよく鳥の巣のなかでヒナが何羽も鳴いているのを見かける。その巣の下の地面にヒナが1羽落ちているのを見つけたら、たいていの人は、何とかしてそのヒナを巣の中に戻してやろうとするに違いない。
    でも、ヒナが落ちていたのは実は、他のヒナが親からより多くの餌を得るために“わざと兄弟を巣から落とした”のかもしれない。兄弟すべてが限られた栄養で巣立つことになり共倒れするより、弱いヒナを先に落として残ったヒナがより多くの栄養を得て巣立つほうが、生存率が高いとしたらどうだろうか。ある意味、地面に落ちたヒナを巣に戻さないほうが“自然の摂理”にかなっているといえないか。

    自然とはこういうもの。人間の安易な感傷なんかたやすく吹っ飛ばされるし、自分たちで勝手に解釈してはならないものだ。
    でも、日本に住んでいたら、いくら本を読んで勉強しても、いくらアフリカを観光旅行程度に訪れたことがあっても、そういう“真の感覚”を身につけるのは並大抵じゃない、っていうのを、一体どれだけの人がわかっているのだろう? なまじ付け焼刃で「自然」「アフリカ」って言葉に食いついても、本当の覚悟がなければ、痛い目や恥ずかしい目にあって、逆にそれらが嫌いになってしまうのがオチだ。

    一方で、そういうほとんどゼロからのアフリカ体験が、日出子さんにとって人生の糧、つまりプラスになりえたのか? この本で見られる日出子さんの体験は、あまりにも厳しく、あまりにも日本の常識から乖離した現実の連続であり、正直なところ最後まで読んでも、日出子さんがアフリカ生活を好意的に受け入れられたのかがわからなかったくらいだ。

    それは娘の薫さんも同じだ。3歳でアフリカに来て、動物たちの生き死を間近に見ることとなって、それを小さな胸で受け止めたうえでの彼女の発言の数々は、読者にも強い印象を残す。しかし、それが薫さんにとってプラスを意味していたのか? 
    生命のはかなさや自然のルールの厳しさに対する薫さんの純粋と思える発言の数々を読んで「自然の摂理を柔らかな感受性で受けとめてゆく薫ちゃんの言葉がすばらしい」と感じた読者が、あとがきに書かれた次の薫さんの発言を読めば愕然とするだろう。「タンザニアは、つまらなかった。お友だちはパパとママだけだったんですもの」

    もちろん、その発言は帰国直後の薫さんの率直な感想であって額面どおり受け取るべきものでなく、もっと長い目でアフリカ体験の人生への影響を考えなければならないのだけど。
    アフリカって結局、そう単純でなく、そう簡単に頭で整理して受け入れられるものではないってこと。
    でも、「何か」糧となるものは確実にあったはず。日出子さんも薫さんもその何かを得たんだなっていう所まではわかる。読者もぼんやりとではあるが、すぐには姿を現わさないその「何か」を、日出子さんの努力の結晶として、この本からヒントとして読み解くことができるだろう。

    しかし繰り返すが、アフリカの苛烈な現実へ向き合うのと同様、その読解を成し遂げるのは簡単ではない。安易な感傷なんかは自分の中から一切放り出して、心して読まないと途中で挫折するに違いない。
    (2013/10/26)

  • 表題の「ポレポレ」は、スワヒリ語で「ゆっくり」といったくらいの意味。本書は、動物写真家の岩合光昭氏の夫人日出子さんによる1年半に及んだタンザニアのセレンゲティ滞在記だ。一人娘の薫ちゃんを連れて行くには、様々な逡巡もあったことだろう。それは結果的には良かったようだが(おそらくは)。思えば、誰にとってもこの人生は1回きりしかない。はからずもタンザニアで暮らすことになった日出子さんと薫ちゃんにとって、それは強烈な体験だっただろう。そしてエンディングがいい。私たち読者にとっても「永遠のセレンゲティ」がここにある。

