穴 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205410

感想・レビュー・書評

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  • 「穴」不気味な空気感。真夏、お盆の温度感が伝わる。
    「いたちなく」何も事件は起こらない、ただ鍋を囲って話しているだけなのに怖い。
    「ゆきの宿」いたちなくの続き。ゆきんこゆきこちゃん。サイレンの音。

  • 一日で読めます。謎を残しなかなか怖い。非常に好きな世界観。

  • おもしろい、シュール。わかりやすい怖さではなくて、なぜだか怖い感じ。もっと読みたい。

  • 読書開始日:2021年9月7日
    読書終了日:2021年9月12日
    所感
    【穴】
    難解だった。
    「しんせかい」に似た空気感。
    全く歩み寄ってくれない感じ。
    あさひの未来が姑なのは予感がしていた。
    田舎は日々の動きが少なく、それも専業主婦となると時間を持て余し「穴」にじっといるような感覚に陥る。
    だからこそあさひは「穴」に固執していたのだと思う。
    こう考えたら楽をしているようになってしまうが、義兄と穴の獣は完全に妄想だと思う。
    義祖父の置き去りにされたような痴呆も不気味だ。
    義祖父はもうすでに意識が朦朧としていて、穴に篭りたかったのだと思う。
    あの地域の「穴」は、何も動きのない日々の恐怖からの逃げ場や、動きとして表現されていた気がする。
    なんとも難しく時間がかかった。
    【いたちなく+ゆきの宿】
    斉木はわかっていた。
    主人公が生き物に対する気持ちが希薄なことを。
    妻はもちろんわかっている。
    夫婦のこれまでの背景が、斉木家の出会いから吹雪の泊まりの日でかなり表現されている。
    主人公の「堪能したか」の一言は、かなり危険だ。
    一見違和感が無いが、こう言った事柄に悩んだことがある人物からしたら、たまったものではない。
    もうしばらくないんだから、記憶に焼き付けろといっているようなもの。
    それは妻も夜な夜な泣く。
    もちろん主人公に悪気は無かった。
    妻は托卵した。
    細い腕時計がその証拠だ。
    後半2篇はかなり好み。


    2人分を時間差で作ると必ずどちらかの方が不本意になってしまう
    もし地上に出た日からしばらく雨が続いたら蝉はどうするのだろう
    業務や、責任や、愚痴や苦痛は、全てアパートの中空の2dk分の価値しかなかった
    調和した、土の内部から染み出たような湿り方だった

    いたちなく

    ゆきのやど
    堪能ね
    お前じゃうまくいかないよ
    インテリアのようだが、やはり生き物だからな

  • 数年前に読んだ時、なんだか妙な気持ちになったのを覚えている。そして、なにかの拍子にまた手に取ってしまった。

    この本の良し悪しを語るには時間が必要だと思う。

    初めて読んだ時、意味のわからない奇妙な余韻が残った。少し怖いような、寂しいような、グロテスクなような。

    ただ、記憶に残る。
    記憶に残っていたからこそ、数年ぶりに手に取ったのだと思う。

    穴に落ちて以来、世界が変わったのか、それとも主人公自身が変わったのか、それは誰にもわからない。ただ、なにか、ボタンのかけ間違えたような違和感だけが残る。

    この本について、まだ評価ができない自分がそこにいる。良かったのか、悪かったのか。
    もっと長い時間を経ることで、この本の真価を知れる気がする。

    この本はそういった本であり、良い悪いではない、ただ読んだ余韻が残る、そういった本。

  • よく分からない、一体なんの話なの?って感想が多いみたいで漏れなくあたしもそうなんだけど、それがつまらないってことではないんだよな。このなんだかよく分からない、不思議、モヤっとするのが芥川賞っぽいというか笑 読みやすく、直ぐにこのなんとも言えない世界へ引き込まれた。結局、主人公以外の全員が不気味で少し怖い。田舎特有のご近所のことは何でも知ってて、いつでも見られてる感じ。ひー!何か変だなぁと思うことがあっても、葬式とかその地の風習を経験して、そこで仕事をしてそこの人達と触れ合って、受け入れて、慣れていくんだよねぇ…。隣組みたいなものが悪いってわけではないんだけどもさ。
    他の作品も読んでみたい。

