爪と目 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.22
  • (14)
  • (39)
  • (68)
  • (24)
  • (5)
本棚登録 : 596
感想 : 69
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101202716

作品紹介・あらすじ

あるとき、母が死んだ。そして父は、あなたに再婚を申し出た。あなたはコンタクトレンズで目に傷をつくり訪れた眼科で父と出会ったのだ。わたしはあなたの目をこじあけて――三歳児の「わたし」が、父、喪った母、父の再婚相手をとりまく不穏な関係を語る。母はなぜ死に、継母はどういった運命を辿るのか……。独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させる恐怖作(ホラー)。芥川賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 芥川賞受賞作を含む3作品収録
    表題作である受賞作は3歳の子供視点で描かれる
    義母(予定)のお話でした
    ちょっと読みにくさを感じつつもホラーな内容で
    まぁまぁ楽しめたかなと
    他2作もホラー系でした
    機会があればほかの作品も読んでみたいかもです

  • 久しぶりに、何のためでもなく、「ただ活字を読む」という欲のためだけに読み終えました。時間に追われているときに読む、良質な短篇はこの上ない至福ですが。ああ怖かった。
    帯の「史上最も怖い」という言葉は的を得ているからこそ、究極のネタバレというべきか、予感を促しすぎる意味で読者からすれば勿体無いような気もします。
    事実、悍ましいと感じる要素が沢山詰まっています。具体的な言葉で分析し始めようものなら自分の世界にピキッとひびが入ってしまいそうな感のある、人の奥底にある不気味な禁に触れてしまっている作品です。
    語ることの出来る要素で面白みを感じたのは、やはり「目」の役割です。解説にあった、動物の目の発達の過程の説明を含めて、考えさせられるところ、日頃考えることと繋がるところがありました。物事から恣意的に目を逸らせば、人はその物事を無かったことに出来て、ある種の独裁者になれるということ。でも、、、ということ。「目を閉じれば同じ」という言葉が出てくる宇多田ヒカルさんの歌をふと思い出しました。人は疲れてしまうと思考を停止して、目を閉じて、次に開く頃には状況が変わっていることを期待したりするものです。それは必ずしも現実逃避を示唆しているのではなくて、日常における睡眠も同じでしょう。でも、、、がいっぱいあります。自分の住んでいる世界に見たいものと見たくないものがあるということと、目が開いている限り物事を見続けなければならないこと、をどう理解すればよいのでしょう。自分で一生付き合って戦うしかないのでしょうけれど、戦うのに疲れてしまった人は他の存在を精神で殺してしまうのでしょう。私は目が見えることは尊いと思っていて失いたくありません。それでも、一見「できる」という良い機能に思われるものが、「できることをしない」という選択肢を危険を孕んでいるという事実は心に留めておくべきだと思っています。
    久しぶりに、心の向くままに目的もなく言葉を綴った気がします。少し気持ちが休まったのでこの辺りで。

  • 純文学ホラーという表現を予備知識に読んだ。主人公からみた、父の再婚相手をあなたと呼ぶ二人称小説で当時を振り返りながら話は進む。井戸川射子の、この世の喜びよもそうだが、二人称は苦手である。
    頭の中がこんがらがってきて、誰の誰目線?ってなってしまう。終始不気味であり確かにゾッとする何かがある。

  • 芥川賞を受賞した表題作、3歳の女の子がこんなに理路整然とした語り手になれるわけないやんけ、と思いながら読んでいたのですが、ラスト近くにちゃんとからくりが書いてありました。すごく目立たないところに。この点もそうなのですが、ミスリードを誘うような書き方もされていたりして、これまで読んだ藤野さんの作品と比べてかなり技巧に凝っているなあという印象を受けました。
    一方で「いやしい鳥」で描かれていたような訳の分からないエネルギー・勢いのようなものはあまり感じられず、そのあたりに魅力を感じていた自分にとってはちょっと肩透かしをくったような読後感でした。いや、もちろん上手いんですよすごく。特にラスト3行なんかはかなり印象に残る箇所ではあるのですが、これを怖いかっていうとちょっと違うような気もします。そういう意味では玄人向けの作品と言えるのかなあと。もちろん芥川賞受賞には何の文句もありません。