  • 旅行記って結構好きなんだけど、自分で旅行するなら清潔で安全なお行儀の良い観光ルートしか無理だなと再確認してしまう。アフリカはまず無理ぃ。
    もしどこでもドアがあっても国内の移動で満足しちゃうタイプ。
    タンザニアなのでアルーシャ(地名)とか出ると、あっサンストーンやムーンストーンで有名なとこ!ってなったり。
    まぁ動物写真家の岩合さんの奥様の手記なので鉱物は出てこないんだけども。
    4歳のお子さん連れてよく行ったなぁと思う…。
    そんな娘ちゃん語録はいろいろあるんだけど、一番ぐっときたのは悩みについて。
    ママの幸福について、どうしたら日本へ返すことが出来るのかとか、父親が良い写真を撮れないかなぁとか。
    ほんの4つとか5つの子がそういう事言っちゃうんですよ。
    確実に周囲の環境のせいなんだけども、せつないやらもどかしいやらで顔がぎゅっとしちゃいましたわ。

  • 今年の夏は暑くなるらしいです。
    暑い、で思い出したのがこの本。
    かなり古い本だけど、とても心に残っているので…


    『アフリカポレポレ』 岩合日出子 (新潮文庫)


    著者の岩合日出子さんは、動物写真家の岩合光昭さんの奥さんである。
    これは、日出子さんが夫と娘の薫ちゃんと共に、東アフリカ・タンザニアのセレンゲティで一年半を暮らした記録なのだ。

    目的は夫光昭さんの仕事。
    つまり彼女は“夫の仕事についていく妻”ということになる。
    なのにその夫が主役ではないところが面白い。
    この本の中では、“あの岩合光昭“もただの人である。
    普通の夫が会社に出かけるように、光昭さんも毎日のようにサファリに出かけていくのだが、その留守中、たくましく家を切り盛りする日出子さんと4歳の薫ちゃんが主役なのだ。

    水も出ない、電気もない、もちろんガスもない。
    貯水タンクに雨水をため、薪を燃やしてかまどで料理をする。
    日本の設備の整った台所でだって毎日の食事作りというのは大変なのに、突然のスコールやアリの大群と闘いながら、朝昼晩、彼女はもくもくと食事を作る。
    全体を通してみると、食事に関する記事が多い。
    この本を読んでいると、食べること=生きること、という現実が痛いほどストレートに伝わってくる。
    人間も、動物も、だ。

    もちろん文句もいっぱい言う。疲れていれば機嫌も悪くなる。
    が、文句を言いながらも、へとへとになりながらも、とにかくやる。
    やるやらないの選択肢はない。やらないと死んでしまう。
    私にはこの“血”はないなぁと思う。
    私は自然と共存できない人間なので絶対無理だ。
    こういうことができる人をものすごく尊敬する。
    人間って強いなぁと思う。
    水がないからといって、動物みたいにそのへんの水たまりの水をすすっては生きていけないし、家や衣服も必要だし、何より生きがいというか、モチベーションのようなものがないと何となく頑張れなくなったりするのだから。

    「ポレポレ」というのは、スワヒリ語で「ゆっくり」という意味だそうだ。
    ゆっくりと時が流れていて、そこに住む人々もまた、ゆっくりと時の流れに逆らわずに生活している。

    そんな生活の中で、薫ちゃんの発する一言一言がすばらしい。
    シマウマは死んだら骨になり、そして土になる。それが自然のきまりだと、4歳にして彼女は言うのだ。
    生と死という自然の摂理を、理屈ではなく体で彼女は会得している。

    日出子さんの飾り気のない力強い文章が、アフリカの突き抜けるような青い空を思わせて清々しい。

  • 写真家 岩合光昭さんの奥さんの著書。
    タンザニアのセレンゲティ国立公園で家族三人、1年半暮らした記録。
    5歳の娘、薫ちゃんの発する言葉の数々が名言過ぎる。
    サファリで子育てするなんて、なんて素晴らしく贅沢なことだろう!強くて良いこに育ちそうだ。

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著者プロフィール

岩合日出子 岩合日出子横浜市生まれ。絵本に『10ぱんだ』(福音館書店)などがある。

「2008年 『にゃんきっちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩合日出子の作品

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