- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101204369
作品紹介・あらすじ
犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。
感想・レビュー・書評
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王道の孤島ミステリ!
島のメンバーには謎めいていて何やら胡散臭いし、招かれざる客よにり雰囲気はどんどん不穏になっていき…
事件の始まる前から、シチュエーション的にアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行殺人事件』を連想させられて期待がいや増す。
排他的な空気の中、子供たちとの交流だけが和やかで癒された。
少ない手がかりと非協力的な容疑者たちを相手に、殺人事件も彼らの秘密も暴いてしまうとは、さすが火村先生!
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有栖川有栖作品の短編に慣れていたせいか、事件が起きるまでが超長く感じた。途中のギスギス感にハラハラしつつ、収束まであっという間だった。2006年の作品だが古さはなく、今読んでも新鮮だった。良い作品と思う。
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外部との連絡手段を断たれた孤島
島内の人間が結託して守っている秘密
そんな中で起こる連続殺人事件
部外者が故に敵対して孤立する探偵
ハラハラドキドキしながら刻一刻と忍び寄る恐怖と、火村先生の超然たる推理に読み耽りました。
人は誰も、
たった一度の命しか生きられない
命は有限だからこそ苦しくて
苦しみがあるからこそ幸せを感じられる
毎日を漫然と生きていると
いつか大切な人とも死が分かつことを
忘れてしまいがちだなと。
この物語は読み終わった後に
何か心に残してくれる感じがしました。
だからこそ謎解きでスッキリというよりは
重々しく靄っとした気持ちにもなるけれど
この美しくて哀しい人間の物語が好き
余談ですが
子供たちとの「秘密の捜査会議」は
可愛くてほっこりしました。 -
単行本を読んでから10年あまり、文庫版を理由なく買いそびれていたので大変ひさしぶりの再読となった。採用されたテーマとその顛末、お疲れの様子の火村先生が婆ちゃんに旅行をすすめられるという常にない導入。印象的だったせいかそれらはよく記憶に残っていた。さいきん読んだシリーズ長編と比べても、やはり有栖川さんの作品は素晴らしいフーダニットであると再認識するくらいで、ケチをつけたくなどならないからうれしい。動機を脇に置いて追及するのは、あくまで論理的な手段で指摘できる真犯人。本書にもこのシリーズの滋味が詰まっている。
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火村&有栖コンビが、とある勘違いから目的地とは違う島にたどり着いてしまい、そこで連続殺人事件に遭遇すると言う話。
秘密にしておきたいこと。というのが、引っ張る割には大したことがなかった。あーそんなのかーって感じ。
周りの登場人物がやけに攻撃的なのが、ちょっとおかしいと思った。
お見合いの話とか、周りが怒ること自体がおかしい。 -
火村さんシリーズ。「絶叫城殺人事件」での火村、有栖コンビの掛け合いが面白かったので長編を読むことにしました。
烏の描写が島の薄暗い雰囲気を演出しています。怪しげな登場人物たちがどんなつながりを持つのか気になってするする読めました。
犯人の動機が唐突過ぎてちょっとあっけなかったです。でもこのシリーズは面白そうなのでまた読んでみたいと思います。 -
映画「緑の部屋」が効果的に使われるシーンがあります。別の話で「アデル」への言及もあった。フランソワ・トリュフォーがお好きのようで。
「孤島モノ」です。死体はゴロゴロしませんが(←偏見?)。
最初の事件が起きるのが半ば過ぎ。そこまで「この人達は何故この島に集まったのか」でひっぱっているのは、純粋に作者の力量なのか単にファン心理をくすぐられているだけなのか。
本格としては◎。
華やかさはないけど(まあ有栖川節かな?鳥葬紛いの死体をえんえん描写したりもしない)終始論理的で「名探偵」しています。(論理は破綻しなきゃエレガントってもんじゃないとは思うけど)「何故死体を動かしたか」は実にうまい処理だし、「動機は不明でもロジック上はこの人しか犯人たり得ない」で本格はイイと思ってます。
ただ、そこから(ホワイダニット)が「物語」になるわけで。お話としては△。