  • 「爪と目」こういう作品が芥川賞に求めてる地獄だなあ
    「しょう子さんが忘れていること」いや怖いんだけど。37歳の娘の殴りたくなる感いいね
    「ちびっこ広場」これは分かりやすいですね

  • この終始不気味な怖さはなんだろうか

  • "純文学も楽しめる私"を作り上げたかったのに、挫折しました。こーゆう意味がわからないもの、やっぱりダメなんだなぁと。一作目が終わると同時に切り上げました。残念。自分に。他の方の感想を読んで出直します。

  • ちびっこ広場しか意味がわからなかった。
    怖かった。
    一人称とはこういう書き方もあるのだなと楽しんで読めた。

  • 連れ子のわたし視点で語っているが、幼稚園にいるはずの時間帯までも把握してしまっている。。何故。怖いは怖い。それより不気味さが勝つ。眼ん玉はしっかりと見ています。 

    2話のしょうこさん、どういうこと?(・o・)だれ?川端くん?

    3話子供の頃よくあった似たような噂話。なのにゾクゾクする。ちびっこ広場に少女の霊がいないと証明できるといいですね、お母さん。

  • 意匠を凝らしていると余程のモノでないと結構辛いですが、本作まさにそれ。
    何処か書き手が酔っている感じがするし、そもそも怖くないというか嫌だが目を逸らせない小説を読まされていると思えなかったなぁ。悪意がストーリーとしての悪意に昇華していないというんでしょうか?

  • 「史上最も怖い芥川賞受賞作」という触れ込み。語り手の「わたし」は幼児、「あなた」は父親の再婚相手。「あなた」は「わたし」の父親と不倫。「わたし」の母親はある日ベランダで自殺とも事故ともつかぬ不慮の死を遂げ、父親は「わたし」を連れて「あなた」と再婚します。3歳の娘がこんなふうに話せるわけもなく、その違和感が読み手の不安を誘って面白い。特に美人でもないのになぜか男性の興味を惹いて女性からは敵意を持たれる「あなた」。母性にも欠けているけれど、「わたし」を持てあまし気味だった父親は、「あなた」が来てくれて安心します。「あなた」が与えるスナック菓子をぼりぼりと食べ続けて「わたし」が太っていく様子が手に取るようで不気味。衝撃度としては高いですが、この手法は一度しか通じないと思われ、以降の作品はどうなるか。表題作以外の2編もつかみどころなく、どれも単に思わせぶりだと言えなくもありません。次も手に取るかと言われると厳しいかも。

  • 怖いというより不安になる。
    中盤で自己を飾り立て顕示する日々が、「透き通る」と形容されてたことに、それまで唯一まともに見えていた主人公の母も相当病んでる(自覚あるんだ)なと思いました。
    人を愛せないのは不幸だけれど、そんな人を愛してしまう人ほどは不幸ではないのかもしれない。
    他の二編も不安になる。ホラーは好きだけどエンタメ要素0なので、なんでお金払ってまでこんな嫌な気持ちにならなきゃならないの…てなる。

  • 途中途中で区切りはあるけれど、なぜか続きが読みたくなる小説。
    幽霊とかのホラーではなく、ごく普通の日常に潜むホラー。

  • ううううううんんん。コンタクトああした位でそんなになるの?ホントに?3歳の子設定もなんだかいくら文学でもなんだかなあ…。7歳とかじゃだめだったんだろうか?

