- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101206769
作品紹介・あらすじ
書籍雑誌はもちろん看板やメニューにも鵜の目鷹の目。時には対象物を解体したり味わってみたり。辞書編纂――それが著者のライフワークだ。日常語から若者語・難解語までを視野に入れ、独自の視点で編まれる『三省堂国語辞典』。その編集委員が舞台裏を案内し、ことばにまつわる様々な説をともに検証してゆく。用例採集の鬼・見坊豪紀の魂を継ぐ研究者による日本語愛あふれる辞典エッセイ。
感想・レビュー・書評
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これは本当に面白かった!色々目から鱗。
特に第二章「誤りと決めつけてはいけない」の内容。
「的を得る」「汚名挽回」「一人で爆笑」「静かに号泣」などの表現を目にするといつも(おやおや日本語間違ってるよ…)と内心ほくそ笑んでたが、この章のタイトル通り実は誤用とは決めつけられない=新用法として認めることもできるのだそうだ。そして実際三省堂国語辞典(通称『三国』)の第7版では用法として認められている、というのは本当に新鮮な驚きだった。
それどころか「こちら〜になります」や「一万円からお預かりします」等の所謂敬語の乱れと呼ばれるものにも、「何故そういう用法が生まれるに至ったのか」を整理して、妥当と判断できれば辞書に採用している。
辞書編纂者というのは「日本語警察」と呼ばれる日本語の乱れにうるさい人種だと勝手に思っていたので、その度量の広さに感心させられた。
確かに言葉というのは時代と共に変化するものだ。ら抜き言葉も僕が子どもの頃は随分うるさく指摘されていた気がするが、今ではかなり市民権を確立している気がする。「させていただく」という表現も今はモヤモヤする人がまだなかなか残っている気がするが、そのうち全く気にされず受け入れられていくのだろう。
そして、国語辞典にはそれぞれ特色があるということも新たな発見だった。現代に生きる言葉を写し取ろうとする『三国』の他にも、エモい語釈で有名な『新明解国語辞典』や百科事典的な『広辞苑』などなど思想により全然記述が異なるらしい。十人十色ならぬ十冊十色。ちょっと色んな辞書集めてみたくなった。
とりあえず子どもが大きくなったら『三国』を買ってあげたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三省堂国語辞典、略して三国か、新明解国語辞典、略して新明国か、今でも採択に迷うところだ。結論としては、辞書はやっぱり三省堂、という事である。
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自分の関わった仕事にこれほど誇りを持ち、人に伝えようとする熱意がまず素晴らしいと思った。『三省堂国語辞典』の強い宣伝のように感じるところも多々あるが、「他の辞書にない視点がここにはある!」と思って取り組まなければ、様々な辞書を出版する理由もないのだろうと感じた。
辞書をもっと使って、ことばにどんな意味があるのか知りたいと思った。 -
この類の本を手にするのは、日本語にそれなりの興味を持つ特定の人だと思うが、はたして辞書編纂にはテーマがあり、それぞれの辞書には特長があることがわかる。全国紙の新聞のようだ。自社の辞書の宣伝色が濃いが、買ってみる気にさせられる。2020.12.16
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国語辞典の編纂者は、ひたすら言葉を拾い集めているらしい。それも、本とか新聞だけじゃなくて、ラジオとか街中の看板とか、電車内の学生たちの日常会話も。当たり前のことなんだろうけど、僕には印象的だった。
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2020年1月15日購入。
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実際に辞書を作っている人の書いた本なので、類書とはちょっと目線が違いますね。
辞書にどんな語を掲載するか、どんな語釈をつけるかといった、実際的なあれこれが書かれていて愉しめました。
舟を編むの副読本としても良いかと。 -
『三省堂国語辞典』通称『三国』の編纂者による『三国』の紹介・解説。現代日本語に気を配り、わかりやすい語釈をめざしている。同じ著者による『辞書を編む』が用例採集や語釈を書く辞書編纂の現場を描いたのに対し、この本は『三国』と言う辞書そのものを紹介する。
現代の日本で使われている言葉を選び、『三国』の語釈・例文の中ではどのように説明されているか。その理由・背景を丁寧に解説する。たとえば「的を得る」「全然大丈夫」などをあえて誤用と決めつけないなど、変わりゆく日本語に対して、ある意味、寛容な編纂方針である。若者の言葉「やばい」はもちろんのこと、インターネットでの笑いを示す "w" や「中の人」、「ふつうに」など、新しい言葉・語用も積極的に取り入れている。辞書編纂者による言葉についてのエッセイと言ってもよい本である。
この本に出てくる語例を、『新明解国語辞典』(通称:新解さん)や『大辞林』などで引いてみて比較すると、辞書の違いがわかって興味深い。
辞書編纂者である著者は、語釈を書くためにさまざまなことに実地にトライしている。最近のライターの仕組みを理解するために分解してみたり、「フラグが立つ」の本来の意味を知るためにプログラミングの勉強をしたり。『三国』をますます「読んで」みたくなる。 -
「的を得る」「汚名挽回」は必ずしも間違いではない。「ナウい」は「現代の死語」として未だに活躍中など、なかなか面白かった。
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辞書の副読本、面白かった。