悟浄出立 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 966
感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206615

作品紹介・あらすじ

おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。

感想・レビュー・書評

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  • 時折やってしまう、S潮文庫の呪縛による、内容未確認予約物件。悟浄は、沙悟浄のことでした。
    中国古典文学の多少脇役にスポットを当てた短編集5編。
    この作品を書くに至った万城目学さんの序文に、すごく、いいね!っと思いました。彼は、高校時代の現文テストに出題された小説に心奪われた。その後、それが中島敦の「わが西遊記 悟浄歎異」と知る。中島敦は33歳で亡くなり、これは未完といったところ。そして、万城目学さんがその歳になり、そのオマージュに挑戦となる。
    私は高校の現文の教科書で読んだつもりの森鷗外の寒山拾得のラストが心残りで時々思い出していたのですが、それが寒山拾得縁起のラストであったことがわかった時、ようやく納得したような気持ちだったですね。若い時代の出会いって、忘れ難い。(最近は、一昨日登録した本もあやしい)

    悟浄出立 西遊記より
    沙悟浄視線の猪八戒考察。
    趙雲西行 三国志より
    張飛・趙雲・諸葛亮の蜀への船上物語。
    虞姫寂静 史記より
    四面楚歌の元 虞美人草の虞姫の悲恋。
    法家孤憤 史記より
    燕の刺客、荊軻 同音の名を持つ男との分岐点
    父司馬遷 史記 「李陵」中島敦
    娘の榮から見た、大御所司馬遷。
    どれも読み物として面白いのだけど、私が中国古典を読んでなくて、中島敦も西遊記を読んでないんですよ。なので、どの部分が万城目学さんの創作なのか、どのぐらいフィクションなのか、わからないのが残念でした。
    猪八戒って、天界にいた時は、シュっとしたイケメンで、地上に落とされた時豚とぶつかってあの姿というのは、西遊記からなのかしら?

    • ちゃたさん
      おびのりさん、こんばんは。

      万城目さんも中島敦もだいすきな作家さんです。ただ、中島敦の方が圧倒的に密度が濃いです。読みごたえ抜群ですし、短...
      おびのりさん、こんばんは。

      万城目さんも中島敦もだいすきな作家さんです。ただ、中島敦の方が圧倒的に密度が濃いです。読みごたえ抜群ですし、短編が多いです。中島敦をお読みになってのおびのりさんのレビューが楽しみな私です。失礼しました(^o^)
      2023/02/03
    • おびのりさん
      オーダーいただきました!
      中島敦さん、読ませていただきまーす。
      オーダーいただきました!
      中島敦さん、読ませていただきまーす。
      2023/02/03
    • 土瓶さん
      新潮文庫を丸かじりするおびのりさん。
      さすがです( ̄ー ̄)bグッ!
      新潮文庫を丸かじりするおびのりさん。
      さすがです( ̄ー ̄)bグッ!
      2023/02/03
  • 万城目さんのは、映像化されてるのは、全部観てる!
    (そんなんばっかやな(・・;))
    で、はじめて本読んだ。
    何か、あらすじなどに、惹かれて。
    西遊記、三国志などのサブキャラをメインにしての短編5つ。
    スラスラ読めるし、なかなか面白い。
    好みは、やっぱり「悟浄出立」かな?
    ・結果が全てではなく、過程も大事!
    ・先頭に立って、道のない道を行く厳しさ(楽しい事もいっぱいあるけど)
    何か、今にも通じるもんもあって、ジーンときた!
    後書きにあたる?「著書解題」も面白い。
    中島敦さんの「わが西遊記」を読みたくなった!

  • 万城目さんが、高校時代の現代文のテストで、中島敦の「悟浄歎異」にとても感動し、若くして亡くなった彼に代わって、続きを書こうと思い立った短編集。

    古代中国の歴史から題材をとっており、主人公ではなく、脇役目線で書かれているのがおもしろいです。「西遊記」だったら、悟空ではなくて悟浄。「三国志」だったら、劉備や曹操ではなくて、趙雲が主人公です。

    最も心に残ったのは、「虞姫寂静」。四面楚歌という言葉で有名な、垓下の戦い。戦に行く前の宴の場面。虞美人が、戦に赴く項羽や兵士達の前で舞を踊り、その後、自害してしまうという話です。大昔の話で、資料も少なく、色々な解釈があると思いますが、万城目さんの虞美人の描き方、一見、弱く、守ってあげたいような女性でありながら、最後の戦いの前で、剣を持ち、涙一つ見せず、凛として舞う姿は、心に迫るものがあり、とても感動しました。