せっかくの「愛妻をなくした孤高の幻想詩人」、こんなおいしい御仁に、この使い方はないでしょう~雰囲気作りだけに使ったんじゃ勿体無いよ~栗本薫だったら、絶対この御仁が黒幕で、延々と語らせるラストにしていると思う。
キャッチボールのシーンが印象的だった。変化球投げられるかと子どもに聞かれ、「曲がったことは嫌いだ」って。・・・名探偵だねえ。 -
軽妙なストーリーが素敵な有栖川先生の作品の中で異質に感じる作品。タイトルもお話もどこかおどろおどろしい雰囲気が漂っている。蠱惑的で後味が少し悪くなるけど、読み進められずにはいられない。20年近く前の話でありながら今でも考えさせられるテーマなお話でした。
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読んだあと一番に思ったのは「この話はミステリーなんだろうか、SFなんだろうか」ということだった。
いや、殺人事件はあるししっかりとしたミステリーなんだけど、「事件が起きて探偵がそれを暴く」っていうベースも同じなんだけど、それでも根底にあるテーマがテーマだからかそんなことを考えてしまう。
この話が書かれた時よりも今はずっと技術は進歩しているんだろうけれど、でも実現したと言う話を聞かないのは法律もあるんだろうけど倫理観とかそういうものがあるのかなーなんて。
でも、この小説の中では、せめて創作の世界の中では叶えて欲しかった。
謎解きのシーンが本当に辛くて……そこまで解かなくてもいいじゃない、そこは崩さなくてもいいじゃない、って読みながら思ってしまうほどに。
名前に気付いた時は「そんな所にまで……」って愕然とした、まさかそこまで徹底的に対比がしてあったなんて。
読み終わった後に「命」について考えてしまう、そんなお話だと思う。 -
20221213 読了
覚書
第一章 鴉舞う島 第二章 ミダス降臨
第三章 死の翼 第四章 孤絶と失踪
第五章 海辺の儀式 第六章 扉の奥
第七章 ケシテモウナイ 第八章 遠い島影
作品の舞台になる場所がM県だった為、その分とても
楽しみに、長年?本棚の中で眠って貰っていた本。
火村先生&有栖だしw
久しくご両人の作品を読んでいなかったし、孤島が舞台だしで、わくわく♪でしたが、…あれ?w状態に。。
孤島、あまり生かされてないなぁ
事件発生となる迄の前振り長いなぁ 等々で、
とどのつまり誰が犯人?という箇所まで、斜め読みして
しまいました(すみません)
M県の某島にありったけの想いを寄せてしまったが故に
その想いを裏切られたショックが小さくはなかった。 -
果たしてミステリに派手さは必要なのだろうか?ここ2年半だけで読んだ本は多分200冊は超える。ほぼミステリだ。この話の位置付けとしては派手ではない。トリックも奇抜ではない。読み手に対する謎への引き込み方がうまい!それに尽きる。アウェイの中で罵られながらというのは、同日に読み終わったクイーンのお話が思い浮かぶ。探偵はその推理の過程において、誰かのプライバシーに踏み込み、時に失礼を承知で推理を披露する。火村には有栖がいて、お互いに補完し合いながら、真実に迫っていく。その描き方がよかった。
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作家アリスシリーズでは初めの孤島もの。
孤島作品としては、そんなに奇抜な殺され方
でもなく、大人数が死ぬでもなくと
ちょっと地味目(?)な感じです。
でも最後まで漂う、不可解な集まりと
烏の島での殺人劇が終始良い味出してます! -
連続して起きたふたつの殺人。隔絶された島で、死体の状況や島に集った人たちの証言だけをもとに推理を進める火村と有栖川。
二人の子供たちを中心に周りの大人たちが動いているような不思議な印象。
そして、まったく見えてこない動機。
火村たちは手持ちの少ない情報だけを頼りに、論理的に犯行までのありようを再構築していく。
先の見えない展開はそれなりに面白かった。
ミステリーとしての出来もいいし、何より「火村」シリーズということで安定感もあった。
読者の勝手な思いだろうが、より完成度の高いものを期待していた分、可もなく不可もなく・・・といった思いが残る。
印象に残ったのは成功するビジネスは三つのタイプに分類できる。顧客を脅すか、癒すか、魅せるか。
エンターテインメントのどの分野にも共通する気がして、なるほどと納得してしまった。 -
これも久々の再読。すっかり話を忘れてた。。。
改めて読むと、すごい設定だなと思った。間違えて違う島に連れていかれるとかあるのかなぁ‥‥。
一連の作家アリスシリーズの本を再読していてつくづく思うんだけど、作家アリスって何気に毒舌で面白い。火村先生よりよっぽど気が強い(笑)。 -
火村英生シリーズということで読み始めた作品。
物語が進むにつれていろんな想像(推理とは呼べないくらいのもの)が湧き上がってきて、不安になりましたが、どれも外れました。見事に騙されてしまった?
