出版禁止 (新潮文庫)

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著者 : 長江俊和
  • 新潮社 (2017年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207414

出版禁止 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • この作品は読むたびにホラーとしての側面、ミステリーとしての側面、文学作品としての側面が浮かび上がってきて驚かされ、短い作品ではありますが深く楽しむことが出来る名作かと思います。

    本作品では若橋が今回の事件を通し、
    1. ジャーナリストとしての使命
    2. カミュの刺客としての使命
    3. 新藤七緒への愛情
    の3つの感情の狭間で葛藤を続け、最後には若橋にとって感情に矛盾を生じさせない唯一の選択肢として、生首との心中という凶行を遂げます。

    そして本作品には作者が残している謎があります。
    7年前の事件については全て解き明かされますが、若橋が犯した事件について、若橋のカミュの刺客としての行動がほとんど記載されていません。
    そしてこれこそが本書をミステリとよぶ所以であり、作者が読者に残したもっとも大きな謎となります。

    若橋は当初新藤を"カミュの刺客"として疑っておりましたが、実際には自身が"カミュの刺客"であったと悟りました。表紙絵やタイトル文字の"禁"が逆さまになっている点はこれを暗示していたものかと思います。また政治結社の高橋からいわれた「視覚の死角」は漢字変換のミスであり実際は「刺客(新藤)の刺客(若橋)」という意味になります。

    若橋は作中にあるルポの公開を望んでおりました。それはジャーナリストとしての使命感だけではなく熊切への嫉妬もあったのではないかと思われますが、しかしここに"カミュの刺客"としての行動を記載すれば公開にあたり神湯により妨害にあうことは明白で、"児戯のごとくいくつかの仕掛けを施" すことでしか残すことが出来ませんでした。
    それでもこのルポが公表されるまでは4年が経過してしまいました。



    "カミュの刺客"としての若橋はどのように行動したのでしょうか?
    新藤七緒ですが、心中後も体調不良に悩まされてきましたが、これは本人が言うように本当に睡眠薬自殺による後遺症なのでしょうか?医師の判断では当時服飲した睡眠薬は既に体外へ排出されていると言われています。
    また新藤七緒はコーヒーを飲みません。しかし待ち合わせにコーヒー専門店を指定し、家にはコーヒーを供えています。これは新藤七緒に若橋以外のものとの接点があることを示唆しているのではないでしょうか?そしてそれは若橋とは別の"カミュの刺客"の存在を示しているのではないでしょうか?

    新藤七緒は金銭的には恵まれた状況にはなく、それは職がないことや家の状況、7年前の事件で特に報酬を受け取ったわけでもないことから確認できます。
    しかし食事に関してだけは際立って充実しており、朝食に関しては"旅館の様"と若橋が評するほどです。

    ここから推察するに恐らく新藤七緒は7年間何者かによって毒殺を試みられており、その方法としては善意の寄付を偽装して提供された食材であったり処方薬であったりではないかと思われ、体調不良は薬物中毒によるものと思われます。そしてその何者かは若橋とは別の一人もしくは複数の"カミュの刺客"なのではないでしょうか?
    (もしかすると他の登場人物の中にいるのかもしれませんね)
    新藤の体調は母の死以降ますますひどくなったとのことでしたが、これも身寄りのなくなった新藤へ"カミュの刺客"による接触がよりしやすくなったことを示している様に思われます。

    若橋は文章だけから判断すると、美人に惑わされただけのしがない記者という印象を受けます。しかし若橋はこの毒殺にも一役絡んでいたとすればどうでしょうか?
    若橋が新藤宅にて鳥鍋を食した晩、新藤は発作を起こします。
    半月後、若橋が新藤との同居の後東京での業務を終えて帰った晩、若橋と新藤が夕食を共にした深夜に新藤は更に激しい発作に襲われます。それは前回の発作よりもひどく、見かねた若橋により絞殺されます。
    私はこの発作は若橋が食事に毒をもったためではないかと推察します。
    それではなぜ1度目より2度目の方が発作がひどかったのでしょうか?それは1度目は新藤の体調が優れず、食事にあまり手をつけなかったためです。そこで若橋は新藤の体調と食欲の回復を待ち、東京で取材の裏取りを終えた後、2度目の毒殺に及んだのです。
    どうでしょう?こう考えると若橋がその愛情に反して相当に冷徹な判断を下したことがわかります。半月を共にすごした後、2回目の毒殺を実行に移すまでの苦悩と葛藤が文章に残されない中で相当にあったものと思われ、この後の行動にいたる若橋の心情への共感が溢れ出てきて胸が苦しくなります。

