- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101203713
作品紹介・あらすじ
在日の縁談を取り仕切る辣腕「お見合いおばさん」金江福。斡旋料でがめつく稼ぐのになぜか生活は質素だ。日々必死に同胞の縁を繋ぐ、彼女の事情とは(「金江のおばさん」)。妊娠を盾に、在日韓国人の彼と結婚した恵理香。待ち受けたのは、大量のごま油とスパルタな義母で……(「日本人」)。婚活から介護まで、切なく可笑しく温かく家族を描く連作短編集。『ハンサラン 愛する人びと』改題。
感想・レビュー・書評
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自分が同じ立場ならどのように考えて生きているのだろうか。日頃自分の国というものを意識せず暮らしているので、考えさせられた。
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著者「深沢潮」さんの作品との出会いは、「翡翠色の海へうたう」であった。その後、SNSで情報を得て「かけらのかたち」を購読し、「深沢潮」さんより短編集なら本書とご紹介を受け、「縁を結うひと」を読んだ。
在日コリアンの縁談を精力的に取り組み、生計を立ててきた「金江のおばさん」。数々の縁談のとりまとめと自信の家族の苦難。そして、縁を結ぶ過程での、旧来からの朝鮮の文化やしきたりと最近の若者の意識の変化、総連と民団の軋轢。婚活、嫁姑対決や介護の問題など短編ならではの多彩なテーマが続くも「金江のおばさん」が「縁を結うひと」として短編を編み込んでいく。在日コリアンであることを隠し、身を潜める人々。あえて在日コリアンとしてのアイデンティティに目覚める人々。縁談に関する文化やしきたりは、隣国であり同じ儒教国である日本においても鏡像としてとらえられるのではないか?
閑話休題 韓日関係
日露戦争で勝利し、朝鮮半島を植民地化した大日本帝国。大日本帝国に虐げられ、仕事や生活のために日本に渡った朝鮮の人々。男性は徴用工、女性は従軍・産業「慰安婦」として、日本に無理矢理連れてこられた朝鮮の人々。日本の敗戦と同時に、朝鮮の人々はちりぢりとなり、帰国がかなわず日本で生活を続けなければならなかった在日コリアンの歴史や苦難をもっと学ぶべきだろう。かつて、百済や新羅からの文化を強く受けた日本。豊臣秀吉の朝鮮征伐の後、江戸時代では定期的な交易行われ、幾度かの韓流ブームが起きたとのことだが、今現在の韓流ブームにも重なる。SNSなどでは嫌韓・嫌中の誹謗中傷が問題となっているが、隣国として文化交流を通した良好な国際関係が続くことを願ってやまない。 -
これだから小説は面白い!
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在日専門のお見合いおばさん 福 を中心に繋がる人々の葛藤や悩み。
お友達に何人か在日の子はいるが、皆日本語しか話さず日本文化にしっくり馴染み、日本で恋をし日本人と結婚している。
在日同士でなければ!という切実な思いは彼女らからは感じなかったが、異文化の中で子が苦労しないように…とお見合いおばさんを頼る親たちの親心はせつない。
お姑さんとお嫁さんのお話が良かった。 -
在日韓国人のお見合いを斡旋している福おばさんを中心とする連作短編集。
アイデンティティが交錯しながら心温まる作品。 -
マルセ太郎さんの「一人芝居」を
企画させてもらった時のことを
思い出しました。
「記憶は弱者にあり」
在日コリアンの話は
ついつい重苦しい話になりがちである
それはまぁ当事者なら
誰でも言いたいことがあり、
誰でも叫びたいことがある
それをそのまま、伝えても
今の日本では残念なことに
うまく伝わらないことが多い
だからこそ ちゃんと伝えたい
それも、面白おかしく
それも興味深く伝えたいのです
と おっしゃっておられた時の
ことを 思い出しました
さて 深沢潮さん
とても興味深く
読ませてもらえました -
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母乳シチューが怖かった。(あのタイプで専業主婦やってると、年々モンスター化していくから、早く離婚した方がいい)
国籍関係なく楽しめるが、大学時代の友達に在日の子がいたので(高校まで朝鮮学校)、同じ日本在住でも色々違うことは感じていた。
この本読んで「なるほど」と思ったことも多かった。
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一番残ったのは占いの話。
すごくつらい。
最後の話は在日だろうとなかろうとみんなが向き合う問題なので、なかなかしんどかった。
全体的に重たい話をかるーく楽しく描いているので、歴史的背景を知らない、勉強不足なわたしでも読めた。 -
在日コリアンは、なんとなくイメージで、全員韓国籍なんやと思ってたけど、当然朝鮮籍の人もいるということを知った。
在日コリアンと日本人(特に女性が日本人の場合)の結婚が、差別問題が無くとも、難しい理由がよく分かった。法事が大変というのは良く聞く話で、大変なんやったら簡素化したらええやん、と軽々しく言うのは、在日コリアンの文化を否定することになるから、「日本人」の姑さんのように、めたくそな努力や大変な思いをして、文化を継承する覚悟でなければならないというのは納得。
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在日の人々のお見合いを斡旋する福おばさん。斡旋料で生活をする彼女は日本一のお見合いおばさんとして有名だ。その彼女が見合いをセッティングする人々の人生や、彼女自身の過去などを描いている。
在日と呼ばれる人たちの暮らしなど、あまり知られていないことが描かれていて、興味深い。在日としての生き辛さや哀しさ、韓国朝鮮人としての誇り、祖国への郷愁、一世や二世三世との隔たりなど知らなかったことがたくさんあってとても面白かった。
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在日の縁談おばさんの話。
意識してこなかったけど、きっと身近に沢山あるだろう世界の大切な話があります。
自身の知見、視野を広くする努力の必要性を感じて読了。 -
表紙裏の著者紹介には
(この本の一番最初の短編)「金江のおばさん」で平成24年「Rー18文学賞大賞」を受賞。在日の家族が抱える「答えのない問い」に向き合う作品・・(略)・・などがある。
とあります。
この本も「在日」の人たちの悲しみ、痛み、日々の暮らしの困難を平易な文章で書きつづっている短編連作です。
最初の短編「金江のおばさん」が6つの短編のどこかに出てきます。(私はこのバーさん好きじゃないけど。笑)
私は2作目「四柱八字」とラスト「ブルーライトヨコハマ」が好きです。
在日の男性に嫁いだソウルの女性占い師の話と、
ラストは、在日・介護が絡んで、ちょっとウルッとなりました。
在日関係はほとんどまったく知らない世界なんですが、
やさしい語り口で、女性の「気持ち」から入ることで、この世界にすんなり入っていけます。在日がどうこうというのを抜きにしても、いい短編連作小説だったと思います。
読んでよかったです。 -
心揺さぶる小品。とくに印象に残ったのは、日本人、トルチャンチ。
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これまで、縁遠いところにあったテーマ。小説として面白いのはもちろん、色々考えさせられるものがあった。