出版禁止 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207414

感想・レビュー・書評

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  • 一気読みしてしまった。
    余計なことは考えずに読んでみたら良いと思う。
    細かい内容については触れないが、主にルポルタージュの形式を取っているため、要所要所でまとめられており、また話のテンポが良いため、とても読みやすく感じた。
    評価に関しては、読書経験が影響していると思う。

  • 事実は小説より奇なり
    と思って読み進めた。
    いやーはじめは読み進めるのに苦労したけれど、半分を過ぎると読む手が止まらなかった。

    そして、読み終わって他の人の感想を読むまでノンフィクションだと勘違いしてた(笑)

    ノンフィクションだと、かなり心がギュッとなる作品だけれど、フィクションとなると本当に良くできている。面白い作品だった!

  • どんなどんでん返しがあるのか、全然わからなかった。
    わかった時は、おおおお、というより、えっ?(怖っ)という感じ。
    ルポ風に書かれているので、普段そういうのをあまり読まない身からすると最初の方は堅く感じだけど、先が気になってすいすい読めた。
    読み終わった後は、ちょっと後味悪い感じ。
    読み終わった後に考察サイトとか読むと、二度楽しい。

  • 友人から借りての初読みです。
    所々違和感を覚える箇所があって、これは伏線か?と気にかけながら読み進めたものの、最後にきちんと「?!」と驚かされるあたり、読み込みが足りないですね。
    あとがきの種明かし後に再読するのも楽しいものですが、全部わかってすっきり!とならないのが悔しくも、おもしろいところでした。答えは全て明かされず、読者に委ねられています。

    ネタばれ前提でしか書けない感想ですが、
    私なりに導いだストーリーは、熊切殺害はどこからも依頼されず、七緒の独断によるもの。佐和子は七緒の想いに薄々気付いていながら止められず。
    七緒は熊切が佐和子と結婚する2年近く前から佐和子のそばにいたのです。何とかしたい思いでいたのでしょう。
    ところがミイラ取りがミイラになって、気付けば天才肌で繊細な、熊切に惹かれていく。彼の育った環境は描かれていないけれど、不安定な彼の気質から想像するに、安定していなかったはず。そして、彼自身コントロールできない攻撃性や衝動と戦っていた、のを近くで見るにつけ、憎しみ以外の感情が芽生えたのでは。

    殺すつもりはなく、本当に心中しようと思っていたのではないでしょうか。生きる苦しさから共に解放されよう、と七緒は心底思っていたのではないか。

    誤字だと気づいた「視覚の死角」
    私は、「刺客の資格」だと読みました。カミュの刺客は、神湯の刺客なのでしょうが、小説家アルベール・カミュを連想します。彼の著作が、「明晰な理性を保ったまま世界に対峙するときに現れる不合理性(不条理)」という概念により特徴づけられていることを思うと、人間としてそれら不条理な運命に目を背けずに見つめ続ける態度が求められているのでないか。

    暗殺するだけなら、すぐにできたはず。
    でも「何故」心中か、の解明が求められていた。
    若橋は紛れもなくカミュの刺客だけど、それに彼自身が気付いたのは、本当に終盤。知らなかったとはいえ、2年も前から依頼を受け、取材費をもらっていた彼に、近年仕事に困っていた彼に、惚れた七緒と別れて、カミュに敵対してまで取材を打ち切ることはできなかったんでしょう。

    カミュの刺客に失格だと最後に綴った彼。
    不条理な運命に目を背けてしまったが所以なのか。
    苦しむ七緒に手をかけてしまうところまでは心情としてわかるものの、その後の展開がついていけない。
    伏線らしきものの、あやしげなところも回収できぬまま。

    気になるところをつらつらと。
    ・七緒のメールアドレスは雑誌の記者から教えてもらったものだ、と告げるとがっかりする七緒(P24)
     なぜ?誰から教えてもらったものだと期待していた?佐和子?亡き母??
    ・コーヒー専門店なのにレモンティー
    ・佐和子が唯一マスコミの取材に応じた、熊切が”自殺”などという愚行を犯すとは想像すらできない(P45)
     ⇒七緒は、「心中する一か月ほど前は、特に具体的に制作が進行している作品もなく、一向に次の企画に取り掛かろうとしなかった」とインタビューで真逆の発言。
     実際どんな
    ・七緒のインタビューにある「熊切は私の気持ちを受け入れ、気が付けば、そういう関係になっていました」(P59)
     やっぱり七緒側からそれとなく誘ってるよね
    ・熊切が山梨の貸別荘のHPを見てたと知ったのが午前3時、深夜なら飛ばせば2時間で行ける距離で、すぐに出発。夜明け前に着く。管理人と会えたのは8時50分。
     着いてからの空白時間何してたの?熊切の車停まっているの見つけて、彼は「死ぬ」って言ってるのに、ただ待ってたの?
     森角はビデオがテーブルの上にあったって言うけど、管理人は記憶にないっていうし、森角が怪しすぎてもう。神湯シンパっぽいけど、動きがよくわからない。
    ・「あなたは大きく間違っています。もう一度、よく考えてみて下さい。自分自身に与えられた使命と、その役割は何なのか?」という高橋の発言(P152)
     依頼者は彼なんだろうけど・・・
    ・七緒の家の、不自然に新しい3ドアの冷蔵庫、飲まないのにあるコーヒー、それほど思い入れがありそうでもないのに手放せない理由
     死体でも埋まってそう、なんて。七緒の経済状況も謎。佐和子が細々と仕送り送ってる?
    ・「目に見えるものが、全てではないということ・・・・」(高橋)(P152)
    ・「あなたも見たくありませんか?目には決して見えない、人の心の中を」(七緒)(P204)
     この本のテーマが何なのか、読むほどにわからなくなってくる