探偵役をつとめる火村とアリスがアウトサイダーとして敵視されているのが面白かった。敵視というか、敵対していましょう、という感じが。とても好き。
泣けたのは、最後の方の、海老原の言葉に対するアリスの「そんなふうに救われるのなら、」という思い。全部読み終わったあともその部分だけ読み返して泣いてしまった。
アリス先生、決して温厚ではないし鋭い考えも持った人だけれど、触れているとなんだか妙に安心する。だからこのシリーズ読むの止められないんだなあ。次はどれも読もうか。 -
孤島を舞台にしたミステリだが、さすがの有栖川。怪奇小説のような不気味な島を舞台に意外な真相の事件を見事に描いてみせた。怪奇小説と書いたが、ホラー的ではなく、不可解という意味である。
事件前の導入部も十二分に尺を取って島に宿る「魔」を描いてみせた。 -
一つ前に読んだ有栖川有栖作品が短編集だったせいか、長編の冒頭部分がなかなか進まなかったが、それでも読んでいくと止まれなくなる。
章が変わるところまでで今日は終わりにしようと思っていたのに…もう少しだけ、あとちょっとだけ…と、とうとう寝不足になる。
事件を解決して一件落着、めでたしめでたし!という爽快感が ない のが有栖川有栖作品の いいところ だなと思っている。
一抹の不安のようなものが心に残る。「君はどう思ったかな?」と作者に問われているようでその余韻に浸るのが私は好きだ。 -
「有栖川有栖」の長篇ミステリ小説『乱鴉の島(らんあのしま)』を読みました。
『虹果て村の秘密』、『孤島パズル』、『朱色の研究』に続き「有栖川有栖」の作品です。
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絶海の孤島、「火村」と「有栖」を「魔」が襲う。
精緻な推理、瞠目の真実、傑作長編ミステリ。
犯罪社会学者の「火村英生」は、友人の「有栖川有栖」と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。
人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。
彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。
島を覆う死の気配。
不可思議な連続殺人。
孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、「火村」の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。
本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。
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探偵役である臨床犯罪学者「火村英生」と、「ワトソン」役の推理作家「有栖川有栖(アリス)」のコンビが活躍する作家「アリス」シリーズの長篇7作目にあたる作品です。
■前口上
■第一章 鴉舞う島
■第二章 ミダス降臨
■第三章 死の翼
■第四章 孤絶と失踪
■第五章 海辺の儀式
■第六章 扉の奥
■第七章 ケシテモウナイ
■終章 遠い島影
■あとがき
■文庫版あとがき
■解説――現役バリバリの本格孤島ミステリ 村上貴史
臨床犯罪社会学者の「火村英生」は、友人の作家「有栖川有栖(アリス)」と休暇に出かける… だが、彼らがたどり着いたのは、目的地・鳥島とは違う場所だった、、、
鴉が群れ飛ぶ絶海の孤島、通称・烏島と呼ばれる黒根島… そこには、世間と隔絶された生活を送る作家「海老原瞬」の別荘があり、謎の医師「藤井継介」、学習塾講師「財津壮」、行政書士「香椎匡明」、保育士「中西美祢」、スクール・カウンセラー「水木妥恵」等の客人が集まっていた。
「海老原」を初め客人たちの雰囲気に何か秘密めいたものを感じながらも、2人はやむなく別荘に一泊させてもらうことになる… さらにそこにIT企業・ミダス・ジパングの社長「初芝真路(ハッシー)」が「藤井医師」に会うため、ヘリコプターで舞い降りてくる、、、
突然の来訪に怒る「藤井医師」は「初芝」を追い返すとともに、「火村」と「アリス」にも「初芝」との同道を勧めが、別荘に連れられて来ていた小学5年生の「拓海」と「鮎」が「アリス」に懐いて寂しがったことから、「海老原」が翻意して2人を引き止める… さらにはもう一泊するよう勧められた「火村」と「アリス」は、その提案を受け入れながらも彼らの態度にますます不可解な思いを強める。
訝る「火村」たちの前で、殺人事件が発生する… 殺されたのは別荘の管理人の「木崎信司」、、、
そして「初芝」は姿を消していた… さらに別荘の電話線が何者かに切断され、警察を呼ぶこともできない一同は交代で不寝番を立てて夜を明かす。
翌朝、烏が集まっていることに異常を感じた「火村」が「アリス」とともに見に行くと、崖下の洞窟内で「初芝」の無残な死体を発見する… しかも、死亡推定時刻から「初芝」は「木崎」よりも先に殺されていたことが判明する、、、
別荘に集う者たちの中に犯人がいることが明らかになるに及んでも秘密を頑なに守ろうとする彼らを前に、「火村」は一連の事件と「海老原」たちの秘密の真相を解明しようと推理を試みる…… 事件の背後に隠された彼らの「秘密」とは何なのか!?
