最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.20
  • (71)
  • (250)
  • (508)
  • (147)
  • (24)
本棚登録 : 3889
感想 : 360
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101201238

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 食わず嫌いはやはり良くないですね。

    本書を借りた時、タイトルにげんなりきた。もう勘弁してよ~、こんなの全く興味ないし~と思った。

    でも、予想に反して楽しめた。(だから、☆をサービスして4つにしてみた。本当は3。←我ながらめんどくさい)

    収録作品は以下の8つ。
    春太の毎日 三浦しをん
    ヒトリシズカ 谷村志穂
    海辺食堂の姉妹 阿川佐和子
    スケジュール 沢村凜
    LAST LOVE 柴田よしき
    わたしは鏡 松尾由美
    キープ 乃南アサ
    おかえりなさい 角田光代

    タイトルから読む気が失せていた私にとって、一番目が「春太の毎日」だったことは、本書を読み続ける気力を大いに高めてくれる嬉しいサプライズだった。これはいい。さすが三浦しをんさん。可愛い作品をありがとうという感じだった。

    あとは、柴田よしきさんの「LAST LOVE」も良かった。私が苦手なゴテゴテの恋愛ものだったけれど読了感がいい、というか。それから、角田光代さんの「おかえりなさい」もなんだか心に残ったなぁ。
    阿川佐和子さんの小説は初めて読んだけれど、「へぇ、こういうの書かれるのねぇ」と興味深かったし。

    サクッとサラっと短編を読みたい方にはオススメです。

  • 8人の作家が紡ぐそれぞれの物語は異なる味わいで享受できますが、胸キュンのツボに入ったのは乃南アサさんの「キープ」。
    ローテンション人生だった主人公の奇跡。アラスカの氷が一気に南国アイランドにたどり着いて、ココナッツを結実しそうな勢いの恋心が手に取るように伝わります。そして、角田光代さんの「おかえりなさい」は夫婦の別れを描いていますが、日が西に傾く頃の一瞬の美しさを目に焼き付けようとしたくなる心情に。
    ラストラブって初恋と違った切なさ、ノスタルジーを感じさせてくれますが、1つ分かったのは恋心が終わったという定義だけではないということ。最後が永遠という意味に限りなく近いということも分かりました。

  • 手に取ったのはMEN'Sを読んだので女性編も、という安直な理由。
    個人的には女性作家の恋愛小説は苦手な部類に入るものが多いのだが
    このアンソロジーは期待以上に当たりが多かった。

    春太の毎日(三浦しをん)
    『きみはポラリス』にも収録されてるから読んでるはずなのに全く記憶にない(爆)。
    春太が何者なのか途中で気がついたという。
    読み終わってからSEX MACHINEGUNSの『犬の生活』が脳内リピ(笑)。
    改めて歌詞を読むとまるっきり内容がリンクしている。

    ヒトリシズカ(谷村志穂)
    よく考えてみたらこの方の小説は読んだことがなかった。
    文体の印象は『結婚しないかもしれない症候群』の頃と変わらないかな。
    この話のからくりも途中から薄々わかってきた感じ。
    女性作家の書く恋愛小説としては王道な気がする。

    海辺食堂の姉妹(阿川佐和子)
    当たりのうちのひとつ。
    昔ばなしか民話かっていう感じの語り口なのにも拘らず
    登場する姉妹のキャラと役割がイマドキだというギャップが面白かった。

    スケジュール(沢村凛)
    初めて読んだ作家さん。
    この中ではいちばんテーマに沿った話だと思う。
    淡々と話が進む中で、主人公が見せる『最後の』恋へのこだわりと
    人生のスケジュールを遵守することに対する執念がなんとなく怖かった。

    LAST LOVE(柴田よしき)
    終盤に差し掛かるところまでは、いちばん苦手なタイプの話だと思ってたのだが
    残り3ページほどの婚約者と猫のくだりで、印象が当たりへとひっくり返った。
    『このひとでいい。このひとが、いい。』という1文が印象的。

    わたしは鏡(松尾由美)
    この方も初めて読む作家さん。
    ミステリ寄りと見せかけて、謎解きがちゃんと恋愛小説に機能しているのがすごい。
    個人的な感想だが、この話の読後感がいちばん切なかった。

    キープ(乃南アサ)
    『スケジュール』や『LAST LOVE』と雰囲気が似ている。
    違うのはどんでん返し感が薄いところ。

    おかえりなさい(角田光代)
    離婚届を出す寸前というリアルさと、老婆との遣り取りの実感のなさ。
    ふたつが絡み合って醸し出される空気感がとても不思議な話だった。

  • 「春太の毎日」は春太がかわいかった!麻子に向けるまなざしの優しくてあたたかいことといったら・・・!最後の春太の独白(?)が切なかったけど、とても優しい気持ちになれるお話でした。

    「ヒトリシズカ」は悲しかったです。悲しい中に切なさと狂気とが混じっている感じがしました。こんな最後の恋は辛すぎる・・・。

    「海辺食堂の姉妹」、おもしろかったです。妹が倒れたことによって、明かされる妹の性質。面白い姉妹です。姉さんよかったね!