    そして、ぐぐってから知る名前のアナグラム。
    ぐぐってもすっきりしない物語の真意。
    七緒が絶叫してうなされる「・・・し・・て・・・・して」は「殺して」か「許して」のどちらかかと思ったのですが、実際は闇の中ですね。
    佐和子の関与がどこまでのものかも掴み切れず、もやもやしてしまいますが、スルメみたいに何度も何度も読んで味わえた一冊で、とても楽しめました。
    ところで、心中が日本独特のものだと初めて知って驚きました。

  • 長江俊和の初読み。
    叙述ミステリってやつかな。



    これ・・小説だよね?・・・

    作中1~2度ほど、そう自分に問いかけてしまった(恥)。
    ずいぶんとまあ、手の込んだ仕掛けだこと。

    「この作品はフィクションです」という類いの記述がどこにも無いし、“小説”ではないと勘違いする人が出そう(笑)。

    ★3で、7ポイント半。
    2018.03.27.新。

    ※自分でフィクションのはずはないという結論に至ったにもかかわらず、読後すぐに「カミユの刺客」を検索してしまった(恥)、

    ※「文庫版ーあとがきに代えて」の記述部分は、単行本ではどうなっていたのか?ちょっと気になる。図書館で見かけたら確かめてみよう。

    ※終盤も終盤になってから、若橋自身も“カミユの刺客”だったことが明かされるのだが、、、
    彼は一体、誰からの刺客だったのか?

    ・熊切の妻である女優が、指示した夫殺しの実行犯を葬れ、と差し向けた?
    ……7年も経った今頃に、とは考えにくいなぁ

    ・七緒(仮名)が、自らを殺して欲しいと仕向けた?
    ……そういう感じでもない

    ・高橋(政治結社の)か、神湯氏から、熊切殺しの復讐として?
    ……なるほど、コレかな。だからこそ、ルポライターからの突然のアポにもすんなりと応じた、と
    ……だとすれば、“カミユの刺客は、自分自身が刺客であることに気づかない場合もある”という伏線に繋がるかなぁ。
    ……若橋に心中事件を調べるように促した“セン”からして、刺客工作が始まっていた、とね。




    ・・・ここまで考えたけれど、いまいち自信がもてない(苦笑)。
    自分の読解力の無さが悔やまれる。

  • すごく面白かった。
    七緒と熊切の心中については、太宰治の話が出た段階で、心中動画は本当の遺書ではなく熊切の映像作品であり、七緒がその映像を利用して殺人の罪を逃れたというのはなんとなく想像がついたのだが、その後の七緒と若橋にまつわる展開については全く予想がつかなかった。
    最初読んだ時は、七緒が若橋を熊切と同じように堕としてだまし、殺すつもりだと思っていたので、若橋だまされるなー生きろーと応援しながら読んでいたのに、改めて真相を知り、この段階で七緒はもう死んでいたと思いながらルポルタージュを読むと、反転して若橋の狂人ぶりにゾッとする。

    また、最後
    ①若橋がわざわざ七緒に残酷な処置を行い、さらにそれを映像に記録した理由
    ②若橋がルポルタージュに児戯のような仕掛けを施した理由
    についてははっきりと説明されてはいなかった。
    ヒントは若橋が死ぬ直前に書いた日記の一部「もはや生還など不可能」。つまり若橋は"七緒と同じように生還する"つもりだったが、最終的には心中の誘惑に負けてしまったという記述。
    これを読んだうえで、私は上の疑問についてこう解釈した。
    『若橋は、心神耗弱を偽装して七緒殺しの罪を逃れる、あるいは減刑しようとした。』
    七緒は心中の様子を撮って残すことによって、熊切殺しの容疑から逃れ、見事自分だけ生きて今まで通りの生活に"生還"を果たした。
    それと同じように…と考えれば、
    若橋は七緒を料理して食べたり、生首をボストンバッグに入れて持ち歩いたり、生首に向かってインタビューをしたりと当時明らかな心神耗弱状態であったことを示す行動を映像やルポルタージュに残すことで、七緒殺しの刑を軽くし、"生還"しようとしたのではないか。