  • 夫の転勤で引っ越した義実家の周辺で起こる非現実なエピソード、というシンプルな構成をベースに、得も言えぬ不安な不安定な違和感のある雰囲気を伝える小説。
    評価の分かれる小説だろう。物語ではなく描写で伝えるタイプの小説。なのでストーリーを追っていっても、作者には近づけない。

  • つかみどころの無い話。何の問題もないように見えるが絶えず不穏な空気の漂う若夫婦が、旦那の実家の隣に越す話。最初は嫁姑のようなものがメインになるのかと思ったが、思わぬ方向に話は流れて、お盆の季節に遭遇したちょっと不思議な話になっていく。

    この、穴やなぞの生き物や不思議な兄などが何のメタファーなのかはやっぱりわからないまま。ほかの短編も物語の最後のほうに和テイストの不思議体験が現れる。これは何を意味するのか。

    あと、夫婦の間の不穏な空気もほかの短編でも共通している。相手の中にわからない部分があり、それをわかろうとする事を少し諦めている感じというか、認めているというのか、とにかく身近であるはずの相手に不明なところがある。これがすごく不穏な空気を生んでいるように思う。100%分かり合える事はないのだから、当たり前なはずなんだけど。

  • 私は夫と都会に住んでいたが、夫の転勤で同じ県内だがかなり田舎の町に住むことになった。偶然夫の実家のある町で、義理の母の勧めで夫実家の隣にある借家に住むことになった。
    実家には夫の両親と祖父が住んでいた。
    数ヶ月後のある夏の日、仕事に出た義母に頼まれて離れたコンビニエンスストアに振り込みに行く。
    しかし途中の川沿いの道で見慣れない黒い獣を見かけて追いかけ、河原近くにあいていた穴に落ちてしまうが、通りかかった近所の奥さんに助けられる。
    コンビニエンスストアに着くと漫画を読んでいた何人もの小学生に絡まれてしまい、今度は「先生」と子供達に呼ばれる男性に助けられる。しかもその男性は、一人っ子のはずの夫の兄だった……。



    著者の芥川賞受賞作。
    どこまでが本当で、どこからが幻なのか。
    とても文章が読みやすくてさらっと進むのだけれど、なんともいえない不穏な感じがぱらりぱらりと散見されて、妙に落ち着かない気分になっていきます。
    この妙な感覚がずっと続いて落ちというか、最後の一文がある意味、ホラー。
    はまり込んだ穴は、このことなのかな……人によってはホラーといは違うと感じられるかもしれないけれど。
    背筋に張り付くような、この感じ、かなり好きです(^◇^;)
    女性の方がこの感覚、分かりやすいかも。特に既婚者の。
    やはり「工場」も読まないと、絶対に買いだわ。

  • 読後、いったい何が言いたかったんだか分からなかったけれど、不思議な世界に引き込まれて、じっとりとまとわりつくような不気味な余韻がいつまでも残った。
    出てくる登場人物、動物や虫たち、どれもかれも気味が悪くシュールだ。いったい彼らが何だったのか分からず腑に落ちないまま話は終わるが、主人公も分からないままその不思議ものたちが見えなくなって終わる。
    仕事を辞め田舎に引っ越し、主婦となって毎日やることもなくボーッと過ごしていると、今まで見えなかったもの、見過ごしていたものが見えてくるということか。心にぽっかり空いた穴に得体の知れないものが侵入してきて、それに抗わず馴染んでしまったということか…。
    あの掘っ立て小屋に住んでいた夫の兄(自称)は何者?

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著者プロフィール

1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞。他の著書に『庭』『小島』、エッセイ集『パイプの中のかえる』がある。

「2023年 『パイプの中のかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小山田浩子の作品

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