発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206868

作品紹介・あらすじ

岩宿遺跡を発掘した在野の研究家、相澤忠洋。「旧石器の神様」と呼ばれた考古学者、芹沢長介。日本人の根源を辿る考古学界において、歴史を変えたその新発見は激しい学術論争、学閥抗争を巻き起こす。やがて沈殿した人間関係の澱は、日本を震撼させた「神の手」騒動に流れ着き――。微に入り細を穿つ徹底取材が生んだ骨太ノンフィクション。『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 相沢忠洋、杉原荘介、芹沢長介、藤村新一と続く日本の戦前戦後から現代までの旧石器時代の発掘の歴史が物語風によくまとまっている。

  • 『発掘狂騒史』(上原善広著、新潮文庫)は2017年の文庫だが、2014年の『石の虚塔』の文庫化。
    2000年の旧石器捏造事件についても書かれてある。
    また群馬県の岩宿遺跡を発掘した在野の研究家、相澤忠洋のドラマチックな生涯についてよく書かれていた。旅芸人の父は旅に出て、母がある日家を出てから、兄弟は離れ離れで親戚に預けられる。出征直前の母との再会もあったが、戦後は自転車で行商をしながら石器を拾い集め、やがて発掘に熱中して妻子や生活を返り見ず、資産家の女の援助を受けるなどという話。日本には旅芸人などの定住しない人たちの文化というものが確かにあったというのは、宮本常一などもいう通りで、そうした昔の力の発現もどこかにはあったのだろう。
    捏造事件については特異な粘着性のある子弟関係の歪みといった印象。

  • 有名な石器捏造事件そのものではなく、石器発掘捏造事件を起こした人の「恩師」だった大学教授にスポットライトを当てたノンフィク。初っ端から学閥絡みの醜悪な縄張り争いが出てきて、読んでいて脱力感すら出てくる。日本も記紀神話を歴史として学校教育で教えていた時代があり、それを思うと創世記をめぐって議論を重ねている欧米を笑えないなと思う。

  • 岩宿遺跡の発見から石器捏造事件まで、日本考古学界における旧石器発掘をめぐる作品。本作は単なる事件ルポではなく、旧石器発掘に関わった人々の生い立ちから業績までを、実に丁寧に取材したノンフィクションとなっている。

    西洋に聖書を基軸とした歴史観があるように、日本でも特に戦争中は皇国史観が強く支持されていたため、日本の考古学の歴史は意外と浅く、比較的アマチュアが参入しやすい分野だったらしい。アマチュアと学者の主従関係や学者同士の学閥争い、仮説に希望を見出す学者とそれを利用したペテン師などなど、様々な思惑が地層以上に複雑に堆積する世界なのだなと思った。

  • うーん。考古学界隈の非科学っぷりと学閥どろどろは題材としてまあよいものだったと思うが、書き手がどうにも興味がないのだろうし引き込む何かも見えてこない。ノンフィクションは書き手の熱が必須なのかねえ… そうでもないと思うんだけど

  • 旧石器時代発見の過程から捏造事件に至るまでを、出来事は勿論発掘に関わった人々の性格や何やまで詳述してある。
    主要人物が登場すると、芋づる式に師匠だの同僚だのに話が飛んでいくため読むのに苦労するが、読み終われば、解説にあるように、それらが必要だったのだと気付かされる。
    この事件の原因は結局、古代史研究の現場のムラ社会的な風潮にあるのではないか。そも日本という国全体にそんな風潮があり、多くの問題の病巣になっているように思う。

  • 傑作。日本は無宗教じゃなくて、宗教じみたプチカルト小集団によって形成されている「宗教」国家なんじゃなかろうか…。

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著者プロフィール

1978年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋本徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。著書に『被差別のグルメ』、『被差別の食卓』(以上新潮新書)、『異邦人一世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など多数。

「2017年 『シリーズ紙礫6 路地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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