穴 (新潮文庫)

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著者 : 小山田浩子
  • 新潮社 (2016年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205410

穴 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 私は夫と都会に住んでいたが、夫の転勤で同じ県内だがかなり田舎の町に住むことになった。偶然夫の実家のある町で、義理の母の勧めで夫実家の隣にある借家に住むことになった。
    実家には夫の両親と祖父が住んでいた。
    数ヶ月後のある夏の日、仕事に出た義母に頼まれて離れたコンビニエンスストアに振り込みに行く。
    しかし途中の川沿いの道で見慣れない黒い獣を見かけて追いかけ、河原近くにあいていた穴に落ちてしまうが、通りかかった近所の奥さんに助けられる。
    コンビニエンスストアに着くと漫画を読んでいた何人もの小学生に絡まれてしまい、今度は「先生」と子供達に呼ばれる男性に助けられる。しかもその男性は、一人っ子のはずの夫の兄だった……。



    著者の芥川賞受賞作。
    どこまでが本当で、どこからが幻なのか。
    とても文章が読みやすくてさらっと進むのだけれど、なんともいえない不穏な感じがぱらりぱらりと散見されて、妙に落ち着かない気分になっていきます。
    この妙な感覚がずっと続いて落ちというか、最後の一文がある意味、ホラー。
    はまり込んだ穴は、このことなのかな……人によってはホラーといは違うと感じられるかもしれないけれど。
    背筋に張り付くような、この感じ、かなり好きです(^◇^;)
    女性の方がこの感覚、分かりやすいかも。特に既婚者の。
    やはり「工場」も読まないと、絶対に買いだわ。

  • 読後、いったい何が言いたかったんだか分からなかったけれど、不思議な世界に引き込まれて、じっとりとまとわりつくような不気味な余韻がいつまでも残った。
    出てくる登場人物、動物や虫たち、どれもかれも気味が悪くシュールだ。いったい彼らが何だったのか分からず腑に落ちないまま話は終わるが、主人公も分からないままその不思議ものたちが見えなくなって終わる。
    仕事を辞め田舎に引っ越し、主婦となって毎日やることもなくボーッと過ごしていると、今まで見えなかったもの、見過ごしていたものが見えてくるということか。心にぽっかり空いた穴に得体の知れないものが侵入してきて、それに抗わず馴染んでしまったということか…。
    あの掘っ立て小屋に住んでいた夫の兄(自称)は何者?

  • 読後が不思議な感じ。一緒に収録されてる、いたちなくと、ゆきの宿がこれまた良かった。この方の他の作品も読んでみたい。

  • 芥川賞らしい作品。

    表題作「穴」は、なんだか真夏の白昼夢を見させられているような気になった。
    旦那さんは携帯イジってばっかりで、姑さんは謎の張り切り母さんで、義祖父はどっか壊れてんじゃないの?ってくらいニコニコと水遣りをしてる。
    誰か悪い人がいるわけではなくて、でも、皆がそれぞれ正しくても噛み合わない居心地悪さってあるよなぁと思う。

    不思議な獣を追って行ったら、首まで隠れるくらいの穴に嵌りましたっていう。
    義兄?も嘲笑う「不思議の国のアリスかよ」って、ああなるほど、言いえて妙だな、と納得した。

    でも、村上春樹みたいに身体すっぽり井戸に入って世界と交信出来るわけでもない。
    首から上は、この世界から切り離されない。
    所詮はそうあって欲しいと願う専業主婦の白昼夢なのかもしれない。

    「いたちなく」「ゆきの宿」
    「いたちなく」は、既視感のある話だった。
    んー、でも、どこでこういう話を読んだかは覚えていない。

    どちらとも、奥さんの呪わしげな様子がただただ怖かったのだけど、いたちのクダリはすっと引き込まれました。

  • 第150回芥川賞受賞作。『穴』『いたちなく』『ゆきの宿』の3編を収録。

    思ったほどの面白さは感じられず、退屈な200ページ。

    表題作の『穴』は、諸星大二郎の『不安の立像』を彷彿とさせる少しサスペンスフルな短編だが、今一つ。

  • 既婚、子なし、非正規社員で働いている女性が、夫の実家の隣に引っ越し一時的に専業主婦になるが、謎の黒い獣を追いかけて穴に落ちてから、奇妙な事象が身辺で起こり始め・・・。