    「ホルモー」や「鹿男」など、いつもの万城目さんの文体とは違い、落ち着いた、しっとりした文章も良かったです。5つの短編すべておすすめです。

  • 短編それぞれの根底に共通する物哀しさが心地良かった。

  • 中国文学には教科書やドラマで触れてきた程度の知識と興味しかなかったが、とても面白かった。著者解題もあってとっつきやすかった。もし学生時代に読んでいたら、もっと漢文に興味を持てたかもしれない。
    歴史書って堅くて想像の余地がないものだと思ってた。「そうでもないよ〜面白いよ!」って万城目先生にうまく中国文学を布教された感じがする…

  • 悟浄出立、虞姫孤憤が面白かった。猪八戒をそういう目で見たことはなかったわ。「こっちが西天ですよ、と書かれた立て札が、どこかに用意されているとでも思ったか?ただ、自分が行きたい方向に足を出しさえすればいいんだよ!」「好きな道を行けよ、悟浄。少し遠回りしたって、また戻ればいいんだ。もっとも、出来ることなら、最短の道をお願いしたいけどね」

  • ショートストーリー、沙悟浄目線の西遊記が良かった。

  • 図書館で借り。
    日本小説の文庫本コーナーで見かけて。
    筆者と同じく私も学生時代を京都で過ごしたので、勝手に親近感を抱いていたのであった。
    『鴨川ホルモー』は原作も映画も観た。栗山千明かわいかったなあ。
    『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』は義母に貸してもらって読んだ。面白かったなあ。
    と思いつつ借りたのだった。

    『悟浄出立』
    ・序を読んで、中島敦の『わが西遊記』読みたくなった。
    ・西遊記の面々が、かっこよすぎる…!脳内ではドラマ『西遊記』夏目雅子バージョンで再生されたわけだが、かっこよすぎるのだ。
    ・所詮すべては過程ではないのか?と現実に倦んでしまった八戒が、天界から人間界に堕ちてきて、「過程こそがいちばん苦しい」「人間界ではそこ(過程)に最も尊いものが宿ることもある」と語る。思わずハッとしてしまう。おとなになって訳知り顔で過ごしている自分は、どうなのだろう。
    ・p48 八戒の台詞「好きな道を行けよ、悟浄。少し遠回りしたって、また戻ればいいんだ。もっとも、出来ることなら、最短の道をお願いしたいけどね」痺れる…八戒のくせに…!

    ここまで読み終わったところで、万城目学「八月の御所グラウンド」で直木賞受賞のニュースが飛び込んできた。おお。タイムリー。受賞インタビューなんかを見てても愚直というか、なんだろう、ちょっととぼけた感じだけどすごく引き込まれるというか。おめでとうございます!

    ・虞姫寂静
    「四面楚歌」、中学生か高校生の時に漢文の授業でやったなあ、と思いつつ。項羽とその愛人、虞美人のお話。
    当時の私にとっては無味乾燥な漢字の羅列でしかなくって、ふうん、という程度の感想しかなかったのだが、どうして。なかなか。ドラマチックで女の情念というか、母性というか。

    ・法家孤憤
    法こそがこの世界を束ね、人びとを公平に導く唯一の存在だと俺は信じている。p164
    あとがきと合わせて読むと味わい深い。秦の始皇帝(秦王政)を暗殺しようとした荊軻にまつわるお話。

    ・父司馬遷
    「士は己を知る者のために死す」。これも高校生の時に漢文でやった。司馬遷が書きしるした言葉だったか。
    李陵を擁護したため宮刑(去勢する刑罰)を受けた司馬遷とその娘の話。中島敦の『李陵』、読みたくなった。

  • 万城目学作品だが、これまでとは異なり、原作から想像を膨らませた短編集。様々な作品をキャラクターそれぞれの目線で感情や行動が描写されているため、どれも主体者の目線で情景やエピソードが感じられる。おすすめは表題作よりも、虞姫寂静。
    万城目氏、中島敦や沙悟浄が推しとは、やはり面白い。

  • この本を読んでいると、久々に中国史に関する本を読みたくなった。中国史は謎が少ないけど、題材にすると書き手によって特色が出るストーリーになって面白い。

    万城目学は著者解題で中国史にミステリー要素が少ないのは、司馬遷がいたからだと主張している。司馬遷によって緻密に歴史が記録されたため、司馬遷以降も中国史は正確に書かれていると主張している。この主張はなるほどなと感嘆した。いつかは史記を読み、司馬遷が情熱を出した文を読みたいものだ。

    この本はいくつかの短編によって構成されている。その中でも、この本のタイトルである悟浄出立に込められたメッセージに胸を打たれた。「過程にこそ素晴らしさがある」というメッセージは、現代の結果だけを求める風潮に一石を投じているのではないだろうか?

    1番面白いと感じたのは、虞姫静寂だ。虞にスポットを当てており、あまり記録が残っていないため万城目学が思い描く虞に対するイメージがありありとこの話に表れていると思う。項羽のかつての妻であった虞に似た女を虞としての役割を与えるというのは、万城目学の妄想力が無ければ思いつかないだろう。

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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