螺旋の手術室 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101210711

感想・レビュー・書評

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  • 久々の知念作品です。

    下手すると重くなり過ぎるのが医療ミステリーだと思いますが、その辺のバランスがきっとすごく絶妙なんだろう。

    読み応え十分なのに、すぐに物語の世界に誘ってくれました。

    本作の舞台は純正会医科大学付属病院。

    そこで次の教授を決める教授選の候補者であった冴木真也准教授が手術中に亡くなってしまう。

    真也の手術自体は決して難易度の高いモノではなく腹腔鏡による胆嚢摘出手術で、しかも執刀医は権威である海老沢教授。

    そんな手術だから本来は絶対に許されない患者の身内(息子)で同じ純正会医科大学の外科医である祐也が助手として手術に立ち合う。

    本来であれば1時間以内で安全に終わるはずだった手術で真也は命を落とす。

    これは医療ミステリーにありがちな医療事故なのか?

    しかし、真也と教授の座を争っていた医師も暴漢に襲われて殺害されてしまう。

    そして、海老沢教授も同病院に入院中に突然死を迎える。

    不可思議な事に純正会医科大学付属病院の教授選に関わる人が1人また1人と死んでいく。

    それぞれの死は何か繋がりがあるのか?

    そんな時にとある探偵がいろいろと探っていたことを知った祐也。

    何とか接触しようとした祐也はその探偵が亡くなっていたことにたどり着き、彼の母親から手帳を預かることに。

    そこに書き残されていたメモの謎を解く旅が始まった。

    そして語られた衝撃の完全犯罪の事実。

    読み終えた時にタイトルに込められた螺旋の指す意味を理解出来た。

    巧妙に仕掛けられた謎と祐也の苦悩が重なり、重厚感のある作品でした。


    説明
    内容紹介
    読書メーター読みたい本ランキング第1位。驚愕のどんでん返し手術室での不可解な死。次々と殺される教授選の候補者たち。事件に秘められたある想いとは……。慟哭の医療ミステリー。純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。二つの死の がりとは。大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが……。「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。『ブラッドライン』改題。
    内容(「BOOK」データベースより)
    純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。二つの死の繋がりとは。大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが…。「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    知念/実希人
    1978(昭和53)年、沖縄県生れ。東京慈恵会医科大学卒業。2004(平成16)年から医師として勤務。’11年、「レゾン・デートル」で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。’12年、同作を『誰がための刃』と改題し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 知念実希人『螺旋の手術室』新潮文庫。

    『ブラッドライン』の改題、大幅改稿の上で文庫化。

    出だしの文章が読み辛く、波に乗るまで時間を要したが、なかなか面白い医療ミステリーだった。現役の医師でなければ書けない作品だと思う。また、ミステリーの裏側で進行する家族の物語も非常に良かった。

    外科医の冴木裕也が立ち会った父親の真也の極めて簡単な手術。しかし、父親は異常出血を起こし、死亡する。亡くなった冴木真也は大学附属病院の准教授にして、次期教授選の有力候補だった…

    教授選を巡り、教授候補が次々と謎の死を遂げるという不可解。一体、何者が如何なる理由で…

    コミカルな天久鷹央シリーズも面白いが、こうしたハードな医療ミステリーの方が好みである。

  • ラストに回収された伏線にさすがは知念作品と感心させられました!
    面白かったです。

  • 犯人が殺人に至るまでの動機が切なすぎる。大切な人を守るために1番やってはいけないことをしてしまった。しかし、そうせざるを得なかった状況まで追い込まれていたからか、犯人に同情してしまう部分もあった。
    反対に全く同情できなかったのがまずは登喜子。毒親という言葉は彼女のためにある。存在そのものが不快。殺人事件の被害者にならなくてよかったねと言いたい。
    次に枯狩村の神主をはじめとした村人たち(駐在含む)。フィクションの登場人物たちとはいえ、目の前にいたらはっ倒してしまうのを我慢できないだろうなと考えてしまった。しかし、この限界集落に暮らす村民たちを待つものは遠くない未来の廃村。そう考えれば少しは溜飲が下がる。
    さらに川奈夫婦。医療ミスを隠蔽した上にそれを他人になすりつけたり逆ギレしたり。夫の方が惨めすぎる最期だったのは自業自得だったかもしれない。
    最後に教授戦に絡んでいた馬淵と海老沢。馬淵は不倫した挙げ句、差別的なことを言ってしまったわけだし、人権感覚を疑うレベルである。海老沢は保身と名誉に囚われたダメなやつだ。もっと無残な死に方になってても文句は言えなかっただろう。
    さて、知念実希人先生の作品を読んでいるといろいろな病気について知ることができるが、これは知念先生が内科医として経験を積んできたことがバックボーンにあるからだろう。本作ではハンチントン病がキーになるが、どんな病気であるかについて知ることもできた。