好きなんですよねー クローズドサークル物… しかも、その中でも本格ミステリ好きにとってはたまらない孤島という舞台設ですからね、、、
しっかり愉しませてもらいました… 限られた登場人物、その中に殺人犯が潜んでいるという緊張感、疑心暗鬼になる人々、それぞれのアリバイは?動機は? ホントに面白かったですね。
クローン技術に絡んでいる、孤島に人々が集まってきた理由も含め、謎解きが愉しめましたね、、、
相変わらず、「有栖川」と「火村」二人のコンビが、丁寧に事件を解決してくれるので、読後に謎が残らずスッキリしますしね… 次も作家「アリス」シリーズを読もうと思います。
以下、主な登場人物です。
「火村英生」
英都大学社会学部犯罪社会学専攻の助教授。臨床犯罪学者。
「有栖川有栖(アリス)」
推理作家。火村の学生時代からの友人。
「海老原瞬」
伝説的な象徴詩人、作家、翻訳家、英米文学者。
ポー研究の権威。
「海老原八千代」
海老原の亡き妻。
「藤井継介」
海老原の学生時代からの友人。元・東帝大学病院産科医。
クローン技術の研究者。
「財津壮」
学習塾講師。
「市ノ瀬拓海」
財津の甥、小学5年生。
「香椎匡明」
行政書士。
「香椎季実子」
香椎の妻。行政書士。
「小山鮎」
季実子の姪、小学5年生。
「中西美祢」
保育士。
「水木妥恵」
スクール・カウンセラー。
「木崎信司」
別荘の管理人。
「木崎治美」
木崎の妻。
「初芝真路(ハッシー)」
ミダス・ジパング社長。 -
論理に基づいた本格ミステリというだけでなく、何とも言えない後味のほろ苦さもこのシリーズの魅力だと思う。ロジックの爽快感と、人間のままならなさが混ざり合って、すっきりしきらないけど癖になる後味を生み出す。
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江戸川乱歩ゆかりの、三重県鳥羽市らしき島が舞台、というだけで嬉しくなります。
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だ さ く
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火村シリーズ初の孤島もの。それだけでワクワクする。一見何の変哲もない殺人事件(殺人事件が変哲もないとは甚だおかしいが)が起こり、登場人物のアリバイを調査し、推理する。派手さはないが本格ミステリと言っていい。またクローン技術や、誰かを彷彿とさせる社長など、当時の最先端を扱っていながら、今読んでも新鮮さがある。読み継がれていく作品であった。
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有栖川有栖、初めて読みました。
途中まで気だるくぜんぜん進まんやん、登場人物10何人出てくるけど、ぜんぜんキャラクター入ってこんやん、っていう状態が一気に跳ねて、不穏な空気がより一層強まりそれが最後までなんやなんやとなります。
が、最後は個人的パンチに欠けたかなぁと。 -
有栖川先生の作品は、読み易い。
関西人限定かもしれないが...。 -
作家してる有栖川先生の描写がとてもすきでした。有名どころの文学あまり好んで読もうとしないけど有栖川先生と一緒なら読めちゃうな…
当時の社会状況に思いを馳せながら、毎度おなじみ綺麗ーーーなロジック、孤島の舞台を楽しめました。あとがきで「やっぱりモデルこの人か」となりました。 -
なかなか雰囲気のある作品で1日で完読。
孤島と火村は雰囲気がマッチする。
いつの時代の作品か迷うような現代と一昔前がミックスされたような世界観が妙だった。
2020.9.13
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