    「スケジュール」はナウシカの件とアイデンティティの件がおもしろいなと思いました。そして、まさかのラスト。自分の中のルールは都合よく臨機応変に変えるもんですよね(笑)

    「LAST LOVE」はタイトル通りこの作品集のテーマと一番直結してました。最後に高橋が猫を持ってやってきたところから、とてもきゅんきゅんしてました!

    何気に一番この作品集のなかで好きだったのは「わたしは鏡」でした。
    作中作の「わたしは鏡」とリンクしている「わたし」の最後の恋。最後のいずみの告白はどきどきしたし、とても潔くて切なかったです。「田村いずみではない別の誰か」が幸せな人生を歩めますように。
    謎解き風のお話の進み方もおもしろかったです。

    「おかえりなさい」は独白っぽい感じで少し不気味なお話を聞いている感じでした。ぎらぎらした夏、ゆらゆらした大学生の夏休みという気だるい感じと、暗く冷えた老婆の部屋がすごくリアルに想像できました。不思議な夏のエピソードのようで、宗教などが出てきてなんだか現実的なお話でした。

    さまざまな「最後の恋」のとらえ方があって、このシリーズおもしろいです。

  • 題名通り色々な恋のお話です。
    松尾由美
    乃南アサさんのお話が個人的に好きでした。
    最後に悲しいお話は読みたいときだけでいいかなと思うので
    好きな作家さんを探すために読むのがいいかなぁと思います。

  • 三浦しをんさんの「春太の毎日」は既読でしたが、それ以外は全部初めて読みました。
    阿川さんの小説は初めて読んだけど、面白かった。
    こういう出会いがあるからアンソロジーはいいなと思える。
    あとは「ヒトリシズカ」と「LAST LOVE」が好き。
    LAST LOVEの「いとしのエリー」を聞きながらメールを打ったというくだりで笑え、最後のネコのオチでほろりときました。

  • アンソロジーは、自分が読んだことの無い作家に出会えるきっかけになるからいいね。
    本作を読んで、柴田よしきさんという作家が、気になりました。

    「最後の恋―つまり、自分史上最高の恋」
    なんて大層なタイトルがついているけど、ドラマチックな話ばかりが収録されているわけじゃない。
    そこが共感出来ました。
    女性ならではの視点と感性を生かした作品が多くて、興味深かったなぁ。

    久々に読書でホッコリした(^^)

  • 軽い感じでサラサラと読める。

    一つ一つのお話には、山と谷があって面白い。

    電車の中で、今日あった嫌なことを忘れて、何か重くない本を読んで頭をリフレッシュしたい時に読む一冊。

    恋愛小説が好きなことが前提条件ですが。

  • これはなかなか良質な短編集だ。「八日目の蝉」、「対岸の彼女」の角田光代「おかえりなさい」は傑作。個人的には乃南アサの「キープ」、谷村志穂の「ヒトリシズカ」は少し震えた。女という生き物は、男よりも言葉にならないものを大切に生きていて、それらを時々綺麗事にしたり、ロマンチックにしたり、センチメンタルにしたり、嘘にしたり。言ってしまえば、女はみんな作家なのだなあと。少し思った。

  • 【最後の恋】
    絶対読んじゃいけない本のような気がしたけど、読んでみた。
    中には、やっぱり読んじゃいけない本だったか、と思う話もあったけど、この中では阿川佐和子さんの「海辺食堂の姉妹」が一番好き。
    たぶん僕は“姉”のほうかな。ラストも“姉”になれたらいいけどね…。

    周りにはもう結婚して子供も居る友達が増えてきて、でも独身の友達も多くって、さ。
    でも、なんだかんだ、みんな「何か」があるもんなんだなぁって思った今日。
    高校のテスト週間を思い出したよ。
    「全然勉強してな-い」って言って、実際はめちゃやってた子。
    で、「全然勉強やれてない」って言って、ほんとにやってなかった自分。
    それと一緒だな-って。

    早生まれの戌年。つまりジャスサー世代なわけ。
    「早生まれ」って、学年でいうと遅いから、「遅生まれ」のような気がいつもしてる。
    “みんな”は30歳の誕生日の直前ってどうだったんだろう。
    なんか、いろんなことを夜空見ながらぼんやり考えてた。
    仕事とか、人との事とか、あれこれさ。ぼんやりと。
    人って変わるもんだな-って自分を思ったり、何してんだろって思ったり。

    (Dec 18th, 2011)

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×