  • 大学病院の教授選考の候補だった冴木真也准教授が、簡単な手術なのに、不可解な死を遂げた。
    続く関係者の不可解な死。

    父と同じ病院に勤務し、手術に参加した息子の裕也は、謎の解明に乗り出す。

    しかし、そこには、更に深遠なる謎が...
    二転三転する状況に、最後まで、一気読み必須です。

    作者の知念さんは、医師なのですね。
    表題もなるほとと理解しましたが、最後のオチは、なかなか考えさせられます。

  • 医学用語も分かりやすく、ストーリーを邪魔することなく説明されていてすごく読みやすかったし、次々変わる展開に先が気になって夢中になれた

    犯人はなんとなくそうかなと思ってたけど動機は思ってもみなかった、というか分かるはずもなく
    最終的に父親の事が理解できてわだかまりがなくなってよかった

  • スピード感が半端ない。
    家族とは?
    よかった

  • 色々なジャンルの内容が盛りだくさん、なんだけれどすっきりと話がまとめられていて悲しいながらも読後感がよかった。
    最初は、ありふれた大学病院のよくある教授の椅子を争う話だと思いきや結構重めの差別社会の問題。これは確かに色々と考えさせられる。自分が妊娠して産もうとした時、確実に大変な思いをしなければならない子供を産めるだろうか・・・。産まない事を選択してらやはり差別や命の選択をしたと言われてしまうのだろうか。未熟な自分にひ答えは出せない気がする。

  • 純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。

    彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。
    二つの死の繋がりとは。

    大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。
    父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが。

    「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。

    **************************************

    ただの医療ミステリーではないと思ったほど、いろんな登場人物が出てきて、みんな繋がってそうで繋がってなくて、最後までどうなるかほんまわからんかった。

    最後に全てが繋がった時、身内が絡むと完全犯罪は可能よな、なんて思ったりもしたけど、犯罪を犯した理由を知ると、そう簡単な物語でもないねんなと感心した。

    犯人は一体誰?と言うよりは、
    この物語の中心でもある家族の話の内容が面白かった。

  • 面白かった
    病棟シリーズとは一線を画する医療ミステリー。
    医師ならではの描写で、手術シーンはリアル感満載。

    ストーリとしては、大学付属病院の教授選の候補だった准教授が手術中に不可解な大量出血で死亡。
    さらに、他の候補も暴漢に襲われ殺害。
    教授選に絡んだ殺人事件に巻き込まれたのか?
    手術中の死亡に疑問をもった息子は同じ医師として、一人調査を始めます。
    さらに、教授選に絡む人物を探っていた探偵も謎の死亡。探偵が残したメモをもとに、事件の真相に迫っていきます。
    ついに、黒幕を突き止めたと思いきや、それは事件の一部だけでした。

    本当の黒幕は誰なのか?
    なぜ、父親は殺されたのか?
    探偵の残したメモの意味は?

    といった展開です。

    そして、ラストに明らかになる真相なのですが、これがまたびっくりの展開でした。
    そうくるかって思いました。
    と同時に、今回の事件の真相で、それって動機になるの?
    (ちょっと殺人を犯すにあたって動機が薄い..)

    ひととおり、伏線が回収されてスッキリなのですが、かなりご都合主義なのは間違いない。
    とはいえ、医療エンターテイメントとしてはとても楽しめました。

    これ、原題は「ブラッドライン」なんですが、そっちの方がしっくりくると思います。

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著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

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