ブラック・ジャックは遠かった: 阪大医学生ふらふら青春記 (新潮文庫)
- 新潮社 (2016年1月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101203416
感想・レビュー・書評
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20180630読了
2013年発行。阪大医学部が中之島にあった時代に医学生として過ごしたころのエッセイ。おもしろい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の医学生時代を綴ったエッセー。
密かに小説家を目指し、勉強には身が入らず試験はカンニングで何とか凌ぎ、一方ヒューマニズムに目覚めて医療の実態には日々悶々とし、芸術と孤独を愛し、恋愛と一人旅に明け暮れる。芸術家の破滅的な人生に憧れるなど、ちょっと危ない一面も。多少誇張もあるのかなぁ。
著者の20代の生活が魅力的に語られていて、読んでいて引き込まれました。 -
タイトルで予想がつくかと思うが、阪大医学部出身のミステリ作家による、阪大時代の思い出のエッセイ集。
阪大医学部出身のミステリ作家というと、霧村悠康は知っていたが、最近は久坂部氏の方が有名なようで、取っ掛かりがエッセイからということもあり、ちょっと申し訳ないので小説の方は今後読んでみたい。
個人的に、土地勘や言葉のとっつきやすさ等もあり、「青春記」などと題したエッセイの場合、開高健にしろ小松左京にしろ万城目学にしろ、大阪の話をされるとそれだけで評価を上げてしまう。
ワタクシも過去に阪大医学部に右足の親指くらいは関係していたことも有るのだが、一切知らない中之島時代の医学部の話だ。タイトルにも引用される手塚治虫の青春期や、中で何度か引き合いに出される北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズ、なだいなだのような、「サボリ学生」の描写は、医者でない身分からすると非常に楽しく読める。
また、医者となったあとの患者を見るに当たっての葛藤は、マイクル・クライトンの自伝にも通じるものが有る…かな?もうちょっと個々の事例を書けばよいのではないかと思うが。
後半の旅行記は、半分面白かったが、半分はやむなく書いたと言うような話。
エッセイの中では、本職のミステリの片鱗は見えないのではないかと思うが、関係者以外にも、それなりに面白く書かれていると思う。
そこまで☆3。最後に最近よく目にする、阪大医学部・微研の桂小枝こと仲野徹大先生が出てきたので☆をプラス1。過去に研究関係でお話したことがありましてね。 -
おもしろかった。
文学や美術などの芸術分野に著者が多大な影響を受けていたことが印象的だった。 -
先日、新書を読んで今回、エッセイを読んだ。
さすが関西人というべきか、面白い!
医学部生が目の当たりにする現実も垣間見えて、
やっぱり最初の手術はそんな風に思うのね、とか。
自分たちの診断を指導医にひっくり返されて、
親族が希望から絶望に変わる様子とか。
人をきちんと書いているように思えて、良かった。
最後の対談で、森鷗外はアカン、と。
でも、勉強は出来たようですと、と合いの手が入ると。
「ドイツから女性が追っかけてくるようなんはアカン」
ええー。そこですか!と思って、笑ってしまいました。 -
ただ勉強が出来るから医者になる今の学生たち。
それに比べ、やっとこ阪大医学部に入学するも授業をさぼり旅行三昧。カンニング、カンニングで何とか進級し、奇跡の国家試験合格。
こんな医者がいてもいいんじゃない?
楽しく読めました! -
ブラック・ジャックになれなくて、それはそれで良かったのかも。真面目で真面目な医者ばかりではないことに、不安を感じたり安心したりでした。
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作者の「昭和の医大生」時代のエッセイ集。
世の中全体が大らかだったんだなあというのが随所から伝わってきて、どこかほっこりする。 -
最近、買って失敗する本が多いので、図書館で借りたが、これは買ってもよかったと思った。なじみのある場所について書かれているから共感できるというだけではない、何かがある本。
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ばち指を知った。医学生、大学病院での生活がよくわかった。命という重い対象に向け、若い世代がコミュニケーションしながら、わいわいと立ち向かっていく成長の印は、イメージしやすく、後に偉大な医師として羽ばたいていく感じも伝わってよかった。現在の医学部の場所には何度か行ったことがあるので、この本に出てくるような学生たちが学んでいるのかと、少々身近に感じた。