    最終的にはホラーのような余韻を残すのだけど、日常のリアリティと不穏な出来事のバランスが絶妙でなんともジワジワ怖い。非正規で働く女性の不安や不満、鬱屈、専業主婦になったらなったで感じる罪悪感、サバサバしてて良い人っぽい姑との実は水面下の攻防、四六時中スマホ片手にSNS中毒な夫などはとても現実的で現代的だし、働く女性、家庭を持つ女性が普通に「あるある~」と共感できる要素がとても自然に盛り込まれているにも関わらず、同時に、不条理なことが当たり前のように起こり、そうすると普通に親切なはずの近所のご婦人なども怪しくて不気味に思えてきてしまう。虫や動物の描写の詳細さもこの不穏さに一役かっているかも。

    兎を追いかけて穴に落ちたアリスは最終的には元の世界に戻ってくるけれど、この小説の主人公は、黒い獣を追いかけて変な穴に落っこちてもぼんやりしたまま、意外にも居心地の良さまで感じているかのよう。そして慣れなかった田舎暮らしに、最終的にはすっぽり馴染んでしまい、同時に不穏だった獣や義兄や子供たちの姿は見えなくなる。表面的な整合性を求めるなら、主人公の不安定な心理の象徴として他の人には見えない獣や穴や義兄や子供たちが見えていて、それが解消された途端にそれらは消えた、ということになるのだろうけど、それだけで片づけてしまうのは勿体ない。なんともいえない読後感があってとても好きでした。

    併録の短編「いたちなく」「ゆきの宿」は連作になっていて、表面的なストーリーは二組の夫婦の普通の交流なのだけど、とにかく「いたちなく」が怖くて(やはり動物の描写が詳細なのが不穏さを煽ってくる)おかげで何も問題は起こっていない「ゆきの宿」までホラーだったような気がしてきてしまう。そんなことはどこにも書いていないのに「その赤ん坊の顔はいたちにそっくりでした」というオチを勝手に想像してギャッと叫んでしまいそうになった。怖いけど面白かった。解説が笙野頼子なのも納得。

  • 今でも不気味さが思い出せる

  • 日本という環境で、マジックレアリズムを再解釈し、現代的に書き上げたらこうなるのか、と読後深々と考えて、ようやく納得がいった。文学の系譜に位置づけられるとすると嬉しく、星も一つ追加。

    赤裸々に語るには不都合な現実をファンタスティックに捉えなおすのが代表的なマジックリアリズムの手法で、ガルシアマルケス等が有名な作家だが、本作は実にうまくそれを日本の田舎という環境で捉えなおしている。
    その一方で、芥川賞選評での川上さんの「見えているのに、見えていないものが、この小説にはたくさん出てきます。」という一言も非常に的確なように思える。ファンタジックに描かずに、淡々と描写され、だけれども登場人物にとっては見えずに読者のみが見える情景もたくさんあるということ。二重なのだ。

    個人的にまだ考え続けているのが、本当に獣も、義兄も、穴も必要だったのかということ。義兄は説明的な役割をはたしてはいるが、いささか饒舌すぎるように思う。義兄だけが最後まで穴に落ちなかったのは確かに象徴的で明快だが、そこまでの明快さが果たして本作に必要だったのだろうか。明快さをとり入れることによって、現代の日本の読者の共感を呼びやすくなったが、従来のマジックリアリズム小説の重厚な迷宮感が失われ、若干残念な思いはある。

    数か月後に、どれだけ心に残るかを楽しみにしてみたい。

  • 自身を″家族社会″に埋没させること。家族に、地域に同化すること。

  • 文章が読みやすかったが、読後、不思議な感覚になる作品。
    主人公が穴に落ちた場面を境に、風変わりな出来事や人物が出てくるが、それらは結局何だったのか…。

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穴 (新潮文庫)の作品紹介

仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ私は、暑い夏の日、見たこともない黒い獣を追って、土手に空いた胸の深さの穴に落ちた。甘いお香の匂いが漂う世羅さん、庭の水撒きに励む寡黙な義祖父に、義兄を名乗る見知らぬ男。出会う人々もどこか奇妙で、見慣れた日常は静かに異界の色を帯びる。芥川賞受賞の表題作に、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦との不思議な時を描く2編を収録。

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