触身仏 蓮丈那智フィールドファイルⅡ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207223

感想・レビュー・書評

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  • ジャンルを形成した感もある民俗学ミステリの走りのようなシリーズ。ミステリとして薄味なのも、民俗学のエピソードと事件部分の関わりに無理があるのも、このジャンルのお約束のようなもの。うまくいってるとは言いがたいが、この程度が気になる人は、このジャンルは読まない方がいいだろう的な言い方をするしかないか。それより気になったのが、シリーズの二冊目で、キャラの説明もとっくに終ってるのに、ほぼ全作で、那智が如何に偉大で、如何にすごいかという賛辞が、何度となく、かなりの紙幅をとって繰り返されること。これは正直気味が悪い。しかも那智の三国に対する言動はパワハラ以外の何ものでもない。パワハラに向けられる目が、今よりずっと緩かったとは言え、こういう「麗しき徒弟関係」的なものを、手放しで讃える筆致には、さすがに引く。ので、それぞれ星一つ減らしておいた。あしからず。

  • わが村には特殊な道祖神が祀られている。》美貌の民俗学者・蓮丈那智のもとに届いた手紙。神すなわち即身仏なのだという。彼女は、さっそく助手の内藤三國と調査に赴く。だが調査を終えた後、手紙の差出人が失踪してしまった――。那智はいにしえの悲劇の封印を解き、現代の事件を解決する(表題作)。山人伝説、大黒天、三種の神器、密閉された昏い記憶。本格民俗学ミステリ集。
    (2002年)
    — 目次 —
    秘供養
    大黒闇
    死満瓊
    触身仏
    御蔭講

  • 短編集。

    「秘供養」
    大飢饉の果ての人喰い行為。次に食べられるのは?
    その対象は、くじ引きで決められた。
    それが、最も公平だったから。という考察が面白かった。

  • 骨董と古美術。難しくなりがちな設定なのに軽やかで、しかも読み応えバッチリ。主人公の切れ味も絶妙。情けなさと、図りきれない切れ味の鋭さ。短編ひとつのバランスが、とにかく気持ち良い。

  • 昔話の世界が広がる民俗学面白かった。ミクニの今後も楽しみ。

  • 積ん読中の蓮丈那智シリーズを読んでしまおうと、だいぶ前に読んだシリーズ第一作を再読してから本作品を読み始めた。
    復習したおかげて人物相関図をきちんと把握して読めて、作品を堪能できた。
    改めて、民俗学の魅力がよく分かるシリーズだという感想は揺るぎないんだけど、ミステリとしての出来はもしかしたらイマイチかもしれないと感じた(笑)。どの案件も割に合わない殺人なんだよな…。
    でも、キャラが好きだから、作品としては好き。

    解説にもあったけど、美貌というポテンシャルの持ち主の癖に全く色気を発しず性差を軽やかに超越する蓮丈那智に、すごく好感を持ってる。
    美人と日々対峙する助手の内藤三國の、研究者に助手が持つ尊敬と面倒臭さの入り混じった感情は、実感がこもってて学生時代を思い出す(笑)。
    でも内藤はいろいろな足枷が取れれば絶対蓮丈好きだと思うけどなぁ。
    蓮丈もミクニを決して嫌いじゃないと思うなぁ。
    …と妄想で楽しめるところもこのシリーズの好きなところかも。

    今回は、狐目の教務部職員が実は蓮丈と同級で味方だったことが分かったり、要所要所で重要な役割を果たす。なのにいつまで経っても名前を貰えない(笑)。
    そう、このシリーズ、大事な人物にしか名前が与えられないから、犯人分かっちゃうんだよね…。
    いいんだけど。

    唯一の欠点としては、知的好奇心を刺激する内容なので読むと勉強した気になっちゃうところかな(笑)。

    ・秘供養…雪山の中、五百羅漢の線刻のフィールドワーク中に滑落して足の骨を折った蓮丈。その五百羅漢を考察するレポートを課したところ、一人の女学生が提出後に焼死体で発見された。追い焚き機能による事故死の死体遺棄だった。五百羅漢は喫人供養だった。

    ・大黒闇…大学サークルを隠れ蓑にした宗教団体がカルト化するさまを、大黒天の変貌と重ねた話。

    ・死満瓊…異なる領域の専門家が集って議論する会に参加した蓮丈、予定を延長して有意義な時を過ごした末に、薬で眠らされ傍らに会の主宰の死体を伴って発見された。真相を解く際にミクニを被検者に立ててディープキスしてみせる蓮丈の舌がめちゃ器用(そうじゃない)。

    ・触身仏…在野の研究者からの手紙をきっかけに即身仏を調査する蓮丈達。1年後、真相に迫った在野研究者が行方不明になる。彼はエセ即身仏の社の下に隠された石室にホンモノとともに幽閉されてたのを無事に発見されたけど、ジャッキで持ち上げて横倒しになるようなところにどうやって幽閉したのか謎。

    ・御蔭講…わらしべ長者譚のギブアンドテイクの観点からの分析はすごく魅力的だった。
    新たな助手佐江由美子は、これからも登場するのかな。続編に期待を持たせる終わらせ方は心憎い。

  • 狐目の担当者の素顔が見えてきてだいぶ印象が変わった。
    民俗学もミステリーも安定して面白い。

  • シリーズ2作目 文章、話の流れになれてきたのか前作と比べて 面白くスムーズに読めた。

     蓮杖那智と三國のコンビに後半から新しく助手として入ってきた佐伯由美子が加わる。

     三國目線で書かれた話なのだが 三國さんは相変わらずウジウジといろいろと考え手仕舞い 蓮杖那智ではないがしっかりしろ!と思ってしまう。

     本書に出てくる題材の大黒や即身仏 勾玉、山人 民間に伝わる講話など面白く いろいろとあちらこちらで見た仏像などを思い出した。
     では 次の「写楽・考」を読むことにする。

  • 異端の女性民俗学者・蓮丈那智が、助手でワトソン役の三國と共に事件を解決するシリーズ第二弾。
    即身仏や大黒天、三種の神器、御蔭講などを題材にした五篇の短編集。

    前作ではフィールドワーク先で事件が起きるというパターンでしたが、今回は大学周辺の日常の中での事件が多く、蓮丈先生が怪我したり失踪したり犯人扱いされたりと、バリエーションに富んだ展開が楽しめました。
    こんなに頻繁に危険な目に遭う学者なんているのかな、と思うけど、事件に巻き込まれないとお話にならないしね…。
    まあ、マンネリにならないように色んなシチュエーションを描いていて、読み手としては飽きません。

    今作でも民俗学仮説が現実の事件と絡み合い、学究の考察を進めることによって事件の真相が明らかになったり、その反対もあったりして、巧妙な構成にわくわくしながら読みました。

    印象に残ったのは、即身仏と塞の神を描いた表題作の「触身仏」や、神の変遷を描いた「大国闇」。
    支配者によって塗り替えられるのは歴史だけではなく神々も変貌させられて…というのが面白いわ~。
    古代史の暗黒面もたくさん描かれていて知的好奇心が刺激されます。
    「触身仏」のラストは珍しく幻想的に仕上がっていて、自分の好みでした。

    「死満瓊」や「御蔭講」も面白かったけど、民俗学的考察や解釈に飛躍がありすぎな気がしてちょっと読みにくかったです。
    知識が増えることでまた違った側面が見えることもあるので、単に今のわたしは知識が足りなくて理解できなかったのだと思います。

  • 古代をベースに、脇の人物に含みを持たせて掘り下げつつまとめられた、考古学ミステリー。
    狐目の彼のことをもっと知りたくなった。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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