    さらに若橋の最後の日記でもうひとつ気になるのが「依頼者の願い通り、責務は果たしたのだが…いつしか私は堕ちてしまっていた。」という記述。
    依頼者とは?責務とは?
    なんだろうと考えた結果、このような考察をした。
    『若橋は、自分の息子である熊切を殺した七緒を殺すために、神湯によって送り込まれた刺客だった。』
    若橋は、七緒を殺すという責務は果たしたものの、七緒を愛してしまっていた。早く七緒に会いたいから、このまま生還は果たせそうにない=自殺した。
    熊切の妻佐和子が、その後アルコール飲酒からのブレーキミスで死亡したといういかにも怪しい経緯で亡くなっていることもこの説の信ぴょう性を上げていると感じる。佐和子も神湯がさらに送り込んだ刺客によって事故に見せ掛けて殺されたのではないか。

    この考察でいくとやはり愛している人を殺して、遺体にあそこまで残酷な仕打ちをするのに、減刑のためだけというのは弱いかななど、違和感も多々ある。でも合っているかはわからなくても最後色々と考えるのが楽しくて良かった。

    追記
    ネットで調べたらもっとしっくりくる解釈があって、多分そちらが正しいのだろうけど、自分で考察した方も記念として残しておく。

  • 【一言感想】
    他人の心の中は見えないが、無理に見ようとすると相手に呑み込まれてしまう

    ノンフィクション風のフィクション作品で、ルポルタージュ風の作品は読んでいて現実に起きた事件なのでは無いかと錯覚させられる

    今作はいわゆる叙述トリックが踏んだんに散りばめられている作品で、最期まで読み切った後に最初から読むと、結末は変わらないが経過や行動を起こした動機が変わって見える

    ↓私見
    作中で筆者が「変換ミス」であるが、これは「視覚の死角」つまり「刺客の刺客」であるとするならば、熊切を殺した"カミュの刺客"を殺すための刺客が筆者なのでは無いかと考えられる

    そう考えると、筆者の犯した二つの「大きな間違い」の一つ「私の役割」とは"刺客の刺客"つまり、"カミュの刺客"と思っていた人物を殺さなくてはいけないことを、思い知らされたことだろうと思う。
    (もう一つの「見当違いの推察」とは"カミュの刺客"を送りつけた人物のことであるが、これは物語上で判明している)

    そうなると最後の「依頼者の願い通り責務は果たした」という言葉は、無事に"刺客の刺客"としての仕事を果たしたことを暗に示しているのでは無いかと思う

    そういえば本作の中で筆者のことを"⬜︎⬜︎さん"と表しているが、これは"刺客刺客さん"のことを示しているのだろうし、筆者仮名の"若葉呉成(わかはしくれなり)"はアナグラム(並び替え)すると、"我は刺客なり(われはしかくなり)"になるのが芸が細かく驚きがある

    ただ"刺客の刺客"の誤算が「いつしか私は堕ちてしまっていた」のであり、「生還することは、もはや不可能」となってしまったことなのだと思う。
    これは"心中"をしたと見せかけて対象を殺し、生還しようと思っていたが自分も気付かぬうちに"狂おしい"ほどの愛情を感じてしまったことなのでは無いかと思う

    相手に呑み込まれないようにするには、確固たる自分自身の考えが必要であるけれども、立場や現在の生活に苦労している環境では、相手の考えや思想に呑み込まれてしまうのでは無いか、本作を読んでそう感じた

  • 先にいやしの村滞在記を読んでいたのでイメージは把握していました!
    いやー、ちょっとグロい感じでしたが楽しめました!
    最後の名前がひらがなになっていることや、途中漢字を変換ミスしていることなど、ヒントを与えていただきながら読めるので、他の方の考察で私の答え合わせもできました!

  • 結局のところどうだったのだろう。
    考えると若橋も被害者ではないか。
    そう思うこともある。女優が相手では仕方ないのか。考えさせられる作品だと思います。
    個人的に思うのは、記事の部分に違和感があったが気付かず最後まで行ってしまった。
    騙されてしまった。


    内容
    著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。

  • ただのどんでん返しでは終わらず、作中に様々な仕掛けがあり、何度も戻りながら読まされた!
    同じ文章でも真相を知って読むと全然違う意味になるのスゴイ。
    でもまだ腑に落ちないので考察サイトを探してやっとわかった気がする。後半グロかった!

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著者プロフィール

1966年大阪府生まれ。映像作家、小説家。深夜番組「放送禁止」を制作、熱狂的なファンを生む。監督として映画化し、上映。2014年、小説『出版禁止』がヒット。著作に『ゴーストシステム』『出版禁止』『掲載禁止』『東京二十三区女』『検索禁止』などがある。

「2023年 『恋愛禁止』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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