絶叫城殺人事件 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101204338

感想・レビュー・書評

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  • 何度目かの再読。作家アリスシリーズ短編集。今作は陰惨というか憂鬱というかそういう負の感情に支配された話が多い。一番面白かったのはやはり表題作でもある「絶叫城殺人事件」。犯人の意外さもさることながら動機の点については作家アリスシリーズでは珍しい部類ではないだろうか。

  • ――

     再読。

     家にいる時間が長くなると、気付かなかったことにも気付くようになるもので。
     多分近所から逃げ出したインコが家の裏で鳴いてたり、
     いまとても綺麗にカッコウが鳴いてたり。
     調布飛行場の空便は案外真上飛ぶんだなぁとか。
     裏のお家は紫陽花育ててて、いい季節。紫陽花ってちゃんと育てると長生きするのねぇ。

     そんなわけで短編集、『絶叫城』です。
     有栖川作品の中でも結構好きで度々手に取るのだけれど、どれも非常にらしくて良いのです。
     黒鳥邸は全体の、静かに謎に浸る感覚と真相のやりきれなさと。
     壺中庵の密室トリックはいかにも有栖川、って感じ。
     月宮殿はそのタイトルと、実際に登場してくる人物たちのギャップ。そこに有栖川さんの独特な視線を感じるところ。
     雪華楼ではミステリの、有り得なさとの戦いが垣間見えるけれど、あとがきを読むとそれこそ事実は小説よりも奇なり。
     紅雨荘は骨太な真相と、本筋とは関係ないところでアリスがロマンチストなのがにやり。

     そして表題の絶叫城。これは実は短編集の筋からは外れているんだけれど、作家アリスの真髄なんじゃないかと思っている。導入から事件の様相、解決までの流れと、何より火村先生との関係性がよく出ている。その上で事件の真相を暴くときの、ひどくぞっとする闇の深さ。それに対面するアリスと火村先生の描かれかたは、他の作品すべてに通じている核みたいなものが明確で、とても読み応えがある。

     レヴュ書いてなかったので改めて。
     これもまた、気付かなかったことに気付いてる、ということなのかしら。
     しかしいろいろ読むもの沢山あるんだけどなぁ…はふう。

  • おもしろい!

  • 爆発的面白さはなく、評価はいつも星3つ。
    っていうのは読む前からわかってるんやけど、火村もアリスも相変わらずでよかったよかったと生存確認的な楽しみ方をしているシリーズ。

  • 黒鳥亭殺人事件
    過去に夫が妻を殺し崖で身投げした夫婦が住んでいた家
    画家の男と娘が住んでいる
    井戸の中に死んだと思われていた男が発見された
    遺体で
    頭に殴られた跡があった

    家に隠した金貨を取りに来た
    1人で留守番をしていた娘の物音に驚き、逃げる
    井戸に落ちてしまった
    音に気づき井戸の中が気になる娘
    石を入れて水位を上げ、中身を知るお話を思い出した


    壺中庵殺人事件
    壺内当麻が殺された。壺中庵の中で。壺をかぶり。
    跳ね上げ式の扉
    梯子を降りる
    部屋


    借金をしていた息子が殺した
    閂はかけずに、父親の重さで扉を開けないようにし、
    ピアノ線でつないだ
    壺は、父親の体重だけでは足りないかもしれないと心配したため


    月宮殿殺人事件
    ホームレスの男
    ゴミで作った建築
    少年が放火した
    少年は男の外出を確認してから放火したと供述
    月宮殿を守ろうと中へ入り死亡
    サボテン
    妻が大事にしていたサボテンだった

    雪華楼殺人事件
    駆け落ちしていた男女の男が死んだ
    屋上から飛び降りた
    うつぶせだが後頭部に殴打された跡がある
    残された女は精神的に参っていて状況がわからない
    クスリをしていた男女
    お金とクスリが切れはじめた
    別れ話
    絶望し、屋上から飛び降りた
    女が腹を立てて、お酒の瓶を窓から投げた
    落ちてきた男の頭に当たり、部屋のなかへと跳ね返った
    偶然

    紅雨荘殺人事件 箕面
    化粧品会社の社長だった女性が自殺した
    梁に首を吊っていた
    不審な点があった
    32年前に夫と別れていた
    おばさんは元夫を愛していた
    女性の子どもである三兄弟が遺体とテーブルと絨毯を別の建物へ移動させた
    不動産としての資産価値の低下を恐れて


    絶叫城殺人事件
    夜、若い女性をナイフで刺し殺す連続殺人が起きた
    口の中には NIGHIT PROWLER と書かれた千切れた紙が残された
    絶叫城というゲームになぞらえている
    城の謎を解く4人の女性の背中をナイフで刺すゲーム
    夜しかNIGHT PROWLERは活動しない
    謎を解くと、城を、ナイトプローラーを継ぐストーリー
    4件目の殺人は、ライターの女性
    警察に茶色い髪の通り魔に襲われたと通報するも絶命
    捜査網を張るも、だれも引っかからなかった
    口内に残された紙には、GAME OVER と書かれていた
    ライターの女性の弟は、少し前にトラックにはねられ脊髄付随になっていた
    3人は生活圏内で通り魔的に殺されたのに対し、ライターの女性は暗くて倉庫が並んでいる場所で生活圏なではなかった
    ライターの女性は入院した弟の着替えを取りに部屋へ入ると
    連続殺人犯である証拠を見つける
    弟の容疑者からはずすこと、
    事件を終わりとすること、
    罪を知って生きる苦しみからの自らの解放、
    断罪
    として自分の背中を自分で刺した
    弟に話を聞く
    ヴァーチャルな世界と、リアルな世界。その境目が判らなくなるっていうのがどんな感じかと