    若橋が新藤を解体した理由ですが、これはやはり用意した毒よる毒殺ではなく、絞殺としてしまったことから証拠を隠滅する目的であったと考えます。しかし新藤への愛情ゆえ首だけは捨てることが出来ず、最終的には"生還"ではなく"生首との心中"という道を選び、新藤への愛情を示すと共にルポを世間に公開する道筋を残しました。
    そしてここまで謎を解いたときに、やっと小説内のいたるところにある心中についての記述が意味をなしてくるという、なんと深いミステリーを書き上げたのかと本当に素直に頭が下がる作品だと思います。

  • 何度目かの七緒へのインタビューからグイグイと引き込まれてゆき、まさか七緒を愛してしまい同棲することになるとは.....と驚いたが、それだけではなかった。
    その後の伏線回収はぞわぞわするサイコホラーな展開。
    全てが全て分かった訳ではないけれどそれがまた不気味さを醸し出して、現実と非現実がひっくり返るような感覚だった。

  • きっかけは何だっただろう? 確か、本屋さんで見かけて、タイトルと装丁とあらすじと帯、そのいずれにも気になった上、帯の「王様のブランチでも絶賛」みたいなこと書いてあって、面白そうだなと思って買った本だったような。

    読了した結果、面白いかつまらないかの二択で言えば、面白かったです。
    ただ、帯は…持ち上げすぎ。あの帯で、読み始めからかなりハードルが上がっていたため、読了後の喪失感といったら。
    これは、出版社とブランチに非があるような。持ち上げすぎて、作者が気の毒だと思いました。

    ただ、心中の本来の意味とか、太宰治の(なんちゃって)心中の件とかは、興味深く読みました。個人的には、ここが一番の読みどころでした。

    だけど、肝心の本編は…うーん。登場人物の誰にも魅力を感じない上、感情移入が出来ず…。
    「カミュの刺客」のカミュって何だろうってずっと思ってたけど、政治家の「神湯」をもじってるだけみたいだし。

    買って損したまでは思わないけど、帯詐欺だな、という印象は抱きました。

  • 帯の煽りが気になって購入。
    一人暮らし始めてから、通勤時間がほとんどなくなったので本を読む機会も激減。。
    ページ数もそんなに多くなく、気軽に読めそうだったので挑戦。

    内容は男女の愛の果ての心中物。
    と思いきや……。

    正直途中で気づいた仕掛けもあったが、作者の解説や、他の読者の考察を読むとたくさんの仕掛けがあるみたいです。
    今流行りの最後でゾッとする展開なので、暑い夏のおともにどうぞ。

  • 最初、コレが小説なのか、ドキュメンタリーなのか本当にわからなかった。というのも、著者がとあるルポライターの残した原稿を第三者の視点で読み解く、という変わった導入の仕方だからだ。
    これは、ノンフィクション風のフィクション小説。
    メインの語り手であるルポライターが、ある過去の未解決事件の謎を追う。その事件は、人気映像作家熊切と、その愛人七緒の心中騒動。展開がとにかく早く、目が離せない。最後はまた大きなどんでん返しと仕掛けが。設定がなかなかユニークだ。ちょっと気持ち悪かったけども。

  • 単行本で出版当初ブランチで大絶賛されていたのを鮮明に覚えています。
    表紙にも当時インパクトを感じたせいかな?
    是非読みたい!と思ったけれど単行本ではなかなか手が出ず…先日フラッと立ち寄った本屋で文庫発見!
    迷わず即買いでした…が、ブランチでの前評判が高かったせいか、個人的にはんー…て感じでした。
    冒頭、中盤までは興味深く読んでいたんですが、途中から引っ張り過ぎ?の印象が強く少々停滞気味に…そもそもこの事件にこんなに執着する何かがあるんだろうか?と…要は飽きちゃったんですね^^;
    嫌いじゃないけど、ちょっと想像していたものとは違っていたようです。

  • 途中までは心中なのか?殺人なのか?ハラハラ読むことができ、七緒へのインタビューのたびにどこか解決の糸口がないかと探すのが面白かったが、ラストに向かうに連れて、期待していたものと違うものになってしまい、読後感があまり良いとは言えなかった。

  • どんでん返し…まではいかないかなぁ。

  • すごくもやもやとした読後感。

    登場人物全員死亡だからこそ仕方ないのかもしれないし、現実の事件であればこうなってしまうだろうな、というのをフィクションの世界でやられるのは微妙。

    誰が真実を言っているのか、誰が嘘を言ってて誰が狂ってるのか、それも全て明かしてこそのフィクションだと思うので、その点がとても残念。

  • ただただエロいな。

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出版禁止 (新潮文庫)の作品紹介

著者長江俊和氏が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。

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