指の骨 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101209913

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争中、南方戦線で負傷した一等兵の私は、激戦の島に建つ臨時第三野戦病院に収容された。最前線に開いた空白のような日々。私は、現地民から不足する食料の調達を試み、病死した戦友眞田の指の骨を形見に預かる。そのうち攻勢に転じた敵軍は軍事拠点を次々奪還し、私も病院からの退避を余儀なくされる。「野火」から六十余年、忘れられた戦場の狂気と哀しみを再び呼びさます衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争中、南方の島で傷兵になった
    一等兵のお話し。物語は主人公の語りで進む。
    その日の暮し、仲間の話し、
    時おり負傷した戦闘の話し。たんたんと描写されているようで、文章がとても力強い。
    リアルな戦闘のシーンも無く、家族との別れのような描写も無い
    それなのにとても深く悲しいし、恐ろしい。

  • 2019年6月14日読了。
    ●著者、34歳の時のデビュー作。
    ●「第46回新潮新人賞」受賞作。

    戦地ラバウルでのある日本兵のお話。
    日々死にゆく仲間との緊張感溢れる日常や
    原住民との触れ合いなどなど。
    何故著者がこれを題材に選び、書こうと思ったのか
    そして、書くことが出来たのか知りたくなった。

  • 高橋弘希『指の骨』新潮文庫。

    新潮新人賞受賞作の戦争文学である。戦争の悲惨さと常に死と隣り合わせの日常が創り出す狂気とが見事な筆致で描かれる。

    それにしても、何とも凄い新人作家が出て来たものだ。 最初は何故この平和な世の中で本格的な戦争文学をと思うのだが、大岡昇平の傑作『野火』や『俘虜記』にも全くひけをとらない作品に非常に驚かされた。

    太平洋戦争の最中、南方で腕を負傷した『私』を主人公に収容された臨時野戦病院での死と隣り合わせの日常……食糧不足と相次ぐ戦友の死は『私』を狂気の世界に誘う……

    現代の若者たちよ、これが戦争だ。

  • ニューギニアの野戦病院、行軍の風景。飢餓と病。実体験をもとにした「野火」とはどこか異質の空気を感じる。衝撃的ではあるがどこかオカルトっぽい。2020.11.13

  • 大岡昇平や水木しげるの著した記録と似通うところは、後方での活動や逃避行の描写が圧倒的に多いところである。事実、戦争体験において戦闘行為は一瞬であり、時の多くを後方で過ごしているのだから。
    一方で大岡らの著したものと大きく異なるところは、主人公が生還しえないところである。生還したものの手記は、事実として生還したことを前提として、また意識的にか無意識的にか戦後の生活を価値判断として織り込んでいる。そこを出来うる限り排除した場合の思考実験として本書はあるように思う。
    戦場体験者の記録を、想像としての死で還元したときに見える感覚。この追求こそが作品全体を通してリアル感を出している。

    それと、死者に哀悼を捧げるかのような文庫の表紙が素敵。

  • 2019/05/25-6/1
    戦争文学というジャンルの存在を気づかせてくれた。生死の分かれ目を幾度も体験していく。どんな時でもヒトは夢を見る。

  • 怖い、辛い、悲しい、それしか出てこない。

  • 大岡昇平の「野火」が数年前の新潮文庫夏の100冊に入っていたので、その頃読んだ。
    戦争を全く知らない世代が、資料と想像力で書いた作品である。
    もちろん、国や家族、天皇に対する考え方などが、戦争を実体験した人から見れば、違和感はあるかもしれないが、小説として、よく出来ていると思う。
    体験のなさは、想像力で補うしかないだろう。そして、そうでなければ、架空の物語など、書けなくなってしまう。

  • 初めて読んだ戦争小説から、青春譚のようなものを感じた。
    ラストに近くにつれて自分を包む世界の皮が薄れ、現実に戻るような感覚に陥る。
    戦争とは一体何なのか。虚構にも見聞録にも収められない作風が神経を揺さぶる気がした。

    うだる暑さに霞む町を高台から眺め、白い壁の正面で読みたい。

  • 圧倒的なリアリティとか読んだ人みんなが言っているのだがホントにそうで、見た人しか書けないような、圧倒的な生々しさが全編に漂っている。まるで太平洋戦争のその時その島のその場所の臭いまで感じるような内容。野火を読んだ時と同じような感覚も覚える。イメージのような戦いのない戦わない戦場があり、それ故の悲惨さが重くのしかかる。戦争だけはしたくないとつくづく思うし、自分の子どもが戦争に行き戦うと言うなら何も考えずに止めたい。戦場で戦おうが戦わなかろうが、死がそこにある状況、個人の意思に反した死を迎えざるを得ない場面を絶対的強者が作るべきではないと思う。戦わざるを得なかったというのは思考の停止であり、そうせざるを得ない状況ならばそれを踏まえた上でどうするかを考えることが、任された人の責任であると思う。同調圧力にクッしない大切さ。

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著者プロフィール

「指の骨」で新潮新人賞を受賞しデビュー。若手作家の描いた現代の「野火」として注目を集める。同作にて芥川賞候補、三島賞候補。「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」で野間文芸新人賞受賞、「送り火」で芥川賞受賞。

「2019年 『日曜日の人々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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