  • 16/06/02
    これはホラーなのだろうか。とりあえず痛い、、痛い痛い、、と顔をしかめて読んだ。

    ・その文章が、ほの暗い明るさをもってまたたくのがわかった。活字が親しげに微笑み、ひょいと片手をあげて挨拶したみたいだった。(P84 爪と目)

  • 純文学というものはやはりよくわからない。表題作の爪と目は人称の使い方で特徴的だったけど、それだけだった。痛みを知らないような継母に対して最後に痛みを与えるみたいな終わり方。ホラーと評してあるが、怖さよりもわからなさの方が強かった。これも純文学だからか。その他2編もよくわからなかった。単純に言ってどれも面白くない。

  • キモっ!
    短いセンテンス、会話の少なさ、そして何と言っても人称の使い方でさらに不気味さを増す仕組みは面白かったっス。

  • 薄いからちょっとした隙間時間に読もうと思って開くと、いつの間にか全部読んでいた。目が離せないような波乱の展開があるわけでもないのに。流れるようで、そのまま浸っていたくなる不思議な文章。

  • 「わたし」の母→傷がある状態で、傷ひとつないぴかぴかの体と心を欲してた(綺麗な部分だけをブログで見せる)
    「あなた」→目に傷があろうと気にしない。怪我もしたことがない。

    透明マニキュアの膜=ギザギザの傷だらけの爪を覆うもの。
    それが傷だらけの目に被せられた事で、傷ひとつないぴかぴかの体になる。
    →単なる光でしかなかった平坦なものたちが途端に意味を帯びた世界に見えてくる。

    まとめ: 傷だらけなのに良いところばかり見せようとする人たちは、だからこそ、この世界に喜びを見出すことができる

  • 幼児の「わたし」を語り手に、母の死と、父と「あなた」の(再婚を前提とした)同居が語られる。「あなた」が「わたし」に(というよりは周囲の人間すべてに)心から親密な関係を築けないことを傷のついたコンタクトレンズやほぼ見えない裸眼で表象し、「わたし」もコミュニケーション機能の不全に陥っている様を噛んで尖った爪で表す。

    たしかにホラーだこりゃ怖い。
    どのような話かがつかみきれない序盤からすでに相当怖い。すべての文章に「ひっかかり」を覚えるのだ。語り手の「わたし」は自分の心情を一切語らないのに、「あなたは~思った」と「あなた」の行動・心情を断定的に語る。それだけで「これは絶対に誰も幸せになれないタイプの小説だ」とわかるし、「ひっかかり」があるだけにじっくり読まされてしまう。そしてこの断定的な口調のわけが、最後の"あとはだいたい、おなじ。"で推測され、なんだか自分まで地獄におとされたような気持になったのだった。

  • 現実的じゃない感じが、ふわふわして楽しかった。

  • ぞっとする。やめてよ

  • 「あなた」がまるで一人称のような主語になっていて、「わたし」がまるで二人称のように語られているのが面白かった。
    『ちびっこ広場』面白かった。結局噂話通りになっているとは。

  • 難しい。なんとなくぼんやりだけど幸せに生きている現代人の内面と生活を描写した作品?
    何も感じないような人間でも生活の中で変化のきっかけを得て変わっていく、無感情そうな人間でも他人の悪意ある行動で心が歪む?
    幼い子供の心に与える親の影響は甚大。
    人間は見た目ではわからない。

  • ジメッとしてる。

    1話目 確かにコンタクトに似ているかも。

    2話目は直接的な描写がないのが恐ろしい。

    3話目は意味怖。

    全話、自分の解釈が合ってるのか、誰かと話したい。笑

  • 芥川賞、なんですよね。
    正直全く価値が分かりませんでした。

    2014年35冊目。

  • めちゃくちゃ怖い、とTwitterで見て読んだ一冊。確かにめちゃくちゃ怖かった。おかしなことが起きているのにずっと静かで、二人称のせいで気が狂いそうだった。

  • 怖かった
    初めて読んだ時目の描写に強い恐怖をおぼえて、発狂しそうになりながら読んだのを覚えている
    何度か読み返そうと試みたがどんなホラー映画やホラー小説よりも怖く感じでなかなか開けていない笑

  • 「爪と目」 3

    「しょう子さんが忘れていること」 2

    「ちびっこ広場」 2

全69件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤野可織の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
伊坂幸太郎
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×