    この事件はヴァーチャルな世界と現実の境界が見えなくなってしまった若者の犯行だ、とぬかしたのは誰だっけ?
    お前の創った物語がこいつを生んだんだってよ。空っぽの心には、何でも入るらしいぞ。



    まぁまぁおもしろかった
    心理描写がある割には人物像や関係性がよく見えてこなくて
    もっとほかのものから読んだりすれば違ったかも
    ちょうど関西に行くときに
    本を持って行ったら
    関西の地名がたくさん出てきてたのしかった


    すきなフレーズ

    建築とは、形を得て、むっくりと立ち上がった観念そのものなのかもしれない。

    憑きものと言うのが大袈裟ならば、病と呼ぼうか。時に哀しく、時に甘美な建築という名の病。


    お前の創った物語がこいつを生んだんだってよ。

  • 火村英夫シリーズの短編集。
    非常に読みやすいのだが、全体的に物悲しい感じが好みではなかった。

    「黒鳥亭殺人事件」★★★
    登場人物も少なく展開も分かりやすい。
    このオチが好きかどうかで、この短編集が合うか分かる試金石。
    「壺中庵殺人事件」★★
    あまり面白い密室ではない。
    「月宮殿殺人事件」★★
    ある意味で叙述トリック。
    「雪華楼殺人事件」★
    バカミス。時間の無駄。
    「紅雨荘殺人事件」★★★★
    真相を知ると、登場人物の不可解な言動の理由がすっきり分かる。
    「絶叫城殺人事件」★★★
    魅力的な謎なのに・・・。もう少し何とかならなかったのか。

  • 火村先生とアリスコンビ好きだな〜
    本のタイトルにもなってる絶叫城殺人事件が一番面白かった。

  • 火村先生とアリスの二人の距離感が好きです。6つの殺人事件ですが、どれもやり場のない悲しみや切なさを感じます。同じ事件で同じトリックだとしても火村先生とアリスのやりとりがあるからこそ読者に見えてくる景色が変わる気がします。どっぷり夜の世界に浸かりました。黒鳥亭と月宮殿の悲しい余韻の残る話も好みですが、今回心に刺さったのが表題作です。ラストがとても苦いです。

  • 本当は、私は作家アリスシリーズの長編が読みたいのだ。
    だけど、作家アリスシリーズの短編は本当にどれもレベルが高くて、長編と同じくらいの満足感が得られる。本作品もそういった短編集の一冊。
    多分、キャラが良く書けてることが成功に繋がってる。
    作家アリスの有栖川は学生アリスシリーズの作者で、学生アリスの有栖川は作家アリスシリーズを書いてる、という設定らしいが、作家としては学生アリスの有栖川の方が上な気がしてる。

    どれも建物に関係する事件だけど、亭、庵、殿、荘、城、と建物を表す漢字をダブらせずにタイトルにしてる。(まだあるな、堂、家、邸、館、屋…有栖川さん続編行けるんと違いますか?)
    本作品でも火村とアリスはイイ感じにいちゃいちゃしてる。

    ・黒鳥亭殺人事件…出だしが長編感満載。これだけの重厚感を短編に捧げるなんて贅沢だ。
    殺人を憎んでる火村が、無垢な少女が結果的に起こしてしまった殺人に対した時の配慮に感銘を受けた。探偵にはどんな事件でも真実を暴かないと気が済まない人種がいるけど、火村には人情がある。まともだ。
    「女嫌いだが、子供は嫌いではない火村が言う。」、って火村先生やっぱり女は嫌いなのねーそうなのねー、と腐女子的思考回路が刺激されました。本作品の個人的ポイント。

    ・壺中庵殺人事件…こういう場合最初に部屋に入った人がアヤシイから、犯人は分かってしまった。地下の書斎、なかなか使いにくそう。

    ・月宮殿殺人事件…『双頭の悪魔』を読んだばかりで、シュヴァルの理想宮ネタまた来た、って印象。しかし結末は建物関係なかった。こういう目眩ましの設定をとても詳細に詰めるところが有栖川さんらしい。見事につられた。

    ・雪華楼殺人事件…建物からたまたま外に投げた瓶が落下してきた人の頭に当たったとか、有栖川さんにしては珍しく「そんなバカな!」的趣向。たまにはイイ。

    ・紅雨荘殺人事件…二つの似通った建造物を利用して殺人現場を移動させるネタ。手の込んだ事件で面白かった。ただ、紅雨荘を舞台にした映画はあまり面白そうに思えなかった…。

    ・絶叫城殺人事件…中編と言っていいくらい長めの話。愉快犯(?)の犯行動機は現代にはびこる問題とリンクする。もし身内が連続殺人犯だと知ってしまったら、自分はどうするだろう。
    火村の勧善懲悪を堪能できる話でした。

  • 火村とアリスの名コンビシリーズ!
    六つの短編集!ミステリアスな難解に、名コンビが挑んでいく。犯人探しをしてしまう展開に、非常に読みごたえがあった!とくに、NIGHT PROWLERの連続殺人は、どんでん返しが待ち受けていて、印象に残った!

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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